コートスター
和名:コートスター |
英名:Kauto Star |
2000年生 |
騙 |
鹿毛 |
父:ヴィレッジスター |
母:コートレルカ |
母父:ポールテチェンヌ |
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キングジョージⅥ世チェイス5勝を筆頭に数々の大競走を勝ち史上唯一の長距離チェイス三冠を達成した1970年代以降の欧州長距離チェイス界最強馬 |
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競走成績:3~12歳時に仏英愛で走り通算成績41戦23勝2着7回3着4回(うち障害40戦23勝2着6回3着4回) |
誕生からデビュー前まで
アンリ・オベール夫人により生産された仏国産馬で、クロード・コーエン氏の所有馬となり、仏国セルジュ・フシェ調教師に預けられた。
競走生活(02/03・03/04シーズン)
3歳3月に仏国ボルドールブスカ競馬場で行われた平地競走ブルノジエンヌ賞(T2900m)でファブリス・バラオ騎手を鞍上にデビューして、スターグローリーの短頭差2着。翌4月に仏国アンギャン競馬場で出走したハードル競走ブレバン賞(3000m)が障害デビュー戦となった。前走と同じくバラオ騎手を鞍上に、2着ロビンデノナンに5馬身差をつけて勝利した。この後も本馬はしばらくハードル分野を走ることになる。
次走は5月に仏国オートゥイユ競馬場で行われたゴーアヘッド賞(3000m)となった。今回もバラオ騎手とコンビを組んだ本馬は、2着ファイターキャットに頭差で勝利した。2002/03シーズンの成績は3戦2勝だった。
翌03/04シーズンは、9月にオートゥイユ競馬場で行われたロベールルジュヌ賞(3600m)から始動した。しばらく主戦を務めることになるジェローム・ギエネウフ騎手を鞍上に、2着イルマニフィコに3/4馬身差をつけて勝利した。次走は10月にオートゥイユ競馬場で行われたジョルジュドタルーエロワ賞(仏GⅡ・3600m)となったが、ここでは落馬競走中止となった(勝ち馬マイアエリア)。次走は11月にオートゥイユ競馬場で行われたカンバセール賞(仏GⅡ・3600m)となった。今回は完走したものの、勝ったマイアエリアに10馬身差をつけられて2着に敗れた。
その後はしばらくレースに出ず、翌年3月にオートゥイユ競馬場で行われたジャックダンディ賞(仏GⅢ・3600m)で復帰した。しかしレースはリヴァーチャームという馬が2着マイアエリアに6馬身差をつけて圧勝し、本馬はマイアエリアからさらに4馬身差の3着に終わった。次走は同月末にオートゥイユ競馬場で行われたペパンヴァスト賞(仏GⅢ・3600m)となった。今回はマイアエリアが2着リヴァーチャームに15馬身差をつけて圧勝し、先行して失速した本馬はリヴァーチャームからさらに4馬身差の5着に終わった。
次走は翌4月にオートゥイユ競馬場で行われたアマドゥ賞(仏GⅡ・3900m)となった。このレースには、マイアエリア、リヴァーチャームに加えて、英国のGⅡ競走サミットジュニアハードル・ジュヴェナイルノービスハードルを勝っていたモンデュールという強敵も出走してきた。今回は後方からの競馬を試みた本馬だが、末脚不発に終わり、2着モンデュールに15馬身差をつけて圧勝したマイアエリアから19馬身差の3着に敗れた(5着リヴァーチャームには9馬身先着した)。
次走は5月にオートゥイユ競馬場で行われたロンシャン賞(仏GⅢ・3900m)となった。対戦相手は、マイアエリア、モンデュール、リヴァーチャームなどで、前走とたいして変わらず、本馬は単勝オッズ37倍の低評価だった。ところがここで本馬の秘められた能力がようやく開花。先行して最終障害飛越と同時に先頭に立つと、ゴールまでの間に後続馬をちぎり捨て、2着リヴァーチャームに8馬身差、3着モンデュールにさらに1馬身半差、5着マイアエリアにはさらに2馬身1/4差をつけて勝利。今まで散々に負かされてきたマイアエリアをようやく破ることが出来た。斤量はこの4頭とも似たり寄ったり(最大でも1kg差)だったから、斤量に恵まれての勝利では無かった。この勝利をビデオ映像で見た英国の名障害調教師ポール・ニコルズ師は、本馬を自分で手掛けてみたいと思ったという。03/04シーズンの成績は7戦2勝だった。
競走生活(04/05シーズン)
04/05シーズンが始まるまでの間に、本馬はニコルズ師の薦めを受けた英国の馬主クライヴ・D・スミス氏により40万ユーロで購入され、ニコルズ厩舎に転厩して、英愛のナショナルハントを主戦場とすることになった。また、今まではハードル分野を走っていたが、ここからはスティープルチェイス分野に転向した。
まずは12月にニューベリー競馬場で行われたウエスタンデイリープレスクラブノービスチェイス(18.5F)から始動した。主戦となるルビー・ウォルシュ騎手と初コンビを組んだ本馬と、愛チャンピオンハードルの勝ち馬フォアマンの2頭が並んで単勝オッズ3倍の1番人気に支持された。レースでは中団待機策から第13障害で先頭に立つと、残り2つの障害も難なく攻略し、2着フォアマンに9馬身差をつけて勝利した。
次走は年明け1月にエクセター競馬場で行われたウェザーバイ銀行ノービスチェイス(17.5F)となった。対戦相手は2頭しかおらず、本馬が単勝オッズ1.18倍の1番人気に支持された。レースは単勝オッズ7倍の2番人気馬ゴールドブルックが逃げて、本馬は2番手を追走。やがてゴールドブルックが失速すると本馬が第8障害で先頭に立ち、後続に12馬身差をつけて勝利目前だった。ところが第11障害で飛越に失敗して落馬。後続との差はあったためにウォルシュ騎手が再騎乗して再び走り出したが、最終障害でも落馬こそしなかったが飛越に失敗。それでもゴール直前までは先頭だったのだが、単勝オッズ21倍の最低人気馬ミストラルデラクールに際どくかわされて短頭差の2着に敗退した。しかし落馬・再騎乗して勝ち負けに持ち込んだのはある意味凄いことである。
しかし最終障害で飛越に失敗した際に、本馬の脚の骨にひびが入ってしまった。それを耳にした英国動物虐待防止協会は、落馬した馬への再騎乗を禁止するべきだとナショナルハントに圧力をかけ始めた。英国動物虐待防止協会は事あるごとに競馬の内容その他に対して意見具申しており、その内容には説得力があるものもあればないものもある。再騎乗と本馬の負傷には直接の因果関係は無い(負傷したのは落馬した際ではないため)ので、この申し立てにはあまり説得力はないと筆者は思うのだが、後の2009年にナショナルハントは落馬した馬への再騎乗を禁止した。それを知ったウォルシュ騎手は「私達の判断を信用していない」として激怒したそうである。
