シルヴァービュレットデイ
和名:シルヴァービュレットデイ |
英名:Silverbulletday |
1996年生 |
牝 |
鹿毛 |
父:シルヴァーデピュティ |
母:ロケビーローズ |
母父:トムロルフ |
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BCジュヴェナイルフィリーズやケンタッキーオークスなどGⅠ競走5勝を含むグレード競走13勝を挙げて米国顕彰馬にも選ばれた神からの贈り物 |
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競走成績:2~4歳時に米で走り通算成績23戦15勝2着3回3着1回 |
誕生からデビュー前まで
米国ケンタッキー州ハイクレアファームにおいて、同牧場の所有者ジェフリー・モリス氏と、クリアクリークファームの所有者ジョン・クルーク氏により共同生産された。1歳7月にファシグ・ティプトン社が実施したセリに出品され、マイケル・E・ペグラム氏のモーニングウッドステーブルズにより15万5千ドルで購入され、ボブ・バファート調教師の管理馬となった。ペグラム氏の代理人としてこのセリに参加していたバファート師は、セリが終了する直前に初めて本馬を見て、一目惚れして衝動的に購入したという。ペグラム氏は、賢くて大人しい本馬のことを神からの贈り物と呼んだ。
競走生活(2歳時)
2歳6月にチャーチルダウンズ競馬場で行われたダート5.5ハロンの未勝利戦で、シェーン・セラーズ騎手を鞍上にデビュー。単勝オッズ2倍の1番人気に支持された。レースでは3番手を先行して三角で先頭に立ち、そのまま後続馬を引き離し続けて、2着となった単勝オッズ5.8倍の2番人気馬フォーエヴァーメイジーに11馬身差をつける圧勝劇を演じた。
2週間後のデビュータントS(GⅢ・D5.5F)では、単勝オッズ1.3倍という圧倒的な1番人気に支持された。ここではウィリー・マルティネス騎手とコンビを組むと、やはり3番手追走から四角で先頭に並びかけ、単勝オッズ23.9倍の5番人気馬ザハッピーホッパーの追撃を1馬身3/4差で完封して勝利した。
8月に米国西海岸に遠征して出走したソレントS(GⅡ・D6.5F)では、主戦となるゲイリー・スティーヴンス騎手と初コンビを組んだ。このレースでは西海岸を主戦場としていた同厩馬エクセレントミーティング(馬主は異なる)との対戦となった。エクセレントミーティングより4ポンド重い121ポンドを背負って出走した本馬が単勝オッズ1.7倍の1番人気で、前走のランダルースSで3着だったエクセレントミーティングが単勝オッズ4.6倍の2番人気となった。レースは本馬が馬群の好位を追走し、エクセレントミーティングが後方から進む展開となった。直線入り口で先頭に立って押し切ろうとする本馬の後方からエクセレントミーティングが追いかけてきたが、最後まで影は踏ませず、2馬身差をつけて勝利した。
次走のデルマーデビュータントS(GⅡ・D7F)でも、エクセレントミーティングとの顔合わせとなった。本馬が121ポンドの最重量でも単勝オッズ2.6倍の1番人気に支持される一方で、前走で本馬との勝負付けが済んだと思われたエクセレントミーティングは115ポンドの斤量で単勝オッズ5.9倍の3番人気だった。今回も本馬は先行態勢を取ったが、積極的に逃げる馬がいなかったため、早い段階で先頭に押し出されてしまった。そのまま先頭で直線に入ってきたが、ここで後方から一気にまくってきたエクセレントミーティングにかわされると力尽き、勝ったエクセレントミーティングから7馬身半差をつけられた4着に完敗してしまった。
その後は、この年はチャーチルダウンズ競馬場で行われるBCジュヴェナイルフィリーズを目指してケンタッキー州に戻り、アルキビアデスS(GⅡ・D8.5F)に出走した。マザリーンBCSを勝ってきたファンタジーレイク、ケンタッキーカップジュヴェナイルフィリーズSを勝ってきたグランドディード、アディロンダックS・スピナウェイSで2着してきたエクステンディドアプローズ、後のBCフィリー&メアターフの勝ち馬パーフェクトスティングなどが対戦相手となった。本馬が単勝オッズ2倍の1番人気、ファンタジーレイクが単勝オッズ5.7倍の2番人気、グランドディードが単勝オッズ7.5倍の3番人気、エクステンディドアプローズが単勝オッズ8.2倍の4番人気となった。レースでは馬群の中団好位の5番手を進み、三角に入って仕掛けて先頭に立った。そのまま先頭を維持した状態で四角を回って直線に入ると押し切り、2着エクステンディドアプローズに2馬身半差、3着グランドディードにはさらに7馬身差をつけて完勝した。
