ムーチョマッチョマン

和名:ムーチョマッチョマン

英名:Mucho Macho Man

2008年生

鹿毛

父:マッチョウノ

母:ポンチェデレオナ

母父:ポンチェ

生誕直後の心臓が止まった状態から蘇生し、心臓移植で生命を繋いだ調教師の管理馬として成長し、BCクラシックで米国ダート界の頂点を極める

競走成績:2~6歳時に米で走り通算成績25戦9勝2着5回3着6回

誕生からデビュー前まで

米国フロリダ州オカラにあるローズグローヴファームにおいて、同牧場の所有者である元騎手のジョン・D・リオ氏と准看護師の妻キャロル・D・リオ夫人の両名により生産された。予定日より3週間遅れで誕生した本馬は、生誕直後に身動きひとつせず、死産かと思われた。しかしリオ夫妻や牧場の従業員達が必死で心臓マッサージを行ったところ、数分後に本馬は目を開けるとすっくと立ち上がり、その後は普通に活動を開始した。そのためにリオ夫妻は本馬の事を、死後4日目にして友人だったイエス・キリストの力により蘇ったとされる新約聖書に登場する人物名にちなんで“Lazarus(ラザロ)”という名前で呼んでいた。

死産寸前の状態で産まれた上に誕生日が6月15日というかなりの遅生まれだった本馬だが、すくすくと成長し、最終的には体高17ハンドという非常に大柄な馬となった。

馬名は米国の有名な男性ポップスグループである「ヴィレッジ・ピープル」が1978年に発表した楽曲「Macho Man」に由来する。“Mucho”はスペイン語で「非常に」という意味、“Macho”は同じくスペイン語で「男性的な・逞しい」という意味(日本では筋肉質という意味で使用されるが、本来は体型よりも振る舞いが男性的、言い方を変えると男尊女卑な性格の人物に対して使われる言葉らしい)であるから、本馬の名前を直訳すると「非常に逞しい男」となり、それは父マッチョウノの名前からの連想だけでなく、おそらくその巨体から連想されたものでもあったのだろう。

気性は穏やかな馬だったが、鞭を使われるのだけは嫌がったという(鞭を使われるのが嫌でない馬はいないだろうが)。また、水で濡れたり泥をかぶったりする事を非常に嫌がることでも有名であり、後述する重馬場不得手の原因の1つになったと推察されている。また、レース中に他の事に気を取られて集中できない場合が特に2歳戦で続いたため、3歳以降はブリンカーを装着してレースに臨むことが多くなった。

馬主団体ドリーム・チーム・ワン・レーシング・ステーブルの代表者ジム・カルヴァー氏にプライベートで購入され、米国ウィリアム・P・ホワイト調教師に預けられた。

競走生活(2歳時)

2歳7月にフロリダ州コールダー競馬場で行われたダート6ハロンの未勝利戦で、ルイス・アランゴ騎手を鞍上にデビュー(本当はその1週間前の未勝利戦でデビューするはずだったが、軽度の怪我をしたために翌週にずれ込んでいる)。単勝オッズ6.8倍で12頭立ての4番人気という評価だった。レースではスタートから先頭に立ち、そのまま逃げ切るかと思われたが、ゴール直前で単勝オッズ10倍の6番人気馬グルメディナーに差されて1馬身差の2着に敗れた。

このレース後に本馬の権利の過半数をディーン・リーヴス氏と妻のパティ・リーヴス夫人のリーヴス・サラブレッド・レーシングが取得し、ドリーム・チーム・ワン・レーシング・ステーブルとの共同所有馬となった。同時に本馬はフロリダ州ガルフストリームパーク競馬場の会長も務めたティモシー・リトヴォ調教師のところへと転厩した。リーヴス夫妻は当初、本馬を2着に破って勝ったグルメディナーを購入する計画だったが、夫のリーヴス氏が「私は2着だった馬のほうが良いと感じました」と主張したために、本馬を購入する事になったのだという。

次走は8月にサラトガ競馬場で行われたダート7ハロンの未勝利戦となった。ギャレット・ゴメス騎手が騎乗する本馬は単勝オッズ2.9倍の2番人気だった。レースでは単勝オッズ8.5倍の4番人気馬ジョーヴァンが逃げを打ち、本馬は2番手を進んだ。そして直線を向いたが、後方から来た単勝オッズ2.7倍の1番人気馬カルリネロに差され、ジョーヴァンにも追いつけずに、カルリネロの1馬身3/4差3着に敗れた。

次走は9月にモンマスパーク競馬場で行われたダート8ハロン70ヤードの未勝利戦となった。ここではエイバル・コア騎手を鞍上に、単勝オッズ2.1倍の1番人気に支持された。レースでは2番手を進み、三角で先頭に立つと直線で後続を引き離し、2着ベラミーズボスに4馬身差をつけて快勝した。

このレース後に本馬の管理調教師はリトヴォ師の妻キャサリン・リトヴォ夫人に形式上交代となっている(実際にはこの後も家族全員で本馬を育成している)。キャサリン夫人は数年前に心臓病を患っており、一時は余命宣告を受けるほど状態が悪化していたが、幸いにも心臓移植の手術を受けることができ、本馬が厩舎の一員となった頃には健康体となっていた。本馬自身も生誕直後は心臓が止まっていた事を彼女は知っており、いつも本馬と自分を重ね合わせて語っていたという。