それはさておき、負傷のために04/05シーズンはこれが最後のレースとなり、このシーズンの成績は2戦1勝だった。
競走生活(05/06シーズン)
05/06シーズンは、11月にエクセター競馬場で行われたハルドン金杯(英GⅡ・17.5F)から始動した。対戦相手は、GⅠ競走マグフルノービスチェイスを16馬身差で勝っていたアシュレイブルック、GⅡ競走キングメーカーノービスチェイスの勝ち馬カダウント、GⅡ競走レンドルシャムハードル・GⅢ競走コーラルC・ボーナスプリント金杯の勝ち馬モンカーホスティンなどだった。アシュレイブルックが単勝オッズ2.75倍の1番人気、本馬が単勝オッズ4倍の2番人気、カダウントが単勝オッズ9倍の3番人気となった。レースはアシュレイブルックが先頭を爆走し、本馬は抑え気味のスタートからレース中盤で2番手に押し上げて、アシュレイブルックを追撃した。第9障害でアシュレイブルックに追いついたのだが、ここで本馬のさらに後方から来た単勝オッズ11倍の5番人気馬モンカーホスティンがやってきて2頭をまとめて抜き去っていった。本馬はなんとか食い下がろうとしたが、結局追いつけずに、勝ったモンカーホスティンから4馬身差をつけられて2着に敗れた。
次走は12月にサンダウンパーク競馬場で行われたティングルクリークチェイス(英GⅠ・15.5F)となった。対戦相手は、ハルドン金杯勝利後に2戦していずれも2着だったモンカーホスティン、前走で本馬から9馬身差の3着だったアシュレイブルック、前シーズン最後のレースだったクイーンマザーチャンピオンチェイスで4着に敗れるまでは5連勝中だったワンウェイなどだった。本馬とアシュレイブルックが並んで単勝オッズ3.5倍の1番人気、ワンウェイが単勝オッズ5倍の2番人気、モンカーホスティンが単勝オッズ5.5倍の3番人気となった。ここではウォルシュ騎手では無く、ミック・フィッツジェラルド騎手が本馬に騎乗した。レースはやはりアシュレイブルックが先頭を爆走し、本馬も離されずに付いていった。今回、後方待機馬勢はいつまで経っても迫ってこず、結局は1番人気2頭の一騎打ちとなった。第11障害飛越と同時に本馬がアシュレイブルックをかわして先頭に立ち、残り2つの障害も無事に飛越した。最後の平地では、アシュレイブルックが本馬との差を縮め返してきたが、本馬が凌ぎ切り、アシュレイブルックを1馬身半差の2着に、ワンウェイをさらに8馬身差の3着に破って勝利した。
次走は年明け3月のチェルトナムフェスティバルのメイン競走の1つクイーンマザーチャンピオンチェイス(英GⅠ・16F)となった。対戦相手は、GⅠ競走ロイヤルボンドノービスハードル・ヘラルドチャンピオンノービスハードル・シェルチャンピオンハードル・デニーゴールドメダルノービスチェイス・アークルチャレンジトロフィー・ソードレスタウンカップノービスチェイス・ティングルクリークチェイス2回・メリングチェイス2回・クイーンマザーチャンピオンチェイス・GⅡ競走モルジアナハードル・ディセンバーフェスティバルハードル・フォートリアチェイス2回・パディパワーダイアルAベットチェイス2回なども勝っていた3年前と前年の同競走覇者モスコーフライヤー、GⅡ競走クローヴチェイス・GⅢ競走ジョニーヘンダーソングランドアニュアルチェイスチャレンジC ・レッドラムチェイスの勝ち馬フォタアイランド、GⅠ競走デニーゴールドメダルノービスチェイス・パディパワーダイアルAベットチェイス・GⅡ競走グローヴチェイス・ニューランズチェイス・フォートリアチェイス・ヒリーウェイチェイス・コテージチェイスの勝ち馬セントラルハウス、GⅠ競走ロイヤルボンドノービスハードル・GⅡ競走バリー&サンドラケリー記念ノービスハードル・ジョンズタウンノービスハードル・パディフィッツパトリック記念ノービスチェイス・キンロックブレイチェイスの勝ち馬ニューミルなどだった。ウォルシュ騎手が鞍上に復帰した本馬が単勝オッズ3倍の1番人気、フォタアイランドが単勝オッズ5倍の2番人気、既に12歳だったモスコーフライヤーが単勝オッズ6倍の3番人気となった。しかし本馬は先行するも第3障害で落馬競走中止。レースは単勝オッズ17倍の6番人気馬ニューミルが2着フォタアイランドに9馬身差をつけて圧勝した。05/06シーズンはこれが最後のレースで、このシーズンの成績は3戦1勝だった。
競走生活(06/07シーズン)
06/07シーズンは10月にエイントリー競馬場で行われたオールドローンチェイス(英GⅡ・20F)から始動した。それほど実績がある対戦相手はおらず、本馬が単勝オッズ2倍の1番人気に支持された。レースでは馬群の中団を慎重に進み、第12障害を飛越した直後から加速を開始。第14障害飛越と同時に先頭に立つと、残り2つの障害も難なく飛越。そのまま後続馬を引き離し、2着となった単勝オッズ7.5倍の3番人気馬アーマタークに21馬身差をつけて大圧勝した。
次走は11月にヘイドックパーク競馬場で行われたベットフェアチェイス(英GⅠ・23F)となった。本馬が単勝オッズ2.1倍の1番人気、GⅡ競走ディセンバーノービスチェイスの勝ち馬ラミが単勝オッズ4.5倍の2番人気、GⅠ競走エリクソンチェイス・ヘネシーコニャック金杯2回・ジョンダーカン記念パンチェスタウンチェイス・パンチェスタウンハイケネン金杯・JNワインチャンピオンチェイス2回・レクサスチェイス2回・GⅡ競走モリスオイルチェイス・ヒリーウェイチェイス・GⅢ競走オコンネルトランスポートヒリーウェイチェイスの勝ち馬ビーフオアサーモンが単勝オッズ5倍の3番人気、GⅠ競走ベットフェアチェイスの勝ち馬キングスクリフが単勝オッズ8倍の4番人気となった。レースは単勝オッズ26倍の最低人気馬オリーマゲーンが先頭を引っ張り、本馬は抑え気味に入った。そして第11障害を飛越した頃から少しずつ加速していった。第17障害を飛越した時点で2番手であり、最終第18障害手前で先頭に立った。そして最終障害を無事に飛越すると一気に後続を突き放し、2着ビーフオアサーモンに17馬身差をつけて大圧勝した。