そして迎えたBCジュヴェナイルフィリーズ(GⅠ・D8.5F)。主な対戦相手は、オークリーフSを勝ってきたエクセレントミーティング、フリゼットSを勝ってきたコンフェッショナル、ポリードルモンドSを勝ってきたエマネイティング、デルマーデビュータントSで本馬に先着する2着後にオークリーフSでも2着してきたアンタカラナ、エクステンディドアプローズ、ヒドゥンライトSを勝ってきたレイエル、スーザンズガールS・マイディアガールSを連勝してきたスリーリング(後のエイコーンSの勝ち馬)などだった。本馬が単勝オッズ1.8倍の1番人気、エクセレントミーティングが単勝オッズ5.1倍の2番人気、コンフェッショナルが単勝オッズ6.6倍の3番人気、エマネイティングが単勝オッズ16倍の4番人気であり、上位人気3頭に人気が集中した。
スタートが切られると、単勝オッズ16.3倍の6番人気馬エクステンディドアプローズが馬群を先導し、本馬は中団を、エクセレントミーティングは最後方を追走した。本馬は四角手前で外側を通って一気に進出し、エクセレントミーティングも本馬を追うように外側から位置取りを上げてきた。直線に入ると本馬が内側で叩き合うエクステンディドアプローズとスリーリングの2頭を軽々とかわして先頭に立った。そこへ後方からエクセレントミーティングが猛然と追い上げてきた。しかし本馬がエクセレントミーティングを半馬身差の2着に抑えて優勝した。
この年の出走はこれが最後ではなく、3週間後に同コースで行われたゴールデンロッドS(GⅢ・D8.5F)にも出走した。デビュータントS2着後にインディアンサマーS・ポカホンタスSを勝っていたザハッピーホッパー、後にケンタッキーオークス馬サマーリーの母となるヒアアイゴー程度しか目立つ対戦相手がおらず、本馬が単勝オッズ1.1倍という圧倒的な1番人気に支持された。やはり馬群の中団を追走すると、三角で先頭に立って後続を突き放し、直線に入った時点では既に勝負はついていた。直線でも後続をさらに楽々と引き離し、2着となった単勝オッズ10.8倍の3番人気馬ヒアアイゴーに10馬身差をつけて圧勝。
2歳時は7戦6勝の成績で、この年のエクリプス賞最優秀2歳牝馬に選ばれた。
競走生活(3歳前半)
3歳時は2月にフェアグラウンズ競馬場で行われたダヴォナデイルS(GⅢ・D8.5F)から始動した。本馬に対抗できる可能性を秘めた馬は、前走の一般競走を4馬身差で圧勝してきたブラッシュドハロリー、後のマザーグースSの勝ち馬ドリームズガロア、後のCCAオークス馬オンアソープボックスくらいだった。122ポンドの本馬が単勝オッズ1.1倍の圧倒的な1番人気に支持され、114ポンドのブラッシュドハロリーが単勝オッズ7.6倍の2番人気となった。レースではブラッシュドハロリーが2番手を進み、本馬はやはり馬群の中団5番手につけた。四角でブラッシュドハロリーが先頭に立とうとしたところに、後方から本馬がやって来た。そして直線に入ると本馬がブラッシュドハロリーを置き去りにして抜け出し、最後は2馬身1/4差をつけて快勝した。
次走のフェアグラウンズオークス(GⅢ・D8.5F)では、ブラッシュドハロリー、ティファニーラスSを勝ってきたブームタウンガール、未勝利戦を7馬身半差で勝ち上がってきたラナウェイヴィーナスなどが対戦相手となった。本馬にとって初体験となる不良馬場に乗じた他馬が本馬に一泡吹かせられるかもしれないと思う人も少しはいたようだが、やはり本馬が121ポンドのトップハンデながらも単勝オッズ1.3倍の1番人気に支持された。今回の本馬は当初こそ馬群の後方2番手につけていたが、じわじわと位置取りを上げていくと、直線入り口では先頭にいた単勝オッズ9倍の4番人気馬ラナウェイヴィーナスに並びかけていた。そして悠々とラナウェイヴィーナスを突き放し、3馬身差をつけて問題なく勝利した。
