ノーザントリック

和名:ノーザントリック

英名:Northern Trick

1981年生

栗毛

父:ノーザンダンサー

母:トリックチック

母父:プリンスジョン

歴代仏オークス馬の中でも高評価を得ている1984年ノーザンダンサー最強3歳世代の一頭は牝系子孫も発展させる

競走成績:3歳時に仏で走り通算成績6戦4勝2着2回

誕生からデビュー前まで

米国の馬産家ワーナー・ジョーンズ・ジュニア氏とウィリアム・ファリッシュⅢ世氏の共同生産馬で、ジョーンズ氏が米国ケンタッキー州に所有するハーミテイジファームで誕生した。この両名の共同生産馬としては、当時史上最高額の1310万ドルで取引されたシアトルダンサー(シアトルスルーの半弟)が有名である。本馬は1歳時にギリシアの海運王スタヴロス・ニアルコス氏により53万ドルで購入され、仏国フランソワ・ブータン調教師に預けられた。主戦はキャッシュ・アスムッセン騎手で、本馬の全レースに騎乗した。

競走生活

デビューは遅く、3歳4月になってからだった。まずはロンシャン競馬場で行われたシャイヨ賞(T2000m)に出走して、勝ち上がった。次走はいきなりGⅠ競走のサンタラリ賞(GⅠ・T2000m)となったが、ここではヴァントー賞を勝ってきたグリーズミネの半馬身差2着に敗れた。それでも、ペネロープ賞を勝って臨んできた3着馬パンパベラには2馬身半差をつけていた。

次走の仏オークス(GⅠ・T2100m)でも、グリーズミネ、パンパベラとの顔合わせとなった。本馬は馬群の中団を進み、直線入り口では15頭立ての10番手だった。しかし残り400m地点から外側を豪快に伸び、残り250m地点で先頭に立つとそのまま突き抜け、2着グリーズミネに5馬身差、3着パンパベラにはさらに3馬身差をつけて圧勝した。

その後はしばらく休養し、秋はノネット賞(GⅢ・T2000m)から始動した。そしてクロエ賞の勝ち馬イバディーヤを首差の2着に、仏グランクリテリウム・グロット賞・プシシェ賞の勝ち馬トレジエムをさらに半馬身差の3着に抑えて勝利した。その後は2週間後のヴェルメイユ賞(GⅠ・T2400m)に向かった。このレースには、英オークス・ヨークシャーオークスの勝ち馬で愛オークス2着のサーカスプルームも出走してきて、同世代の牝馬最強を決める戦いとなったが、本馬がサーカスプルームを1馬身差の2着に退けて勝利した。

次走は凱旋門賞(GⅠ・T2400m)となった。対戦相手は、愛2000ギニー・エクリプスS・愛チャンピオンS・ベレスフォードS・デリンズタウンスタッドダービートライアルSの勝ち馬で仏ダービー・キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS2着のサドラーズウェルズ、前年の凱旋門賞を筆頭にヴェルメイユ賞・ロスマンズ国際S・ターフクラシックS・ワシントンDC国際Sなどを勝ち前年のエクリプス賞年度代表馬に選ばれていたオールアロング、ニエル賞・コンセイユドパリ賞・フォワ賞の勝ち馬でガネー賞2着のサガス、英オークス・英チャンピオンS・キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS・コロネーションC・サンチャリオットSの勝ち馬で英1000ギニー・エクリプスS2着のタイムチャーター、英オークス・ヨークシャーオークス・英セントレジャーの勝ち馬で前年の凱旋門賞とこの年のコロネーションC2着のサンプリンセス、豪州でローズヒルギニー・AJCダービー・クイーンズランドダービー・コックスプレートなどを勝った後に海外に飛び出して前走バーデン大賞を勝ってきたストロベリーロード、愛オークス勝ち馬で愛チャンピオンS3着のプリンセスパティ、グレートヴォルティジュールSの勝ち馬でデューハーストS・愛ダービー2着のレインボークエスト、ノアイユ賞・ユジェーヌアダム賞・ニエル賞の勝ち馬カリエロール、ジャンドショードネイ賞・ラクープの勝ち馬ガルドロワイヤル、プランスドランジュ賞2回・アルクール賞の勝ち馬ラヴリーダンサー、オイロパ賞・ミラノ大賞の勝ち馬エスプリデュノール、ベルリン大賞2連覇のアバリ、ラクープドメゾンラフィットの勝ち馬で前年のヴェルメイユ賞2着のエストラペイドなどだった。地元仏国で販売された馬券では、本馬が単勝オッズ3.2倍の1番人気に支持され、サガスが単勝オッズ4.5倍の2番人気、カリエロールが単勝オッズ10倍の3番人気、サドラーズウェルズとオールアロングが単勝オッズ13倍の4番人気と続いていた。

