ファニーサイド

和名:ファニーサイド

英名:Funny Cide

2000年生

鹿毛

父:ディストーテッドユーモア

母:ベルズグッドサイド

母父:スルーアサイド

人気薄を覆して勝利したケンタッキーダービーで受けた濡れ衣をプリークネスSの圧勝で晴らすも米国三冠馬の栄誉には手が届かず

競走成績:2~7歳時に米加で走り通算成績38戦11勝2着6回3着8回

誕生からデビュー前まで

ダホスヴィクトリーギャロップの所有者としても知られる米国テキサス州の石油業者プレストン兄弟が、所有するプレストンウッドファームから改名したケンタッキー州ウインスターファームにおいて生産した馬であるが、誕生したのはケンタッキー州ではなく、ジョー・マクマホン氏という人物と妻のアン・マクマホン夫人が所有していたニューヨーク州サラトガスプリングスの牧場だった。

1歳8月にファシグ・ティプトン社が実施したサラトガセールに出品され、トニー・エヴァラード氏という人物により2万2千ドルという安値で購入された(このセリの平均取引価格は4万3千ドル)。エヴァラード氏によると、本馬は少し未熟ながらもバランスが取れた好馬体の持ち主だったが、片方の睾丸が停留睾丸だった(この症状の詳細はサマースコールやエーピーインディの項を参照)ために安く買えたのだという。停留睾丸の対処のために、エヴァラード氏は本馬を1歳暮れに去勢して騙馬にした。

フロリダ州オカラにある調教場で過ごしていた本馬が2歳3月になる頃、障害競走の騎手から調教師に転身していたバークレイ・タッグ師という人物が調教場にやってきた。タッグ師は、かつてシービスケットを管理したトム・スミス調教師に不気味なほどよく似ていると言われたほど寡黙で、かつ、確かな相馬眼を持つ人物だった。そんなタッグ師により素質を評価された本馬は、タッグ師の薦めを受けたサッカトガステーブルにより7万5千ドルで購入された。サッカトガステーブルは、ジャック・ノウルトン氏やエド・ミッツェン氏が創設した、会員10人から成る共同馬主団体だった。タッグ師の調教を受けた本馬は成長すると体高16.2ハンドと、なかなか立派な体格の持ち主になった。

競走生活(3歳初期まで)

2歳9月にベルモントパーク競馬場で行われたダート6ハロンの未勝利戦で、主戦となるホセ・サントス騎手を鞍上にデビューした。単勝オッズ3.25倍の1番人気に支持された本馬は、スタートから先頭争いに参加した。そして向こう正面で先頭に立つと後はゴールまで延々と後続を引き離すだけで、2着となった単勝オッズ12.5倍の5番人気馬ハイプライスドに14馬身3/4差もの大差をつけて圧勝した。

3週間後に同じベルモントパーク競馬場で出走したバートラムFボナードS(D7F)では、ホープフルSで4着してきたストームカデット、ニューヨークブリーダーズフューチュリティを勝ってきたインフィニットジャスティスなどが対戦相手となった。ストームカデットが単勝オッズ2.85倍の1番人気、本馬が単勝オッズ3.95倍の2番人気、インフィニットジャスティスが単勝オッズ4.65倍の3番人気となった。今回の本馬はスタートから単独で先頭に立つと、三角から後続を引き離しにかかった。そして今回も直線を独走して、2着となった単勝オッズ13.4倍の5番人気馬スパイトザデヴィルに9馬身差をつけて圧勝した。このレースにおいて、米国の競馬評論家アンドリュー・ベイヤー氏が考案したスピード指数(ベイヤー指数)では、103の数値が与えられ、これは2歳馬としては米国競馬史上最高値だった。

翌10月にやはりベルモントパーク競馬場で出走したスリーピーホローS(D8F)では、他の全出走馬より7ポンド重い斤量ながらも、単勝オッズ1.2倍という断然の1番人気に支持された。ここでは3番手を追走し、四角で先頭に立って押し切ろうとした。しかしここで後方から、今回は単勝オッズ9.1倍の3番人気だったスパイトザデヴィルが追い上げてきて、本馬に並びかけてきた。しかし本馬が競り勝ち、首差で勝利した。

この時点でサントス騎手は、本馬はケンタッキーダービーに勝てる器だと考えた。それはタッグ師も同感だったようで、翌年のケンタッキーダービーに備えるために、2歳時はひとまず3戦全勝の成績で終えることになった。

3歳時は、1月にガルフストリームパーク競馬場で行われたホーリーブルS(米GⅢ・D8.5F)から始動した。ここでは、ナシュアSなど4戦全勝のアディドエッジが単勝オッズ2.8倍の1番人気、レムセンSで2着してきたバームが単勝オッズ3.7倍の2番人気となっており、本馬は単勝オッズ6.3倍の3番人気だった。スタートが切られるとバームが逃げを打ち、スターティングゲートにぶつかって出遅れた本馬は好位の7番手を追走した。そして直線入り口では4番手まで上がってきたが、直線で失速し、先行して勝った単勝オッズ28.4倍の9番人気馬オフリーワイルドから6馬身半差をつけられた5着に敗れて、初黒星を喫した。

