オープンマインド
和名:オープンマインド |
英名:Open Mind |
1986年生 |
牝 |
栗毛 |
父:デピュティミニスター |
母:ステージラック |
母父:ステージドアジョニー |
||
2位入線繰り上がりの一幕もあったがケンタッキーオークス・ニューヨーク牝馬三冠競走を全勝して同世代最強牝馬となるも他世代相手では実力を発揮できず |
||||
競走成績:2~4歳時に米で走り通算成績19戦12勝2着2回3着2回 |
誕生からデビュー前まで
米国ニュージャージー州において証券会社の経営者ロバート・エメット・ブレナン氏の馬産団体デュープロセスステーブルにより生産され、ユージン・ヴィクター・クライン氏の所有馬となった。クライン氏はロサンゼルスに本社がある米国の総合商社ナショナルゼネラル社の代表だった。スポーツ界にも貢献しており、全米プロバスケットボール協会のシアトル・スーパーソニックスを創設し、ナショナルフットボールリーグのサンディエゴ・チャージャーズを所有していた事もあった。
晩年には馬主業にも参入し、短期間にプリークネスS勝ち馬タンクスプロスペクト、BCディスタフ勝ち馬ライフズマジック、エクリプス賞年度代表馬レディーズシークレット、エクリプス賞最優秀2歳牡馬カポウティ、ケンタッキーダービー馬ウイニングカラーズなど数々の名馬を所有した。彼はダレル・ウェイン・ルーカス師を専属調教師として雇っており、本馬もまたルーカス師の管理馬となった。
競走生活(2歳時)
2歳8月にモンマスパーク競馬場で行われたダート6ハロンの未勝利戦でデビューし、2着オペレーションジョナソンに5馬身差をつける圧勝で勝ち上がった。2週間後に同コースで行われたニュージャージーブリーダーズS(D6F)では、2着エムエスゴールドポールに首差で勝利を収めた。しかし次走のUSF&GメリーランドラッシーS(D7F)では、エムエスゴールドポールに4馬身半差をつけられて2着に敗れた(後のエクリプス賞最優秀短距離馬で米国顕彰馬にも選ばれるセイフリーケプトが3着だった)。
GⅠ競走初出走となったフリゼットS(GⅠ・D8F)では、主戦となるA・コルデロ・ジュニア騎手と初コンビを組んだ。今回はエムエスゴールドポール(3着)には先着したものの、同馬主同厩のメイトロンS勝ち馬サムロマンスの鼻差2着に敗れた。
次走はチャーチルダウンズ競馬場で行われたBCジュヴェナイルフィリーズ(GⅠ・D8.5F)となった。ルーカス師はこのレースに、本馬、サムロマンス、オークリーフSを勝ってきたワンオブアクライン、デルマーデビュータントSの勝ち馬リールシンダ、サマーセットカウンティS・クイーンエンプレスSの勝ち馬でセリマS2着のダービーシャッフルの5頭を送り込んでおり、この5頭のカップリングが単勝オッズ1.7倍の1番人気に支持された。他の出走馬は、スピナウェイS・アストリアSの勝ち馬でメイトロンS2着のシアトルミーティア、スーパーダービーデビュータントSの勝ち馬でアルシビアデスS2着のアファームドクラシック、ガーデンシティバドワイザーBCSの勝ち馬エルクウェントミニスターなどで、シアトルミーティアが単勝オッズ4.9倍の2番人気、アファームドクラシックが単勝オッズ6.3倍の3番人気と続いていた。
重馬場で行われたレースは、エルクウェントミニスターが先頭を引っ張り、サムロマンスなどがそれを追う縦長の展開となり、本馬は馬群の後方を追走した。直線入り口でもまだ後方だったが、外側に持ち出すと豪脚を繰り出して他馬をごぼう抜きにし、2着ダービーシャッフルに1馬身3/4差をつけて快勝した(サムロマンスは6着だった)。なお、同日のBCジュヴェナイルもクライン氏の所有馬でルーカス師の管理馬だったイズイットトゥルーがイージーゴアを破って勝利している。
この2週間後にはデモワゼルS(GⅠ・D9F)に出走した。ミスグリオS・フレンドシップS・レディラックSなど4連勝中だったダービーズドーターが強敵だったが、ダービーズドーターを首差の2着に破って勝利を収め、2歳時の成績を6戦4勝とした。BCジュヴェナイルフィリーズを含むGⅠ競走2勝の成績が評価されて、この年のエクリプス賞最優秀2歳牝馬の座を獲得した。
競走生活(3歳前半)
3歳時は2月のフォワードギャルS(GⅢ・D7F)から始動して、2着サージングに2馬身差で勝利した。続いてボニーミスS(GⅠ・D8.5F)に出走。BCジュヴェナイルフィリーズで5着だったシアトルミーティアを3馬身差の2着に抑えて、危なげなく勝利を収めた。次走のピムリコオークス(D8.5F)も、2着となったメイトロンS3着馬ドリーミーミミに2馬身差で勝利。
5連勝でケンタッキーオークス(GⅠ・D9F)に臨んだ。本馬以外の出走馬4頭のうち強敵と思われたのは、サンタアニタオークス・ハニービーSなど4連勝した後にファンタジーSで2着してきたイマジナリーレディ、前走アッシュランドSで3着サムロマンスに先着する2着だったブロンドインナモーテルくらいだった。しかも本馬にとって得意の不良馬場となったこともあり、本馬が1番人気に応えて、2着イマジナリーレディに2馬身1/4差をつけて快勝した。