その後は11月のナシュアS(GⅡ・D8F)に向かった。ここでは未勝利戦を8馬身3/4差で勝ち上がってきたトゥオナーアンドサーヴが単勝オッズ1.35倍という断然の1番人気に支持されており、エコノミックサミットという馬が単勝オッズ6.4倍の2番人気、デビッド・コーエン騎手騎乗の本馬は単勝オッズ7.5倍の3番人気だった。レースではトゥオナーアンドサーヴが逃げを打ち、本馬は5頭立ての4番手を進んだ。そして向こう正面で2番手に上がると、逃げるトゥオナーアンドサーヴを追撃したが、直線では逆に差を広げられ、4馬身差の2着に敗れた。

同月末のレムセンS(GⅡ・D9F)にもトゥオナーアンドサーヴが出走してきた。前走の内容からトゥオナーアンドサーヴには敵わないとみなされていた本馬は、単勝オッズ16.4倍で5頭立ての最低人気だった。レースでは単勝オッズ1.6倍の1番人気に推されていたトゥオナーアンドサーヴが逃げを打ち、コア騎手騎乗の本馬は前走と異なり最初からトゥオナーアンドサーヴを追いかけて2番手を進んだ。しかし道中で後脚を落鉄した影響もあり、トゥオナーアンドサーヴに追いつけずに2馬身差の2着に敗れた。

落鉄した原因は自分の前脚と後脚をぶつけてしまう後突だった。背が高い本馬は脚も長かったため、前脚と後脚をぶつけてしまう事が頻繁にあり、現役時代を通じてそれに悩まされることになる。2歳時はこれが最後のレースで、この年の成績は5戦1勝だった。

競走生活(3歳時)

3歳時は1月のホーリーブルS(GⅢ・D8F)から始動した。このレースには、アーリントンワシントンフューチュリティを勝っていたメジャーゲイン、デルタダウンズジャックポットSを勝っていたグルメディナー(本馬をデビュー戦で負かした馬でもある)といったGⅢ競走の勝ち馬も出走していたが、コア騎手とコンビを組んだ本馬が他2頭より3ポンド軽い斤量も評価されて単勝オッズ3.4倍の1番人気に支持された。しかしスタートから先頭争いを演じるも、直線に入るところで失速。最後方から追い込んで勝った単勝オッズ3.7倍の2番人気馬ダイアルドインから4馬身半差をつけられて4着に敗れた。

その後はルイジアナ州フェアグラウンズ競馬場に向かい、2月のリズンスターS(GⅡ・D8.5F)に出走。前年のBCジュヴェナイルで3着していたバーボンS勝ち馬ローグロマンスと、前走のオプショナルクレーミング競走を5馬身差で圧勝してきた2戦2勝のマチェンが並んで単勝オッズ3.1倍の1番人気で、主戦となるラジヴ・マラージ騎手とコンビを組んだ本馬は単勝オッズ4.6倍の3番人気、ケンタッキージョッキークラブS勝ち馬でブリーダーズフューチュリティ2着のサンティヴァが単勝オッズ7.8倍の4番人気だった。スタートが切られると単勝オッズ12.8倍の5番人気馬ディサイシヴモーメントが逃げを打ち、本馬は2番手を追走。三角で先頭に並びかけると、直線を向いた後も先頭を維持したまま押し切り、道中3番手から2着に粘ったサンティヴァに1馬身半差をつけて勝利した。

その後は翌月のルイジアナダービー(GⅡ・D9F)に向かった。サウスウエストS3着馬エリートアレックス、前走リズンスターS4着のマチェン、前走リズンスターSで6着だったルコントS2着馬パンツオンファイアあたりが目立つ対戦相手であり、本馬が単勝オッズ2.5倍の1番人気に支持された。レースでは4番手を追走し、直線には3番手で入ってきた。そして直線では逃げる単勝オッズ7.3倍の4番人気馬パンツオンファイア、本馬の少し後方から差してきた単勝オッズ37.2倍の8番人気馬ネーロとの三つ巴の勝負となった。しかし本馬は僅かに遅れて、勝ったパンツオンファイアから3/4馬身差の3着に敗れた。このレース中にはまたしても後突を起こして右前脚を落鉄していた。

次走のケンタッキーダービー(GⅠ・D10F)では、ホーリーブルSで本馬を破った後にフロリダダービーを勝ってきたダイアルドイン、パンツオンファイア、ルイジアナダービー2着後にアーカンソーダービーでも2着していたネーロ、サンタアニタダービーを勝ってきたミッドナイトインタールード、サンランドダービーを勝ってきたトゥワイスジアピール、ファウンテンオブユースS・ウィズアンティシペーションSの勝ち馬でBCジュヴェナイルターフ2着のソルダット、アーカンソーダービー・サウスウエストSの勝ち馬アーチアーチアーチ、UAEダービーで2着してきたマスターオブハウンズ、ゴーサムS勝ち馬でホープフルS2着のステイサースティ、スパイラルSを勝ってきたアニマルキングダム、フロリダダービーで2着してきたシャックルフォード、ブルーグラスSを勝ってきたブリリアントスピード、ブルーグラスSで2着してきたツインスパイアード、タンパベイダービー勝ち馬ウォッチミーゴー、リズンスターS2着後に出走したブルーグラスSでは惨敗していたサンティヴァ、キャッシュコールフューチュリティ・ジェネラスS勝ち馬でサンタアニタダービー2着のコンマトゥザトップ、レキシントンSを勝ってきたダービーキトゥン、リズンスターS5着後にスパイラルSで2着してきたディサイシヴモーメントの18頭が対戦相手となった。絶対的な本馬になるような馬は皆無であり、ダイアルドインが単勝オッズ6.2倍の1番人気、パンツオンファイアが単勝オッズ9.1倍の2番人気、ネーロが単勝オッズ9.5倍の3番人気、本馬が単勝オッズ10.3倍の4番人気となった。