その後は一間隔空け、3月のルイジアナダービー(米GⅡ・D8.5F)で仕切り直した。前走リズンスターSを10馬身差で勝ってきた3戦無敗のバッジオブシルヴァー、ベストパルS・ノーフォークS・サンヴィンセントSの勝ち馬でBCジュヴェナイル・デルマーフューチュリティ2着のカフワイン、ジェネラスS・ヒルライズSの勝ち馬ピースルールズ、バッシュフォードマナーSの勝ち馬でサラトガスペシャルS・ブリーダーズフューチュリティ・リズンスターS2着のローンスタースカイなどが主な対戦相手となった。バッジオブシルヴァーが単勝オッズ2.2倍の1番人気、カフワインが単勝オッズ2.4倍の2番人気とこの2頭に人気が集中し、本馬は単勝オッズ7.1倍で少し離された3番人気、ピースルールズが単勝オッズ10.4倍の4番人気となった。ここでは普通にスタートを切り、そのまま先頭に立った。そして四角まで先頭を走り続けたが、ここで2番手を走っていたピースルールズにかわされると、直線半ばではカフワインにも差されて、勝ったピースルールズから3馬身1/4差、2位入線のカフワインから1馬身差をつけられた3位で入線した。ただし、カフワインが薬物検査に引っ掛かって3週間後に失格になったため、本馬が繰り上がって2着となっている。

ルイジアナダービー繰り上がりが確定した後に出走した4月のウッドメモリアルS(米GⅠ・D9F)では、フロリダダービーを9馬身3/4差で勝ってきたエンパイアメーカー、レーンズエンドSを勝ってきたニューヨークヒーロー、フロリダダービー3着馬インディダンサー、未勝利戦と一般競走を3連勝してきたキッシンセイント、2連勝で臨んだフロリダダービーで5着だったセニョールスウィンガーなどが出走してきた。エンパイアメーカーが単勝オッズ1.55倍の1番人気、本馬が単勝オッズ6.2倍の2番人気、ニューヨークヒーローとインディダンサーが並んで単勝オッズ9.9倍の4番人気となった。スタートが切られると、ニューヨークヒーローが先頭に立ち、本馬が2番手、エンパイアメーカーが3番手につけた。直線入り口でエンパイアメーカーと本馬が並んで先頭に立ち、ここから2頭の一騎打ちが始まった。後続を7馬身半も引き離す叩き合いは、エンパイアメーカーが勝利を収め、本馬は最後に差し返す場面も見せたが半馬身差の2着に敗れた。

競走生活(米国三冠競走)

前哨戦では1回も勝つことが出来なかったが、それでも本馬はケンタッキーダービー(米GⅠ・D10F)に出走した。対戦相手は、エンパイアメーカー、ルイジアナダービー勝利後にブルーグラスSも勝ってきたピースルールズ、イリノイダービーを4馬身差で快勝してきたテンモストウォンティド、ボールドウインS・サンフェリペS・サンタアニタダービーと3連勝中のバディギル、サンフェリペS2着馬アッツホワットアイムトークンバウト、サンタアニタダービーで2着してきたインディアンエクスプレス、レキシントンSを勝ってきたスクリムショウ、ブルーグラスS2着・サンフェリペS3着のブランクーシ、ホーリーブルSで本馬を破った後にブルーグラスSで3着してきたオフリーワイルド、ケンタッキージョッキークラブS2着馬テンセンツアシャイン、デルタジャックポットSの勝ち馬でハリウッドジュヴェナイルCSS2着のアウタヒアー、レキシントンSで2着してきたアイオブザタイガー、ファウンテンオブユースS2着馬スーパーブリッツ、サンタカタリナSの勝ち馬でハリウッドフューチュリティ2着のドメスティックディスピュート、ルイジアナダービーで4位入線3着繰り上がりとなっていたローンスタースカイの計15頭だった。エンパイアメーカーが単勝オッズ3.5倍の1番人気、ピースルールズが単勝オッズ7.3倍の2番人気、テンモストウォンティドが単勝オッズ7.6倍の3番人気、バディギルが単勝オッズ8.2倍の4番人気、アッツホワットアイムトークンバウトが単勝オッズ9.9倍の5番人気、インディアンエクスプレスが単勝オッズ11.9倍の6番人気と続き、本馬は単勝オッズ13.8倍の7番人気だった。

14万8530人の大観衆が見つめる中でスタートが切られると、まずは単勝オッズ30.3倍の9番人気馬ブランクーシが先頭に立ち、ピースルールズが2番手、本馬が3~4番手で、エンパイアメーカーは馬群の中団につけた。三角でブランクーシが遅れ始めると、ピースルールズが代わりに先頭に立ち、本馬が2番手で直線を向いた。そして前を行くピースルールズをかわして先頭に立つと、外側から追い上げてきたエンパイアメーカーと、粘るピースルールズの追撃を凌ぎきり、2着エンパイアメーカーに1馬身3/4差、3着ピースルールズにはさらに頭差をつけて見事に優勝した。騙馬がケンタッキーダービーを制したのは1929年のクライドヴァンデュセン以来74年ぶり史上7頭目の快挙であり、ニューヨーク州産馬としては史上初のケンタッキーダービー制覇となった。また、管理するタッグ師は、ケンタッキーダービー初挑戦で初勝利という快挙を成し遂げた(過去に何例かはあるが、そう数は多くない)。

ところがレース直後にある事件が起きた。米国フロリダ州の新聞であるマイアミ・ヘラルド紙が、ケンタッキーダービーにおけるゴール時の写真を紙面に掲載した。この写真には、サントス騎手が右手に持つ鞭と右手の間に黒い影があった。それが何か黒いものを持っているように見えた事から「ファニーサイドの鞍上サントス騎手がレース中に電気鞭を隠し持っていた疑いがある」とマイアミ・ヘラルド紙が報じたことで大騒動となったのである。一時はケンタッキーダービー馬の称号剥奪まで取り沙汰され、日本の一般紙でも大きく取り上げられた。

チャーチルダウンズ競馬場は当然調査に乗り出し、マイアミ・ヘラルド紙が掲載したもの以外の写真や映像、それに当該レースに参加していた騎手や関係者達への聞き取りを実施した。そして調査の結果は潔白だった。