スタートが切られるとペースメーカー役の馬3頭が先頭を飛ばし、本馬は馬群の中団好位につけた。そして6番手で直線に入ると、先頭のストロベリーロードと2番手のサガスの2頭を追撃。残り400m地点でサガスがストロベリーロードをかわして先頭に立つと、本馬もすぐにストロベリーロードをかわして2番手に上がった。そしてサガスに必死で食らいついたが、ゴールまで1度も2頭の馬体が併さる場面は無く、サガスに2馬身差をつけられて2着に敗れた。それでも3着オールアロングには6馬身差をつけており、牡馬古馬の一線級相手でも引けを取らない実力を証明した。これが本馬の現役最後のレースとなった。

本馬の同世代馬にはエルグランセニョール、サドラーズウェルズ、セクレトなどのノーザンダンサー産駒がおり、本馬も含めたこれらの馬達が欧州クラシック戦線を席巻し、ノーザンダンサー最強世代とも呼ばれた。また、この年ニアルコス氏は2年連続の仏首位馬主、ブータン師も2年連続7度目の仏首位調教師を獲得している。本馬はこの年の仏最優秀3歳牝馬に選ばれ、歴代の仏オークス馬の中ではトップクラスの評価を得ている(国際クラシフィケーションは127)。

血統

Northern Dancer Nearctic Nearco Pharos Phalaris
Scapa Flow
Nogara Havresac
Catnip
Lady Angela Hyperion Gainsborough
Selene
Sister Sarah Abbots Trace
Sarita
Natalma Native Dancer Polynesian Unbreakable
Black Polly
Geisha Discovery
Miyako
Almahmoud Mahmoud Blenheim
Mah Mahal
Arbitrator Peace Chance
Mother Goose 
Trick Chick Prince John Princequillo Prince Rose Rose Prince
Indolence
Cosquilla Papyrus
Quick Thought
Not Afraid Count Fleet Reigh Count
Quickly
Banish Fear Blue Larkspur
Herodiade
Fast Line Mr. Busher War Admiral Man o'War
Brushup
Baby League Bubbling Over
La Troienne
Throttle Wide Flying Heels Flying Ebony
Heeltaps
Let Her Fly Pataud
Mary King

ノーザンダンサーは当馬の項を参照。

母トリックチックは不出走馬だが、繁殖牝馬としては本馬の半兄オンザスライ(父ロイダゴバート)【ジョッキークラブ金杯(米GⅠ)・ローズモントS(米GⅡ)・ドナルドPロスH(米GⅡ)・ホーソーン金杯H(米GⅡ)・グレイラグH(米GⅡ)】も産んでいる。