スタートが切られるとシャックルフォードが逃げを打ち、本馬は無理に先行せずに馬群の中団7~8番手辺りを追走した。しかしこの年のケンタッキーダービーはそれほどペースが速くならず、多くの馬が勝負どころでもスタミナを十分に残しており、持久力勝負ではなく瞬発力勝負となった。直線に4番手で入ってきた本馬はじわじわと脚を伸ばしてきたが、後方から来たアニマルキングダムと2番手で粘ったネーロの2頭に屈して、勝ったアニマルキングダムから3馬身差の3着に敗れた。

次走のプリークネスS(米GⅠ・D9.5F)では、アニマルキングダム、前走4着のシャックルフォード、同8着のダイアルドイン、同16着のミッドナイトインタールード、アーカンソーダービー3着馬ダンスシティ、ベストパルS・サンヴィンセントS2着のスウェイアウェイ、イロコイS勝ち馬でケンタッキージョッキークラブS・サンランドダービー・ジェロームS2着のアストロロジー、ハッチソンS・ジャージーショアS勝ち馬フラッシュポイントなどが対戦相手となった。前走では単勝オッズ21.9倍の11番人気だったアニマルキングダムが今回は単勝オッズ3.3倍の1番人気に支持され、ダイアルドインが単勝オッズ5.4倍の2番人気、本馬が単勝オッズ6.2倍の3番人気となった。

レースはフラッシュポイントが逃げを打ち、シャックルフォードが2番手で、本馬は馬群の中団やや後方の8番手前後、アニマルキングダムは大胆にも最後方からレースを進めた。しかし本馬はこのレースで外れにくい特製の蹄鉄を装着していたにも関わらず、またしても後突のため左前脚を落鉄していた。そのために本馬は非常に反応が悪く、三角から四角にかけて全く順位を上げられず、8番手で直線に入ってきた。結局、アニマルキングダムの追撃を半馬身差で凌いで勝利したシャックルフォードから7馬身半差の6着と完敗してしまった。

ケンタッキーダービーとプリークネスSでいずれも敗れた馬はベルモントSには出ない事が多いが、本馬はベルモントS(米GⅠ・D12F)に参戦した。対戦相手は、シャックルフォード、アニマルキングダム、ケンタッキーダービー2着から直行してきたネーロ、同5着から直行してきたマスターオブハウンズ、同6着から直行してきたサンティヴァ、同7着から直行してきたブリリアントスピード、同12着から直行してきたステイサースティ、レキシントンS2着・ピーターパンS3着のプライムカット、フェデリコテシオSで2着してきたルーラーオンアイスなどだった。アニマルキングダムが単勝オッズ3.6倍の1番人気、ネーロが単勝オッズ5.9倍の2番人気、マスターオブハウンズが単勝オッズ7倍の3番人気、シャックルフォードが単勝オッズ7.3倍の4番人気、マラージ騎手からラモン・ドミンゲス騎手に乗り代わっていた本馬が単勝オッズ9.2倍の5番人気となった。

ところがこのレースではスタート時にアクシデントが発生した。本馬の右隣枠にいた単勝オッズ31.5倍の最低人気馬イズントヒーパーフェクトがスタートした瞬間に左側に斜行して本馬に衝突。押された本馬も左側に斜行して、左隣枠にいたアニマルキングダムに衝突してしまった。この事故の影響で、アニマルキングダム鞍上のジョン・ヴェラスケス騎手の左足は鐙から外れてしまい、ヴェラスケス騎手が体勢を立て直そうとしている間に他馬達は遥か前方に行っていた。本馬は馬群の中団にはつけたものの、2頭の馬にぶつかった影響は決して小さくなかった上に、馬場状態が極悪不良馬場だった(本馬の重馬場不得手は有名であり、現役時代を通じて湿った馬場で3戦したが未勝利に終わっている)こともあって、直線で全く伸びずに、2番手から抜け出して勝った単勝オッズ25.75倍の伏兵ルーラーオンアイスから24馬身1/4差をつけられた7着と大敗した。なお、アニマルキングダムも直線で伸びずに6着に終わっている(ただし本馬より15馬身も先にゴールしている)。

イズントヒーパーフェクトがスタート時に斜行した理由は、実は意図的なラフプレイだったのではないかという噂も流れた。何故ならイズントヒーパーフェクトの鞍上にいたのは、前走まで本馬に乗っていたマラージ騎手だったからである。マラージ騎手はアニマルキングダムに騎乗した経験もあり、本馬とアニマルキングダムのいずれからも降ろされた事を恨んだマラージ騎手が、この2頭をまとめて邪魔しようとしたのではないかというのである。真相は定かではないが、いずれにしてもスタート直後の事故のきっかけを作ったのがイズントヒーパーフェクトであった事は間違いなく、マラージ騎手は7日間の騎乗停止処分を受けた。

