ピーターパン
和名:ピーターパン |
英名:Peter Pan |
1904年生 |
牡 |
栗毛 |
父:コマンド |
母:シンデレラ |
母父:ハーミット |
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多彩な才能を武器に活躍したベルモントSの勝ち馬は父コマンドの最良後継種牡馬としてヒムヤーの直系を一時的に大きく繁栄させる |
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競走成績:2・3歳時に米で走り通算成績17戦10勝2着3回3着1回 |
誕生からデビュー前まで
祖父ドミノの所有者で父コマンドの生産・所有者でもあった、20世紀初頭米国の名馬産家ジェームズ・ロバート・キーン氏により生産・所有された。管理調教師も父コマンドと同じくサー・ジェームズ・G・ロウ師であった。
競走生活
2歳時から無敵を誇った1歳年下の同父馬コリンと異なり、2歳当初はそれほど目立つ存在ではなかった。それでもフラッシュS(D5.5F)では後のフューチュリティS勝ち馬エレクショニアを2着に破って勝利した。サラトガスペシャルS(D6F)では、サルヴィデレ、マッカーターの2頭に後れを取ってサルヴィデレの3着に敗れた。しかしその後に出た2歳戦最大の競走ホープフルS(D6F)では、マッカーターを2着に破って勝利した。2歳時は8戦4勝の成績を残した。しかし、米最優秀2歳牡馬の座はサラトガスペシャルSで本馬を破ったサルヴィデレが受賞している。
3歳時にはウィザーズS(D8F)でフランクギル(後にトラヴァーズSも勝っている)の2着に敗れてしまった。しかしベルモントS(D11F)では同父同厩のスーパーマン(後にブルックリンHを勝っている)を2着に、フランクギルを3着に破って勝利を収めた。
これ以降に本馬は本格化したが、当時は現在の米国三冠競走路線が確立されていなかったため、ケンタッキーダービー・プリークネスSには参戦していない。その代わりに当時の大競走だったブルックリンダービー(D12F・現ドワイヤーS)に出走して勝利している。スタンダードS(D10F)ではエレクショニアを2着に、1歳年上のガゼルH勝ち馬フリップフラップを3着に撃破して勝利した。また、タイダルS(D10F)を勝利。アドバンスS(D11F)ではサルヴィデレを2着に、フリップフラップを3着に破って勝利した。
秋はブライトンH(D10F)に出走した。このレースは後に米国で吹き荒れた反賭博運動の煽りを受けて消滅したが、この当時はメトロポリタンHやサバーバンHと並ぶ大競走だった。この年もブライトンビーチ競馬場に4万人という大観衆が集まった。本馬はトップハンデを課せられた上に、スタートで大きく出遅れてしまったが、後方から怒涛の追い込みを見せて、マッカーターを鼻差の2着に、同世代の実力馬モンゴメリー(カリフォルニアH勝ちなど179戦37勝)を3着に、古馬勢を着外に沈めて勝利した。このレースについて当時のニューヨークテレグラフ紙は「その完成された仕事ぶりは、過去の競馬史において3歳馬が披露してきたあらゆるパフォーマンスを完全に覆い隠すものでした」と本馬の走りを讃えた。しかしこのレース直後に屈腱炎を発症したため競走馬を引退した。3歳時の成績は9戦6勝で、後年になって米最優秀3歳牡馬に選出されている。
米国競馬名誉の殿堂ウェブサイトにおける本馬の紹介文には「彼の最大の特徴は多彩な才能でした。彼は短距離でも長距離でも成功し、重い斤量を背負うことも可能でした」と書かれている。
馬名は、本馬が産まれた年に初演が行われた、英国の作家ジェームス・マシュー・バリーの戯曲「ピーターパンあるいは大人になりたがらない少年」に由来すると思われるが、母の名前が著名童話の主人公シンデレラであった事からの連想でもあるのではないだろうか。
血統
Commando | Domino | Himyar | Alarm | Eclipse |
Maud | ||||
Hira | Lexington | |||
Hegira | ||||
Mannie Gray | Enquirer | Leamington | ||
Lida | ||||
Lizzie G | War Dance | |||
Lecomte Mare | ||||
Emma C. | Darebin | The Peer | Melbourne | |
Cinizelli | ||||
Lurline | Traducer | |||
Mermaid | ||||
Guenn | Flood | Norfolk | ||
Hennie Farrow | ||||
Glendew | Glengarry | |||
Glenrose | ||||
Cinderella | Hermit | Newminster | Touchstone | Camel |
Banter | ||||
Beeswing | Doctor Syntax | |||
Ardrossan Mare | ||||
Seclusion | Tadmor | Ion | ||
Palmyra | ||||
Miss Sellon | Cowl | |||
Belle Dame | ||||
