モムズコマンド

和名:モムズコマンド

英名:Mom's Command

1982年生

栗毛

父:トップコマンド

母:スターマミー

母父:ピアスター

女性騎手アビガイル・フラー騎手とのコンビで史上6頭目のニューヨーク牝馬三冠を達成する

競走成績:2・3歳時に米で走り通算成績16戦11勝2着2回3着1回

誕生からデビュー前まで

米国ニューハンプシャー州ラニミードファームの所有者ピーター・フラー氏により生産・所有された。エドワード・T・“ネッド”・アラード調教師に預けられた。

競走生活(2歳時)

2歳7月にニューハンプシャー州のロッキンガムパーク競馬場で行われたファニエルミスS(D5F)でデビュー。単勝オッズ45倍の人気薄であったが、2着サークルフットに頭差で勝ち上がった。

翌月のプリシラS(D6F)では、所有者フラー氏の娘であるアビガイル・フラー騎手を鞍上に迎えて、2着シアーアイス(後に本邦輸入種牡馬であるメトロポリタンHの勝ち馬スウェプトオーヴァーボードの母となっている)に3/4馬身差、3着マイフレンドフランにはさらに8馬身半差をつけて勝利。

続いてスピナウェイS(GⅠ・D6F)に駒を進めたが、ここではソロリティSの勝ち馬でサプリングS2着のティルタレイティング、アディロンダックSを勝ってきたコントレダンスなどに後れを取り、ティルタレイティングの6馬身1/4差4着に敗れた。

次走のアスタリタS(GⅡ・D6.5F)では、前走スピナウェイSで本馬に先着する2着だったソサイエーブルダックが主な対戦相手となった。本馬はスタートで出遅れて5馬身ものロスを蒙ったが、最後は2着セルフイメージに1馬身1/4差、3着ウィンターズラヴにはさらに5馬身3/4差をつけて勝利するという離れ業を演じた。

しかしフリゼットS(GⅠ・D8F)では、2戦2勝のチャールストンラグと、アーリントンワシントンラッシーS・メイトロンSで連続2着してきたティルタレイティングの2頭に屈して、チャールストンラグの5馬身3/4差3着に終わった。

次走のセリマS(GⅠ・D8.5F)でも、チャールストンラグとの対戦となった。しかしここでは本馬がテン乗りのクリス・マッキャロン騎手を鞍上に、2着ディプロメッテに5馬身半差をつけて圧勝を収め、GⅠ競走勝ち馬となった。

その後は米国西海岸に遠征して、ハリウッドスターレットS(GⅠ・D8.5F)に出走した。ここでは、セリマS2着後にデモワゼルSを勝っていたディプロメッテに加えて、人気薄ながらBCジュヴェナイルフィリーズを勝ってきたアウトスタンディングリー(この年のエクリプス賞最優秀2歳牝馬)との顔合わせとなった。しかしアウトスタンディングリーが勝利を収め、本馬は7馬身差の5着に敗れた。2歳時の本馬はスタートで出遅れる事が多く、その割には7戦4勝という競走成績は優秀なものであったと言える。

競走生活(3歳時)

3歳時は3月にピムリコ競馬場で行われたフラーテーションS(D6F)から始動した。そして泥だらけの不良馬場の中を快走し、2着アピーリングガールに19馬身差をつけるという圧勝劇を演じた。次走のゴールドフィンチS(D6F)でも泥んこ不良馬場となったが、特に馬場状態が悪い内埒沿いを走った影響が出たようで、セントパトリックスデイSの勝ち馬クロックスシークレット(日本で走ったエイシンサンルイスの祖母)の2馬身半差2着に敗れた。しかしチェリーブロッサムH(D8.5F)では、2着ゴールデンサイレンスに4馬身差、3着ウィロウィムードにはさらに6馬身差をつけて勝利した。

ケンタッキーオークスには向かわず、ケンタッキーオークスの8日後のカムリーS(GⅢ・D7F)に出走した。このレースには、プライオレスSを勝ってきたクロックスシークレットの他に、西海岸からニューヨーク牝馬三冠路線を目指して遠征してきたアウトスタンディングリーも出走していたが、調子を落としていたアウトスタンディングリーは5着に敗退し、本馬が2着マジェスティックフォリーに4馬身半差をつけて圧勝した。