次走は連覇がかかる12月のティングルクリークチェイス(英GⅠ・15.5F)となった。本馬が単勝オッズ1.44倍の1番人気、GⅠ競走アークルチャレンジトロフィー・GⅡ競走ブルースクウェアカジノノービスチェイスの勝ち馬ボイポルウステデスが単勝オッズ5倍の2番人気、本馬が競走中止となったクイーンマザーチャンピオンチェイスで4着だったセントラルハウスが単勝オッズ10倍の3番人気、同2着だったフォタアイランドが単勝オッズ19倍の4番人気となった。レースは単勝オッズ34倍の5番人気馬デンプシーが後続を引き離す逃げを打ち、本馬は馬群の好位を進んだ。第8障害でデンプシーが落馬して競走中止となると、本馬が押し出されて先頭に立った。いったんはボイポルウステデスに先頭を譲って2番手に下げると、第11障害で先頭を奪還。残り2つの障害を何とか突破すると、2着ボイポルウステデスに7馬身差をつけて勝利を収め、同競走2連覇を飾った。
次走は同月末にケンプトンパーク競馬場で行われたキングジョージⅥ世チェイス(英GⅠ・24F)となった。本馬が単勝オッズ1.62倍の1番人気、GⅡ競走コロロルハードル・リヴァプールハードル・フューチャーチャンピオンノービスチェイスの勝ち馬モネズガーデンが単勝オッズ6倍の2番人気、GⅡ競走ヘンリーⅧ世ノービスチェイス・ピーターボローチェイスの勝ち馬レーシングデーモンが単勝オッズ8倍の3番人気、パディパワー金杯・ボイルスポーツ金杯とGⅢ競走を2連勝してきたエキゾチックダンサーが単勝オッズ10倍の4番人気となった。本馬の走り方は既に確立されており、レース序盤はやや抑え気味に馬群の中団を進み、レース中盤から先頭との差を詰めにかかり、レース終盤で先頭に立つというものだった。まったくそのとおりの走りを見せた本馬は第16障害で先頭に立つと、最終第18障害を飛越して以降も力強く走り、2着エキゾチックダンサーに8馬身差をつけて勝利した。
次走は翌1月にニューベリー競馬場で行われたエイオンチェイス(英GⅡ・23.5F)となった。本馬が単勝オッズ1.22倍の1番人気、2か月前のベットフェアチェイスで本馬から18馬身差の3着だったラミが単勝オッズ7倍の2番人気で、他の出走馬4頭は単勝オッズ21倍以上の人気薄だった。今回も馬群の中団を進んだ本馬は、最終障害の手前で先頭に立つと、最終障害を無事に飛越。しかしここで最後方からの追い込みに賭けたラミがどんどん差を縮めてきて、2頭がほぼ同時にゴールインした。しかし本馬が凌ぎ切っており、首差で勝利した。辛勝だったが、斤量は本馬のほうがラミより10ポンド重かったから、止むを得ない面もあった。
次走はチェルトナムフェスティバルの花形競走チェルトナム金杯(英GⅠ・26.5F)となった。同一シーズンにベットフェアチェイス・キングジョージⅥ世チェイス・チェルトナム金杯の3競走を制覇する事を、“長距離チェイス三冠(Stayers Chase Triple Crown)”と呼び、05/06シーズンからはこれを達成した馬には100万ドルのボーナスが支給される事になっており、本馬陣営はこれを狙ったのだった。
対戦相手は、ラミ、キングジョージⅥ世チェイス2着後にGⅡ競走ベットフェアボウルチェイスを13馬身差で勝っていたエキゾチックダンサー、ベットフェアチェイス2着後にGⅠ競走ヘネシーコニャック金杯を勝っていたビーフオアサーモン、GⅠ競走レクサスチェイス・GⅡ競走アリーナレジャーPLCノービスチェイス・ユニコインホームズディッパーノービスチェイスの勝ち馬ザリスナー、GⅢ競走ヘネシーコニャック金杯の勝ち馬ステートオブプレイ、GⅢ競走サーボコンピューターサービストロフィーの勝ち馬マイウィル、GⅡ競走ウインターノービスハードル・ブリットインシュランスノービスハードル・プレステージノービスハードル・GⅢ競走フルーレ賞の勝ち馬ネプチューンコロンジュ、GⅡ競走タウトンノービスチェイス・GⅢ競走ウェルシュナショナルの勝ち馬ハルコンジェネラーダイズなどだった。本馬が単勝オッズ2.25倍の1番人気、エキゾチックダンサーが単勝オッズ5.5倍の2番人気、ステートオブプレイが単勝オッズ9倍の3番人気、ザリスナーが単勝オッズ15倍の4番人気、ラミ、ビーフオアサーモン、マイウィルの3頭が並んで単勝オッズ17倍の5番人気となった。
スタートが切られると単勝オッズ41倍の12番人気馬キングスクリフが先頭に立ち、それをビーフオアサーモンがかわしていった。本馬はいつもよりさらに後方からレースを進めていた。前との差を縮めにかかったのは第13障害の辺りからで、第19障害では先頭を射程圏内に捉えていた。そして最後から2番目の第21障害を飛越すると同時に先頭に立った。最終障害で少し飛越に失敗したが、それでも体勢を立て直してゴールへと突き進み、2着エキゾチックダンサーに2馬身半差で勝利。
これで完全にチェイス界の頂点に立つと同時に、史上初の長距離チェイス三冠達成馬として100万ドルのボーナスも手中に収めた。06/07シーズンはこれが最後のレースで、このシーズンの成績は6戦全勝と完璧だった。
競走生活(07/08シーズン)
07/08シーズンは前年と同じく10月のオールドローンチェイス(英GⅡ・20F)から始動した。対戦相手は、前年のキングジョージⅥ世チェイスで本馬の6着に敗れた後にアスコットチェイス・メリングチェイスとGⅠ競走を2勝していたモネズガーデン、チェルトナム金杯2着後にGⅡ競走ベットフェアボウルチェイスを勝っていたエキゾチックダンサー、一昨年のティングルクリークチェイスで本馬の2着に敗れた後は順調さを欠いていたアシュレイブルックの3頭だった。本馬が単勝オッズ2.1倍の1番人気、モネズガーデンが単勝オッズ3.25倍の2番人気、エキゾチックダンサーが単勝オッズ5.5倍の3番人気、アシュレイブルックが単勝オッズ6.5倍の4番人気だった。スタートが切られるとアシュレイブルックが先頭に立ち、モネズガーデンが2番手、本馬が3番手を進んだ。第13障害でアシュレイブルックが落馬競走中止となると、モネズガーデンが自動的に先頭に立ち、そのままラストスパートをかけた。本馬も追撃を開始したが、最後から2番目の第15障害で飛越直後に体勢を崩すなど手間取ってしまい、結局追いつけず、勝ったモネズガーデンから1馬身半差の2着に敗れた(3着エキゾチックダンサーは本馬から20馬身後方だった)。