一方で本馬鞍上のドミンゲス騎手は自身も被害者であったからお咎めは無く、この後も本馬に騎乗する事になる。

アニマルキングダムはこのスタート時の事故の影響で脚を負傷して長期休養を余儀なくされた(そのために本馬とは二度と戦うことは無かった)が、本馬も長期休養入りとなった。もっとも、本馬が休養入りした理由はアニマルキングダムとは異なり、呼吸器疾患の手術を受けたためだった。

復帰したのはベルモントSから5か月後にアケダクト競馬場で行われたダート8ハロンのオプショナルクレーミング競走だった(本馬は売却の対象外)。実績では頭一つ抜けており、療養明けでも単勝オッズ2.45倍の1番人気に支持された。そしてスタートから先頭に立つと、そのまま快調に先頭を走り続け、2着ギャラントフィールズに5馬身3/4差をつけて楽勝した。

このレースの4日前にこの年のBCクラシックは終わっており、しばらく目標とするレースは無かったために、3歳時はこのレースを最後に7戦2勝の成績で終えた。

競走生活(4歳時)

4歳時は1月のサンシャインミリオンズクラシック(D9F)から始動した。このレースは前年までフロリダ州産馬及びカリフォルニア州産馬限定競走だったが、この年からフロリダ州産馬限定競走となっていた。他州の生産馬や米国外の生産馬には門戸を閉ざしているためにグレード競走の格付けは受けられないが、賞金は並のGⅠ競走より高額だったから、フロリダ州産の有力馬であれば迷わず狙うべきレースだった。ジェロームS勝ち馬でピーターパンS・ドワイヤーS2着のアディオスチャーリー、カーリンSなどを勝っていたターボコンプレッサー、クイーンズカウンティSなどの勝ち馬ロンザグリークなどがこのレースに参戦。アディオスチャーリーが単勝オッズ2.6倍の1番人気、本馬が単勝オッズ3.1倍の2番人気、ターボコンプレッサーが単勝オッズ4.9倍の3番人気、ロンザグリークが単勝オッズ5.9倍の4番人気となった。スタートが切られるとターボコンプレッサーが先頭に立ち、本馬は2番手を追走した。そして四角でターボコンプレッサーをかわして先頭に立つと、直線では追い上げてきたロンザグリークを完封。2着ロンザグリークに1馬身半差をつけて勝利した。

次走は3月のガルフストリームパークH(GⅡ・D8F)となった。ちょうどこのレースの1週間前に行われたサンタアニタHを、前走で本馬が破ったロンザグリークが勝利しており、間接的に本馬の評価を上昇させていた。そのために本馬が単勝オッズ1.7倍の1番人気に支持され、前年のフォアゴーS勝ち馬でBCスプリント3着のジャクソンベンドが単勝オッズ2.4倍の2番人気、前年のガルフストリームパークスプリントCS・ガルフストリームパークH勝ち馬タックルベリーが単勝オッズ6倍の3番人気となった。出走頭数が5頭と少なかったため、レース序盤はタックルベリーを先頭に馬群が一団となって進んだ。向こう正面で馬群が縦長になってくると、タックルベリーが先頭、本馬が2番手、ジャクソンベンドが3番手となった。そのままの態勢で直線に入ると、本馬がタックルベリーをかわして先頭に立ち、他2頭の接戦を尻目に悠々と直線を走り抜け、2着タックルベリーに2馬身差で勝利した。

次走は5月のアリシーバS(GⅡ・D8.5F)となった。このレースにはマインシャフトH・ニューオーリンズHなど4連勝中のネイツマインシャフト、ノーザンダンサーS・フェイエットSの勝ち馬でクラークH3着のサクセスフルダンに加えて、本馬にとって生涯最大の好敵手となるフォートラーンドも前走スキップアウェイSを勝って参戦していた。本馬が単勝オッズ2.7倍の1番人気、ネイツマインシャフトが単勝オッズ3.4倍の2番人気、サクセスフルダンが単勝オッズ5.1倍の3番人気、フォートラーンドが単勝オッズ6.6倍の4番人気となった。レースではネイツマインシャフトとフォートラーンドが先行して、本馬はその少し後方の4番手につけた。そして向こう正面でフォートラーンドが先頭に立つと、それを追って進出。直線入り口ではさらに後方から来たサクセスフルダンも先頭争いに加わってきた。しかし本馬は真っ先に遅れてしまい、2着フォートラーンドを1馬身かわして勝ったサクセスフルダンから7馬身差の3着に敗れた。

