タバスコキャット
和名:タバスコキャット |
英名:Tabasco Cat |
1991年生 |
牡 |
栗毛 |
父:ストームキャット |
母:バーベキューソース |
母父:ソースボート |
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日本における種牡馬としての活躍を期待されながら早世したストームキャット直子のプリークネスS・ベルモントS優勝馬 |
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競走成績:2・3歳時に米で走り通算成績18戦8勝2着3回3着2回 |
誕生からデビュー前まで
父ストームキャットが種牡馬生活を送っていた米国ケンタッキー州オーバーブルックファームにおいて、同牧場の所有者ウィリアム・T・ヤング氏と、世界第3位のアルミニウム製造会社レイノルズメタルズ社の会長で馬主でもあったデヴィッド・P・レイノルズ氏により共同生産・所有され、ダレル・ウェイン・ルーカス調教師に預けられた。
競走生活(2歳時)
2歳7月にベルモントパーク競馬場で行われたダート5.5ハロンの未勝利戦で、ジェリー・ベイリー騎手を鞍上にデビューした。このレースでは後に種牡馬として活躍するエンドスウィープが単勝オッズ2.2倍の1番人気に支持されていた。一方の本馬は単勝オッズ13.9倍で、8頭立て6番人気の低評価だった。レースでは馬群の中団を追走したが、四角で外側に大きく膨らんでしまい、そのまま直線で伸びずに、勝った単勝オッズ10.3倍の5番人気馬ホイットニータワーから15馬身1/4差をつけられた7着と惨敗した(エンドスウィープは2着だった)。
翌月にサラトガ競馬場で出走したダート5ハロンの未勝利戦では、リチャード・ミグリオーレ騎手とコンビを組んだ。しかしここでも単勝オッズ20.3倍で、10頭立て8番人気の低評価だった。今回の本馬はスタートで後手を踏んでしまったが、ミグリオーレ騎手が加速させて道中は4~5番手の好位に落ち着いた。そのままの順位で直線に入ってくると、内埒沿いをそれなりに粘り、勝った単勝オッズ7.7倍の4番人気馬アッピングジアンテから2馬身3/4差の4着と、前回よりは様になるレースを見せた。
3週間後のサラトガ競馬場ダート6ハロンの未勝利戦がデビュー3戦目となった。今回もミグリオーレ騎手とコンビを組んだ本馬は、単勝オッズ5.1倍で、9頭立ての2番人気となった。ここでは逃げる単勝オッズ1.7倍の1番人気馬テキサスフォールズの直後2番手を追走。テキサスフォールズが三角で失速すると、単勝オッズ19.9倍の5番人気馬マジックケイバーと共に先頭に立った。そして直線の叩き合いを1馬身半差で制して勝ち上がった。
翌9月に出走したベルモントパーク競馬場ダート8ハロンの一般競走では、単勝オッズ3.3倍で7頭立ての1番人気に支持された。今回もミグリオーレ騎手とコンビを組んだ本馬はやはり先行策を採り、道中は3番手を追走した。そして四角で仕掛けて直線入り口で先頭に立つと、そのまま押し切って、2着となった単勝オッズ3.7倍の2番人気馬アマソスに首差で勝利した。
その後は米国西海岸のサンタアニタパーク競馬場で行われるブリーダーズカップを目指して西へ向かった。その途中のケンタッキー州キーンランド競馬場に立ち寄り、10月のフォートスプリングS(D7F)に出走した。ここでは主戦となるパット・デイ騎手と初コンビを組み、単勝オッズ1.8倍の1番人気に支持された。スタートが切られると単勝オッズ15.9倍の4番人気馬エメラルドランナーが先頭に立ち、本馬もその直後の2番手にぴたりとつけた。四角に入ると後方を走っていた単勝オッズ3.8倍の2番人気馬ゴールデンギアが先に仕掛けて直線入り口で先頭に立った。しかし本馬もゴールデンギアに離されずに食い下がり、叩き合いに持ち込んだ。そしてゴール前で僅かに前に出て首差で勝利した。