ケンタッキーオークスの前哨戦アッシュランドS(GⅠ・D8.5F)では、都合が付かなかったスティーヴンス騎手に代わって、ジェリー・ベイリー騎手とコンビを組んだ。有力な対戦相手は、ラスヴァージネスS・サンタアニタオークスでいずれもエクセレントミーティングの2着してきたタウシャルマン(後にデルマーオークス・メイトリアークSなどに勝利)、メイトロンS・ボニーミスSで共に3着だったマーリーヴェイル(後のテストSの勝ち馬)の2頭だった。本馬が他の出走全馬より8ポンド重い123ポンドでも単勝オッズ1.3倍の1番人気に支持され、エクセレントミーティング相手に頑張ってきたタウシャルマンが単勝オッズ4.1倍の2番人気、マーリーヴェイルが単勝オッズ8.2倍の3番人気となった。しかし8ポンドの斤量差程度では、本馬と他馬勢の能力差を埋めることは出来なかったようで、馬群の中団から四角で一気に先頭に躍り出た本馬についていける馬は1頭もおらず、本馬が2着マーリーヴェイルに7馬身差をつけて圧勝した。
この後はケンタッキーダービーに出走すると噂されており、出れば1番人気確実とまで言われた。しかし前年のケンタッキーダービーをリアルクワイエットで制していたペグラム氏は、ケンタッキーダービーというレースの厳しさを身に染みて理解しており、神からの贈り物である本馬をこのレースに出すのは賢明ではないと思っていたという。
ハリウッドスターレットS・ラスヴァージネスS・サンタアニタオークス・ファンタジーSと4連勝していた同厩別馬主のエクセレントミーティングはケンタッキーダービーに向かったが、本馬はケンタッキーオークス(GⅠ・D9F)に向かった。比較的有力な対戦相手は、ゴールデンロッドS4着後にハニービーS・ファンタジーSで2着していたザハッピーホッパー、マーリーヴェイル、ダヴォナデイルS4着後にハニービーSを勝ちファンタジーSで3着していたドリームズガロアだったが、いずれも過去に本馬が蹴散らしてきた馬ばかりであり、本馬が単勝オッズ1.1倍の圧倒的1番人気に支持された。一応の対抗馬としてザハッピーホッパーが単勝オッズ6.4倍の2番人気となり、マーリーヴェイルが単勝オッズ15.4倍の3番人気、ドリームズガロアが単勝オッズ16.8倍の4番人気となったが、鞍上のスティーヴンス騎手が「20年間の騎手生活の中でこれほどプレッシャーを受けてレースに臨んだのは初めてでした」とレース後に述懐するほど、本馬が勝って当然という雰囲気だった。スタートが切られるとまずはマーリーヴェイルが先頭に立ち、本馬は後方2番手につけた。しかし向こう正面で一気に位置取りを上げると、四角で先頭に並びかけ、先頭で直線に入ってきた。そしてそのまま2着ドリームズガロアに2馬身差で勝利した。道中でスティーヴンス騎手は鞭を使うことは無く、腕で追うだけだった。
プリークネスSにも登録されていたが回避し、代わりにプリークネスS前日のブラックアイドスーザンS(GⅡ・D9F)に出走した。ドリームズガロア、前走4着のザハッピーホッパーなども出走してきたが、もはや本馬の敵とはみなされておらず、本馬が今回も単勝オッズ1.1倍の圧倒的1番人気に支持され、ザハッピーホッパーが単勝オッズ7.6倍の2番人気、ドリームズガロアが単勝オッズ9.2倍の3番人気となった。ここでは珍しくスタートから先頭に立ち、馬群を先導した。そして三角からどんどん後続を引き離していった。後方からはドリームズガロア1頭だけが追いかけてきて、直線に入ると徐々に本馬との差を縮め始めた。しかし最後までドリームズガロアが本馬を脅かすことは無かった。本馬が5ポンドのハンデを与えた2着ドリームズガロアに2馬身差(3着馬はさらに16馬身半後方)をつけて、1分47秒8のコースレコードで勝利した。