このレース後にリーヴス・サラブレッド・レーシングは本馬の所有権の残り全ても入手し、本馬を単独で所有することになった。

その後は7月のサバーバンH(GⅡ・D9F)に向かった。このレースから本馬の主戦はドミンゲス騎手からマイク・スミス騎手に交代となった。このレースには、本馬とは一昨年のレムセンS以来の顔合わせとなるトゥオナーアンドサーヴの姿もあった。トゥオナーアンドサーヴは3歳時にファウンテンオブユースS・フロリダダービーと連敗して米国三冠競走には不参加だったが、シガーマイルH・ペンシルヴァニアダービー・ウィンチェスターSを勝ちメトロポリタンHで3着するなど一線級で活躍していた。他にも、ベルモントS2着後にジムダンディS・トラヴァーズSを連勝していたステイサースティ、前年のサバーバンHで2着していたドンH勝ち馬でシガーマイルH2着のヒムンブック、やはり本馬とは一昨年のレムセンSで対戦経験があった前走ボールドルーラーH勝ちのバッファム、バーバロS・プレザントコロニーS・ハーランズホリデーS・ヴァンランディンガムSとステークス競走4勝のトリックマイスターなど、なかなかの好メンバーが揃っていた。実績最上位のトゥオナーアンドサーヴが120ポンドのトップハンデでも単勝オッズ2.4倍の1番人気に支持され、117ポンドのステイサースティが単勝オッズ5.4倍の2番人気、118ポンドのヒムンブックが単勝オッズ6倍の3番人気、118ポンドの本馬が単勝オッズ6.8倍の4番人気となった。スタートが切られるとトリックマイスターが先頭に立ち、本馬はその直後の2番手を追走した。そして四角でトリックマイスターに並びかけると、直線入り口で単独先頭に立った。あとはゴールまで力強く走り抜けるだけで、2着に追い込んできたヒムンブックに2馬身半差をつけて快勝した。

次走のウッドワードS(GⅠ・D9F)では、前走3着のトリックマイスター、同4着のトゥオナーアンドサーヴ、同5着のステイサースティ、モンマスカップSなどの勝ち馬で前年のウッドワードS3着馬ルールなどが対戦相手となった。本馬が単勝オッズ1.8倍の1番人気に支持され、トゥオナーアンドサーヴが単勝オッズ4.65倍の2番人気、ステイサースティが単勝オッズ5.7倍の3番人気となった。スタートが切られるとルールが先頭に立ち、トリックマイスターが2番手で、本馬はトゥオナーアンドサーヴと共に3~4番手につけた。そしてトゥオナーアンドサーヴと一緒になって四角で上がっていき、直線では叩き合いとなった。しかし終始僅かにリードしていたトゥオナーアンドサーヴが押し切って勝ち、本馬は首差の2着に敗れた。

その後は今まで主戦場としていた米国東海岸を離れてカリフォルニア州に向かい、サンタアニタパーク競馬場で行われたBCクラシック(GⅠ・D10F)に参戦した。トゥオナーアンドサーヴに加えて、サンタアニタH・グッドウッドS・ハリウッド金杯・オーサムアゲインS・サンアントニオS・カリフォルニアンSの勝ち馬ゲームオンデュード、ジョッキークラブ金杯2回・サバーバンHの勝ち馬でホイットニー招待H・ウッドワードS2着のフラットアウト、サンタアニタH勝利後にスティーヴンフォスターHを勝ちホイットニー招待Hで2着していたロンザグリーク、アリシーバS2着後にホイットニーH・コーンハスカーHを勝ちジョッキークラブ金杯で3着していたフォートラーンド、パシフィッククラシックS2回・グッドウッドS・サンアントニオHの勝ち馬リチャーズキッド、アファームドH勝ち馬でハスケル招待S・オーサムアゲインS2着のノニオス、トラヴァーズS・ジムダンディS勝ち馬でシャンペンS・ウッドメモリアルS2着のアルファ、ペンシルヴァニアダービー勝ち馬ハンサムマイク、スティーヴンフォスターH・ホーソーン金杯の勝ち馬プールプレイ、ブルーグラスS勝ち馬でベルモントS3着のブリリアントスピードが対戦相手となった。ゲームオンデュードが単勝オッズ2.3倍の1番人気、フラットアウトが単勝オッズ7.2倍の2番人気、本馬が単勝オッズ7.3倍の3番人気、ロンザグリークが単勝オッズ9.8倍の4番人気、フォートラーンドが単勝オッズ10.4倍の5番人気となった。

スタートが切られるとフォートラーンドが先頭を奪い、本馬が2番手で、逃げると思われていたゲームオンデュードは先手が取れずに馬群の中団好位からの競馬となった。フォートラーンドの逃げは順調で、後続馬は差を詰めることが出来なかった。本馬も向こう正面ではいったん2~3馬身ほどの差をつけられたが、三角に入ると加速してフォートラーンドとの差を縮めていった。他馬勢は四角途中の段階で既に後方に消えており、勝負は完全にフォートラーンドと本馬の2頭に絞られた。内側で必死に粘るフォートラーンドに、外側から本馬が並びかけて叩き合いに持ち込もうとした。しかし4番枠からすんなりと先頭に立って最短距離を走ってきたフォートラーンドと、11番枠からしばらくは外側を走らされていた本馬の余力の差が最後に出たようで、フォートラーンドが押し切って勝ち、本馬は半馬身差の2着に敗れた。それでも3着フラットアウトには6馬身半差をつけていたから、内容的には十分な走りだった。4歳時の成績は6戦3勝だった。

競走生活(5歳時)

5歳時は前年と同じくサンシャインミリオンズクラシック(D9F)から始動した。BCクラシックで4着だったロンザグリーク、キャリーバックS勝ち馬でキングズビショップS2着のフォートロードン、スペンドアバックH勝ち馬キャッシュルールズなどが対戦相手となったが、当然のように本馬が単勝オッズ1.4倍の1番人気に支持された。ところが泥だらけの不良馬場に脚を取られたのか、3番手を進んだ本馬はいったん先頭に並びかけるも、四角で大きく失速。直線ではもはやまともに走れる状態とはなっておらず、スミス騎手の判断で競走を中止した(レースはロンザグリークが2着キャッシュルールズに11馬身1/4差をつけて大圧勝した)。