そして迎えた11月のBCジュヴェナイル(GⅠ・D8.5F)では、ホープフルS・シャンペンS・サラトガスペシャルS・サンフォードSの勝ち馬でベルモントフューチュリティS2着のデヒア、未勝利戦と一般競走を続けて完勝してきたブロッコ、カリフォルニアカップジュヴェナイルSを勝ってきたフライングセンセーション、ハリウッドジュヴェナイルCSSの勝ち馬でバッシュフォードマナーS・デルマーフューチュリティ・ノーフォークS2着のランブリンガイ、ノーフォークSの勝ち馬シェパーズフィールド、デルマーフューチュリティ・ノーフォークS3着のフェラーラ、ジュヴェナイルBCS2着馬ブルミンアフェアー、デルマーフューチュリティの勝ち馬ウイニングパクト、バルボアSの勝ち馬クレストンなど10頭が対戦相手となった。デヒアが単勝オッズ1.7倍の1番人気、ブロッコが単勝オッズ4倍の2番人気、フライングセンセーションが単勝オッズ7.4倍の3番人気と続く一方で、グレード競走出走経験が無い上に勝ち方も地味だった本馬の注目度は低く、単勝オッズ34.3倍の6番人気止まりだった。
スタートが切られると本馬より人気薄の単勝オッズ42.4倍の8番人気だったウイニングパクトが逃げを打ち、ランブリンガイが2番手、本馬は3番手を追走した。やがてブロッコ、単勝オッズ43.4倍の9番人気馬ブルミンアフェアー、デヒアなどが上がってきて、本馬をかわしていった。四角で反応が悪く、直線入り口で6番手だった本馬は、さらに前が一瞬塞がって外側に持ち出すというロスも蒙ってしまった。それでも直線ではそれなりに末脚を伸ばし、前を行くデヒア、ウイニングパクト、ランブリンガイはかわしたものの、ブロッコとブルミンアフェアーの2頭には届かず、勝ったブロッコから6馬身半差、2着ブルミンアフェアーからも1馬身半差の3着に敗れた。2歳時はこれが最後のレースで、この年の成績は6戦3勝だった。
事件
本馬が3歳になる前の12月15日、本馬を語る際に外せない大事件が勃発した。サンタアニタパーク競馬場における調教後に脱走騒ぎを起こした本馬は、それを止めようとしたルーカス師の息子で調教助手だったジェフ・ルーカス氏に体当たりを食らわし、彼に重傷を負わせてしまったのである。この事件は翌日に米国各地の新聞で報じられたので、それらを参照に詳細な顛末を記載してみる。
「ダレル・ウェイン・ルーカス調教師の36歳の息子で、父の助手を15年間務めていたジェフ・ルーカス氏は、カリフォルニア州サンタアニタパーク競馬場の厩舎内で逃げ出した馬に撥ねられて、頭部に重傷を負いました。ジェフが重傷を負ったのは朝の調教の直後でした。撥ねられた衝撃により地面で頭を強打したジェフは昏倒しました。父のルーカス師は慌てて息子のところへ駆け寄り、周囲の人に救急車を呼ぶように叫びました。ルーカス師はジェフの上に跪いて名前を連呼しましたが反応はありませんでした。最終的にジェフはヘリコプターでパサデナにあるハンティントン記念病院に搬送されましたが、頭蓋骨を複数個所骨折して危篤状態です。父のルーカス師は、事件の4時間後に医師から電話で報告を受けました。CTスキャンを使って診察した医師によると、重態であり最初の24時間が山になると言われたそうです。事件の様子を目の当たりにしたビル・スミス調教師によると、事件は前月にサンタアニタパーク競馬場で行われたBCジュヴェナイルで3着だったタバスコキャットが、朝の調教を受けている様子をジェフが見ていた直後に発生しました。調教終了後に馬の身体を洗浄する準備をしていた際に、馬が手綱を振りほどいて走り出しました。そして70ヤードほど離れた場所にいたジェフの方向に突進しました。スミス師によると、(馬が人間に向かって暴走しても)馬のほうから人間を避けるか、減速するのが当たり前だそうです。しかしこの時の馬は避けようとも減速しようともしませんでした。以前からジェフと顔見知りだったスミス師は、父のウェイン・ルーカス師の名声の半分は息子のジェフの存在あってこそで、例えば1988年のケンタッキーダービー馬ウイニングカラーズを育てたのもジェフであり、父は息子に絶大な信頼を置いていたそうです。」
