ストームフラッグフライング

和名:ストームフラッグフライング

英名:Storm Flag Flying

2000年生

黒鹿

父:ストームキャット

母:マイフラッグ

母父:イージーゴア

BCジュヴェナイルフィリーズを勝利して史上初の母子3代ブリーダーズカップ制覇を成し遂げた超良血牝馬

競走成績:2~4歳時に米で走り通算成績14戦7勝2着3回3着3回

誕生からデビュー前まで

米国の名馬主兼名馬産家のオグデン・フィップス氏により、ケンタッキー州クレイボーンファームにおいて生産された。父は本馬が誕生する前年と当年に北米首位種牡馬に輝いたばかりのストームキャット、母がBCジュヴェナイルフィリーズ優勝馬マイフラッグ、祖母がBCディスタフなど13戦無敗のパーソナルエンスン、母父が歴史的名馬イージーゴアという、これでもかと言わんばかりの超良血馬であり、デビュー前から大きな期待を寄せられていた。

パーソナルエンスン、イージーゴア、マイフラッグを全て手掛けたクロード・R・“シャグ”・マゴーヒーⅢ世調教師に預けられたが、デビュー直前の2002年4月にオグデン・フィップス氏が死去したため、本馬は息子のオグデン・ミルズ・フィップス氏の所有馬となった。

競走生活(2歳時)

2歳8月にサラトガ競馬場で行われたダート6ハロンの未勝利戦で、主戦となるジョン・ヴェラスケス騎手を鞍上にデビュー。この前月に日本で他界したエンドスウィープ産駒のエッジスウィープが単勝オッズ3.55倍の1番人気、エクリプス賞最優秀短距離馬チェロキーラン産駒のチェロキーライトが単勝オッズ3.95倍の2番人気で、本馬は単勝オッズ4.65倍の3番人気だった。レースでは、単勝オッズ8.3倍の4番人気馬サムシングシルヴァーが逃げを打ち、本馬は3番手のチェロキーライトと4番手のエッジスウィープを見るように5番手の好位を追走した。そして四角で仕掛けると、他の有力馬2頭を置き去りにして、逃げるサムシングシルヴァーを追撃。ゴール前で差し切って1馬身差で勝利した。

1か月後のメイトロンS(GⅠ・D8F)では、ソロリティSを勝ってきたワイルドスニッチ、未勝利戦を4馬身半差で快勝してきた後のCCAオークス2着馬ファークロフトの2頭が強敵だった。本馬が単勝オッズ2.4倍の1番人気、ワイルドスニッチが単勝オッズ3.3倍の2番人気、ファークロフトが単勝オッズ3.5倍の3番人気となった。レースでは先行するワイルドスニッチをマークするように3番手の好位を追走。そして三角から四角にかけてワイルドスニッチをかわして先頭に立つと、あとは直線を独走。2着ワイルドスニッチに12馬身3/4差をつけるという、期待をはるかに上回る圧勝劇を演じた。

続くフリゼットS(GⅠ・D9F)では、デルマーデビュータントS2着馬で後のハリウッドオークス馬サンタカタリナが唯一の強敵と言える存在だった。本馬が単勝オッズ1.6倍の1番人気、サンタカタリナが単勝オッズ3.35倍の2番人気となった。レースはサンタカタリナが逃げて、本馬が2番手で追いかける展開となった。三角からこの2頭と他馬との間隔がどんどん開きだし、直線入り口では完全なマッチレースとなった。しかし本馬が直線半ばでサンタカタリナを突き放し、2馬身差をつけて完勝した(3着アップルビーガーデンズは2着サンタカタリナからさらに11馬身1/4差も後方だった)。

その後はアーリントンパーク競馬場に向かい、BCジュヴェナイルフィリーズ(GⅠ・D9F)に参戦した。オークリーフSを快勝してきたコンポージャー、サンタカタリナ、アルキビアデスSの勝ち馬ウエスタリーブリーズ、アルキビアデスSで2着してきたルビーズレセプション、ランダルースS・ソレントSの勝ち馬バフィーザセンターフォールド、アスタリタSを勝ってきたヒューモラスレディなどが対戦相手となった。本馬が単勝オッズ1.8倍の1番人気、コンポージャーが単勝オッズ4.5倍の2番人気、サンタカタリナが単勝オッズ6.2倍の3番人気、ルビーズレセプションが単勝オッズ13.8倍の4番人気となった。