次走のエイコーンS(GⅠ・D8F)でも不良馬場となり、2着となったサンタイネスS勝ち馬ホットノヴェルに4馬身半差をつけて圧勝。
続くマザーグースS(GⅠ・D9F)では、アッシュランドS・サンタイサベルS・バーボネットSなど4連勝中のゴージャスとの戦いとなった。結果は本馬が2着ゴージャスを頭差で退けて勝利した。
そしてニューヨーク牝馬三冠を懸けてCCAオークス(GⅠ・D12F)に出走した。イマジナリーレディもホットノヴェルもゴージャスもこのレースに不参戦であり、本馬の独壇場になるかとも思われた。ところがエイコーンS4着・マザーグースS3着といずれも本馬に敗れていたナイトオブファンがトップゴールを果たし、本馬は2位入線だった。一瞬三冠達成ならずと思われたが、ナイトオブファンが本馬の進路を妨害した咎で2着に降着となり、本馬が繰り上がって優勝となった。あまり後味が良い結末ではなかったが、これで本馬は1985年のモムズコマンド以来4年ぶり史上7頭目のニューヨーク牝馬三冠馬となった。
次走のアラバマS(GⅠ・D10F)では、モンマスオークスでサムロマンスを2着に破ってきたドリームディール(トゥザヴィクトリーの祖母)との対戦となった。ここでは、本馬が得意な重馬場にも助けられて、2着ディアリーラヴドに首差でなんとか勝利を収めた(ドリームディールは3着だった)。2歳8月以降、ほとんど休むことなく走ってきたため、この頃から疲労が溜まりだしていたと思われる。
競走生活(3歳後半以降)
次走のラフィアンH(GⅠ・D9F)では、初の古馬との対戦となった。ジョンAモリスH・ジョニーウォーカークラシックHの勝ち馬でトップフライトH・デラウェアH2着のコロニアルウォーターズ、ジョンAモリスH・ヘンプステッドH・ネクストムーヴHなどの勝ち馬ロージズカンティナなども手強い相手だったが、最大の強敵は亜国のGⅠ競走パレルモ大賞を勝った後に米国に移籍して、米国でもサンタマルガリータ招待H・アップルブロッサムH・ミレイディH・ヴァニティHと既にGⅠ競走4勝を挙げていたバヤコアだった。バヤコアは前走チュラヴィスタHで不覚を取って惨敗を喫していたが、それでも本馬よりバヤコアのほうが前評判は上だった。そして結果はバヤコアが勝利を収め、本馬はバヤコアから3馬身3/4差、2着コロニアルウォーターズから半馬身差の3着に敗退。これで連勝は10で止まってしまった。
次走のベルデイムS(GⅠ・D10F)では、コロニアルウォーターズ、前走4着のロージズカンティナ、カゼルHを勝っていた同世代馬タクタイルなどが対戦相手となったが、前日のスピンスターSに回ったバヤコアは不在だった。しかし結果はタクタイルが勝利を収め、本馬は7馬身差の5着と惨敗した。
次走はガルフストリームパーク競馬場で行われたBCディスタフ(GⅠ・D9F)となった。対戦相手は、スピンスターSを勝ってきたバヤコア、マザーグースS2着後にハリウッドオークスを勝っていたゴージャス、前年のケンタッキーダービー・サンタアニタダービー・サンタアニタオークスを勝っていた同馬主同厩馬ウイニングカラーズ、デモワゼルS・ハリウッドスターレットS・ラスヴァージネスS・ケンタッキーオークス・マザーグースS・CCAオークス・ラカナダSとGⅠ競走7勝を挙げていたグッバイヘイロー、前走ベルデイムSで2着だったコロニアルウォーターズ、同3着だったロージズカンティナ、レアパフュームSを勝ってきたハイエストグローリーなどだった。バヤコアが単勝オッズ1.7倍の1番人気に支持される一方で、本馬はウイニングカラーズとのカップリングでようやく単勝オッズ6.2倍の3番人気であり、単勝オッズ5倍の2番人気だったゴージャスより低評価だった。スタートが切られると、ウイニングカラーズがバヤコアを制して先頭に立ち、本馬はやはり後方からレースを進めた。道中でウイニングカラーズが失速してバヤコアが先頭に立ち、それをゴージャスが追いかけていった。本馬も直線では必死に追い上げたが、前の2頭には届かず、勝ったバヤコアから4馬身差、2着ゴージャスからも2馬身半差の3着に敗れた。
シーズン後半は失速したが、3歳時11戦8勝の成績を残し、この年のエクリプス賞最優秀3歳牝馬のタイトルを獲得した。ブリーダーズカップが終了した直後に、当時体調を崩していたクライン氏(翌年3月に69歳で死去)は、本馬、ウイニングカラーズ、既に繁殖入りしていたレディーズシークレットなど自身の所有馬146頭全てをキーンランド11月セールに出品した。そして本馬は北海道三石町の有限会社中村畜産の代表中村和夫氏によって460万ドルで購入された。
4歳時も現役を続け、8月のバレリーナS(GⅠ・D7F)で復帰した。しかし、バレリーナSの勝ち馬プロパーエヴィデンス、ヘンプステッドHの勝ち馬でテストS2着のファンタスティックファインド、メドウランズBCHなどの勝ち馬フィールザビートなどに屈して、フィールザビートの11馬身差5着と大敗した。