頭蓋骨骨折と脳挫傷で意識不明の重態となったルーカス氏だが、数週間後に意識が回復し、後遺症こそ残ったものの、奇跡的に一命を取り留め、後に本馬が米国三冠競走に出走した際にはカリフォルニア州の自宅でテレビ観戦できたという。これは、本馬の非常に激しい気性を示す逸話としてよく知られている。
競走生活(3歳初期)
この激しい気性をレース出走により緩和させる目的だったのかどうかは不明だが、3歳時は1月から平均月1回のペースでほぼ休み無く走ることになる。まずはベイメドウズ競馬場で行われたエルカミノリアルダービー(GⅢ・D8.5F)から始動した。ここではBCジュヴェナイルで本馬から3馬身差の4着だったフライングセンセーションが単勝オッズ3倍の1番人気に支持され、本馬が単勝オッズ3.3倍の2番人気となった。レースでは本馬が3番手、フライングセンセーションが4~5番手を追走。そして直線入り口で本馬とフライングセンセーションの2頭がほぼ同時に先頭に立ち、そのまま2頭の一騎打ちとなった。最後は本馬が2着フライングセンセーションに1馬身差で勝利を収めた。
次走は3月のサンラファエルS(GⅡ・D8F)となった。ここでは前走サンヴィンセントBCSを勝ってきたフラインジェイブライアンが単勝オッズ1.7倍の1番人気に支持され、本馬が単勝オッズ2.9倍の2番人気だった。スタートが切られると、本馬がデビュー以来初めての逃げの手に出て、その直後をフラインジェイブライアンが追いかけてくる展開となった。一時期はこの2頭が3番手以下に5馬身以上の差をつけたが、やがてフラインジェイブライアンは失速。入れ代わるように上がってきたのは単勝オッズ12.3倍の4番人気馬ポウイズキャッスルだった。直線では3番手以下を18馬身も引き離して、逃げる本馬と追うポウイズキャッスルの一騎打ちが展開されたが、本馬が凌ぎ切って、2着ポウイズキャッスルに1馬身差で勝利した。
次走は4月のサンタアニタダービー(GⅠ・D9F)となった。ここでは、BCジュヴェナイル勝利後にハリウッドフューチュリティ・サンフェリペSと連続2着していたブロッコ、ブラッドベリーSで2着してきたニューメラス(ジェイドロバリーの全弟)、一般競走を勝ってきたストローズクリーク、サンラファエルSで4着に終わっていたフラインジェイブライアンなどとの対戦となった。ブロッコが単勝オッズ1.7倍の1番人気、本馬が単勝オッズ3.5倍の2番人気、ニューメラスとストローズクリークのカップリングが単勝オッズ4.6倍の3番人気となった。レースではサンラファエルSで惨敗したフラインジェイブライアンが逃げを打ち、本馬は離れた2番手を追走。そしてフラインジェイブライアンが失速すると代わって先頭に立とうとしたが、そこへ本馬をマークするように走っていたブロッコに並びかけられた。そして直線の叩き合いに敗れて3/4馬身差の2着に終わった。しかし前年のBCジュヴェナイルで6馬身半差をつけられたブロッコに僅差まで迫っており、着実に力を付けている事を示した。
競走生活(米国三冠競走)
