クイル

和名:クイル

英名:Quill

1956年生

栗毛

父:プリンスキロ

母:クイックタッチ

母父:カウントフリート

米最優秀2歳牝馬に選ばれニューヨーク牝馬三冠競走のうち2競走も制したマルゼンスキーの祖母

競走成績:2~5歳時に米で走り通算成績26戦14勝2着4回3着2回

誕生からデビュー前まで

米国ケンタッキー州において、レジナルド・N・ウェブスター氏により生産・所有され、加国ケベック州出身のルシアン・ローリン調教師(後に米国三冠馬セクレタリアトを手掛ける)の管理馬となった。

競走生活(2歳時)

2歳7月にニューヨーク州ジャマイカ競馬場で行われたダート5.5ハロンの未勝利戦でデビューして、2着カレードーバーに1馬身半差で勝ち上がった。この11日後に同コースで行われた一般競走も、2着シットジスアウトに1馬身1/4差で勝利した。さらにサラトガ競馬場に向かい、スカイラヴィルS(D5.5F)に出走したが、リッチトラディションの3馬身1/4差3着に敗退。次走のスピナウェイS(D6F)でも、リッチトラディションの3馬身半差3着に敗れた。しかしベルモントパーク競馬場に場所を移して出走したダート6ハロンの一般競走では、ソロリティSの勝ち馬マミーディアを1馬身差の2着に抑えて勝利。そして8日後に同コースで行われたメイトロンS(D6F)では、リッチトラディションを3馬身3/4差の2着に下して勝利した。

さらに牝馬限定戦としては当時世界最高賞金額を誇っていたガーデニアSを目指して、ガーデンステート競馬場に移動。まずは本番1週間前のダート8ハロンの一般競走に出て、2着ジムソンウィードに2馬身3/4差で勝利。そして迎えたガーデニアS(D8.5F)では、2着レサカに半馬身差で勝利した。この年8戦6勝の成績を挙げた本馬は、セリマSなども勝ったリッチトラディションを抑えて米最優秀2歳牝馬に選ばれた。

競走生活(3歳時)

3歳時は、この一昨年にマザーグースSが創設された事により成立したニューヨーク牝馬三冠競走を目標とし、5月にジャマイカ競馬場で行われたダート8.5ハロンの一般競走から始動した。しかしここではマーメイドSの勝ち馬シャーリージョーンズの4馬身3/4差4着に敗れた。

しかしそれから9日後のエイコーンS(D8F)では、2着コブルに6馬身半差をつけて圧勝した。さらにマザーグースS(D9F)も、ブラックアイドスーザンSの勝ち馬トルエンを3馬身半差の2着に破って勝利。そしてCCAオークス(D12F)で史上初のニューヨーク牝馬三冠馬達成に挑んだが、レサカの半馬身差2着に敗れ、偉業達成は成らなかった。

次走のデラウェアオークス(D9F)では、勝ったレサカから10馬身差、2着シルヴァースプーンからも8馬身差をつけられた5着と完敗を喫し、その後は長期休養入りした。ニューヨーク牝馬三冠競走のうち2競走を勝利した本馬だが、3歳時の成績は5戦2勝に終わった。同年の米最優秀3歳牝馬には、サンタアニタダービーやシネマHを制しケンタッキーダービーにも挑戦したシルヴァースプーン、モンマスオークスでシルヴァースプーンを破りスピンスターSも制したロイヤルネイティヴの2頭が選ばれ、本馬は選外だった。

競走生活(4歳時)

4歳時は5月にアケダクト競馬場で行われたダート8ハロンの一般競走から始動して、2着メティキュラスに3馬身半差で順当に勝利した。次走のトップフライトH(D8.5F)では、ロイヤルネイティヴ、ケンタッキーオークス・サンタモニカH・サンアントニオH・サンタマルガリータ招待H・イングルウッドH・ラスフローレスHを勝っていた1歳年上のビッグブラッシュとの対戦となった。ここではロイヤルネイティヴが勝利を収め、本馬は1馬身半差の2着だった。その後はモンマスパーク競馬場ダート8.5ハロンの一般競走を3馬身半差で完勝し、その1週間後に同コースで行われたモリーピッチャーH(D8.5F)に向かった。このレースには、ロイヤルネイティヴに加えて、アラバマS・マスケットH・ダイアナH・ベルデイムH・レディーズHを勝っていた前年の米最優秀ハンデ牝馬テンプテッドも参戦してきて、チャンピオン牝馬3頭による勝負となった。しかし結果は呆気なく、ロイヤルネイティヴが完勝を収め、本馬は4馬身差の2着、テンプテッドは4着に終わった。