その後はCCAオークスではなく、牡馬相手のベルモントS(GⅠ・D12F)に向かった。これは、ケンタッキーダービーで5着、プリークネスSで競走中止に終わっていたエクセレントミーティングの仇討ち的な参戦となった。このレースからスティーヴンス騎手に代わってベイリー騎手が主戦となった。対戦相手は、ケンタッキーダービー・プリークネスSを連勝して21年ぶりの米国三冠馬に王手をかけていたカリズマティック、ケンタッキーダービー・プリークネスSで共に2着だったブルーグラスSの勝ち馬メニフィー、ギャラリーファーニチャーコムSの勝ち馬スティーヴンガットイーヴン、ダービートライアルSの勝ち馬ペイシャンスゲーム、ピーターパンSを勝ってきたベストオブラック、ベルモントフューチュリティSの勝ち馬レモンドロップキッド、ウッドメモリアルSの勝ち馬アドニス、イリノイダービーを勝ってきたヴィジョンアンドヴァースなどだった。カリズマティックが単勝オッズ2.6倍の1番人気、メニフィーが単勝オッズ3.6倍の2番人気、本馬が単勝オッズ6.1倍の3番人気となった。レースではこれといった逃げ馬がいなかったため、本馬が最初のコーナーで先頭に押し出されてしまった。そのまま馬群を先導し続けたが、すぐ後ろを走っていたカリズマティックに四角途中で並ばれると、直線半ばで失速して、勝ったレモンドロップキッドから10馬身1/4差の7着と完敗した。
競走生活(3歳後半)
夏場も休まず走り、モンマスBCオークス(GⅡ・D8.5F)に出走。本馬との対戦を嫌がったのか、他の出走馬は実績に乏しい馬3頭のみであり、本馬が単勝オッズ1.05倍という究極の1番人気に支持された。レースは出走全馬が一団となって進み、本馬はその真ん中につけた。そして直線に入ってから抜け出すと瞬く間に後続馬をちぎり捨て、2着となった単勝オッズ14.8倍の3番人気馬ブームタウンガールに5馬身差で勝利した。
その後はハスケル招待Hを回避して、アラバマS(GⅠ・D10F)に向かった。ダヴォナデイルSで本馬の3着に敗れた後にCCAオークスを勝ってきたオンアソープボックス、加国の三冠競走第2戦目であるプリンスオブウェールズSで牡馬を蹴散らして勝ってきたガンドリア、フェアグラウンズオークスで本馬の3着に敗れた後にデラウェアオークスを勝ってきたブラッシュドハロリー、CCAオークス3着馬ストローリングベルなど、前走よりは骨がある相手が出走してきた。本馬が単勝オッズ1.4倍の1番人気、オンアソープボックスが単勝オッズ4.75倍の2番人気、ガンドリアが単勝オッズ8.2倍の3番人気となった。レースでは単勝オッズ20.3倍の5番人気馬ストローリングベルが単騎でマイペースの逃げを打ち、本馬は馬群の中団後方を追走。三角でストローリングベルに並びかけると四角では先頭に立ち、直線に入ると独走。2着に粘ったストローリングベルに9馬身差をつけて圧勝した。
次走はガゼルH(GⅠ・D9F)となった。テストS2着馬オーフルスマート、3戦無敗で挑んできた上がり馬カントリーハイドアウェイ、ケンタッキーオークス7着後にデラウェアオークスで2着していたゴールドフロムザウェスト、デラウェアオークス3着馬クイーンズワードなどが対戦相手となった。本馬が他馬勢より9~12ポンド重い124ポンドのトップハンデでも単勝オッズ1.2倍の1番人気に支持され、115ポンドのオーフルスマートが単勝オッズ8.1倍の2番人気、114ポンドのカントリーハイドアウェイが単勝オッズ8.2倍の3番人気となった。レースでは後方2番手を追走したが、先頭のオーフルスマートとは2馬身程度の差であり、射程圏内に捉えた状態だった。そして少しずつ位置取りを上げていくと、四角では先頭に立った。さすがに斤量差が大きいために独走とはいかなかったが、それでも直線をしっかりと走りきり、追い込んで2着に入った単勝オッズ28.5倍の5番人気馬クイーンズワード(斤量113ポンド)に1馬身3/4差で勝利した。
次走のベルデイムS(GⅠ・D9F)は、初の古馬相手のレースとなった。2歳時にメイトロンSを勝った後は不調に陥っていたがこの年になって復調してヘンプステッドH・ゴーフォーワンドHと連続2着して前走パーソナルエンスンHでGⅠ競走2勝目を挙げてきたビューティフルプレジャー、ラフィアンH・ファーストフライトH・トップフライトH・シュヴィーHなどを勝っていたカティンカという2頭の有力4歳馬が対戦相手となった。クイーンズワードも出走していたが、もはや同じ3歳馬は本馬の敵とはみなされていなかった。本馬が単勝オッズ1.45倍の1番人気、ビューティフルプレジャーが単勝オッズ3.4倍の2番人気、カティンカが単勝オッズ6.8倍の3番人気となった。超不良馬場の中でスタートが切られると、ビューティフルプレジャーが猛然と先頭を飛ばし、本馬は離れた2番手を追走。そして四角でビューティフルプレジャーに詰め寄っていったが、直線では逆に引き離されてしまい、4馬身3/4差をつけられた2着に完敗してしまった(ただし3着カティンカには6馬身差をつけていた)。本馬も特に重馬場を苦にする馬ではなかったが、パーソナルエンスンHでも不良馬場を平気で走って勝ってきたビューティフルプレジャーのほうが重馬場適性では一日の長があったようである。