そもそも、チャーチルダウンズ競馬場に詰めかけていた14万8530人の観衆(テレビ観戦していた人を含めると全米で数千万人が目撃している)や競馬場の関係者、騎手仲間達の全ての目を誤魔化して電気鞭か何かを隠し持つ事など不可能だったのである。この騒動に加えて、ニューヨーク州産馬初のケンタッキーダービー馬、しかも馬主が一般人の団体という親しみやすさもあって、本馬の知名度は急上昇し、熱狂的なファンが増える結果となった。

次走のプリークネスS(米GⅠ・D9.5F)では、エンパイアメーカーを始めとするケンタッキーダービーで有力視されていた馬の大半が回避し、対戦相手は、ピースルールズ、前走8着のテンセンツアシャイン、同11着のスクリムショウ、ウッドメモリアルS5着後にアメリカンターフSを勝ってきたセニョールスウィンガー、フェデリコテシオSを勝ってきたチェロキーズボーイ、ウッドメモリアルS3着から直行してきたキッシンセイント、ウッドメモリアルS4着後に出走したウィザーズSで5着だったニューヨークヒーロー、前走の一般競走を11馬身3/4差で勝ってきたミッドウェイロード、イリノイダービー・アメリカンターフS3着のフォーファズウォリアーの計9頭だった。本馬が単勝オッズ2.9倍の1番人気、ピースルールズが単勝オッズ3.4倍の2番人気、スクリムショウとセニョールスウィンガーのカップリングが単勝オッズ5.9倍の3番人気、テンセンツアシャインが単勝オッズ9.5倍の4番人気、チェロキーズボーイが単勝オッズ10.7倍の5番人気となった。

スタートが切られると、スクリムショウが先頭に立ち、ピースルールズが2番手、本馬が3番手につけた。向こう正面で早くもピースルールズが先頭に立つと、本馬もそれを追って上がっていった。そして三角で並びかけると、四角でピースルールズを突き放した。そして直線に入ると後は独走状態。最後は2着に追い上げてきた単勝オッズ21倍の8番人気馬ミッドウェイロードに9馬身3/4差もの大差をつけて圧勝した。ゴール直後、鞍上のサントス騎手は手のひらを大きく広げ、電気鞭など使っていない、実力による勝利であることをアピールした。この9馬身3/4差という着差はプリークネスS史上2番目(当時)の大差だが、1位の10馬身という記録は1873年の第1回プリークネスSでサバイバーが樹立したもので、プリークネスSがまだ主要レースとして認められる前の記録であり(距離も当時は12ハロンだった)、事実上本馬の記録が史上最大着差であると言えた(現在の最大着差は2004年にスマーティジョーンズが記録した11馬身半差)。また、ニューヨーク州産馬がプリークネスSを勝ったのは、1883年のジェイコブズと、1896年のマーグレイヴ以来107年ぶり史上3頭目だった。

1978年のアファームド以来25年ぶり史上12頭目の米国三冠馬がかかったベルモントS(米GⅠ・D12F)では、プリークネスSを回避してベルモントS一本に絞ってきたエンパイアメーカー、同じくケンタッキーダービー9着から直行してきたテンモストウォンティド、ローンスターダービーなど3連勝で臨んできたダイネヴァー、前走でミッドウェイロードから3/4馬身差の3着だったスクリムショウ、ピーターパンSで3着してきたスーパーバイザーの5頭だけが本馬の米国三冠馬を阻もうと参戦してきた。本馬が単勝オッズ2倍の1番人気、エンパイアメーカーが単勝オッズ3倍の2番人気、ダイネヴァーが単勝オッズ9.5倍の3番人気、テンモストウォンティドが単勝オッズ10.7倍の4番人気、スクリムショウが単勝オッズ12倍の5番人気で、本馬とエンパイアメーカーの一騎打ちムードだった。

ベルモントパーク競馬場に詰め掛けた約10万人もの大観衆が見つめる中でスタートが切られると、本馬が果敢に先頭に立った。直後の2番手にスクリムショウがつけ、エンパイアメーカーは本馬をマークするように3番手につけた。そのままの態勢で三角に入ってきたが、ここでエンパイアメーカーに並びかけられた。そして直線に入るとエンパイアメーカーに突き放され、後方から来たテンモストウォンティドにもかわされた。そして勝ったエンパイアメーカーから5馬身差、2着テンモストウォンティドから4馬身1/4差の3着に敗退。米国三冠馬誕生は成らなかった。敗因としては、レース直前に丸一日降り続いた雨により、馬場状態が不良となっており、本馬が走ったのが通称“dead rail”と呼ばれる最も泥が深いルートだった事が挙げられているが、プリークネスSをスキップしてきた馬2頭に負かされたところからすると、やはり米国三冠競走に皆勤するのは疲労が大きいという事もあるのだろう。

ところで、先のケンタッキーダービー直後にサントス騎手の疑惑を報じたマイアミ・ヘラルド紙は、調査結果が潔白だった事を受けて謝罪広告を掲載していた。しかしベルモントSの後になってサントス騎手は「マイアミ・ヘラルド紙が私に精神的な苦痛を与えたのもベルモントSの敗因である」と主張し、マイアミ・ヘラルド紙を名誉棄損で告訴し、4800万ドルの慰謝料支払いを求めた。しかし一審・控訴審ともに「マイアミ・ヘラルド紙の記事がベルモントSの結果に与えた影響は極めて希薄である」としてサントス騎手の主張を退ける判決を下した。裁判は2008年まで続いたが、結局和解が成立したようである。

競走生活(3歳後半)