次走のマスケットH(GⅠ・D8F)では、フィールザビートに加えて、BCジュヴェナイルフィリーズ・アッシュランドS・マザーグースS・テストS・アラバマSを勝っていた1歳年下の同父馬ゴーフォーワンドとの顔合わせとなった。結果はゴーフォーワンドが勝利を収め、本馬は10馬身差をつけられて6着最下位に沈没。4歳時はこの2戦だけで引退となった。
GⅠ競走で8勝を挙げた本馬だが、他世代と戦った競走では5戦全敗であり、歴代ニューヨーク牝馬三冠馬の中では地味な存在である事は否めない。
血統
Deputy Minister | Vice Regent | Northern Dancer | Nearctic | Nearco |
Lady Angela | ||||
Natalma | Native Dancer | |||
Almahmoud | ||||
Victoria Regina | Menetrier | Fair Copy | ||
La Melodie | ||||
Victoriana | Windfields | |||
Iribelle | ||||
Mint Copy | Bunty's Flight | Bunty Lawless | Ladder | |
Mintwina | ||||
Broomflight | Deil | |||
Air Post | ||||
Shakney | Jabneh | Bimelech | ||
Bellesoeur | ||||
Grass Shack | Polynesian | |||
Good Example | ||||
Stage Luck | Stage Door Johnny | Prince John | Princequillo | Prince Rose |
Cosquilla | ||||
Not Afraid | Count Fleet | |||
Banish Fear | ||||
Peroxide Blonde | Ballymoss | Mossborough | ||
Indian Call | ||||
Folie Douce | Caldarium | |||
Folle Nuit | ||||
Take a Stand | Amerigo | Nearco | Pharos | |
Nogara | ||||
Sanlinea | Precipitation | |||
Sun Helmet | ||||
Self Control | Better Self | Bimelech | ||
Bee Mac | ||||
Alibhai Rose | Alibhai | |||
Torch Rose |
父デピュティミニスターは当馬の項を参照。
母ステージラックは現役成績20戦6勝、イートンタウンH・フィラデルフィアSを勝っている。本馬の半姉スキャパ(父フォーステン)の子には、カイシールロス【メルドS(愛GⅢ)】がいる。ステージラックの半弟にはフレンチフレンド(父エルバジェ)【コンデ賞(仏GⅢ)】がいる他、ステージラックの半姉ストライクザポーズ(父アイアンルーラー)の孫にはピークスアンドヴァリーズ【メドウランズCH(米GⅠ)】、曾孫には2008年のエクリプス賞最優秀芝牝馬フォーエヴァートゥギャザー【BCフィリー&メアターフ(米GⅠ)・ダイアナS(米GⅠ)2回・ファーストレディS(米GⅠ)】が、ステージラックの半妹オースオブアレジアンス(父オールデンタイムズ)の孫にはファラオズディライト 【愛フェニックスS(愛GⅠ)】がいる。→牝系:A29号族
母父ステージドアジョニーはプリンスジョン産駒で、現役成績は8戦5勝。3歳5月までは未勝利馬だったが、ここから急激に上昇し、ベルモントSでケンタッキーダービー・プリークネスS勝ち馬フォワードパスを2着に破って勝つと、サラナクH・ドワイヤーHも制して5連勝をマークし、フォワードパスと共に1968年の米最優秀3歳牡馬に選ばれた。種牡馬としても一定の成功を収めている。
競走馬引退後
競走馬を引退した本馬は同い年のイージーゴアと交配されて受胎した後に来日し、所有者の中村氏が経営しているスタリオン中村畜産において繁殖入りした。このイージーゴアとの間に産まれた牝駒イージーマインドは、オープン特別の忘れな草賞を勝つなど4戦2勝の成績を挙げた。しかしその後は不受胎が続き、1997年に中村氏所有のケイアイファームに移動した翌1998年にようやくミルジョージを受胎したが、同年12月に12歳で他界。イージーマインド以外の子を産む事は出来なかった。イージーマインドは母として、オープン特別のクローバー賞を制したワンダーボーイ、障害オープンを制したネオマエストロを産んだ。また、イージーマインドの唯一の牝駒モエレオープンヒメは米国で繁殖入りしており、辛うじて本馬の牝系子孫を維持している。本馬は2011年に米国競馬の殿堂入りを果たした。