そして翌5月にケンタッキーダービー(GⅠ・D10F)に出走した。対戦相手は、ベルモントフューチュリティS・フロリダダービー・ハッチソンS・ブルーグラスS勝ちなど8戦7勝のホーリーブル、ブロッコ、サンタアニタダービーで本馬から1馬身差の3着だったストローズクリーク、レムセンSの勝ち馬でファウンテンオブユースS・ウッドメモリアルS2着のゴーフォージン、ハリウッドフューチュリティの勝ち馬でブルーグラスS2着のヴァリアントネイチャー、アーカンソーダービーで2着してきたBCジュヴェナイル2着馬ブルミンアフェアー、サンフェリペSの勝ち馬でレキシントンS2着のソウルオブザマター、レキシントンSを勝ってきたサザンリズム、サンラファエルS2着後にジムビームSでも2着してきたポウイズキャッスル、フラミンゴSの勝ち馬メドウフライト、パナマのGⅡ競走ペリオディスタ賞の勝ち馬でレキシントンS3着のウリセスなど13頭だった。ホーリーブルが単勝オッズ3.2倍の1番人気、ブロッコが単勝オッズ5.3倍の2番人気、本馬が単勝オッズ7.1倍の3番人気、ストローズクリークが単勝オッズ8.9倍の4番人気、ゴーフォージンが単勝オッズ10.1倍の5番人気となった。レースでは逃げると思われていたホーリーブルが出遅れて、ゴーフォージンが不良馬場の中を先頭に立つ展開となった。本馬は好位の4~5番手辺りを追走したが、終始大外を回らされる苦しい状況だった。不良馬場の影響で後続馬の末脚は鈍り、そのままゴーフォージンが逃げ切って優勝。本馬は四角で内側を突いたものの、直線で伸びずに、ゴーフォージンから9馬身差の6着に終わった。
次走のプリークネスS(GⅠ・D9.5F)では、前走2着のストローズクリーク、同4着のブロッコ、同12着のホーリーブルなどが回避して、ケンタッキーダービーからの臨戦組は、本馬、ゴーフォージン、前走3着のブルミンアフェアー、同8着のポウイズキャッスルの4頭のみだった。それ以外の出走馬は、サンタアニタダービー4着後にダービートライアルSを勝っていたニューメラス、アーカンソーダービーを勝ってきたコンサーン、アーカンソーダービー3着馬シルヴァーゴブリン、ルイジアナダービーの勝ち馬カンダリー、アーリントンワシントンフューチュリティ・ブリーダーズフューチュリティS・ジムビームSの勝ち馬ポーラーエクスペディション、プライヴェートタームズSなどの勝ち馬ルーミングで、本馬を含めて合計10頭による戦いとなった。ゴーフォージンが単勝オッズ3.8倍の1番人気、ブルミンアフェアーが単勝オッズ4.1倍の2番人気、本馬が単勝オッズ4.6倍の3番人気、ニューメラスが単勝オッズ10.1倍の4番人気、シルヴァーゴブリンが単勝オッズ10.9倍の5番人気となった。
スタートが切られると今回も先頭を伺ったゴーフォージンに、単勝オッズ19.1倍の最低人気馬ポーラーエクスペディションが絡んで先頭争いを演じ始めた。絶好の1番枠(前走は9番枠)となった本馬は、内側の経済コースを走りながら、4番手の好位でゴーフォージンをマーク。やがてポーラーエクスペディションが失速してゴーフォージンが単独で先頭に立つと、本馬もそれを追って上がっていった。そして直線に入ると外側からゴーフォージンに並びかけて叩き合いに持ち込んだ。2頭の一騎打ちはしばらく続いたが、やがて本馬が前に出て、2着ゴーフォージンに3/4馬身差、3着コンサーンにはさらに6馬身差をつけて勝利した。
次走のベルモントS(GⅠ・D12F)では、ゴーフォージン、プリークネスSを回避してベルモントSに狙いを絞ってきたケンタッキーダービー2着馬ストローズクリーク、イリノイダービー2着・シャンペンS3着のアマソス、一般競走を勝ってきたシグナルタップ、ケンタッキーダービーで14着最下位だったウリセスの5頭だけが対戦相手となった。ストローズクリークが単勝オッズ2.3倍の1番人気、ゴーフォージンが単勝オッズ2.5倍の2番人気で、本馬は単勝オッズ4.4倍で3戦連続の3番人気だった。
レースではやはりゴーフォージンが逃げを打ち、本馬は2番手、やや出遅れ気味だったストローズクリークは4番手を追走した。ストローズクリークは三角から四角にかけて上がってきたが、直線では今ひとつ伸びを欠いた。一方、前方では逃げるゴーフォージンに本馬が直線入り口で並びかけていた。そして叩き合いになったのは一瞬で、本馬がすぐに前に出て、そのまま2着ゴーフォージンに2馬身差をつけて優勝した。