それはさておき、米国三冠馬になれなかった本馬は、ハスケル招待H(米GⅠ・D9F)に向かった。プリークネスS4着から直行してきたピースルールズ、ホープフルS・ブリーダーズフューチュリティの勝ち馬だが故障で3歳前半を棒に振ってしまい前月のドワイヤーSで復帰して3着していたスカイメサ、オハイオダービーなど3戦無敗のワイルドアンドウィックド、アイオワダービーを勝ってきたイクセッシヴプレジャーなどが出走してきた。123ポンドの本馬が単勝オッズ2倍の1番人気、121ポンドのピースルールズが単勝オッズ3.3倍の2番人気、118ポンドのスカイメサが単勝オッズ5.3倍の3番人気、118ポンドのワイルドアンドウィックドが単勝オッズ5.9倍の4番人気となった。スタートが切られるとピースルールズが逃げを打ち、本馬は馬群の中団を追走した。しかし米国三冠競走に皆勤した疲労に加えて、トップハンデも影響したのか、直線で全く伸びずに、勝ったピースルールズから9馬身差、2着スカイメサからも7馬身1/4差も離された3着に敗退した。

このレース後に食欲減退や熱発などの症状が出たため、次走に予定していたトラヴァーズSは回避して長期休養に入った。

10月末にサンタアニタパーク競馬場で行われたBCクラシック(米GⅠ・D10F)には一応は間に合った。トラヴァーズS・ホイットニーH・サンフェリペS・ジムダンディS・ストラブS・オークローンHの勝ち馬で前年のベルモントS・BCクラシック・ウッドメモリアルSと前走のパシフィッククラシックS2着のメダグリアドーロ、ベルモントS2着後にスワップスSでも2着してさらにトラヴァーズS・スーパーダービーを連勝してきたテンモストウォンティド、スティーヴンフォスターH・レーンズエンドS・ワシントンパークH・ケンタッキーCクラシックH・ホーソーン金杯・インディアナダービーの勝ち馬で前年のケンタッキーダービー3着のパーフェクトドリフト、スワップスS・シガーマイルH・カーターH・ハリウッド金杯・ウッドメモリアルS・デルマーBCH・サンパスカルH・サンアントニオH・ローンスターパークHの勝ち馬でサンタアニタH2着・一昨年のケンタッキーダービー・プリークネスS3着のコンガリー、前年に仏グランクリテリウム・レイルウェイSを勝ちBCジュヴェナイルで3着してカルティエ賞最優秀2歳牡馬に選ばれていた前走ウッドワードS2着のホールドザットタイガー、グッドウッドBCHを2連覇してきたプレザントリーパーフェクト、ベルモントS4着後にメドウランズBCHで2着してきたダイネヴァー、前年のBCクラシックを最低人気で圧勝していたペガサスH・ピルグリムS・ポーカーHの勝ち馬でサバーバンH・ホイットニーH2着のヴォルポニ、ジョッキークラブ金杯・サラトガBCH・ディスカヴァリーH・クイーンズカウンティH・アケダクトH・レッドスミスHの勝ち馬でホイットニーH・ジョッキークラブ金杯3着のイヴニングアタイアが対戦相手となった。メダグリアドーロが単勝オッズ3.6倍の1番人気、テンモストウォンティドが単勝オッズ5.1倍の2番人気、パーフェクトドリフトが単勝オッズ6.7倍の3番人気、コンガリーが単勝オッズ7.3倍の4番人気、ホールドザットタイガーが単勝オッズ9.5倍の5番人気と続き、サントス騎手が前年のBCクラシックを勝ったときに騎乗していたヴォルポニを選択した(本馬の出走が未定の段階から既に先約があったらしい)ため、ジュリー・クローン騎手に乗り代わった本馬は、単勝オッズ9.7倍で6番人気だった。スタートが切られると1番人気のメダグリアドーロが果敢に先頭に立ち、本馬は馬群の中団につけた。しかし徐々に他馬から置いていかれてしまい、直線でも全く伸びなかった。レースは単勝オッズ15.2倍の7番人気馬プレザントリーパーフェクトが勝利を収め、本馬はそれから14馬身3/4差をつけられた9着と惨敗した。

3歳時は8戦2勝の成績だったが、3歳時6戦3勝2着3回(3勝は全てGⅠ競走)のエンパイアメーカーを抑えて、エクリプス賞最優秀3歳牡馬騙馬に選出された。また、全米サラブレッド競馬協会が選定する“Moment of the Year”には、本馬のケンタッキーダービー制覇が選ばれた。

競走生活(4歳時)

翌4歳時は1月にガルフストリームパーク競馬場で行われたダート7ハロンのオプショナルクレーミング競走から始動した(本馬は売却の対象外)。サントス騎手を鞍上に単勝オッズ1.4倍の1番人気に支持されると、向こう正面で馬群から抜け出して先頭に立った。それからゴールまで危なげない場面は無く、2着となった単勝オッズ9.4倍の4番人気馬アメリカンスタイルに5馬身差で圧勝して実力の違いを見せつけた。

翌月のドンH(米GⅠ・D9F)では、前年のBCクラシックで2着だったメダグリアドーロ、サラトガBCH・ハルズホープHの勝ち馬で前年のドンH・ウッドワードS3着のパズルメント、前走のアケダクトHを勝ってきたシアトルフィッツ、メドウランズカップBCSの勝ち馬でオークローンH2着のボウマンズバンドなどが対戦相手となった。122ポンドのメダグリアドーロが単勝オッズ1.6倍の1番人気、119ポンドの本馬が単勝オッズ4倍の2番人気、115ポンドのパズルメントが単勝オッズ8.8倍の3番人気、113ポンドのシアトルフィッツが単勝オッズ10.8倍の4番人気となった。レースではメダグリアドーロが2番手を走り、本馬は少し離れた3番手につけた。そして三角で先頭に立ったメダグリアドーロに迫ったが、四角からは逆に突き放されてしまい、シアトルフィッツにも直線半ばで差されて、勝ったメダグリアドーロから8馬身半差の3着と完敗した。