レースではサンタカタリナなどと共に2番手集団を形成。四角で後方からコンポージャーが上がって来て、本馬とコンポージャーの2頭が並んで先頭で直線を向いた。そして直線では後続を大きく引き離し、内側の本馬と外側のコンポージャーの2頭による息詰まる攻防戦が展開された。直線半ばでコンポージャーがいったん完全に前に出たが、ここから本馬が祖母パーソナルエンスンを髣髴とさせるほどの凄まじい差し返しを見せた。そして2着コンポージャーに半馬身差、3着サンタカタリナにはさらに9馬身3/4差をつけて優勝。母マイフラッグに次ぐ同競走母子制覇だけでなく、祖母パーソナルエンスンからの母子3代ブリーダーズカップ制覇(共に史上初の快挙)を達成した。

2歳時の成績は4戦全勝で、この年のエクリプス賞最優秀2歳牝馬に選出された。

競走生活(3歳時)

翌3歳時は調整が遅れて、復帰戦は4月のカムリーS(GⅢ・D8F)となった。本馬が単勝オッズ1.25倍の1番人気に支持され、シケーダSを勝ってきたサイバーシークレットが単勝オッズ4.5倍の2番人気となった。レースはサイバーシークレットが快調に先頭を飛ばし、本馬は2~3番手を追走した。しかし四角で後続を大きく引き離したサイバーシークレットがそのまま押し切って勝利を収め、本馬は5馬身半差をつけられた2着に敗れた。

その後ケンタッキーオークスは回避し、エイコーンS(GⅠ・D8F)に向かった。ケンタッキーオークス馬バードタウン、フェアグラウンズオークスの勝ち馬でアッシュランドS2着のレディタック、ナッソーカウンティBCSを勝ってきたハウスパーティー、ヴァリーストリームSの勝ち馬ランダルー、ラトロワンヌSを勝ってきたファイナルラウンドなど6頭が対戦相手となった。本馬が単勝オッズ2.7倍の1番人気、バードタウンが単勝オッズ3.65倍の2番人気、レディタックが単勝オッズ3.8倍の3番人気となった。レースでは序盤こそ馬群の中団につけていたが、徐々に後方に下がり、最後方からの競馬となった。そしてそのまま殆ど順位を上げられず、勝ったバードタウンから11馬身差をつけられた6着と大敗。

その後に右後脚管骨の微細骨折が判明し、3歳後半は全休となり、この年の成績は2戦未勝利に終わった。

競走生活(4歳時)

4歳2月にガルフストリームパーク競馬場で行われたダート8ハロン70ヤードのオプショナルクレーミング競走で復帰した(本馬は売却の対象外)。故障休養明けあっても本馬が単勝オッズ1.8倍の1番人気に支持され、地元フロリダ州のステークス競走で地道に走っていたリダブルドミスが単勝オッズ4.3倍の2番人気となった。レースでは逃げる単勝オッズ10.3倍の5番人気馬ケイアイサクラを見るように2~3番手を追走。そして直線入り口で先頭に立ってそのまま押し切り、2着リダブルドミスに3馬身3/4差をつけて勝利した。

続くディスタフBCH(GⅡ・D7F)では、本馬が6着に敗れたエイコーンSで5着に終わった後にセイフリーケプトBCS・ファーストフライトH・トップフライトH・シャーリージョーンズHを勝ちラブレアSで2着していたランダルーとの対戦となった。121ポンドのランダルーが単勝オッズ1.45倍の1番人気で、ヴェラスケス騎手に代わってエドガー・プラード騎手が騎乗する118ポンドの本馬は単勝オッズ3.1倍の2番人気だった。レースはランダルーが逃げて、その直後を本馬が追いかける展開となった。しかし先に根を上げたのは本馬のほうで、一緒に先行していた単勝オッズ24.5倍の最低人気馬チリモヤにも置き去りにされてしまい、勝ったランダルーから5馬身3/4差をつけられた3着に完敗した。

次走のシュヴィーH(GⅡ・D8F)では、デモワゼルS・ブラックアイドスーザンS・セイビンHの勝ち馬ロアエモーション、パーソナルエンスンH・ベッドオローゼズBCHの勝ち馬パッシングショット、本馬が6着に敗れたエイコーンSで3着した後にマザーグースSで3着していたファイナルラウンドなどが対戦相手となった。ヴェラスケス騎手が鞍上に戻ってきた116ポンドの本馬が単勝オッズ2倍の1番人気、117ポンドのロアエモーションが単勝オッズ4.1倍の2番人気、117ポンドのパッシングショットと114ポンドのファイナルラウンドが並んで単勝オッズ6.5倍の3番人気となった。スタートが切られると、本馬のデビュー戦で2番人気4着だった単勝オッズ12.8倍の5番人気馬チェロキーライトが先頭に立ち、ロアエモーションとパッシングショットがそれを追いかけ、本馬は4番手を進んだ。やがてチェロキーライトが失速し、パッシングショットとロアエモーションが争いながら直線に入ってきた。そのまま2頭のいずれかが勝つかと思われたが、3番手で直線を向いた本馬が外側から前の2頭をゴール前でかわし、2着パッシングショットに半馬身差、3着ロアエモーションにはさらに鼻差をつけて勝利した。