その後はガルフストリームパーク競馬場で行われたBCディスタフ(GⅠ・D9F)に向かった。ここでも対戦相手は4歳馬が中心であり、ビューティフルプレジャーに加えて、前年にCCAオークス・アラバマS・スピンスターS・ボニーミスSを制してケンタッキーオークス・BCディスタフでも2着してエクリプス賞最優秀3歳牝馬に選ばれ、この年もアップルブロッサムH・ゴーフォーワンドH・ランパートHなどに勝ちパーソナルエンスンH・スピンスターSで2着していたバンシーブリーズ、前年にケンタッキーオークス・ラスヴァージネスSを制してサンタアニタオークス・マザーグースS・CCAオークス・ガゼルH2着・BCディスタフ3着と活躍し、この年も前走スピンスターSを勝っていたキーパーヒル、サンタマルガリータ招待H・ヴァニティ招待H・ハリウッドオークス・バヤコアH・エルエンシノS・ラカナダS・レディーズシークレットHを勝っていたマニスティーク、前年のガゼルHとこの年のデラウェアHを勝っていたタップトゥミュージック、モリーピッチャーBCH・ダイアナHの勝ち馬ヘリテージオブゴールドなどが出走してきた。本馬が単勝オッズ2.6倍の1番人気、バンシーブリーズが単勝オッズ3.2倍の2番人気、ビューティフルプレジャーが単勝オッズ4倍の3番人気、キーパーヒルが単勝オッズ8倍の4番人気となった。
スタートが来られると、ヘリテージオブゴールドとビューティフルプレジャーの2頭が先頭に立ち、本馬は馬群の中団を追走した。そして三角手前で逃げるビューティフルプレジャーに詰め寄ろうとした。しかし快調に逃げるビューティフルプレジャーとの差は縮まらず、離された2番手で直線を向いた。そしてビューティフルプレジャーをかわすどころか、後続馬にも次々と差されていき、勝ったビューティフルプレジャーから11馬身1/4差をつけられた6着と大敗してしまった。
それでも3歳時11戦8勝の成績を残し、この年のエクリプス賞最優秀3歳牝馬のタイトルを獲得した。
競走生活(4歳時)
4歳時も現役を続行し、4月にキーンランド競馬場で行われたダブルドッグデアS(D8.5F)から始動した。当初は出走予定だったBCディスタフ4着のキーパーヒルが回避したため、対戦相手は1歳年上のハニービーSの勝ち馬ローザロバータなど2頭だけという寂しいレースとなった。他2頭より7ポンド重い123ポンドの本馬が単勝オッズ1.3倍の1番人気に支持され、ローザロバータが単勝オッズ4.4倍の2番人気となった。レースは3頭が密集して進み、三角辺りからのスピード勝負となった。まずは本馬が抜け出して先頭で直線に入ってきたのだが、後方から追ってきたローザロバータが着実に迫ってきた。最後は首差凌いで勝利したが、シーズン初戦、斤量差を考慮しても、今ひとつの内容だった。
その後はルイビルBCH(GⅡ・D8.5F)に出走した。ここでは、BCディスタフ3着後にアップルブロッサムH・オークローンBCSを勝ってきたヘリテージオブゴールド、キーパーヒル、ランパートHなど3連勝中のベラチアッラ、ローザロバータなどが相手となった。120ポンドの本馬が単勝オッズ1.9倍の1番人気、119ポンドのヘリテージオブゴールドが単勝オッズ3.2倍の2番人気、118ポンドのキーパーヒルが単勝オッズ7.5倍の3番人気となった。レースではベラチアッラが先頭を引っ張り、本馬は3~4番手の好位を追走した。しかしそのまま順位を最後まで上げられず、勝ったヘリテージオブゴールドから2馬身3/4差の4着に敗退。前走で退けた単勝オッズ11.4倍の5番人気馬ローザロバータ(112ポンドの斤量で2着)や、逃げた単勝オッズ8.9倍の4番人気馬ベラチアッラ(116ポンドの斤量で3着)にも先着されてしまった。