トリックチックの母ファストラインも優れた繁殖牝馬で、トリックチックの全姉フェアウェイファン【アルキビアデスS】、半弟フィリベルト(父リボー)【モルニ賞(仏GⅠ)】、半妹ホワイトスターライン(父ノーザンダンサー)【ケンタッキーオークス(米GⅠ)・アラバマS(米GⅠ)・デラウェアオークス(米GⅠ)・テストS(米GⅢ)】を産んでいる。フェアウェイファンの子にはフェアウェイフライアー【ダイアナH(米GⅡ)・クラークH・ヴァリイフォージュH(米GⅢ)・フォールズシティH(米GⅢ)・フォールズシティH】、トーション【ポーモノクH(米GⅢ)】、牝系子孫には、カララファエラ【ハリウッドスターレットS(米GⅠ)】、ムータティール【ヴィットリオディカプア賞(伊GⅠ)・ジャックルマロワ賞(仏GⅠ)】、バーナーディニ【プリークネスS(米GⅠ)・トラヴァーズS(米GⅠ)・ジョッキークラブ金杯(米GⅠ)】、ラヴアンドプライド【パーソナルエンスン招待H(米GⅠ)・ゼニヤッタS(米GⅠ)】などがいる。トリックチックの半姉デイライン(父デイコート)の子にはマガジン【CCAオークス(米GⅠ)】、孫にはバーンブルックアゲイン【クイーンマザーチャンピオンチェイス2回】、牝系子孫にはインターゲイズ【豪シャンペンS(豪GⅠ)・カンタベリーギニー(豪GⅠ)・AJCクイーンエリザベスS(豪GⅠ)2回・オールエイジドS(豪GⅠ)・ドゥーンベンC(豪GⅠ)・アンダーウッドS(豪GⅠ)・オーストラリアンC(豪GⅠ)】、ラインストーンカウボーイ【エイントリーハードル(英GⅠ)・ワールドシリーズハードル(愛GⅠ)】、リラックスドジェスチャー【加国際S(加GⅠ)】、バッファリング【マニカトS(豪GⅠ)・スプリントクラシック(豪GⅠ)・ウインターボトムS(豪GⅠ)・AJモイアーS(豪GⅠ)】などがいる。トリックチックの半妹マドモワゼルヴィテッセ(父トムロルフ)の牝系子孫には、ミリオ【サンクルー大賞(仏GⅠ)】、ナフード【ファルマスS(英GⅠ)】がいる。ホワイトスターラインの子にはホワイトヘイヴン【ポモーヌ賞(仏GⅡ)】、孫にはヴァリーオブゴールド【伊オークス(伊GⅠ)】、プレセリ【モイグレアスタッドS(愛GⅠ)】、曾孫にはダイジン【独ダービー(独GⅠ)・バイエルン大賞(独GⅠ)】がいる。このように、ファストラインの牝系子孫には活躍馬が多数いる。→牝系:F4号族④

母父プリンスジョンは当馬の項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は仏国で繁殖入りし、11歳の時に米国に移動した。2015年現時点で他界したという話は聞かないが、存命しているという話も聞かない。最後の子を産んだのが2001年、20歳のときなので、少なくともこの年までは生きていたはずである。産駒は12頭いるが、最後の子である牝駒オンダノヴァ(父ケオス)がリステッド競走インプルーデンス賞を勝ったのが唯一のステークス競走勝利であり、直子の競走成績は振るわなかった。しかし牝系子孫は世界的に活躍している。12戦未勝利に終わった2番子の牝駒ランジェリー(父シャーリーハイツ)は、日本産馬として初めて海外の国際GⅠ競走を制したシーヴァ【タタソールズ金杯(愛GⅠ)・アールオブセフトンS(英GⅢ)・ブリガディアジェラードS(英GⅢ)】、リムノス【ジャンドショードネイ賞(仏GⅡ)・フォワ賞(仏GⅡ)】、ライトシフト【英オークス(英GⅠ)】の母となり、2014年のエクリプス賞最優秀古馬及び最優秀芝牡馬メインシークエンス【BCターフ(米GⅠ)・ユナイテッドネーションズS(米GⅠ)・ソードダンサー招待S(米GⅠ)・ジョーハーシュターフクラシック招待S(米GⅠ)】の曾祖母となった。また、5番子の牝駒クリーチャーデュシエル(父マキャヴェリアン)はブラジルで活躍したジューヌトゥルク【サンパウロ大賞(伯GⅠ)・ブラジル大賞(伯GⅠ)】の母となっているし、10番子の牝駒ノヴァシンジ(父クリスエス)はドッジングバレッツ【クイーンマザーチャンピオンチェイス(英GⅠ)・ティングルクリークチェイス(英GⅠ)・クラレンスハウスチェイス(英GⅠ)】の母となっている。

TOP