次走は2連覇がかかる翌11月のベットフェアチェイス(英GⅠ・23F)となった。対戦相手は、エキゾチックダンサー、ビーフオアサーモン、それに、GⅠ競走ロングウォークハードル・ワールドハードル・アークルチャレンジトロフィー・GⅡ競走ナショナルスピリットハードル・ディッパーノービスチェイス・ボーナスプリントノービスチェイスの勝ち馬マイウェイデュソルゼンなどだった。本馬が単勝オッズ1.8倍の1番人気、マイウェイデュソルゼンが単勝オッズ3.75倍の2番人気、エキゾチックダンサーが単勝オッズ9倍の3番人気となった。ウォルシュ騎手が肩の脱臼で騎乗出来なかったため、本馬にはサム・トーマス騎手が騎乗した。スタートが切られると単勝オッズ21倍の5番人気馬オリーマゲーンが先頭に立ったが、本馬は掛かり気味に2番手を進んだ。飛越も全体的に上手くいかなかったが、それでも第12障害で先頭に立つと、残り6つの障害も辛うじて突破。そこへエキゾチックダンサーが追い上げてきて、2頭の激しい一騎打ちとなった。3着ビーフオアサーモンを18馬身も引き離す2頭の戦いは、本馬が半馬身差で勝利を収めた。かなりちぐはぐな内容だったが、それでも同競走2連覇を達成した。
次走はこれも2連覇がかかるキングジョージⅥ世チェイス(英GⅠ・24F)となった。対戦相手は、エキゾチックダンサー、前走5着のマイウェイデュソルゼン、前年の同競走で本馬の3着した後にGⅡ競走ピーターボローチェイスを30馬身差(ただし2頭立て)で勝っていたレーシングデーモン、GⅠ競走アスコットチェイス・GⅡ競走レイノルズタウンノービスチェイス・シルヴァートロフィー・ベット365チャーリーホールチェイス・GⅢ競走パディパワー金杯の勝ち馬アワーヴィックなどだった。ウォルシュ騎手が鞍上に戻ってきた本馬が単勝オッズ1.67倍の1番人気、エキゾチックダンサーが単勝オッズ5.5倍の2番人気、マイウェイデュソルゼンが単勝オッズ7.5倍の3番人気、レーシングデーモンが単勝オッズ11倍の4番人気、アワーヴィックが単勝オッズ13倍の5番人気となった。スタートが切られるとアワーヴィックが先頭を引っ張り、今回の本馬は抑え気味に入った。そして第11障害飛越後から徐々に加速し、第14障害で先頭に立った。残り4つの障害も難なく飛越すると、2着に粘ったアワーヴィックに11馬身差をつけて圧勝し、同競走2連覇を果たした。
次走は翌年1月にアスコット競馬場で行われたアスコットチェイス(英GⅠ・21F)となった。対戦相手は、3か月前のオールドローンチェイスで本馬を破ったモネズガーデン、前走4着のレーシングデーモン、インディペンデント紙ノービスチェイス・ヘンリーⅧ世ノービスチェイスとGⅡ競走2勝のフェアアロングなどだった。本馬が単勝オッズ1.36倍の1番人気、モネズガーデンが単勝オッズ7倍の2番人気、レーシングデーモンが単勝オッズ8.5倍の3番人気、フェアアロングが単勝オッズ15倍の4番人気となった。スタートが切られると単勝オッズ101倍の7番人気馬シーユーサムタイムが先頭に立ち、本馬は馬群の中団を進んだ。第13障害飛越後から前との差を詰めにかかり、第15障害飛越と同時に先頭に立った。残り2つの障害も楽々と飛越すると、ゴール前では流して走り、2着モネズガーデンに8馬身差をつけて勝利した。
しかしこのレース後に本馬は少し脚を引きずる仕草が見られた。理由は骨や健の問題では無く、何かの細菌が感染していたためだったらしく、その後の競走生活には特に影響は無かったようである。
その後は2年連続の長距離チェイス三冠制覇を目指してチェルトナム金杯(英GⅠ・26.5F)に向かった。対戦相手は11頭おり、その中にはエキゾチックダンサーや、前年の同競走8着後にGⅠ競走パンチェスタウンギネス金杯を勝っていたネプチューンコロンジュも含まれていた。しかし何といっても最大の強敵は、GⅠ競走チャローノービスハードル・ロイヤル&サンアライアンスチェイス・レクサスチェイス・GⅡ競走バークシャーノービスチェイス・エイオンチェイス・GⅢ競走ヘネシーコニャック金杯の勝ち馬デンマンだった。本馬と同厩(馬主は異なる)のデンマンは14戦13勝で、ロイヤル&サンアライアンスノービスハードルで2着に負けた以外は全て勝っており、目下8連勝中だった。ニコルズ師は2頭がかち合わないようにレース選択をしてきたのだが、馬主が異なる2頭だけに、英国定量障害競走の最高峰チェルトナム金杯では対戦させざるを得なくなったようである。本馬が単勝オッズ1.91倍の1番人気、デンマンが単勝オッズ3.25倍の2番人気、エキゾチックダンサーが単勝オッズ9.5倍の3番人気となった。
スタートが切られると単勝オッズ26倍の6番人気馬ネプチューンコロンジュが先頭に立ち、デンマンは先行。そして本馬も掛かり気味に先行した。レース中盤でデンマンが先頭に立ったが、本馬は人馬の呼吸が合っておらず、飛越の失敗がしばしば見られた。それでも辛うじて最終障害を飛越してきたが、既に先頭のデンマンとの差は逆転不能だった。ゴール直前でネプチューンコロンジュを僅かにかわして2着に上がるのが精一杯で、勝ったデンマンに7馬身差をつけられて2着に敗れ、2年連続長距離チェイス三冠制覇は成らなかった。
次走は翌4月にエイントリー競馬場で行われたトートスポーツボウルチェイス(英GⅡ・25F)となった。前走で5着だったエキゾチックダンサー、本馬の2着に敗れたアスコットチェイスから直行してきたモネズガーデン、キングジョージⅥ世チェイス2着後にGⅠ競走ライアンエアーチェイスを勝っていたアワーヴィック、GⅡ競走レイノルズタウンノービスチェイス・GⅢ競走レーシングポストチェイスの勝ち馬ガンガドゥの4頭が対戦相手となった。本馬が単勝オッズ1.57倍の1番人気、エキゾチックダンサーが単勝オッズ7倍の2番人気、モネズガーデンが単勝オッズ9倍の3番人気、アワーヴィックが単勝オッズ10倍の4番人気となった。スタートが切られるとアワーヴィックが先頭に立ち、本馬は少頭数のためか最初から先行。最後から3番目の第17障害飛越と同時にアワーヴィックをかわして先頭に立ち、一気に6馬身ほどの差をつけた。ところが第18障害で飛越に失敗して失速。それでも先頭で最終障害を飛越してきたが、ゴール直前で差し返してきたアワーヴィックにかわされてしまい、鼻差の2着に敗れた。07/08シーズンはこれが最後のレースで、このシーズンの成績は6戦3勝だった。
競走生活(08/09シーズン)
08/09シーズンは、11月にダウンロイヤル競馬場で行われたJNワインチャンピオンチェイス(愛GⅠ・24F)から始動した。本馬が単勝オッズ1.4倍の1番人気、前年のチェルトナム金杯で本馬の11着に終わった後にジョンダーカン記念パンチェスタウンチェイス・ヘネシーコニャック金杯とGⅠ競走を2勝していたザリスナーが単勝オッズ4倍の2番人気、GⅡ競走ゴウランパークチャンピオンチェイス・GⅢ競走ウィルフドゥーリーチェイスの勝ち馬ナイトレジェンドが単勝オッズ12倍の3番人気となった。出走頭数が5頭しかいなかったため、本馬はここでも先行し、逃げるナイトレジェンドを射程圏内に捉えながら進んだ。そして第13障害を飛越すると同時に先頭に立ち、残り2つの障害も無事に飛越。最後方から追い込んで2着に入った単勝オッズ51倍の最低人気馬ライトオンザブルームに11馬身差をつけて勝利した。