2週間後のニューカッスルS(D8.5F)ではテンプテッドとの対戦となった。今回は本馬が2着インディアンメイドに1馬身1/4差で勝利を収め、テンプテッドは3着だった。さらに1週間後に出走したデラウェアH(D10F)では、2着ロイヤルネイティヴに9馬身差をつけるという見事な勝利を収めた。その後に出走したダイアナH(D9F)では128ポンドの斤量が厳しかったか、テンプテッドの7馬身差2着に敗退した。4歳時の成績は7戦4勝2着3回という優秀なものだったが、米最優秀ハンデ牝馬の座はトップフライトHなどステークス競走を数多く勝っていたロイヤルネイティヴのものとなった。

競走生活(5歳時)

5歳時も現役を続行し、6月にベルモントパーク競馬場で行われた一般競走から始動したが、勝った前年のテストS3着馬インプローヴから14馬身差をつけられ、9頭立ての8着と惨敗した。次走のヴェイグランシーH(D7F)では、勝ったサングリントから7馬身差をつけられた14着最下位に沈んでしまった。その2週間後にはベルモントパーク競馬場芝7ハロンの一般競走に出走した。最初で最後の芝競走だったが、3/4馬身差で勝利した。次走のアケダクト競馬場ダート8ハロンの一般競走では、アルキビアデスS・スピンスターS・デラウェアオークスの勝ち馬ラッシュステートメントを3/4馬身差の2着に退けて勝利した。しかしニューカッスルS(D8.5F)では、この年の米最優秀ハンデ牝馬に選ばれるエアマンズガイドに12馬身差をつけられて11着最下位に大敗。能力の衰えは歴然としていた。翌週のデラウェアH(D10F)でエアマンズガイドの16馬身差9着に敗れたところで、競走馬生活にピリオドを打った。5歳時の成績は6戦2勝だった。

血統

Princequillo Prince Rose Rose Prince Prince Palatine Persimmon
Lady Lightfoot
Eglantine Perth
Rose de Mai
Indolence Gay Crusader Bayardo
Gay Laura
Barrier Grey Leg
Bar the Way
Cosquilla Papyrus Tracery Rock Sand
Topiary
Miss Matty Marcovil
Simonath
Quick Thought White Eagle Gallinule
Merry Gal
Mindful Minoru
Noble Martha
Quick Touch Count Fleet Reigh Count Sunreigh Sundridge
Sweet Briar
Contessina Count Schomberg
Pitti
Quickly Haste Maintenant
Miss Malaprop
Stephanie Stefan the Great
Malachite
Alms St. Brideaux St. Germans Swynford
Hamoaze
Panache Broomstick
Panasine
Bonus All Gold Persimmon
Dame d'Or
Remembrance Broomstick
Forget

プリンスキロは当馬の項を参照。

母クイックタッチは現役成績27戦5勝。本馬の半姉ソーサリス(父スライドルール)【ポリードルモンドS】、半姉ケープレット(父ボレロ)【フリゼットS】、半弟カウントアンバー(父アンビオリクス)【ナラガンセットスペシャルH】と本馬を含めて4頭のステークス競走勝ち馬の母となった優秀な繁殖牝馬だった。牝系子孫もかなり発展しており、ケープレットの子にトラフィック【ホープフルS】、孫にゲイスタイル【サンタバーバラH(米GⅠ)・サンタマリアH(米GⅡ)2回・サンタモニカH(米GⅡ)】、ズーナクア【オークリーフS(米GⅠ)】、曾孫にスピットカール【アラバマS(米GⅠ)】、日本で走ったトウカイトリック【阪神大賞典(GⅡ)・ステイヤーズS(GⅡ)・ダイヤモンドS(GⅢ)】、玄孫世代以降にシャルジュダフェーレ【モルニ賞(仏GⅠ)】、フェアジャグ【ゴールデンジュビリーS(英GⅠ)】、フィネガンズウェイク【ターフクラシックS(米GⅠ)】、日本で走ったエイシンデピュティ【宝塚記念(GⅠ)】などが、本馬の半妹ノーブルタッチ(父クラフティアドミラル)の曾孫にクアリーク【デモワゼルS(米GⅠ)】、さらにその孫に2005年のエクリプス賞最優秀3歳牡馬アフリートアレックス【プリークネスS(米GⅠ)・ベルモントS(米GⅠ)・ホープフルS(米GⅠ)】が、本馬の全妹キルティングの孫にプライマル【ドンH(米GⅠ)】、日本で走ったロードアックス【ラジオたんぱ杯三歳S(GⅢ)】がいる。