その2週間後にはエイコーンS(GⅠ・D8F)に出走した。主な対戦相手は、アウトスタンディングリー、スピナウェイS3着後にアーリントンワシントンラッシーSを勝ちメイトロンSで3着していたコントレダンス、ハリウッドスターレットSで4着だったディプロメッテなどだった。しかし本馬が2着ルラルジャンに3馬身差で勝利した(ディプロメッテは3着、アウトスタンディングリーは4着、コントレダンスは6着だった)。当時26歳だった鞍上のフラー騎手は、女性騎手として史上初めてニューヨーク牝馬三冠競走を制覇した。

さらに3週間後のマザーグースS(GⅠ・D9F)では、ルラルジャンを今度は5馬身半差の2着に退けて勝利。このレースで7着に敗れたアウトスタンディングリーは西海岸に戻っていった。

さらに3週間後のCCAオークス(GⅠ・D12F)には、ルラルジャンの姿もなく、ガーデニアS・ナタルマS・マザリンS・ハイビスカスS・シリーンSを勝っていたビースソーバンが唯一の強敵と言える存在だった。しかし本馬が2着ビースソーバンに2馬身半差で勝利を収め、1979年のダヴォナデイル以来6年ぶり史上6頭目のニューヨーク牝馬三冠馬に輝いた。また、鞍上のフラー騎手も女性騎手として史上初めてニューヨーク牝馬三冠を達成した。

その翌月にはテストS(GⅡ・D7F)に出走。このレースにはグレード競走未勝利ながら3連勝中のレディーズシークレットも参戦していた。しかしレディーズシークレットはカムリーSで本馬から11馬身差をつけられた4着に破れていたから、本馬が単勝オッズ1.5倍の1番人気で、レディーズシークレットは単勝オッズ11倍の評価に過ぎなかった。しかし結果はニューヨーク牝馬三冠競走の疲労が残る本馬をレディーズシークレットの勢いが上回り、本馬は勝ったレディーズシークレットから2馬身差の2着に敗れた。

次走のアラバマS(GⅠ・D10F)にはレディーズシークレットは不在だったが、その代わりに、本馬が5着に敗れたハリウッドスターレットSの2着馬で、3歳時はケンタッキーオークス・サンタスサナS・ハリウッドオークス・ラスヴァージネスS・プリンセスSなど5勝を挙げていたフランズヴァレンタイン(鞍上は本馬に騎乗経験もあるマッキャロン騎手)が相手となった。1番人気に支持されたのはフランズヴァレンタインのほうだったが、結果はスタートから最後までリードを保ち続けた本馬がフランズヴァレンタインを4馬身差の2着に下して勝利した。なお、フランズヴァレンタインは母としてマンノウォーS2連覇などGⅠ競走5勝のウィズアンティシペーションを産んでいる。

その後はレアパフュームSを目指して調整されていたが、調教中に脚首を故障したため9月末に引退が発表された。3歳時の成績は9戦7勝で、この年のエクリプス賞最優秀3歳牝馬に選ばれている。また、ニューハンプシャー州など6州が属する米国北東部のニューイングランド地域で誕生した馬限定の、ニューイングランド年度代表馬にも選出された。

なお、本馬に先着した事がある馬は、ティルタレイティング(2回)、ソサイエーブルダック、コントレダンス、チャールストンラグ、アウトスタンディングリー、フランズヴァレンタイン、ワイジングアップ(ハリウッドスターレットSで3着)、ディプロメッテ、クロックスシークレット、レディーズシークレットの計10頭いるが、ハリウッドスターレットS以降に本馬と対戦機会が無かったワイジングアップを除く9頭は全て他のレースで打ち負かしており、同世代では間違いなく最上級の実力を有する馬だった。本馬の訃報を伝えた米ブラッドホース誌の記事によると、名手アンヘル・コルデロ・ジュニア騎手は後にフラー氏に対して「私はモムズコマンドも、貴方の娘アビーも大好きですが、レースで彼女達の背中を眺めながらゴールインするのはうんざりです」とぼやいたという。

血統

Top Command Bold Ruler Nasrullah Nearco Pharos
Nogara
Mumtaz Begum Blenheim
Mumtaz Mahal
Miss Disco Discovery Display
Ariadne
Outdone Pompey
Sweep Out
Polly Girl Prince Bio Prince Rose Rose Prince
Indolence
Biologie Bacteriophage
Eponge
Bella Paola Ticino Athanasius
Terra
Rhea Gundomar
Regina
Star Mommy Pia Star Olympia Heliopolis Hyperion
Drift
Miss Dolphin Stimulus
Tinamou
Inquisitive Mahmoud Blenheim
Mah Mahal
Swistar Pavot
Schwester
Momamamu Mount Marcy Mahmoud Blenheim
Mah Mahal
Maud Muller Pennant
Truly Rural
Recess Count Fleet Reigh Count
Quickly
Recce Mahmoud
Schwester