競走生活(3歳後半)
次走はベルモントSから7週間後のジムダンディS(GⅡ・D9F)となった。126ポンドのトップハンデを課された本馬が単勝オッズ1.4倍の1番人気、112ポンドの軽量が評価されたステークス競走初出走のアナカウンティドフォーが単勝オッズ3.4倍の2番人気、斤量2位の120ポンドだったシェリダンSの勝ち馬でホープフルS・サラトガスペシャルS2着のスルージンフィズが単勝オッズ6倍の3番人気となった。スタートが切られるとスルージンフィズが先頭に立ち、ベルモントSで6着最下位だったウリセスが2番手、本馬が3番手につけた。しかし当初は最後方を走っていたアナカウンティドフォーが向こう正面で上がってきて先頭を奪取。その後は軽量を活かして逃げまくるアナカウンティドフォーと、それを追いかける本馬の一騎打ちとなった。しかしさすがに14ポンドの斤量差は大きく、追いつけなかった本馬は1馬身差の2着に敗れた。
8月のトラヴァーズS(GⅠ・D10F)では、ケンタッキーダービー12着後にメトロポリタンH・ドワイヤーS・ハスケル招待Hを勝っていたホーリーブル、プリークネスS3着後にオハイオダービー2着・ハスケル招待H3着と好走を続けていたコンサーン、アナカウンティドフォーなど4頭だけが対戦相手となった。ホーリーブルが単勝オッズ1.8倍の1番人気、本馬と本馬陣営がホーリーブル潰しのために用意したラビット役のコマンチトレイルのカップリングが単勝オッズ2.6倍の2番人気、コンサーンが単勝オッズ6.5倍の3番人気、アナカウンティドフォーが単勝オッズ7倍の最低人気となった。スタートが切られるとホーリーブルが先頭を伺ったが、コマンチトレイルがそれに競りかけていき、本馬は3番手を追走した。しかしコマンチトレイルを振り切って単独先頭に立ったホーリーブルに追いつくことは出来ず、逆に最後方から追い上げてきたコンサーンにも瞬く間に引き離されてしまった。そして勝ったホーリーブルと首差の接戦を演じた2着コンサーンから17馬身も離された3着に終わり、4着アナカウンティドフォーを1馬身抑え込むのが精一杯という冴えない結果となった。
9月にターフウェイパーク競馬場で出走したケンタッキーCクラシック(D9F)は古馬混合戦であり、ノーフォークS・ハリウッドフューチュリティ・チャールズHストラブS・サンタアニタH・オークローンH・ハリウッド金杯・デルマーフューチュリティ・スワップスS・サンフェルナンドSなどを勝ちケンタッキーダービー2着の実績もあった米国西海岸の古豪ベストパル、ナッソーカウンティH・ジャマイカH・ワイドナーHの勝ち馬でウッドメモリアルS・ホイットニーH2着のウエストバイウエスト、ワシントンパークHの勝ち馬パワフルパンチといった有力古馬勢が主な対戦相手となった。3歳馬なのに120ポンドのトップハンデを課された本馬と115ポンドのベストパルが並んで単勝オッズ2.3倍の1番人気に支持され、117ポンドのウエストバイウエストが単勝オッズ5.4倍の3番人気となった。今回の本馬はスタートから積極的に逃げる作戦を選択。向こう正面ではベストパルなどの他馬勢に殆ど並ばれる場面もあったが、三角に入ると徐々に差を広げていき、直線をそのまま押し切って、2着に突っ込んできた単勝オッズ30.1倍の5番人気馬マイティーアヴァンティに2馬身差、3着ベストパルにはさらに1馬身半差をつけて勝利した。