クイックタッチの母アームスはピムリコオークスの勝ち馬で、アームスの半兄には米国顕彰馬トゥエンティグランド【ケンタッキーダービー・ベルモントS・カウディンS・ウッドメモリアルS・ドワイヤーS・トラヴァーズS・ジョッキークラブ金杯・ローレンスリアライゼーションS】がいる。→牝系:F5号族①

母父カウントフリートは当馬の項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は米国で繁殖入りした。本馬は繁殖牝馬としての成績も素晴らしく、多くの活躍馬を産んだ。主な産駒は、3番子の牡駒ワンフォーオール(父ノーザンダンサー)【パンアメリカンS・サンセットH・加国際ナショナルCSS】、7番子の牡駒コーカサス(父ニジンスキー)【愛セントレジャー(愛GⅠ)・サンセットH(米GⅠ)・サンルイレイS(米GⅠ)・マンハッタンH(米GⅡ)・アーケイディアH(米GⅢ)】、10番子の牝駒ラストフェザー(父ヴェイグリーノーブル)【ムシドラS(英GⅢ)・3着英オークス(英GⅠ)】である。

牝系子孫もかなり発展している。まず、初子の牝駒ファーストフェザー(父ファーストランディング)の子に1971年のエクリプス賞最優秀芝馬ランザガントレット【ワシントンDS国際S・マンノウォーS・ユナイテッドネーションズH・ガーデンステートS・タイダルH・ケリーオリンピックH・ボーリンググリーンH】、ヘッドオブザリヴァー【エヴァーグレイズS】、ミュージックオブタイム【ジムダンディS(米GⅢ)・スタイヴァサントH(米GⅢ)】が、孫にイングリッシュスプリング【プリンスオブウェールズS(英GⅡ)】、ダンスオブライフ【マンノウォーS(米GⅠ)・タイダルH(米GⅡ)】が、曾孫に日本で走ったブルーロバリー【東京プリンセス賞】、サンキューウィン【羽田盃】が、玄孫にフラグラントミックス【サンクルー大賞(仏GⅠ)】、アルピーヌローズ【ジャンロマネ賞(仏GⅠ)】、アロウ【クイーンズランドオークス(豪GⅠ)】、日豪で走ったハナズゴール【オールエイジドS(豪GⅠ)・チューリップ賞(GⅢ)・京都牝馬S(GⅢ)】がいる。

2番子の牝駒トゥワイル(父スワップス)の孫には、サンプシャス【アーリントンクラシックS(米GⅠ)】がいる。

そして日本に繁殖牝馬として輸入された5番子の牝駒シル(父バックパサー)の子には言わずと知れたマルゼンスキー【朝日杯三歳S・日本短波賞】が、曾孫にはブルーラッド【浦和記念(GⅡ)】、ゴウゴウキリシマ【シンザン記念(GⅢ)】、レッツゴーキリシマ【関屋記念(GⅢ)】、マルノマンハッタン【浦和桜花賞】などがいる。

8番子の牝駒エウリアンテ(父ニジンスキー)の子には、エアディスタンゲ【オマール賞(仏GⅢ)】、イースタンドーン【オマール賞(仏GⅢ)】、バーカーヴィル【フェイエットS(米GⅡ)・トロピカルパークH(米GⅢ)】が、孫にヴェットーリ【仏2000ギニー(仏GⅠ)】、ヒーローズトリビュート【ピーターパンS(米GⅡ)・ガルフストリームパークH(米GⅡ)】が、曾孫に日本で走ったナリタキングオー【スプリングS(GⅡ)・京都新聞杯(GⅡ)・共同通信杯四歳S(GⅢ)】、マイネルモルゲン【ダービー卿チャレンジトロフィー(GⅢ)・京成杯オータムH(GⅢ)2回】がいる。

ラストフェザーの孫には、2010年のエクリプス賞最優秀2歳牝馬オーサムフェザー【BCジュヴェナイルフィリーズ(米GⅠ)・ガゼルS(米GⅠ)】が、曾孫にバジスタ【ブエノスアイレス州大賞(亜GⅠ)】、日本で走ったシルクフェイマス【日経新春杯(GⅡ)・京都記念(GⅡ)・アメリカジョッキークラブC(GⅡ)】などがいる。

こうして世界的な名牝系の祖となった本馬だが、その没年は調べても分からなかった。最後の子であるラストフェザーが産んだのが1979年、23歳時であり、そしてそのラストフェザー(意味は英語で「最後の羽」)の名前からして、ラストフェザーを産んで間もなく他界したのではないかと推察される。

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