父トップコマンドはボールドルーラー直子で、現役時代は仏国と米国で走り35戦7勝、オークツリー招待H(米GⅠ)・カールトンFバークH(米GⅡ)を勝利している。引退後は米国ケンタッキー州のマーティファームで種牡馬入りして、20頭のステークスウイナーを出してまずまずの成績を収めた。

母スターマミーは、フラー氏が自身の妻に敬意を表して命名した馬で、現役成績23戦2勝。スターマミーの半兄にはサド(父ミスターブリック)【クラークH】がいる。スターマミーの半姉ミスコル(父コレレーション)の子にはグッドビヘイヴィング【ウッドメモリアルS・スウィフトS・ゴーサムS】、ミスティネイティヴ【コレクションH(米GⅢ)】が、半姉ママズシルヴァー(父シルヴァーキング)の孫にアイムスプレンディド【セリマS(米GⅠ)・ハリウッドスターレットS(米GⅠ)】が、半姉パッツママ(父ホスピタリティ)の玄孫にロマンスイズダイアン【ハリウッドスターレットS(米GⅠ)】がいる。

スターマミーの母モママムの半弟にはコートリセス【ガルフストリームパークH】がいる他、モママムの半妹ファンハウスの子には亜国の大種牡馬グッドマナーズ、コートルーリング【ハリウッドパーク招待ターフH(米GⅠ)】、曾孫にはウィンドシャープ【サンルイレイS(米GⅠ)・ビヴァリーヒルズH(米GⅠ)】、玄孫にはジョハー【BCターフ(米GⅠ)・ハリウッドダービー(米GⅠ)】、デザート【デルマーオークス(米GⅠ)】が、モママムの半妹スウォーンズチューンの子にはバッグオブチューンズ【ケンタッキーオークス(米GⅡ)】、スウィングタイム【ビヴァリーヒルズH(米GⅡ)・サンタマリアH(米GⅡ)】、曾孫にはプロフェシー【チェヴァリーパークS(英GⅠ)】、玄孫にはベクラックス【ウッドバインマイル(加GⅠ)】、ノービズライクショウビズ【ウッドメモリアルS(米GⅠ)】がいる。モママムの曾祖母シェヴェスターは米国の歴史的名馬エクワポイズの全妹で、シェヴェスターの従兄妹の子には米国の歴史的名馬シービスケットがいる。→牝系:F5号族③

母父ピアスターはブルックリンH・サバーバンH・エクワポイズマイルH・ワイドナーH勝ちなど29戦10勝。エクワポイズマイルHでは1分33秒2のコースレコードを樹立した快速馬だった。直系を遡ると、ブリーダーズフューチュリティS・サンフェリペS・フラミンゴS・ウッドメモリアルS・ウィザーズSを制したオリンピア、プリンスオブウェールズS・プリンセスオブウェールズSを制したヘリオポリスを経てハイペリオンに行きつく血統の持ち主。スターマミーにトップコマンドを交配させたフラー氏の意図は、快速血統のトップコマンドとスタミナ血統のスターマミーを組み合わせてスピードとスタミナを兼備した馬を生産する事にあったのだと、本馬の訃報を伝えた米ブラッドホース誌の記事にあったが、(結果的にはそのとおりになったにせよ)ピアスターが快速馬だった事を考えると少々疑問がある意見ではある。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は生まれ故郷のラニミードファームで繁殖入りした。自身に匹敵するほどの産駒は出せなかったと海外の資料では辛口の評価をされているが、それでも15頭の産駒のうち10頭が勝ち上がり、20歳時に産んだ牡駒ジョーンズボロ(父セファピアノ)がコーンハスカーH(米GⅡ)・エセックスH(米GⅢ)・レイザーバックH(米GⅢ)・テキサスマイルS(米GⅢ)を制しているから、繁殖牝馬として失敗だったとは筆者は思わない。また、9歳時に産んだ牝駒モムズクラウン(父チーフズクラウン)は日本に繁殖牝馬として輸入されている。2007年2月に老衰のため25歳で安楽死の措置が執られ、遺体はラニミードファームに埋葬された。同年5月、米国競馬の殿堂入りを果たしている。

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