次走は、本馬の生産者オグデン・フィップス氏の功績を讃えて旧称ヘンプステッドHから2002年に改名されていたオグデンフィップスH(GⅠ・D8.5F)となった。本馬を含めて僅か4頭立てのレースとなったが、出走馬は全てGⅠ競走勝ち馬だった。前走で本馬と接戦を演じたパッシングショットも出走していたが、やはり強敵は初対戦となる年上の名牝2頭。BCディスタフ・サンタマルガリータ招待H・アップルブロッサムH3回・ミレイディBCH2回・ヴァニティH2回・クレメントLハーシュH2回・レディーズシークレットBCHを勝っていた一昨年のエクリプス賞年度代表馬アゼリと、ヒューマナディスタフH・オグデンフィップスH・ゴーフォーワンドH・ベルデイムS・トップフライトH・ランパートHの勝ち馬サイトシークだった。アゼリが123ポンドのトップハンデながら単勝オッズ1.8倍の1番人気に支持され、120ポンドのサイトシークが単勝オッズ3.35倍の2番人気、117ポンドの本馬が単勝オッズ4倍の3番人気、116ポンドのパッシングショットが単勝オッズ12.7倍の最低人気だった。

レースはアゼリが逃げてサイトシークがそれを追撃、さらに本馬がその後方を追走する展開となった。四角手前でアゼリが失速すると、サイトシークが一気に先頭を奪って後続を引き離した。本馬も食らい付こうとしたが、結局届くことは無かった。4着最下位に終わったアゼリには先着したものの、サイトシークに3馬身1/4差をつけられて2着に敗れ、亡き生産者オグデン・フィップス氏の名を冠したレースを勝つことは出来なかった。

次走のゴーフォーワンドH(GⅠ・D9F)でも、アゼリ、サイトシークとの対戦となった。今度はサイトシークが122ポンドのトップハンデながら単勝オッズ1.75倍の1番人気に支持され、120ポンドのアゼリが単勝オッズ3.95倍の2番人気、117ポンドの本馬が単勝オッズ4.05倍の3番人気となった。しかし今度はアゼリが鮮やかに逃げ切って勝利し、2番手追走のサイトシークが1馬身3/4差の2着、3番手追走の本馬はサイトシークからさらに2馬身差をつけられた3着に終わった。

しかもその直後に右前脚に外傷を負い縫合を行うアクシデントがあった。しかし前走から1か月も経たないうちに、パーソナルエンスンH(GⅠ・D10F)に出走した。サイトシークは不在だったが、アゼリが本馬の前に立ち塞がった。アゼリが122ポンドのトップハンデながら単勝オッズ1.6倍の1番人気に支持され、116ポンドの本馬が単勝オッズ3.15倍の2番人気、シュヴィーH3着後にデラウェアHで2着してきた115ポンドのロアエモーションが単勝オッズ8.1倍の3番人気だった。

レースではロアエモーションがアゼリのハナを叩いて逃げを打ち、アゼリが1~2馬身ほど離れた2番手、本馬はさらに離れた3番手だった。アゼリと本馬の差は最大で7~8馬身ほどに広がったが、三角手前でロアエモーションが失速してアゼリが先頭に立つのを見計らってからスパートすると、一気にその差を縮め、直線入り口ではアゼリに並びかけていた。そして直線でアゼリを置き去りにして伸び、2着アゼリに1馬身1/4差をつけて勝利。祖母の名を冠したこのレースだけは譲れないと言わんばかりの走りで、1年10か月ぶりのGⅠタイトルを獲得した。

次走のベルデイムS(GⅠ・D9F)では、今度はアゼリが不在で、ゴーフォーワンドH2着後にラフィアンHを勝っていたサイトシーク、フリゼットS・テストS・アラバマS・カムリーSの勝ち馬でエイコーンS2着の3歳馬ソサエティセレクションの2頭が強敵だった。前走ラフィアンHを11馬身1/4差で圧勝していたサイトシークが単勝オッズ1.3倍の1番人気に支持され、本馬が単勝オッズ5.4倍の2番人気、ソサエティセレクションが単勝オッズ5.7倍の3番人気だった。レースではサイトシークが逃げ、本馬は2番手を追走した。しかし早めにスパートしたサイトシークにまったく追いつけず、ソサエティセレクションにも差されて、勝ったサイトシークから4馬身差の3着に敗退した。

