モナーコス
和名:モナーコス |
英名:Monarchos |
1998年生 |
牡 |
芦毛 |
父:マライアズモン |
母:リーガルバンド |
母父:ディキシーランドバンド |
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セクレタリアト以来28年ぶりにケンタッキーダービーで2分を切るタイムで勝利した脚毛の追い込み馬 |
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競走成績:2~4歳時に米で走り通算成績10戦4勝2着1回3着3回 |
誕生からデビュー前まで
米国ケンタッキー州において、ジェイムズ・D・スクワイヤーズ氏により生産された。幼少期は病気や怪我とは無縁の馬だったという。1歳時にニューヨーク州サラトガで実施されたファシグ・ティプトン社のセリに出品されたが、買い手がつかずに主取りとなった。その後スクワイヤーズ氏からM・スミス氏に譲渡された本馬は、2歳時にファシグ・ティプトン社がフロリダ州で実施したコールダートレーニングセールにおいてジョン・オクスレー氏により17万ドルで購入され、本馬の購入をオクスレー氏に薦めたジョン・T・ワード・ジュニア調教師に預けられた。
ワード・ジュニア師は、祖父ジョン・S・ワード氏、父サー・ジョン・T・ワード氏、伯父シェリル・W・ワード氏も調教師で、特に伯父シェリル・W・ワード氏は名馬フォアゴーを管理した事で有名であった。彼は一族のあとを継いで競馬の世界に入り、倒産したカルメットファームの最高業務責任者や、ケンタッキー競馬委員会の委員などを歴任した後、調教師として開業し、既に1999年のエクリプス賞最優秀古馬牝馬ビューティフルプレジャーなどを手掛けていた。
競走生活(3歳初期まで)
2歳10月にキーンランド競馬場で行われたダート7ハロンの未勝利戦で、パトリシア・クックセイ騎手を鞍上にデビューした。単勝オッズ10.8倍で12頭立ての5番人気という評価だった。スタートが切られると単勝オッズ1.8倍の1番人気馬デヴィルズドメインが先頭に立ち、本馬は馬群の中団につけた。デヴィルズドメインが刻むペースは最初の2ハロンが22秒02という速いものであり、どちらかと言えば後方の馬が有利になる展開のはずだった。しかし本馬は道中でも直線でも位置取りを全く上げられず、そのまま逃げ切って勝ったデヴィルズドメインから12馬身半差をつけられた8着と振るわない結果に終わった。
翌月にはチャーチルダウンズ競馬場でダート6.5ハロンの未勝利戦に出走した。ここではウィリー・マルティネス騎手とコンビを組んだ。前走と同じく12頭立ての5番人気だったが、単勝オッズは14.5倍と、前走より少し評価が下がっていた。人気を集めていたのは、単勝オッズ2.6倍のドリームラン、単勝オッズ4.4倍のラスティスパー、単勝オッズ4.7倍のポケッツの3頭だった。スタートが切られると、ラスティスパーの同厩馬ディストリビュートが猛然と先頭を飛ばし、最初の2ハロンが21秒88とかなりのハイペースとなった。スタートから最後方の位置取りだった本馬は、7番手で直線に入ると前走では見せられなかった末脚を披露した。しかし好位から抜け出して先頭争いを演じるドリームランと単勝オッズ33倍の8番人気馬ビッグトーキンマンの2頭には全く届かず、ビッグトーキンマンを頭差抑えて勝ったドリームランから5馬身1/4差の3着に敗れた。2歳時の成績は2戦未勝利に終わってしまった。
3歳時はフロリダ州にあるガルフストリームパーク競馬場から始動した。まずは1月にダート7ハロンの未勝利戦に出走。過去2戦よりは評価が上がっており、単勝オッズ6.5倍で12頭立ての3番人気だった。ここで本馬に初騎乗したジョルジ・シャヴェス騎手は、スタートから押して先行する作戦に出た。最初の2ハロン通過は22秒56とやや速めではあったが、過去2戦とは別馬のように本馬は楽に先行した。そして向こう正面で先頭に立つと、三角から四角、そして直線でも後続馬を引き離し続け、2着となった単勝オッズ7.2倍の4番人気馬タンパに6馬身差をつけて圧勝した。シャヴェス騎手は、この後も本馬の主戦として乗り続ける事になる。