次走は3連覇がかかる同月末のベットフェアチェイス(英GⅠ・23F)となった。有力な対戦相手と言えば、この年のチェルトナム金杯では5着だったエキゾチックダンサーくらいだった。本馬が単勝オッズ1.4倍の1番人気、エキゾチックダンサーが単勝オッズ4.5倍の2番人気となった。ウォルシュ騎手が事故で脾臓破裂の大怪我を負っていたため、本馬にはトーマス騎手が騎乗した。スタートが切られると単勝オッズ34倍の最低人気馬スヌーピールーピーが先頭に立ち、本馬は今回も先行した。その後は時々飛越に失敗しながらも、スヌーピールーピーの後方を追走。ところが最終障害飛越時に体勢を崩して落馬してしまい、ここで競走中止。レースはスヌーピールーピーがそのまま逃げ切って勝ってしまった。
次走はこれも3連覇がかかるキングジョージⅥ世チェイス(英GⅠ・24F)となった。対戦相手は、スヌーピールーピー、本馬を鼻差で破ったトートスポーツボウルチェイス以来の実戦となるアワーヴィック、一昨年のティングルクリークチェイスで本馬の2着に敗れた後にGⅠ競走クイーンマザーチャンピオンチェイス・メリングチェイス・GⅡ競走デザートオーキッドチェイス2回を勝っていたボイポルウステデス、GⅠ競走チャンピオンノービスチェイスの勝ち馬エアフォースワン、GⅢ競走パディパワー金杯の勝ち馬インペリアルコマンダーなどだった。怪我を癒したウォルシュ騎手が鞍上に戻ってきた本馬が単勝オッズ1.91倍の1番人気、ボイポルウステデスが単勝オッズ5.5倍の2番人気、エアフォースワンが単勝オッズ9倍の3番人気、アワーヴィックとインペリアルコマンダーが並んで単勝オッズ11倍の4番人気となった。スタートが切られると単勝オッズ21倍の7番人気馬タマリンブルーが先頭に立ち、差し馬から先行馬に完全に変化していた本馬はそれを追って先行。第15障害を飛越した直後に先頭に立つと、残り3つの障害も飛越。最終障害だけはやや失敗したが、結果に影響を与えるほどでは無く、2着に突っ込んできた単勝オッズ26倍の8番人気馬アルバータスランに8馬身差をつけて、1988~90年のデザートオーキッド以来史上2頭目の同競走3連覇を達成した。
その後はチェルトナム金杯(英GⅠ・26.5F)に直行した。対戦相手は、前年の同競走を勝った後は1戦しかしていなかったデンマン、本馬が競走中止となったベットフェアチェイス3着後にGⅠ競走レクサスチェイスを勝っていたエキゾチックダンサー、前年の同競走で本馬から短頭差の3着後にパンチェスタウンギネス金杯・ヘネシーコニャック金杯とGⅠ競走を2勝していたネプチューンコロンジュ、前走のGⅡ競走レヴィーボードチェイスでデンマンを23馬身差の2着に葬り去っていたGⅢ競走VCカジノ金杯・ヘネシー金杯の勝ち馬マジソンデュベルライズ、本馬が3連覇を達成したキングジョージⅥ世チェイス2着後に1戦していたアルバータスラン、同5着から直行してきたエアフォースワン、同7着に終わっていたスヌーピールーピーなどだった。本馬が単勝オッズ2.75倍の1番人気、連覇を目指すデンマンが単勝オッズ8倍の2番人気、ネプチューンコロンジュが単勝オッズ8.5倍の3番人気、エキゾチックダンサーが単勝オッズ9倍の4番人気となった。
スタートが切られるとネプチューンコロンジュが先頭に立ち、本馬とデンマンは揃って先行。しかし第20障害飛越後に先頭に立った本馬がデンマンを引き離し始めた。最終第22障害飛越時点で既に勝負は決しており、あとはゴールまで悠々と走り、2着デンマンに13馬身差をつけて、同競走2度目の勝利を挙げた。08/09シーズンはこれが最後のレースで、このシーズンの成績は4戦3勝だった。
競走生活(09/10シーズン)
09/10シーズンは、前年に3連覇を逃した11月のベットフェアチェイス(英GⅠ・23F)から始動した。対戦相手は、この年のチェルトナム金杯で本馬の8着に敗れた後にGⅡ競走トートスポーツボウルチェイスを勝っていたマジソンデュベルライズ、前年のキングジョージⅥ世チェイス6着後にGⅠ競走ライアンエアーチェイスを勝っていたインペリアルコマンダー、GⅠ競走ナイトフランクガンリーウォルターズノービスチェイス・パンチェスタウンギネス金杯・GⅢ競走ウェルシュナショナルの勝ち馬ノートルペール、本馬が勝った一昨年のチェルトナム金杯で競走中止になった後は勝ち星が無かったハルコンジェネラーダイズなどだった。本馬が単勝オッズ1.67倍の1番人気、ノートルペールが単勝オッズ5倍の2番人気、マジソンデュベルライズが単勝オッズ7倍の3番人気、インペリアルコマンダーが単勝オッズ10倍の4番人気となった。スタートが切られると単勝オッズ201倍の最低人気馬セイモアウェルドが先頭に立ち、本馬はその少し後方を追走。第6障害でセイモアウェルドが後退すると、マジソンデュベルライズが代わりに先頭に立った。さらに第13障害でマジソンデュベルライズが後退すると、インペリアルコマンダーが代わりに先頭に立った。そして最後から2番目の第17障害で満を持して本馬が先頭に立った。しかしいったんは完全に本馬に抜かれたインペリアルコマンダーがゴール前で猛然と差し返してきて、2頭が殆ど同時にゴールインした。結果は本馬の鼻差勝ちで、同競走2年ぶり3度目の勝利を挙げた。
次走は4連覇がかかるキングジョージⅥ世チェイス(英GⅠ・24F)となった。対戦相手は、インペリアルコマンダー、前走でインペリアルコマンダーから24馬身差の3着だったマジソンデュベルライズ、前年の同競走で落馬競走中止となった後は不振だったアワーヴィック、ケンネルゲートノービスハードル・ノエルノービスチェイス・フューチャーチャンピオンノービスチェイス・ベット365チャーリーホールチェイス・ピーターボローチェイスとGⅡ競走5勝を挙げていた目下3連勝中のディープパープル、GⅢ競走レーシングポストチェイスの勝ち馬ナカラットなどだった。本馬が単勝オッズ1.62倍の1番人気、インペリアルコマンダーが単勝オッズ7.5倍の2番人気、ディープパープルが単勝オッズ9.5倍の3番人気、マジソンデュベルライズが単勝オッズ11倍の4番人気となった。