この惨敗の理由は馬場状態だけではなかったようで、ウイルス性の疾患に罹患している事が判明。さらには裂蹄を発症してしまったために、メリーランド州にあるフェアヒルトレーニングセンターでしばらく療養生活を送った。

治療とその後の体力回復のためにかなりの時間を要したため、復帰したのは前走から約5か月後にベルモントパーク競馬場で行われたクリミナルタイプS(D8.5F)だった。ノングレード競走だったが、アリシーバSで2着(正確には3位入線の繰り上がり)してきたヒムンブック、フィリップHアイズリンSの勝ち馬サンパブロも参戦しており、レベルはグレード競走級だった。定量戦のため同齢同性であれば各馬の斤量に差は無く、スミス騎手に代わってエドガー・プラード騎手が騎乗する本馬が単勝オッズ1.75倍の1番人気に支持され、ヒムンブックが単勝オッズ2.55倍の2番人気、サンパブロが単勝オッズ5.5倍の3番人気となった。しかしレースは本馬にとってあまり得意でない湿った馬場で行われた。道中は2番手を追走し、三角ではいったん先頭に立ったものの、直線に入るとサンパブロとヒムンブックの2頭に差されて、サンパブロの4馬身1/4差3着に敗れた。

次走のホイットニー招待H(GⅠ・D9F)では、前走スティーヴンフォスターHでGⅠ競走3勝目を挙げてきたフォートラーンド、デビュー半年後のメトロポリタンHで鼻差2着してきた上がり馬クロストラフィック、前年のアリシーバSを勝ってから間もなく長期休養に入るも復帰戦のベンアリSを勝っていたサクセスフルダン、サンシャインミリオンズクラシック勝利後はサンタアニタH4着などもう一息だったロンザグリーク、前年のBCクラシック12着最下位だった後も迷走が続いていたアルファなどが対戦相手となった。122ポンドのフォートラーンドが単勝オッズ2.35倍の1番人気、117ポンドのクロストラフィックが単勝オッズ4.55倍の2番人気、118ポンドのサクセスフルダンが単勝オッズ7.1倍の3番人気、118ポンドのロンザグリークが単勝オッズ7.9倍の4番人気、117ポンドのアルファが単勝オッズ8.8倍の5番人気で、119ポンドの本馬は単勝オッズ9.5倍の6番人気だった。スタートが切られるとクロストラフィックが先頭に立ち、プラード騎手騎乗の本馬は2番手につけた。向こう正面でフォートラーンドが上がっていったために3番手に下がったが、四角に入ると伸びを欠くフォートラーンドに追いつき、直線では再び2番手に上がり、逃げるクロストラフィックを追いかけた。しかし後方から来たサクセスフルダンに差され、クロストラフィックにも追いつけず、勝ったクロストラフィックから2馬身1/4差の3着に敗れた。

その後はウッドワードSに出走する予定だったが、当日の馬場状態が非常に悪かったために回避した。

このように全体的に振るわない状態が続いていた本馬だったが、陣営の最大目標が前年に惜しくも敗れたBCクラシックである事には変わりが無かった。この年のBCクラシックも前年と同じくサンタアニタパーク競馬場で施行される事になっていたから、陣営は本馬を早めにカリフォルニア州に向かわせて準備をさせる事にした。

そして本番5週間前のオーサムアゲインS(GⅠ・D9F)に出走した。対戦相手は、シューメーカーマイルS・エディリードS・ストラブS・サンガブリエルS・オークツリーマイルS・サイテーションH・サンガブリエルSの勝ち馬ジェラニモ、前年のハスケル招待S勝ち馬でベルモントS2着のペインター、前年のトラヴァーズS勝ち馬でスティーヴンフォスターH2着のゴールデンチケット、キャッシュコールフューチュリティ・マーヴィンルロイHの勝ち馬リエゾンなどだった。本馬が単勝オッズ2.6倍の1番人気、ペインターが単勝オッズ4.4倍の2番人気、ゴールデンチケットが単勝オッズ5.5倍の3番人気だった。

スミス騎手もプラード騎手も都合がつかなかったため、陣営がこのレースで本馬への騎乗を依頼したのは名手ゲイリー・スティーヴンス騎手だった。2005年に膝の関節炎と減量苦を理由としていったん引退(彼の引退は実は2度目。1度目は1999年に同じく膝の関節炎を理由に引退したが、翌年に復帰した)していたスティーヴンス騎手だったが、この年の1月に再び現役騎手に復帰し、早速オックスボウでプリークネスSを勝つ活躍を見せていた。スタートが切られると単勝オッズ27倍の9番人気馬サマーヒットが先頭に立ち、スティーヴンス騎手が手綱を取る本馬は5番手の好位を追走した。向こう正面で3番手まで押し上げると、三角から四角にかけて一気に加速して直線入り口で先頭に立った。そしてそのまま直線を単騎で駆け抜け、2着ペインターに4馬身1/4差をつけて快勝。デビュー22戦目にしてようやくGⅠ競走初勝利を挙げた。この結果により、スティーヴンス騎手が本馬の新たな主戦となった。

BCクラシック(5歳時)