同月にフェアグラウンズ競馬場で出走したニューオーリンズH(米GⅡ・D9F)では、シアトルフィッツ、BCクラシックで8着だったテンモストウォンティド、ハスケル招待Hの勝利後にトラヴァーズSで2着するもBCマイルでは13着最下位に惨敗していたピースルールズ、この時点では全くの無名馬だった翌年のエクリプス賞年度代表馬セイントリアムなどが相手となった。120ポンドのテンモストウォンティドと115ポンドのシアトルフィッツが並んで単勝オッズ3.6倍の1番人気、119ポンドのピースルールズが単勝オッズ4.6倍の3番人気、118ポンドの本馬は単勝オッズ6.4倍の4番人気に留まった。スタートが切られると、ピースルールズが逃げを打ち、セイントリアムが2番手、本馬が3番手につけた。三角に入って仕掛けたが、直線で叩き合いながら伸びる前2頭には追いつけず、勝ったピースルールズから2馬身3/4差の3着に敗れた。

その後は4月のエクセルシオールBCH(米GⅢ・D9F)に向かった。前年のBCクラシック7着後にクラークHで1位入線2着降着など4戦連続2着だったイヴニングアタイア、チリのGⅠ競走クリアドレス大賞を勝って米国に移籍してきたホストなどが相手となった。120ポンドの本馬が単勝オッズ2.3倍の1番人気、119ポンドのイヴニングアタイアが単勝オッズ2.45倍の2番人気、114ポンドのホストが単勝オッズ5.7倍の3番人気となった。レースでは逃げるホストを2番手で追走し、四角でかわして先頭に立った。そこへ後方からイヴニングアタイアが追い上げてきたが、半馬身抑えて勝利を収めた。

次走のメトロポリタンH(米GⅠ・D8F)では、ドワイヤーS・ジムダンディSの勝ち馬で前年のトラヴァーズS3着・前走のカーターH2着のストロングホープ、ブラジルのGⅠ競走リオデジャネイロ州大賞を勝った後に米国に移籍してサンカルロスH・カーターHなど3連勝中のピコセントラル、BCディスタフ・サンタマルガリータ招待H・アップルブロッサムH3回・ミレイディBCH2回・ヴァニティH2回とGⅠ競走で9勝を挙げていた一昨年のエクリプス賞年度代表馬アゼリ、キングズビショップS・リヴァリッジBCS・ドワイヤーS・ウエストチェスターHの勝ち馬でフォアゴーH3着のガイジスター、前走カーターHで3着してきたアファームドHの勝ち馬アイオブザタイガー、前年の同競走で2着していたレムセンSの勝ち馬サーランド、ドンH8着最下位後にピムリコスペシャルHで3着していたボウマンズバンドなどが対戦相手となった。119ポンドのストロングホープが単勝オッズ2.95倍の1番人気、119ポンドのピコセントラルが単勝オッズ4.45倍の2番人気、118ポンドの本馬が単勝オッズ5.2倍の3番人気、117ポンドのアゼリが単勝オッズ6.8倍の4番人気となった。スタートが切られるとストロングホープが先頭に立ち、本馬は馬群の中団好位の4~5番手につけた。しかし最後までそのまま順位を上げる事が出来ず、先行して勝ったピコセントラルから5馬身1/4差の5着に敗れた。

翌6月のマサチューセッツH(米GⅡ・D9F)では、ケンタッキーダービーで本馬の12着に敗れた後は不振に陥っていたが前走の一般競走では快勝していたオフリーワイルド、エクセルシオールBCH2着後はベンアリS2着・ピムリコスペシャルH4着だったイヴニングアタイア、前走ウィリアムドナルドシェーファーHで2着してきたザレディーズグルーム、前走4着のガイジスター、一昨年のベルモントSの勝ち馬だがその後は4戦全て着外のサラヴァなどが相手となった。117ポンドの本馬が単勝オッズ3.1倍の1番人気、113ポンドのオフリーワイルドが端緒オッズ4.2倍の2番人気、114ポンドのイヴニングアタイアが単勝オッズ5.1倍の3番人気、116ポンドのザレディーズグルームが単勝オッズ6.5倍の4番人気、113ポンドのガイジスターが単勝オッズ6.8倍の5番人気となった。スタートが切られるとザレディーズグルームが逃げを打ち、本馬は2番手につけた。そして直線に入ると先頭のザレディーズグルームに並びかけた。そこへオフリーワイルドもやって来て、3頭の叩き合いとなったが、最後はオフリーワイルドが勝ち、本馬は頭差2着に敗れた。

サバーバンH(米GⅠ・D10F)では、BCクラシック3着後にサンバーナーディノHを勝ち前走のブルックリンHで2着してきたダイネヴァー、ニューオーリンズH勝利後にオークローンHも勝っていたピースルールズ、メトロポリタンHで2着だったボウマンズバンド、カナディアンターフH・スキップアウェイHの勝ち馬ニューファンドランドなどが対戦相手となった。116ポンドのダイネヴァーが単勝オッズ3.35倍の1番人気、120ポンドのピースルールズが単勝オッズ4.2倍の2番人気、115ポンドのボウマンズバンドが単勝オッズ4.45倍の3番人気、117ポンドの本馬が単勝オッズ5.1倍の4番人気、114ポンドのニューファンドランドが単勝オッズ9.4倍の5番人気となった。スタートが切られるとピースルールズが逃げを打ち、本馬はニューファンドランドと共に2番手を追走した。そして四角でピースルールズに並びかけ、直線で先頭に立った。そのまま勝利するかと思われたが、ゴール寸前でピースルールズとニューファンドランドに差し返されてしまい、勝ったピースルールズから首差3着と惜敗した。