スタートが切られると単勝オッズ26倍の6番人気馬ナカラットが先頭に立ち、本馬は最近多かった先行策では無く中団待機策を採り、次々に現れる障害を完璧に飛越していった。そして第12障害で2番手に上がると、3番手以降をどんどん引き離し始めた。前方ではナカラットがまだ頑張っていたが、第16障害で力尽きて後退。入れ代わって先頭に立った本馬は残り2つの障害も完璧に飛越。全てにおいて完璧な競馬を見せた本馬が、2着マジソンデュベルライズに36馬身差という大差をつけて、デザートオーキッドの記録を更新する同競走4連覇を達成した。この36馬身差というのは、1965年にアークルが記録した30馬身差を更新する、同競走史上最大着差となった。このレースにおけるパフォーマンスに対して、英タイムフォーム社は191ポンドというスティープルチェイサーとしては当時史上3位の評価を与えた。また、レーシングポスト紙は193ポンドという史上最高のレーティングを与えた。
その後は前シーズンと同じくチェルトナム金杯(英GⅠ・26.5F)に直行して、3年ぶりの長距離チェイス三冠制覇に挑んだ。対戦相手は、前年の同競走2着後はGⅢ競走ヘネシー金杯を勝つに留まっていたデンマン、キングジョージⅥ世チェイス5着から直行してきたインペリアルコマンダー、GⅠ競走ドクターPJモリアーティーノービスチェイス・RSAチェイス・GⅡ競走マイケルパーセル記念ノービスハードル・ラスバリー&グレンビュースタッズノービスハードルの勝ち馬クールダイン、GⅡ競走エイオンチェイスを勝ってきたトリッキートリックスターなどだった。本馬が単勝オッズ1.73倍の1番人気、デンマンが単勝オッズ5倍の2番人気、インペリアルコマンダーが単勝オッズ8倍の3番人気、クールダインが単勝オッズ11倍の4番人気となった。スタートが切られると単勝オッズ34倍の6番人気馬カラザーズが先頭に立ち、本馬は例によって先行した。しかし第8障害で飛越に失敗して、落馬こそ免れたものの大きく位置取りを下げてしまった。すぐに加速して挽回してその後もレースを続けたが、第19障害で飛越に失敗。今度は落馬して競走中止となった。レースは本馬と同じく先行したインペリアルコマンダーが2着デンマンに7馬身差をつけて勝利した。09/10シーズンはこれが最後のレースで、このシーズンの成績は3戦2勝だった。
競走生活(10/11シーズン)
10/11シーズンは、2年ぶりの出走となる11月のJNワインチャンピオンチェイス(愛GⅠ・24F)から始動した。対戦相手は、GⅠ競走愛チャンピオンハードル・ネイチャーノービスチェイス・アークルチャレンジトロフィー・GⅡ競走クラドックスタウンノービスチェイス・GⅢ競走グレートウッドハードル・バックハウスノービスチェイスの勝ち馬サイジングヨーロッパ、GⅡ競走ゴウランパークチャンピオンチェイス・GⅢ競走スターベストフォーレーシングカバーレイジチェイスを連勝してきたチャイナロック、GⅡ競走マタランCOUKミルドメイノービスチェイスの勝ち馬キリーグレンなどだった。本馬が単勝オッズ1.57倍の1番人気、サイジングヨーロッパとチャイナロックが並んで単勝オッズ6倍の2番人気、キリーグレンが単勝オッズ17倍の4番人気となった。レースはキリーグレンが先頭を引っ張り、本馬は2番手を追走。第13障害の飛越と同時に先頭に立つと、残り2つの障害も難なく攻略し、2着サイジングヨーロッパに4馬身差をつけて、同競走2年ぶり2度目の勝利を挙げた。
このシーズンは過去3勝していたベットフェアチェイスには出走せず、次走は5連覇がかかるキングジョージⅥ世チェイス(英GⅠ・24F)となった。このレースは通常であれば12月に施行されるのだが、このシーズンは大雪のために翌1月に順延されていた。対戦相手は、GⅠ競走ガンバセレス賞・モーリスジロワ賞・フェルサムノービスチェイス・GⅡ競走ジョルジュドタルーエロワ賞・キングメーカーノービスチェイス・GⅢ競走ジャックダンディ賞・オルカダ賞の勝ち馬ロングラン、GⅡ競走ウィリアムヒルノービスチェイスの勝ち馬リヴァーサイドシアトル、前シーズンの同競走で本馬の4着に敗れた後にGⅡ競走ベット365チャーリーホールチェイスを勝っていたナカラット、GⅠ競走デロイトノービスハードル・アークルチャレンジトロフィーの勝ち馬フォーパディデプラステーラー、レーシングポストウィークエンダーペンディルノービスチェイス・ラドブロークスチェイスとGⅡ競走2勝のザナイチンゲールなどだった。負傷のため騎乗出来なかったウォルシュ騎手に代わって名手トニー・マッコイ騎手が騎乗する本馬が単勝オッズ1.57倍の1番人気、ロングランが単勝オッズ5.5倍の2番人気、リヴァーサイドシアトルが単勝オッズ11倍の3番人気、ナカラットとフォーパディデプラステーラーが並んで単勝オッズ15倍の4番人気となった。
スタートが切られるとナカラットが先頭に立ち、本馬は例によって先行した。第12障害で少しもたつく場面はあったが、概ね順調に進んでいた。しかし本馬と一緒に先行していたロングランが第16障害で先頭に立つと、本馬はそれに付いていく事が出来なかった。第17障害で飛越に失敗した影響もあって、後方から来たリヴァーサイドシアトルにも一気にかわされてしまった。最後はロングランが勝利を収め、リヴァーサイドシアトルが12馬身差の2着で、本馬はさらに7馬身差の3着に敗れ、同競走5連覇は達成できなかった。落馬競走中止以外で本馬が3着以下になったのは、英国移籍後初めてだった。
レース後の検査で呼吸器系からの出血が認められた事もあり、本馬を引退させるべきだという意見も上がり始めた。しかし陣営はその意見には耳を貸さず、本馬をチェルトナム金杯(英GⅠ・26.5F)に直行させた。対戦相手は、同じくキングジョージⅥ世チェイスから直行してきたロングラン、前年の同競走制覇後に本馬不在のベットフェアチェイスを勝っていたインペリアルコマンダー、前年の同競走2着後は2戦未勝利だったデンマン、GⅢ競走モアソングループハンデチェイスなど4連勝で臨んできたミッドナイトチェイス、GⅠ競走グロワイズチャンピオンノービスチェイス・ヘネシー金杯・GⅡ競走ラスバリー&グレンビュースタッズノービスハードル・ナスナリオーノービスチェイスの勝ち馬ケンペスなどだった。ロングランが単勝オッズ4.5倍の1番人気、インペリアルコマンダーが単勝オッズ5倍の2番人気、ウォルシュ騎手が鞍上に復帰した本馬が単勝オッズ6倍の3番人気、デンマンが単勝オッズ9倍の4番人気、ミッドナイトチェイスとケンペスが並んで単勝オッズ10倍の5番人気となり、本馬は2005年11月のハルドン金杯で2番人気になって以降では初めて1番人気の座を他馬に明け渡した。スタートが切られるとミッドナイトチェイスが先頭に立ち、本馬とインペリアルコマンダーが先行、ロングランがその少し後方を進む展開となった。本馬は第12障害で先頭に立つと、いったんは2番手に下がったが第17障害で先頭を奪還した。しかし第19障害で飛越に失敗して失速。しばらくは先頭にいたが、やがてデンマン、ロングランに相次いでかわされた。レースは最終障害で先頭に立ったロングランが勝利を収め、デンマンが7馬身差の2着、本馬はさらに4馬身差の3着に敗れた。