次走のフルールドリスH(GⅡ・D9F)でも、ヘリテージオブゴールド、ローザロバータとの顔合わせとなった。121ポンドのヘリテージオブゴールドが単勝オッズ1.9倍の1番人気、119ポンドの本馬が単勝オッズ2.7倍の2番人気、115ポンドのローザロバータが単勝オッズ4.8倍の3番人気となった。ベイリー騎手に代わって今回はコーリー・ナカタニ騎手が騎乗した本馬はスタートから逃げる作戦に出た。そして四角までは先頭を維持していたのだが、2番手を追いかけてきたヘリテージオブゴールドにかわされると抵抗できず、4馬身差をつけられた2着に敗退した。
その後はモリーピッチャーBCH(GⅡ・D8.5F)に向かった。フェアグラウンズオークスやコティリオンHなどの勝ち馬でアップルブロッサムH2着のルラヴィ、前年のガゼルH5着後にファーストフライトHを勝っていたカントリーハイドアウェイ、ベラチアッラ、前年のBCディスタフでは5着だったタップトゥミュージックなどが相手となった。118ポンドの本馬が単勝オッズ2倍の1番人気、116ポンドのルラヴィが単勝オッズ2.8倍の2番人気、114ポンドのカントリーハイドアウェイが単勝オッズ6.9倍の3番人気となった。今回もナカタニ騎手が騎乗した本馬は、2番手を走るルラヴィをマークするように3番手につけた。そしてルラヴィが仕掛けると同時に仕掛けて、直線で並びかけて叩き合いに持ち込んだ。しかし結局競り負けて、頭差の2着に終わった。
その後はデラウェアH(GⅢ・D10F)に出走。ルラヴィ、タップトゥミュージックなどが対戦相手となった。デビュー戦以来2度目のコンビとなるセラーズ騎手騎乗の本馬が119ポンドのトップハンデながらも単勝オッズ1.9倍の1番人気に支持され、117ポンドのルラヴィが単勝オッズ3.2倍の2番人気、116ポンドのタップトゥミュージックが単勝オッズ6.6倍の3番人気となった。ここではスタート後に中団につけ、道中は逃げるルラヴィをマークするように2番手につけた。しかし直線に入るとタップトゥミュージックに差されて、勝ったルラヴィから3馬身差の3着に敗退。このレースを最後に、4歳時5戦1勝の成績で競走馬を引退した。
血統
Silver Deputy | Deputy Minister | Vice Regent | Northern Dancer | Nearctic |
Natalma | ||||
Victoria Regina | Menetrier | |||
Victoriana | ||||
Mint Copy | Bunty's Flight | Bunty Lawless | ||
Broomflight | ||||
Shakney | Jabneh | |||
Grass Shack | ||||
Silver Valley | Mr. Prospector | Raise a Native | Native Dancer | |
Raise You | ||||
Gold Digger | Nashua | |||
Sequence | ||||
Seven Valleys | Road at Sea | Bald Eagle | ||
Hard-a-Lee | ||||
Proud Pied | Seven Corners | |||
Ancient History | ||||
Rokeby Rose | Tom Rolfe | Ribot | Tenerani | Bellini |
Tofanella | ||||
Romanella | El Greco | |||
Barbara Burrini | ||||
Pocahontas | Roman | Sir Gallahad | ||
Buckup | ||||
How | Princequillo | |||
The Squaw | ||||
Rokeby Venus | Quadrangle | Cohoes | Mahmoud | |
Belle of Troy | ||||
Tap Day | Bull Lea | |||
Scurry | ||||