次走のサラトガBCH(米GⅡ・D10F)では、サバーバンH7着後にホイットニーHで3着してきたボウマンズバンド、サバーバンH5着・ホイットニーH4着とベルモントSの後は未だ入着なしのサラヴァ、ブラックタイアフェアーHなど3連勝中のアルムニホール、マサチューセッツHで3着だったザレディーズグルーム、同5着だったイヴニングアタイアなどが対戦相手となった。118ポンドの本馬が単勝オッズ2倍の1番人気、116ポンドのボウマンズバンドが単勝オッズ4.95倍の2番人気、115ポンドのサラヴァが単勝オッズ7.3倍の3番人気、115ポンドのアルムニホールが単勝オッズ7.8倍の4番人気、115ポンドのイヴニングアタイアが単勝オッズ8.5倍の5番人気となった。スタートが切られると単勝オッズ30倍の最低人気馬ザレディーズグルームが逃げを打ち、本馬は3番手につけた、そして四角で位置取りを上げて、直線入り口で先頭に立ったのだが、ここで後方から来たイヴニングアタイアに一気に抜き去られてしまい、5馬身差をつけられて2着に敗れた。

次走は、秋の最大目標だったジョッキークラブ金杯(米GⅠ・D10F)となった。前走ペンシルヴァニアダービーを8馬身半差で勝ってきたラヴオブマネー、ドワイヤーS・ジムダンディS・トラヴァーズSで3戦連続2着してきたブルーグラスS・ケンタッキージョッキークラブS・イロコイSの勝ち馬でフロリダダービー3着のザクリフスエッジ、イヴニングアタイア、サンタカタリナS・ストラブSの勝ち馬でハリウッドフューチュリティ2着のドメスティックディスピュート、サラトガBCH3着後に出走したウッドワードSで3着だったボウマンズバンド、サバーバンH2着後はホイットニーH7着・ウッドワードS5着だったニューファンドランドの6頭が対戦相手となった。本馬とラヴオブマネーが並んで単勝オッズ3.8倍の1番人気に支持され、ザクリフスエッジとイヴニングアタイアが並んで単勝オッズ4.5倍の3番人気、ドメスティックディスピュートが単勝オッズ11.3倍の5番人気という混戦模様だった。

スタートが切られるとまずはラヴオブマネーが先頭に立ち、本馬が2番手と、1番人気の2頭が馬群を先導した。三角に入ると、道中は3番手につけていた単勝オッズ21.3倍の最低人気馬ニューファンドランドが仕掛けて先頭に立ち、本馬も遅れずに付いていった。そして直線に入ると、本馬とニューファンドランドの叩き合いとなったが、本馬が3/4馬身差で勝利を収め、プリークネスS以来のGⅠ競走3勝目を挙げた。

続いて、ローンスターパーク競馬場で行われたBCクラシック(米GⅠ・D10F)に参戦した。対戦相手は、ヴォスバーグS・トムフールH・フィリップHアイズリンBCH・ウッドワードSと4連勝中のゴーストザッパー、この年のドバイワールドC・パシフィッククラシックS・サンアントニオHを勝っていた前年の覇者プレザントリーパーフェクト、ベルモントS・シャンペンS・トラヴァーズSの勝ち馬バードストーン、ホイットニーH・ケンタッキーCクラシックH・コーンハスカーBCHなど5連勝中だったロージズインメイ、メトロポリタンH8着後にゴーフォーワンドH・スピンスターSを勝ちGⅠ競走勝ちを11勝まで増やしていたアゼリ、前年のBCクラシック6着後にホイットニーH・パシフィッククラシックSで2着・スティーヴンフォスターHで3着していたパーフェクトドリフト、サバーバンH6着後にメドウランズBCHで2着していたダイネヴァー、ニューファンドランド、前走5着のボウマンズバンド、日本から参戦してきたダービーグランプリの勝ち馬パーソナルラッシュなどだった。ゴーストザッパーとプレザントリーパーフェクトが並んで単勝オッズ3.5倍の1番人気、バードストーンが単勝オッズ7.5倍の3番人気、本馬が単勝オッズ8.7倍の4番人気、ロージズインメイが単勝オッズ9.7倍の5番人気となった。しかし本馬はスタートから先頭を快調に走るゴーストザッパーのペースに付いていけずに、道中は馬群の中団後方に置かれてしまった。向こう正面では3番手辺りまで押し上げてきたものの、直線に入ると失速して、勝ったゴーストザッパーから14馬身1/4差をつけられた10着に大敗した。4歳時は10戦3勝の成績だった。

競走生活(5歳時)

5歳時は5月のピムリコスペシャルH(米GⅠ・D9.5F)から始動した。前年のマサチューセッツH勝利後に長期休養に入るも前走のエクセルシオールBCHを勝ってきたオフリーワイルド、ガルフストリームパークHの勝ち馬でプリークネスS・ウッドメモリアルS・トラヴァーズS・ドンH3着のエディントン、スタイヴァサントH・サルヴェイターマイルHの勝ち馬プレジデンシャルアフェア、片目が見えないハンデを乗り越えてイリノイダービー・レオナルドリチャーズS・ローンスターダービー・ナショナルジョッキークラブHを勝っていたポラーズヴィジョンなどが相手となった。118ポンドのオフリーワイルドが単勝オッズ3.4倍の1番人気、116ポンドのエディントンが単勝オッズ3.6倍の2番人気、120ポンドの本馬が単勝オッズ4.8倍の3番人気、115ポンドのプレジデンシャルアフェアが単勝オッズ5.4倍の4番人気、117ポンドのポラーズヴィジョンが単勝オッズ6.7倍の5番人気となった。スタートが切られるとプレジデンシャルアフェアが逃げを打ち、本馬は馬群の中団を追走した。そして向こう正面ではいったんは2番手まで上がってきたが、直線では伸びずに、勝ったエディントンから7馬身半差の4着に敗れた。