次走はやはり古馬勢との対戦となるジョッキークラブ金杯(GⅠ・D10F)だった。ウッドメモリアル招待S・ガルフストリームパークH・ピムリコスペシャルH・サバーバンH2回・ゴーサムS・エクセルシオールH・ブルックリンHなどを勝ちトラヴァーズS・フィリップHアイズリンH・ウッドワードS2回・オークローンH・ピムリコスペシャルH・ホイットニーHで2着していた5歳馬デヴィルヒズデュー、前年のベルモントSとこの年のホイットニーH・エクセルシオールBCHを勝っていたコロニアルアッフェアー、ベルモントS2着後はフォアゴーH3着・ウッドワードS4着と今ひとつだったゴーフォージン、仏国でエドモンブラン賞・ラクープを勝った後に米国に移籍して初戦のマンノウォーSで2着していたフラッグダウン、前年のハスケル招待Hの勝ち馬でベルモントS・トラヴァーズS2着のキッシンクリス、フラミンゴS・ブルーグラスS・ドンH2回・ベンアリSの勝ち馬ピストルズアンドロージズなどが対戦相手となった。デヴィルヒズデューが単勝オッズ2.4倍の1番人気、本馬が単勝オッズ3.8倍の2番人気、コロニアルアッフェアーが単勝オッズ6.4倍の3番人気、ゴーフォージンが単勝オッズ6.7倍の4番人気となった。スタートが切られるとゴーフォージンとピストルズアンドロージズの2頭が逃げを打ち、本馬は3番手を追走した。かつての輝きが消えうせていたゴーフォージンはレース中盤で早々に脱落し、代わってデヴィルヒズデュー、コロニアルアッフェアー、フラッグダウンが上がってきて、直線入り口で次々に本馬を抜き去っていった。本馬も抵抗したものの、最後は力尽き、勝ったコロニアルアッフェアーから3馬身1/4差の4着に終わった。
その後は翌11月にチャーチルダウンズ競馬場で行われたBCクラシック(米GⅠ・D10F)に向かった。対戦相手は、前走2着のデヴィルヒズデュー、同3着のフラッグダウン、同8着最下位のゴーフォージン、トラヴァーズS2着後にモルソンエクスポートミリオン3着・スーパーダービー2着と相変わらず勝ち切れていなかったコンサーン、ケンタッキーCクラシックSから直行してきたベストパル、ケンタッキーダービー5着後に一般競走とスーパーダービーを連勝していたソウルオブザマター、ノーフォークS・パシフィッククラシックS・ウッドワードS・デルマーフューチュリティ・サンフェリペS・サンフェルナンドS・グッドウッドHの勝ち馬で前年のBCクラシックで2着していた前年のエクリプス賞最優秀古馬牡馬バートランド、モルソンエクスポートミリオンの勝ち馬ドラマティックゴールド、英国際S2回・エクリプスSを勝っていたエズード、デューハーストS・セントジェームズパレスSの勝ち馬グランドロッジ、愛チャンピオンSの勝ち馬セザンヌ、英チャンピオンS・ギョームドルナノ賞の勝ち馬デルニエアンプルール、パリ大賞・ジャンプラ賞の勝ち馬ミルコムの13頭だった。ブリーダーズカップ登録が無かったホーリーブルや、レース2週間前に故障したコロニアルアッフェアーなどは不参戦だった。そのために本命馬不在であり、本馬が単勝オッズ4.5倍の1番人気に押し出され、ベストパルとドラマティックゴールドのカップリングと、デヴィルヒズデューが並んで単勝オッズ6.8倍の2番人気、コンサーンが単勝オッズ8.5倍の4番人気、バートランドが単勝オッズ9.8倍の5番人気となった。
スタートが切られるとバートランドが先手を取り、ドラマティックゴールドが2番手を追走。本馬とゴーフォージンの2頭が並んで3~4番手につけた。この4頭のうちゴーフォージンが真っ先に遅れて圏外に去り、逃げたバートランドも四角で失速。そして直線で先頭に立ったドラマティックゴールドに、外側から本馬が並びかけていった。そしていったんは先頭に立ったのだが、スタート直後は最後方を追走していたコンサーンが外側からやって来て、勝負は本馬とコンサーンの叩き合いに持ち込まれた。そしてコンサーンが競り勝って勝利し、本馬は首差の2着に惜敗した。