その後は翌4月にパンチェスタウン競馬場で行われたパンチェスタウンギネス金杯(愛GⅠ・25F)に出走した。対戦相手は、キングジョージⅥ世チェイスで本馬から5馬身差の4着後にGⅠ競走トートスポーツボウルチェイスを勝っていたナカラット、前走では落馬競走中止だったケンペス、GⅠ競走チャンピオンノービスハードル・ジョンダーカン記念パンチェスタウンチェイス・GⅡ競走ニューランズチェイス・クロンメルオイルチェイス・GⅢ競走ポプラスクウェアチェイス・パディパワー金杯の勝ち馬トランキルシー、GⅠ競走ダーカンニューホームズノービスチェイス・GⅡ競走キンロックブレイチェイスの勝ち馬フォローザプランなどだった。本馬が単勝オッズ1.91倍の1番人気、ナカラットが単勝オッズ4.33倍の2番人気、ケンペスが単勝オッズ5.5倍の3番人気、トランキルシーが単勝オッズ15倍の4番人気となった。ところが上位人気4頭の中で完走したのはナカラットのみで、しかも結果は完走馬中最下位の4着。先行した本馬は道中で行き脚が悪くなって後方に下がってしまい、異変を感じたウォルシュ騎手の判断で競走を中止した。レースは単勝オッズ21倍の5番人気馬フォローザプランが、2着となった単勝オッズ41倍の最低人気馬ヴィクヴェンチュリに11馬身差をつけて勝利した。
レース後の検査で本馬に特に異常は無く、ウォルシュ騎手は「今日の彼は走る気がありませんでした」と語った。10/11シーズンはこれが最後のレースで、このシーズンの成績は4戦1勝だった。
競走生活(11/12シーズン)
本馬の競走馬引退を求める声はますます大きくなったが、11/12シーズンも現役を続行。2年ぶりの出走となる11月のベットフェアチェイス(英GⅠ・23F)から始動した。対戦相手は、チェルトナム金杯制覇以来の実戦となるロングラン、GⅠ競走チャローノービスハードル・GⅡ競走ジェッツリチャードデイヴィス賞ノービスハードル・クラシックノービスハードル・アルトカーノービスチェイス・GⅢ競走ヘネシー金杯の勝ち馬ダイヤモンドハリー、タウトンノービスチェイス・ベット365チャーリーホールチェイスとGⅡ競走2勝のウィアードアルなどだった。ロングランが単勝オッズ2.2倍の1番人気、ダイヤモンドハリーが単勝オッズ4.5倍の2番人気、本馬はタイムフォールパートという馬と並んで単勝オッズ7倍の3番人気止まりだった。
スタートが切られると先頭に立ったのは意外にも本馬だった。すぐ後方をタイムフォールパートが追いかけてきて、ロングランとダイヤモンドハリーの上位人気2頭はその後方だった。第8障害でロングランが2番手に上がってきて、本馬に並びかけてきた。しかし第10障害でロングランが少し飛越に失敗したため、本馬は先頭を維持できた。ロングランはその後も飛越の失敗を繰り返したが、本馬は順調に全ての障害を飛越してきた。ここでスタミナが切れたのかよれる場面が見られたが、ロングランはかなり後方であり、もはや問題は無かった。2着ロングランに8馬身差をつけて快勝し、同競走2年ぶり4度目の勝利を挙げた。同じ障害GⅠ競走を4回勝利した馬は過去にもデザートオーキッドがいたが、2つの障害GⅠ競走を4回勝利した馬は本馬が初となった。
その後は5度目の勝利を目指してキングジョージⅥ世チェイス(英GⅠ・24F)に出走した。対戦相手は、ロングラン、GⅠ競走クイーンマザーチャンピオンチェイス2回・ティングルクリークチェイス2回・ヴィクターチャンドラーチェイス2回・ケリーゴールドチャンピオンチェイス・メリングチェイス・GⅡ競走トートプールゲームスピリットチェイス2回・アムリン1965チェイス2回の勝ち馬マスターマインディド、GⅠ競走ライアンエアーノービスチェイス・アークルチャレンジトロフィー・GⅡ競走レーシングポストウィークエンダーペンディルノービスチェイスの勝ち馬キャプテンクリス、GⅡ競走ヘンリーⅧ世ノービスチェイスの勝ち馬サマースビー、本馬が競走中止となったパンチェスタウンギネス金杯4着後に2戦したが勝てなかったナカラットなどだった。ロングランが単勝オッズ2倍の1番人気、本馬が単勝オッズ4倍の2番人気、本馬と同厩で馬主も同じマスターマインディドが単勝オッズ6.5倍の3番人気、キャプテンクリスが単勝オッズ9倍の4番人気となった。
スタートが切られると単勝オッズ67倍の最低人気馬ゴーランウェイが先頭に立とうとしたが、単勝オッズ41倍の6番人気だったナカラットが先頭を奪った。本馬とロングランはいずれも先行策を採った。第8障害で先に本馬が先頭に立ち、ロングランが追いかけてくる展開となった。本馬は概ね順調に障害を飛越していったが、ロングランは時々失敗して体勢を崩していたため、本馬とロングランの差は縮まらなかった。そして最終障害を無事に飛越して押し切ろうとする本馬に、体勢を崩しながらも最終障害を飛越したロングランが迫ってきた。しかし本馬が押し切って、2着ロングランに1馬身1/4差、3着キャプテンクリスにはさらに17馬身差をつけて勝ち、同競走2年ぶり5度目の勝利を挙げた。キングジョージⅥ世チェイスは過去にデザートオーキッドが4回勝利していたが、5回勝利した馬は本馬が初めてとなった。
その後は3年ぶりの制覇と、5年ぶりの長距離チェイス三冠制覇を目指して、チェルトナム金杯(英GⅠ・26.5F)に直行した。レース前月の飛越調教中に本馬はひどい失敗をして負傷していたが、集中的な理学療法で強引に治療しての参戦だった。対戦相手は、キングジョージⅥ世チェイス2着後にGⅡ競走ベットフェアデンマンチェイスを勝ってきたロングラン、4か月前のベットフェアチェイスで本馬の3着だったウィアードアル、同4着だったダイヤモンドハリー、GⅠ競走レクサスチェイス・GⅢ競走ウェルシュナショナルの勝ち馬シンクロナイズド、ディセンバーノービスチェイス・レイノルズタウンノービスチェイス・マタランCOUKミルドメイノービスチェイスとGⅡ競走3勝のバートンポート、前年の同競走5着後にGⅡ競走アルジェントチェイスを勝っていたミッドナイトチェイス、前年の同競走では競走中止となっていたチャイナロックなどだった。ロングランが単勝オッズ2.75倍の1番人気、本馬が単勝オッズ4倍の2番人気、ウィアードアル、シンクロナイズド、バートンポートの3頭が並んで単勝オッズ9倍の3番人気となった。スタートが切られると単勝オッズ13倍の6番人気だったミッドナイトチェイスが先頭に立ち、本馬は先行態勢を取った。しかし第8障害で飛越に失敗して脚を強打。落馬はしなかったが、その後は明らかに走り方がおかしくなり、第10障害手前でウォルシュ騎手の判断により競走を中止した。レースは道中で少なくとも7回飛越に失敗したシンクロナイズドがそれでも勝利を収め、ロングランは3着だった。