次走のブルックリンH(米GⅡ・D9F)では、前年のマサチューセッツH4着後にフォアゴーHで3着してウエストチェスターHを勝ってきたガイジスター、前年のジョッキークラブ金杯4着後にニッカーボッカーH・クイーンズカウンティHで2着していたイヴニングアタイア、バッシュフォードマナーS・ハッチソンS・タンパベイダービーの勝ち馬でブルーグラスS3着のライムハウスなどが対戦相手となった。117ポンドのガイジスターが単勝オッズ3.3倍の1番人気、119ポンドの本馬が単勝オッズ3.55倍の2番人気、115ポンドのライムハウスが単勝オッズ3.9倍の3番人気、117ポンドのイヴニングアタイアが単勝オッズ8.4倍の4番人気となった。しかし結果は馬群の中団から道中で順位を上げることも出来ずに、勝ったライムハウスから8馬身半差の4着に敗退。そしてこのレースを最後にサントス騎手は本馬の主戦を降ろされた。

次走のサバーバンH(米GⅠ・D10F)では、ジェリー・ベイリー騎手とコンビを組んだ。ピムリコスペシャルHで2着だったポラーズヴィジョン、同6着だったオフリーワイルド、3連勝中のレコードバスター、リヒタースケイルBCスプリントCS・ダービートライアルS・ウエストヴァージニアダービーの勝ち馬で前走メトロポリタンH3着のサーシャックルトン、前走6着のイヴニングアタイアなどが対戦相手となった。118ポンドのポラーズヴィジョンが単勝オッズ3.8倍の1番人気、117ポンドの本馬が単勝オッズ3.95倍の2番人気、116ポンドのオフリーワイルドが単勝オッズ4.6倍の3番人気、113ポンドのレコードバスターが単勝オッズ4.9倍の4番人気、116ポンドのサーシャックルトンが単勝オッズ9.1倍の5番人気となった。しかしここでも本馬は馬群の中団を追走するのがやっとの有様で、直線で入ると失速して、勝ったオフリーワイルドから18馬身1/4差の6着と、ブルックリンHよりさらに悪い結果になった。

5歳時は僅か3戦のみで終えた。この年に本馬を負かしてGⅠ競走を勝ったエディントンとオフリーワイルドは、いずれもそれが唯一のGⅠ競走勝利という馬であり、本馬の競走能力が減退しているのは明白だった。

競走生活(6歳時)

種牡馬になれない騙馬の宿命で本馬は翌6歳時も現役を続けたが、正直これ以降は書くべき内容が少ない。本馬の頑張りに敬意を表して、一通り記載するが、今までよりも簡潔になっている事を了承されたい。

1月にガルフストリームパーク競馬場で出たミスタープロスペクターH(米GⅢ・D6F)では、単勝オッズ7倍の4番人気で、後方から伸びずに、ギャフの10馬身3/4差7着。2月のガルフストリームパーク競馬場ダート8ハロンの一般競走では、単勝オッズ5.6倍の3番人気で、3番手から直線で粘り、サーグリーリーの1馬身半差2着。3月のガルフストリームパークH(米GⅡ・D9.5F)では、単勝オッズ5.8倍の4番人気で、3番手から失速して、ハーリントンの10馬身差7着。4月初めのエクセルシオールBCH(米GⅢ・D9F)では、単勝オッズ5.5倍の3番人気で、逃げて直線で粘り、ウエストヴァージニアの1馬身3/4差2着。

4月末のキングスポイントH(D9F)では、リチャード・ミグリオーレ騎手を鞍上に単勝オッズ1.6倍の1番人気に支持され、スタートから単騎逃げに持ち込み、直線で並びかけてきたゴールドアンドローゼズとの叩き合いを3/4馬身差で制して、ジョッキークラブ金杯以来1年7か月ぶりの勝利を挙げた。5月のウィリアムドナルドシェイファーH(米GⅢ・D9F)では、単勝オッズ2.6倍の2番人気で、3番手から直線で伸びずに、マスターコマンドの7馬身半差3着。

7月には加国のウッドバイン競馬場に赴き、ドミニオンデイS(加GⅢ・D10F)に出走した。ミグリオーレ騎手を鞍上に単勝オッズ2.6倍の1番人気に支持されると、スタートからゴールまで先頭を走り続けて、2着ノーランズキャットに1馬身半差で勝利した。1973年に北米でグレード制が施行された後において、ケンタッキーダービー馬が6歳時以降にグレード競走を勝った例は無く、本馬が史上初(現在でも唯一)である。また、ケンタッキーダービー馬が6歳時以降に勝利を挙げた例も、1982年のケンタッキーダービー馬ガトデルソルが6歳時の1985年にカバレロHというノングレード競走を勝って以来22年ぶりだった。

9月初めのウッドワードS(米GⅠ・D9F)では、単勝オッズ13倍の5番人気で、3番手を先行するも道中で後続馬に飲み込まれ、プレミアムタップの11馬身3/4差8着。2週間後のブルックリンBCH(米GⅡ・D9F)では、単勝オッズ8.3倍の3番人気で、3番手から直線でもう一つ伸びを欠き、ワンデリンボーイの5馬身3/4差4着。10月のエンパイアクラシックH(D9F)では、単勝オッズ5.7倍の3番人気で、馬群の中団から今ひとつ伸びを欠き、オーガナイザーの1馬身半差4着。6歳時の成績は10戦2勝となった。