この年の出走はこれが最後ではなく、その後は西海岸に飛び、前走から15日後のハリウッドダービー(GⅠ・T9F)に出走した。主な対戦相手は、一般競走を3連勝中のリヴァーフライヤー、仏国から移籍してきて初戦のセクレタリアトSで2着していたデアアンドゴー、アーリントンクラシックSの勝ち馬イーグルアイド、ウィルロジャーズH・シネマHの勝ち馬アンフィニッシュドシンフなどだった。初の芝レースにも関わらず本馬が単勝オッズ3倍の1番人気に支持され、リヴァーフライヤーが単勝オッズ5倍の2番人気、デアアンドゴーが単勝オッズ6.2倍の3番人気となった。しかし本馬には芝適性が無かったのか、スタート直後こそ先頭に立つも、その後は後退する一方だった。結局は勝ったリヴァーフライヤーから6馬身半差をつけられた8着に敗退。
このレースを最後に、3歳時12戦5勝の成績で競走馬を引退した。エクリプス賞年度表彰では、米国三冠競走やブリーダーズカップ以外のところで圧倒的な強さを発揮していたホーリーブルが年度代表馬・最優秀3歳牡馬に選ばれ、本馬はトラヴァーズSでホーリーブルに惨敗したのが致命的となり無冠に終わった。
血統
Storm Cat | Storm Bird | Northern Dancer | Nearctic | Nearco |
Lady Angela | ||||
Natalma | Native Dancer | |||
Almahmoud | ||||
South Ocean | New Providence | Bull Page | ||
Fair Colleen | ||||
Shining Sun | Chop Chop | |||
Solar Display | ||||
Terlingua | Secretariat | Bold Ruler | Nasrullah | |
Miss Disco | ||||
Somethingroyal | Princequillo | |||
Imperatrice | ||||
Crimson Saint | Crimson Satan | Spy Song | ||
Papila | ||||
Bolero Rose | Bolero | |||
First Rose | ||||
Barbicue Sauce | Sauce Boat | Key to the Mint | Graustark | Ribot |
Flower Bowl | ||||
Key Bridge | Princequillo | |||
Blue Banner | ||||
Missy Baba | My Babu | Djebel | ||
Perfume | ||||
Uvira | Umidwar | |||
Lady Lawless | ||||
Lady Barbizon | Barbizon | Polynesian | Unbreakable | |
Black Polly | ||||
Good Blood | Bull Lea | |||
Diagnosis | ||||
Cancelada | Nigromante | Embrujo | ||
Nigua | ||||
Caninha | Top Coat | |||
Veuve Clicquot |
父ストームキャットは当馬の項を参照。
母バーベキューソースは米国で38戦7勝の成績を残した中級馬。ステークス競走の勝ちはないが、コンビニエンスS・モンマスパークBCHで2着している。繁殖としては本馬以外にこれといった活躍馬を産んでいない。本馬の全妹フラッシュストームとジャズキャットは共に繁殖牝馬として日本に輸入され、ジャズキャットはオープン特別を3勝したロードマジェスティを産んでいる。バーベキューソースの全姉レディソースボートの孫には、日本に繁殖牝馬として輸入されたワンフォーローズ【メイプルリーフS(加GⅢ)2回・シーグラムカップS(加GⅢ)】がおり、その子にはレディアルバローザ【中山牝馬S(GⅢ)2回】や、キャトルフィーユ【クイーンS(GⅢ)】がいる。