そして迎えたBCクラシック(GⅠ・D10F)。対戦相手は、2連覇を目指すフォートラーンド、前年のBCクラシックで7着に終わるもその後はネイティヴダイヴァーS・サンアントニオS・サンタアニタH・チャールズタウンクラシックS・ハリウッド金杯・パシフィッククラシックSと6連勝中だったゲームオンデュード、この年のベルモントS・ジムダンディS勝ち馬でブルーグラスS・ジョッキークラブ金杯2着のパレスマリス、トラヴァーズS・レベルS・ペンシルヴァニアダービーの勝ち馬ウィルテイクチャージ、前年のBCクラシック3着後にサバーバンH・ウエストチェスターSを勝ちウッドワードSで2着していたフラットアウト、ペインター、ドワイヤーS勝ち馬でトラヴァーズS2着のモレノ、エクセルシオールS・ピムリコスペシャルS・フィリップHアイズリンSの勝ち馬ラストガンファイター、それに欧州から参戦してきたクイーンアンS・英国際Sの勝ち馬デクレレーションオブウォー、仏ダービー・パリ大賞・イスパーン賞2回と4度のGⅠ競走2着があった一昨年のガネー賞勝ち馬プラントゥールの10頭だった。ゲームオンデュードが単勝オッズ2.7倍の1番人気、本馬が単勝オッズ5倍の2番人気、デクレレーションオブウォーが単勝オッズ7.7倍の3番人気と続き、前年の覇者たるフォートラーンドは単勝オッズ10.8倍の6番人気に留まっていた。

スタートが切られると前年はハナを奪えなかったゲームオンデュードが今回は先頭に立ち、モレノとフォートラーンドがそれを追って先行。本馬はデクレレーションオブウォーと共に5番手の好位につけた。向こう正面でフォートラーンドがゲームオンデュードをかわして先頭を奪うと、本馬も差を付けられないように少し加速した。四角で馬群の外側を駆け上がり、内側のゲームオンデュードやフォートラーンドにほぼ並びかけた状態で直線を向いた。ゲームオンデュードはすぐに失速して馬群に飲み込まれ、内埒沿いに粘っていたフォートラーンドも直線半ばで失速。そして本馬が単独で先頭に立ってゴールへと突き進んだが、そこへ後方からデクレレーションオブウォーとウィルテイクチャージの2頭が叩き合いながら猛然と差を縮めてきた。しかしスティーヴンス騎手は鞭を嫌う本馬の性格を把握していたため、自らの豪腕だけで本馬を追い続けた。そして3頭がほぼ横一線となった状態でゴールラインを通過。しかし本馬が僅かに粘り切っており、2着ウィルテイクチャージに鼻差、3着デクレレーションオブウォーにさらに頭差をつけて優勝。ようやく米国ダート路線の頂点に君臨することになった。

フロリダ州産馬が同競走を勝ったのは、1990年のアンブライドルド、1997年のスキップアウェイ以来16年ぶり史上3頭目だった。

鞍上のスティーヴンス騎手は既に米国三冠競走全てと、BCターフ・BCマイル・BCディスタフなど米国における主要競走の大半を勝っていたが、BCクラシックは15度目の挑戦にしてこれが初勝利となった。女優のエリザベス・バンクス女史(彼女は映画「シービスケット」でシービスケットの所有者チャールズ・ハワード氏の妻マーセラ・ハワード夫人を演じており、同映画にジョージ・ウルフ騎手役で出演していたスティーヴンス騎手とは共演していた)から優勝トロフィーを授与された上に祝福のキスを受けると、当時50歳のスティーヴンス騎手もさすがに喜びを隠しきれない様子だった。

また、管理するキャサリン夫人は女性調教師として史上初のBCクラシック制覇という栄冠を手にする事ができ、表彰式では感無量といった表情を浮かべていた。

5歳時の成績は5戦2勝で、エクリプス賞年度代表馬や最優秀古馬牡馬のタイトルでは次点に終わった(両タイトルともワイズダンが受賞)。しかし本馬自身の誕生直後の蘇生、管理調教師の心臓病からの復活、スティーヴンス騎手念願のBCクラシック初制覇など数々の逸話に彩られた本馬の人気は高く、全米サラブレッド競馬協会選定による“Moment of the year”には本馬のBCクラシック制覇が選出され、ファンを最も興奮させた馬に贈られる「セクレタリアト民衆の声賞(the Secretariat Vox Populi Award)」にも選出された。また、フロリダ州における年度代表馬にも選出されている。

競走生活(6歳時)

6歳時も現役を続け、3年連続でサンシャインミリオンズクラシック(D9F)から始動した。過去2年に出走していたロンザグリークの姿は無く、他にこれといった馬もいなかった(本馬をデビュー戦で破ったグルメディナーが出走していたが、既に本馬とは天と地ほどの実績差があった)ため、本馬が単勝オッズ1.1倍という圧倒的な1番人気に支持された。スタートが切られると単勝オッズ6.7倍の2番人気に推されていたバーニーザマエストロという馬が先頭に立ち、バーニーザマエストロより6ポンド斤量が重かった本馬は少し離れた2番手を追走。三角手前で仕掛けてバーニーザマエストロを悠々と抜き去ると、その後はゴールまで完全な独り旅。2着に突っ込んだ単勝オッズ43.9倍の最低人気馬ジョシュアズコンプライズに14馬身差という大差をつけて圧勝した。