レース後の検査で本馬には特に重篤な負傷等は認められなかったが、さすがの陣営も、これが現役最後のレースになる可能性が高いと表明。同年10月に正式に競走馬引退が発表された。11/12シーズンの成績は3戦2勝だった。
競走馬としての評価
長距離チェイス三冠を達成した馬は、2015年現在本馬のみである(2016年のチェルトナム金杯をキューカードが勝てば史上2例目となる)。3競走中2競走を制したシーズンが他に4回あり、文句なしに近年最強クラスの障害競走馬と言える。
本馬は英タイムフォーム社のスティープルチェイス分野において、212ポンドのアークル、210ポンドのフライングボルト、192ポンドの6歳年下のスプリンターサクレに次ぐ、史上4位タイ(ミルハウスと同値)の191ポンドのレーティングが与えられている。アークル、フライングボルト、ミルハウスの3頭はいずれも1960年代に活躍した馬であり、スプリンターサクレは短距離チェイス専用馬であるから、過去50年間における長距離チェイス界においては本馬が最強であるということになる。
レーシングポスト紙がスプリンターサクレに与えた評価は188ポンド(スプリンターサクレは2016年開始時点で現役馬だが、おそらくこれより上がることは無いだろう)であるから、レーシングポスト紙は本馬を長距離に限らず近年の最強チェイサーであると判断している事になる。
血統
Village Star | Moulin | Mill Reef | Never Bend | Nasrullah |
Lalun | ||||
Milan Mill | Princequillo | |||
Virginia Water | ||||
High Fidelyty | Hautain | Sky High | ||
Haura | ||||
Paladrina | Orsini | |||
Prompt Payment | ||||
Glitter | Reliance | Tantieme | Deux Pour Cent | |
Terka | ||||
Relance | Relic | |||
Polaire | ||||
Glistening | Aureole | Hyperion | ||
Angelola | ||||
Causerie | Cagire | |||
Happy Thought | ||||
Kauto Relka | Port Etienne | Mill Reef | Never Bend | Nasrullah |
Lalun | ||||
Milan Mill | Princequillo | |||
Virginia Water | ||||
Sierra Morena | Canisbay | Doutelle | ||
Stroma | ||||
Saigon | Mossborough | |||
Savona | ||||
Kautorette | Kautokeino | Relko | Tanerko | |
Relance | ||||
Cranberry | Aureole | |||
Big Berry | ||||
Verdurette | Lionel | Herbager | ||
La Strada | ||||
Tyrolina | Tyrone | |||
Catalica |
父ヴィレッジスターは現役成績26戦8勝。サンクルー大賞(仏GⅠ)・コンセイユドパリ賞(仏GⅡ)・アルクール賞(仏GⅡ)・エクスビュリ賞(仏GⅢ)を勝ち、BCターフ(米GⅠ)でシアトリカルの3着している。競走馬引退後は仏国で種牡馬入りした。種牡馬としては主に障害用として供用されたようで、平地の活躍馬は殆どいない。2003年に20歳で他界している。ヴィレッジスターの父ムーランはミルリーフ産駒で、現役成績22戦5勝。ジュライS(英GⅢ)で2着、リッチモンドS(英GⅡ)とコヴェントリーS(英GⅢ)で3着しているが、グループ競走の勝ちは無い。種牡馬としてもそれほど成功しておらず、ヴィレッジスター以外にGⅠ競走の勝ち馬はいない。当初は仏国で種牡馬入りしていたが、後にスウェーデンで種牡馬生活を送り、1996年に20歳で他界している。
母コートレルカは不出走馬。本馬の半弟にコートストーン(父ウィズザフロー)【モーリスジロワ賞(仏GⅠ)・JNワインチャンピオンチェイス(愛GⅠ)】がいるが、近親には活躍馬は殆どいない。コートレルカの6代母フィノーラは1928年の仏1000ギニー馬ロアフーガの姪で、フィノーラの半妹グラディスカの牝系子孫にはキングストンタウン、イブンベイ、ウィジャボード、オーストラリアなどがいるが、さすがにここまで離れると近親とは言えない。→牝系:F12号族①
母父ポールテチェンヌはミルリーフ産駒で、現役成績は16戦5勝。ドラール賞(仏GⅡ)で2着、ノアイユ賞(仏GⅡ)で3着しているが、グループ競走の勝ちは無い。種牡馬としても殆ど成功しないまま、1996年に13歳で他界している。
本馬は父系も母父系もミルリーフ直系という事になる。
競走馬引退後
競走馬を引退した本馬の処遇に関しては、スミス氏とニコルズ師の間で意見の相違があった。スミス氏は本馬を馬術競技に向かわせたいと主張し、ニコルズ師はそれをさせるべきではないと主張した。この件がきっかけでスミス氏とニコルズ師は袂を分かつことになった。本馬が馬術競技のチームに入ったかどうかは筆者の情報網には引っ掛からなかったが、いずれにしてもスミス氏の元で余生を過ごすことになった。
しかし2015年6月24日にパドック内の事故のため大腿骨など複数の骨を折る重傷を負ってしまった。ヴァレー馬診療所に搬送されて治療が施されたが、同月29日に予後不良と診断されて安楽死の措置が執られ、15歳で他界した。