ローンスターパーク競馬場で行われたBCディスタフ(GⅠ・D9F)が引退レースとなった。BCクラシックに向かったアゼリと、ローンスターパーク競馬場は不向きと陣営が判断したサイトシークは不参戦だったが、それでもかなりの有力馬が顔を揃えた高レベルな戦いとなった。ソサエティセレクション、スピナウェイS・ケンタッキーオークス・CCAオークス・スカイラヴィルS・デモワゼルS・フェアグラウンズオークス・コティリオンHを勝っていたアシャド、マザーグースS・ガゼルH・ドッグウッドBCSの勝ち馬でCCAオークス・アラバマS2着のステラージェーン、ハリウッドスターレットSの勝ち馬でデルマーデビュータントS・ラスヴァージネスS2着のハリウッドストーリーの4頭の3歳馬に加えて、アラバマS・ラブレアS・サンタモニカH・デラウェアオークス・レディーズシークレットBCHの勝ち馬で牡馬相手のサンタアニタH2着のアイランドファッション、仏国から遠征してきた仏オークス・ムーランドロンシャン賞の勝ち馬ネブラスカトルネード、前走スピンスターSでアゼリの2着してきたタムウィール、前年の同競走で2着していたハリウッドスターレットS・アッシュランドS・サンタイネスSの勝ち馬エローラヴなどが対戦相手となったのである。ヴェラスケス騎手がアシャドを選択したため、本馬は初騎乗となるジェリー・ベイリー騎手に乗り代わった。実績ナンバーワンのアシャドが単勝オッズ3倍の1番人気、祖母パーソナルエンスンに次ぐ同競走制覇が懸かる本馬が単勝オッズ5.6倍の2番人気、ソサエティセレクションが単勝オッズ6.1倍の3番人気、アイランドファッションが単勝オッズ7.6倍の4番人気、ネブラスカトルネードが単勝オッズ8.3倍の5番人気となった。

スタートが切られると、単勝オッズ10倍の6番人気馬タムウィールが逃げを打ち、ネブラスカトルネードやアシャドがそれを追走。一方の本馬は大胆にも最後方からレースを進めた。そして三角から四角にかけて内側から位置取りを上げ、5番手で直線を向くとインを突いて一気に追い込んできた。勝ったアシャドには1馬身1/4差及ばず、祖母パーソナルエンスンに次ぐBCディスタフ制覇は成らなかったが、ゴール寸前でステラージェーンを首差かわして2着に入り、その能力の一端を垣間見せた。4歳時の成績は8戦3勝だった。

血統

Storm Cat Storm Bird Northern Dancer Nearctic Nearco
Lady Angela
Natalma Native Dancer
Almahmoud
South Ocean New Providence Bull Page
Fair Colleen
Shining Sun Chop Chop
Solar Display
Terlingua Secretariat Bold Ruler Nasrullah
Miss Disco
Somethingroyal Princequillo
Imperatrice
Crimson Saint Crimson Satan Spy Song
Papila
Bolero Rose Bolero
First Rose
My Flag Easy Goer Alydar Raise a Native Native Dancer
Raise You
Sweet Tooth On-and-On
Plum Cake
Relaxing Buckpasser Tom Fool
Busanda
Marking Time To Market
Allemande
Personal Ensign Private Account Damascus Sword Dancer
Kerala
Numbered Account Buckpasser
Intriguing
Grecian Banner Hoist the Flag Tom Rolfe
Wavy Navy
Dorine Aristophanes
Doria

ストームキャットは当馬の項を参照。

マイフラッグは当馬の項を参照。→牝系:F6号族①

母父イージーゴアは当馬の項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は生まれ故郷のクレイボーンファームで繁殖入りした。6歳時には初子の牡駒カラーズフライング(父エーピーインディ)が誕生。その後もシーキングザゴールドディストーテッドユーモアスマートストライクアンブライドルズソングストリートクライ、キャンディライドなどと交配されている。当初の受胎率はあまり良くなく、7歳から9歳まで3年連続で産駒はいなかったが、10歳以降は毎年のように出産しており、受胎率は改善されたようである。産駒は良くて未勝利を脱出するのが精一杯と、今のところ繁殖牝馬としては期待に応えられていないが、現在も母子4代ブリーダーズカップ制覇を果たす子を産むべく、クレイボーンファームで繁殖生活を続けている。なお、現役成績7戦1勝に終わったカラーズフライングだが、その血統が評価されて韓国で種牡馬入りしている。

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