その後はドバイワールドC参戦も噂されていたが、三度カリフォルニア州に飛び、サンタアニタH(GⅠ・D10F)に挑戦した。対戦相手は、前年のBCクラシック2着後にクラークHを勝ってエクリプス賞最優秀3歳牡馬の座を射止めたウィルテイクチャージ、前年のBCクラシックで9着に沈んでいたゲームオンデュード、サンフェリペS勝ち馬ヒアーザゴースト、サンアントニオSを勝ってきたブリンゴ、サンアントニオSで2着してきたインペラティヴなどだった。124ポンドの本馬が単勝オッズ2.2倍の1番人気、123ポンドのウィルテイクチャージが単勝オッズ2.5倍の2番人気、122ポンドのゲームオンデュードが単勝オッズ4.8倍の3番人気で、4番人気のヒアーザゴーストは単勝オッズ21.2倍という3強対決だった。

スタートが切られるとゲームオンデュードが逃げを打ち、ヒアーザゴーストがそれに絡んで2頭で先頭争いを展開。2~3馬身ほど離れた3番手が本馬で、その少し後方の4番手がウィルテイクチャージだった。三角手前でウィルテイクチャージが仕掛けてゲームオンデュードに並びかけていくと本馬も仕掛けて3頭による争いが始まった。しかし本馬は反応が悪く、四角で置いていかれてしまった。そして直線でも伸びず、2着ウィルテイクチャージに1馬身3/4差をつけて同競走3勝目を飾ったゲームオンデュードから10馬身半差の4着と完敗した。陣営は敗因について、雨天が続いたために調教が不十分だった事を理由として挙げた。

その後はフロリダ州に戻って調教が継続されていたが、その動きが思わしくなかった上に、いつの間に出来たのか身体の何箇所かに打撲傷が発見された(誰も知らない間にどこかにぶつけたらしい)ため、これ以上無理をさせる必要はないとして、6歳時2戦1勝の成績で7月に競走馬引退が発表された。

血統

Macho Uno Holy Bull Great Above Minnesota Mac Rough'n Tumble
Cow Girl
Ta Wee Intentionally
Aspidistra
Sharon Brown Al Hattab The Axe
Abyssinia
Agathea's Dawn Grey Dawn
Agathea
Primal Force Blushing Groom Red God Nasrullah
Spring Run
Runaway Bride Wild Risk
Aimee
Prime Prospect Mr. Prospector Raise a Native
Gold Digger
Square Generation Olden Times
Chavalon
Ponche de Leona Ponche Two Punch Mr. Prospector Raise a Native
Gold Digger
Heavenly Cause Grey Dawn
Lady Dulcinea
Street Ballet Nijinsky Northern Dancer
Flaming Page
Street Dancer Native Dancer
Beaver Street
Perfect and Proud Nonparrell Hoist the Flag Tom Rolfe
Wavy Navy
Floral Victory Victoria Park
La Belle Rose
Proud Sal Proudest Roman Never Bend
Roman Song
Gal Sal Blasting Signal
Carolwood

マッチョウノは当馬の項を参照。

母ポンチェデレオナはマッチョウノと同じくアデナスプリングスの所有馬として走り、現役成績30戦8勝、アノアキアSを勝っている。競走馬引退後はアデナスプリングスファームで繁殖入りしていたが、本馬を受胎した状態で本馬の生産者リオ夫妻により3万3千ドルで購入されていた。2013年にはフロリダ州最優秀繁殖牝馬に選ばれている。遠縁にはグレード競走勝ち馬が何頭もいるのだが、近親の活躍馬は皆無と言っても過言ではなく、優れた母系とは言えない。牝系は本馬の現役時代の好敵手の1頭トゥオナーアンドサーヴや、日本の名種牡馬ブライアンズタイム、ケンタッキーダービー馬モナーコス、それにエアデジャヴー、エアシャカール、エアシェイディ、エアメサイア、エアソミュールなどの一族と同じだが、近親どころか遠縁とも言い難いほど離れている。→牝系:F4号族⑤

母父ポンチェは加国産馬で、現役成績は47戦16勝。カルカッタカップH・プランテーションH・デイドカウンティSを勝った中堅競走馬。競走馬引退後はペンシルヴァニア州で種牡馬入りして、2006年に17歳で他界。約10年間の種牡馬生活で送り出した産駒は128頭で、ステークスウイナーは5頭だった。

ポンチェの父トゥーパンチはミスタープロスペクター産駒の米国産馬で、現役成績は8戦4勝。バチェラーSを勝った程度という中堅以下の競走馬だった。種牡馬としてはメリーランド州で供用され、GⅠ競走勝ち馬を含む複数のグレード競走勝ち馬を出し、2011年に28歳で他界するまでの間にメリーランド州の首位種牡馬に3回輝くという、競走馬時代を大きく上回る成功を収めた。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は、サンタアニタHの直前に、本馬の父マッチョウノや母ポンチェデレオナの所有者でもあった馬産団体アデナスプリングスの代表者フランク・ストロナック氏に購入されていたため、ケンタッキー州アデナスプリングスファームで種牡馬入りした。ストロナック氏は本馬の購入を「一種の里帰りです」と語った。現役時代の好敵手フォートラーンドも一足先にストロナック氏に購入されて同牧場で種牡馬入りしている。2015年の種付け料は1万5千ドルで、前年の2万ドルから値下げされたフォートラーンドと同額となっている。

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