All Beautiful | Battlefield | War Relic | ||
Dark Display | ||||
Parlo | Heliopolis | |||
Fairy Palace |
父シルヴァーデピュティはデピュティミニスターの初年度産駒で、現役時代は加国で走った。未勝利戦を6馬身差で圧勝し、続くスウィンフォードSも3馬身半差で楽勝したが、その後に右膝を故障したため、僅か2戦のみで底を見せないまま競走馬を引退した。引退後は加国ウインドフィールズファームにおいて種付け料2千ドルほどで種牡馬入りしていたが、21頭の初年度産駒から1993年のソヴリン賞最優秀3歳牝馬デピュティジェーンウエストなど5頭のステークスウイナーが出た上に、父デピュティミニスターの種牡馬成績が絶好調だった影響も受けて、8歳時の1993年に米国ケンタッキー州ブルックデールファームに移動。その後も本馬以外に活躍馬を複数送り出し、全盛期には種付け料7万5千ドルを誇る人気種牡馬となり、2008年9月に種牡馬を引退するまで米国の一流種牡馬として活躍した。2014年10月に29歳で他界している。産駒のステークスウイナーは75頭に達している。北米種牡馬ランキングは本馬が活躍した1999年の2位が最高。日本にも産駒が輸入されて活躍している。
母ロケビーローズは、ポール・メロン氏の生産・所有馬で、競走馬時代はフラワーボウル招待H(米GⅡ)・スーザンズガールHに勝つなど19戦7勝の成績を残した。競走馬引退後は繁殖入りしたが、活躍馬をなかなか送り出すことが出来ず、複数の所有者間を転々とし、18歳時の1995年11月のセリにおいて4万2千ドルで取引されてハイクレアファームにやって来た。この時にお腹の中にいたのが本馬だった。本馬以外には結局活躍馬を出せなかったが、本馬の半姉ガーデンシークレッツ(父タイムフォーアチェンジ)の子には、フォレストシークレッツ【エイコーンS(米GⅠ)・ランパートH(米GⅡ)・フォールズシティH(米GⅢ)】、ルーマーハズイット【ケンタッキーカップターフS(米GⅢ)】といった活躍馬がいる。
ロケビーローズの母ロケビーヴィーナスは現役成績16戦3勝。ロケビーローズ以外に活躍馬を産んではいないが、ロケビーローズの半妹ヴィーナスバウンド(父コンキスタドールシエロ)の孫にシンディーズヒーロー【デルマーデビュータントS(米GⅠ)】、フォーティナイナーズサン【クレメントLハーシュ記念ターフCS(米GⅠ)】が、ロケビーローズの半妹ゴーントゥヴィーナス(父ゴーンウエスト)の子にサウジポエトリー【ルイビルBCH(米GⅡ)・フルールドリスH(米GⅢ)】がいる。ロケビーヴィーナスの半兄には1969年の米年度代表馬アーツアンドレターズ【ベルモントS・メトロポリタンH・トラヴァーズS・ウッドワードS・ジョッキークラブ金杯・エヴァーグレイズS・ブルーグラスS・ジムダンディS・グレイラグH】がいる。近親にはワクォイト【ブルックリンH(米GⅠ)2回・ジョッキークラブ金杯(米GⅠ)】や、日本で活躍したホッカイルソー【日経賞(GⅡ)・オールカマー(GⅡ)】の名前も見られる。→牝系:F1号族⑦
母父トムロルフは当馬の項を参照。
競走馬引退後
競走馬を引退した本馬は米国ケンタッキー州ヒルンデールファームで繁殖入りした。2009年に米国競馬の殿堂入りを果たした。産駒の多くは牝馬であり、牡馬は初子のタイス(父エーピーインディ)と9番子のミッドナイトルー(父ミッドナイトリュート)くらいである。2015年時点における直子の競走成績は、競走馬になったのが9頭中3頭、そのうち勝ち上がり馬は42戦して5勝を挙げたタイスの1頭のみと甚だ振るわない。
しかし孫世代からは、不出走に終わった2番子の牝駒シルヴァービュレットウェイ(父ストームキャット)の子であるガヴァナーチャーリー【サンランドダービー(米GⅢ)】、同じく不出走に終わった3番子の牝駒シルヴァービュレットムーン(父ヴィンディケーション)の子であるシェイキンイットアップ【マリブS(米GⅠ)・サンヴィンセントS(米GⅡ)・ストラブS(米GⅡ)】といった活躍馬が登場している。そのため米国における血統論者の間では、隔世遺伝の代表例として語られることが多いようである。