競走生活(7歳時)

翌7歳時は4月にキーンランド競馬場で行われたオールウェザー8.5ハロンのオプショナルクレーミング競走から始動した。単勝オッズ5.9倍の4番人気で、3番手から大きく失速して、ラゾールの12馬身差7着。次走のキングスポイントH(D9F)では、単勝オッズ5.5倍の4番人気で、3番手追走の位置取りのままで、アカウントフォーザゴールドの6馬身半差3着。5月のワゴンリミットS(D12F)では、単勝オッズ4.6倍の3番人気で、スタートから後続を大きく引き離して一時は10馬身近い差をつける大逃げを試みるも、四角でかわされて、ライジングムーンの7馬身半差3着。

7月には、ニューヨーク州フィンガーレイクス競馬場で行われたワズワース記念H(D9F)に出走。他馬勢よりも4~20ポンド重い123ポンドのトップハンデながらも単勝オッズ2倍の1番人気に支持されると、アラン・ガルシア騎手を鞍上に、馬群の中団追走から直線入り口で先頭に立ち、そのまま押し切って3馬身差で勝利を収め、約1年ぶりの勝ち星を挙げた。このレースの9日後にタッグ師は本馬の引退を表明、ようやく競走馬としての生活に終止符を打った。

獲得賞金総額352万9412ドルはニューヨーク州産馬としては史上最高額だった。そのためにニューヨークサラブレッド生産者協会は本馬の功績を非常に讃えており、3・4歳時にはニューヨーク州年度代表馬に選出したし、2010年には過去10年におけるニューヨーク産の代表馬にも選出した。また、2012年には生誕地であるサラトガスプリングスに本馬の銅像が作られている。

なお、4歳以降に明らかに競走能力の減退が見られた理由として、3歳暮れにサンタアニタパーク競馬場で行われたBCクラシックに出走した際に、時を同じくしてカリフォルニア州で発生した山火事を挙げる人がいる。カリフォルニア州は山火事が多い事で知られるが、この2003年10月下旬に発生した山火事は史上最大級であり、3600件の家が焼失し、24人もの人が犠牲となる大惨事となった。そして立ち上った煙はカリフォルニア州全体を覆いつくしたのだが、その飛んできた煤を本馬が吸い込み、呼吸器系に問題が発生したのだというのである。

血統

Distorted Humor フォーティナイナー Mr. Prospector Raise a Native Native Dancer
Raise You
Gold Digger Nashua
Sequence
File Tom Rolfe Ribot
Pocahontas
Continue Double Jay
Courtesy
Danzig's Beauty Danzig Northern Dancer Nearctic
Natalma
Pas de Nom Admiral's Voyage
Petitioner
Sweetest Chant Mr. Leader Hail to Reason
Jolie Deja
Gay Sonnet Sailor
Gay Rig
Belle's Good Cide Slewacide Seattle Slew Bold Reasoning Boldnesian
Reason to Earn
My Charmer Poker
Fair Charmer
Evasive Buckpasser Tom Fool
Busanda
Summer Scandal Summer Tan
Go-Modern
Belle of Killarney Little Current Sea-Bird Dan Cupid
Sicalade
Luiana My Babu
Banquet Bell
Cherished Moment Graustark Ribot
Flower Bowl
Pumpkin Patch Bold Ruler
Bravura

ディストーテッドユーモアは当馬の項を参照。本馬が誕生した当時は種付け料1万ドルだったが、本馬の活躍を受けて人気が沸騰し、最盛期の2008年には種付け料30万ドルを誇る米国きっての人気種牡馬まで出世しており、本馬以降も多くの活躍馬を出している。

母ベルズグッドサイドは現役成績26戦2勝。本馬が活躍を始める寸前の2003年3月に、出産後の疝痛により10歳の若さで他界した。残した産駒は本馬を含めて僅か5頭で、本馬以外に活躍馬はいない。しかし本馬の半妹ロックサイド(父パーソナルフラッグ)の子にはルール【モンマスカップS(米GⅡ)・デルタジャックポットS(米GⅢ)・サムFデーヴィスS(米GⅢ)】がおり、牝系は維持されている。ベルズグッドサイドの半姉にはベルオブコジーン(父コジーン)【モデスティH(米GⅢ)・アーリントンメイトロンH(米GⅢ)】がいるが、近親にそれほど活躍馬がいるわけではない。しかしベルズグッドサイドの曾祖母パンプキンパッチの姉弟には、カンダリータ【メイトロンS・スピナウェイS】、ヘイルザパイレーツ【ガルフストリームパークH(米GⅠ)】がいるし、パンプキンパッチの半姉オータランの曾孫には名繁殖牝馬トゥソード【ゲイムリーS(米GⅠ)】がいる。トゥソードの息子こそが本馬をベルモントSで破ったエンパイアメーカーであるわけで、本馬とエンパイアメーカーは遠い親戚に当たるわけである。→牝系:F6号族②

母父スルーアサイドはシアトルスルー産駒で、現役成績は1戦未勝利ながらも、トップフライトH・マスケットH・ベルデイムSなどを制して1966年の米最優秀ハンデ牝馬に選ばれたサマースキャンダルの孫という良血が評価されて種牡馬入りした。貧弱な競走成績だったが種牡馬としては複数のGⅠ競走勝ち馬を出して活躍し、2000年9月に老衰のため20歳で他界している。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬はしばらくタッグ師の元で暮らしていたが、2008年12月からはケンタッキー州レキシントンにあるケンタッキーホースパークで余生を過ごしている。やはりケンタッキーホースパークで余生を送っていたシガーが2014年10月に他界すると、シガーが使用していた馬房は本馬に与えられた。

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