Mazurka | See Saw | Buccaneer | Wild Dayrell | |
Little Red Rover Mare | ||||
Margery Daw | Brocket | |||
Protection | ||||
Mabille | Parmesan | Sweetmeat | ||
Gruyere | ||||
Rigolboche | Rataplan | |||
Gardham Mare |
父コマンドは当馬の項を参照。
母シンデレラはベルモントS勝ち馬ヘイスティングスやケンタッキーダービー馬プローディットの母として知られる名繁殖牝馬とは同名の別馬。英国産馬で競走馬としても英国で走り、ガトウィックプロデュースSというステークス競走に勝利している。繁殖入りした数年後にキーン氏に購入されて米国に輸入された。輸入後3年間は子宝に恵まれなかったが、その後はほぼ毎年のように産駒を産み(死産を含む)、1908年に20歳で他界している。本馬を産んだのは16歳時であるから、比較的晩年の事である。本馬以外に特筆できる競走成績を残した産駒はいないようだが、英国で産んだ本馬の半姉フェアリースリッパー(父セントサーフ)の牝系子孫が一定の発展を示し、クエスチョネアー【メトロポリタンH・ブルックリンH】、スパイソング【アーリントンフューチュリティ】、デヒア【ホープフルS(米GⅠ)・シャンペンS(米GⅠ)】などが登場している。
シンデレラの半姉ポルカ(父ガロピン)の牝系子孫からは、戦後日本の競馬界をリードした大種牡馬ライジングフレーム、クァドラングル【ベルモントS・ピムリコフューチュリティ・ウッドメモリアルS・ドワイヤーH・トラヴァーズS】、クリス【サセックスS(英GⅠ)】とダイイシス【ミドルパークS(英GⅠ)・デューハーストS(英GⅠ)】の兄弟が出ている。また、シンデレラの半妹コモンダンス(父コモン)の子にはクライド【仏オークス・ロワイヤルオーク賞・グラディアトゥール賞】がいる。→牝系:F2号族③
母父ハーミットは当馬の項を参照。
競走馬引退後
競走馬を引退した本馬は、キーン氏がケンタッキー州に所有していたキャッスルトンスタッドで種牡馬入りした。しかし当初の産駒成績がキーン氏にとっては不満だったらしく、1912年に本馬は仏国へ10万ドルで売却された。しかしその後すぐにハリー・ペイン・ホイットニー氏に3万8千ドルで購買されて米国に戻り、ニュージャージー州ホイットニーファームに移り住んだ。1915年にはケンタッキー州に新設されたホイットニーファームに移動した。その後は活躍馬を多く出し、1920年には北米2歳首位種牡馬となった。ステークスウイナー率は20%だが、北米種牡馬ランキングで5位以内に入った事は無く、産駒の質の高さという点では、ステークスウイナー率42%だった祖父ドミノや、ステークスウイナー率37%だった父コマンドには劣った(祖父や父が凄すぎるだけだが)。しかし非常に短命だったドミノやコマンドと異なり、長年に渡り現役種牡馬として活躍した。1933年12月に29歳で他界し、遺体はホイットニーファーム(現在はゲインズウェイファームの一部)に埋葬された。
1940年に本馬の名を冠したピーターパンSがベルモントパーク競馬場において創設(一時期はGⅠ競走、現在はGⅡ競走)され、ベルモントSの前哨戦として機能している。1956年に父コマンド、祖父ドミノ、孫娘のトップフライトなどと一緒に米国競馬の殿堂入りを果たした。
本馬の産駒は早熟傾向が強く、また牝馬の活躍馬が多かった。当時の大競走ローレンスリアライゼーションSを勝ったヴェクセイシャスも牝馬である。しかし、ペナント、トライスター、ブラックトニーなど牡馬の活躍馬も輩出しており、そのうちペナントとブラックトニーは後継種牡馬としても成功した。ペナントは名馬エクワポイズを出し、ブラックトニーはバイムレック、ブラックサーヴァント(ブルーラークスパーの父)、バラディアなどを出して一時期本馬の直系は米国で大きく繁栄したが、現在では全て滅んでおり、母系にその名を残すのみとなっている。日本にも本馬の牝駒が輸入されており、帝室御賞典(阪神)を制したエレギャラトマスや中山大障害秋を制したカミワカが本馬の牝駒を母に持つ。
主な産駒一覧
生年 |
産駒名 |
勝ち鞍 |
1911 |
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1911 |
Pennant |
ベルモントフューチュリティS |
1916 |
Vexatious |
アラバマS・ローレンスリアライゼーションS |
1917 |
Panoply |
デモワゼルS・アラバマS |
1918 |
Tryster |
サラトガスペシャルS・ジェロームH・ケンタッキージョッキークラブS |
1919 |
Prudish |
CCAオークス |
1921 |
Laurano |
メトロポリタンH |
1923 |
Croyden |
マンハッタンH・ジェロームH |
1923 |
Macaw |
カーターH・クイーンズカウンティH |
1924 |
Pandera |
デモワゼルS・ピムリコオークス |
1925 |
Nixie |
カウディンS・テストS・アラバマS |
1926 |
Vermajo |
ニューオーリンズH |