牝系は20世紀初頭から亜国に根付いた血統であり、亜国の歴史的名牝ラミッション【カルロスペレグリーニ大賞・ホルヘデアトゥーチャ大賞・ポージャデポトランカス大賞・亜ジョッキークラブ大賞・ナシオナル大賞】、ブラジルの強豪馬グリマルディ【ダービーパウリスタ大賞(伯GⅠ)・クルゼイロドスル大賞(伯GⅠ)・ブラジル大賞(伯GⅠ)・サンパウロ大賞(伯GⅠ)】、日本に繁殖牝馬として輸入された亜国の名牝パルフェアムール【サトゥルニーノJウンスエ大賞(亜GⅠ)・エリセオラミレス大賞(亜GⅠ)・ホルヘデアトゥーチャ大賞(亜GⅠ)・エストレージャス大賞ジュヴェナイルフィリーズ(亜GⅠ)】、クレアンテ【7月9日大賞(亜GⅠ)・サンマルティン将軍大賞(亜GⅠ)・サンイシドロ大賞(亜GⅠ)・ホアキンSデアンチョレーナ大賞(亜GⅠ)・アメリカ国際大賞(亜GⅠ)】といった南米の名馬達の他に、米国で活躍したアンテスペンド【ラスヴァージネスS(米GⅠ)・サンタアニタオークス(米GⅠ)・デルマーオークス(米GⅠ)】などが同じ牝系から出ているが、いずれも本馬の近親と言うにはやや遠い。→牝系:F12号族②
母父ソースボートはキートゥザミントの直子で、1980年の北米首位種牡馬ラジャババの半弟。現役時代はアーリントンワシントンフューチュリティ(米GⅠ)勝ちなど5戦3勝。
競走馬引退後
競走馬を引退した本馬は生まれ故郷のオーバーブルックファームで種牡馬入りした。しかし当初の産駒成績が振るわず、2000年秋に日本中央競馬会によって700万ドル(当時の為替レートで約7億4900万円)で購入されて来日し、翌2001年から日本軽種馬協会静内種馬場で種牡馬供用された。輸入以前のステークスウイナーは4頭に過ぎなかったが、米国を去った直後になって、残してきた産駒の中から活躍馬が複数登場した。そのため日本でも期待を集め、初年度は94頭、2年目は99頭、3年目は93頭の繁殖牝馬を集める人気種牡馬となった。しかし供用4年目の2004年3月の種付け中に心臓麻痺を起こして13歳で他界した。かつての所有者ヤング氏が86歳で死去した2か月後のことだった。4年目の交配数は結局5頭だった。米国では最終的に21頭のステークスウイナーを出したが、日本ではこれといった産駒を出す事は出来ず、全日本種牡馬ランキングは2006年の37位が最高だった。
主な産駒一覧
生年 |
産駒名 |
勝ち鞍 |
1997 |
Cat's at Home |
フィリップHアイズリンH(米GⅡ)・ウエストチェスターH(米GⅢ)・エクセルシオールBCH(米GⅢ) |
1997 |
Perfect Cat |
ウィリアムドナルドシェイファーH(米GⅢ) |
1998 |
Freefourinternet |
ケルソBCH(米GⅡ)・ホーソーン金杯(米GⅡ) |
1998 |
Kazoo |
トボガンH(米GⅢ) |
1998 |
Snow Ridge |
サンカルロスH(米GⅠ)・ケンタッキーCスプリントS(米GⅡ)・パロスヴェルデスH(米GⅡ)・エルコネホH(米GⅢ)・メリーランドBCH(米GⅢ) |
1999 |
Habaneros |
カールトンFバークH(米GⅢ) |
1999 |
Habibti |
デルマーデビュータントS(米GⅠ)・ハリウッドスターレットS(米GⅠ) |
1999 |
Spice Island |
ロングアイランドH(米GⅡ) |
2000 |
Host |
マックディアーミダH(米GⅢ) |
2000 |
Raylene |
カナディアンダービー(加GⅢ)・ブリティッシュコロンビアBCオークス(加GⅢ) |
2001 |
Island Sand |
エイコーンS(米GⅠ)・デラウェアH(米GⅡ) |
2003 |
オグリホット |
ウイナーC(盛岡) |