次走は2月のガルフストリームパーク競馬場ダート8.5ハロンの一般競走となった。前月に同コースで行われた一般競走で2着してきたサンダーブリッツ、同じく前月に同コースで行われた一般競走で2着してきたディスティルド(後のイリノイダービーの勝ち馬)なども出走してきたのだが、前走の勝ち方が評価された本馬が単勝オッズ3倍の1番人気に支持され、サンダーブリッツは単勝オッズ4.5倍の2番人気、ディスティルドは単勝オッズ4.9倍の3番人気だった。スタートが切られるとディスティルドが先頭に立ち、本馬は少し離れた2~3番手につけた。レースは最初の2ハロンが24秒04というスローペースで進行したため、マイペースで逃げたディスティルドには余裕があり、四角を回って直線に入ってきても先頭を維持していた。しかしここで本馬が一気にディスティルドを抜き去った。そして2着ディスティルドに4馬身3/4差、3着サンダーブリッツにはさらに3馬身3/4差をつけて快勝した。
次走はフロリダダービー(GⅠ・D9F)となった。このレースには、ホープフルS・トレモントS・サンフォードS・サラトガスペシャルSの勝ち馬でベルモントフューチュリティS・ハッチソンS2着・ファウンテンオブユースS3着のシティジップ、ファウンテンオブユースSを勝ってきたソングアンドアプレイヤー、ワットアプレジャーS・ファウンテンオブユースSで共に2着だった後のスーパーダービーの勝ち馬アウトオブザボックス、アーリントンワシントンフューチュリティーの勝ち馬トレイルザフォックス、ワットアプレジャーS・ホーリーブルSの勝ち馬ラディカルライリー、米国に移籍してきたベレスフォードSの勝ち馬ターンベリーアイル、前月の一般競走でサンダーブリッツを2着に破るなど3連勝中のインヴィジブルインク、一般競走2戦を含む3連勝中のユーノウフーなど、字面上の実績で見れば本馬より上の馬が多く出走していた。しかし単勝オッズ2.4倍の1番人気に支持されたのは本馬だった(正確にはインヴィジブルインクとのカップリングである)。アウトオブザボックスが単勝オッズ4.6倍の2番人気、ソングアンドアプレイヤーが単勝オッズ5.8倍の3番人気、シティジップが単勝オッズ10.6倍の4番人気、ターンベリーアイルが単勝オッズ11.5倍の5番人気と続いていた。また、前年の未勝利戦で本馬を一蹴したドリームランの姿もあった。ドリームランもその後に一般競走を2戦して1勝2着1回と悪くない成績を収めていたのだが、いつの間にか本馬とは完全に評価が逆転しており、ドリームランは単勝オッズ38.5倍の9番人気だった。
スタートが切られると、単勝オッズ63.3倍の10番人気馬トレイルザフォックスと単勝オッズ78.8倍の11番人気馬ラディカルライリーという、いずれもグレード競走勝ち馬なのに人気薄だった2頭が先頭を引っ張った。本馬以外の有力馬勢は概ね3番手から馬群の中団辺りにつけたのだが、本馬は後方3番手の位置取りだった。最初の2ハロンが23秒01と、平均よりやや速い程度のペースでレースが進行し、向こう正面に差し掛かったところで本馬鞍上のシャヴェス騎手が仕掛けた。三角から四角にかけて馬群の外側を豪快に駆け上がると、直線入り口で先頭を奪取。後方から差を詰めてくる馬はおらず、2着アウトオブザボックスに4馬身半差、3着インヴィジブルインクにはさらに2馬身半差をつけて完勝。シャヴェス騎手はレース後に「合図を送ると文字どおり末脚が爆発しました」と賛辞を送った。この勝利に感銘を受けたのはシャヴェス騎手だけではなく、スポーツイラストレイティッド誌のビル・ナック記者は「この衝撃的な走りは、同じ芦毛馬であるスペクタキュラービッドやホーリーブルに匹敵します」と評価した。これで本馬はケンタッキーダービー馬の有力候補に躍り出た。
ケンタッキーダービーには直行せず、先にニューヨーク州に移動してウッドメモリアルS(GⅡ・D9F)に出走した。対戦相手は5頭いたが、そのうち強敵と言えるのは2頭。未勝利戦と一般競走を連続圧勝してきたコンガリー、ゴーサムSを5馬身1/4差で圧勝してきた3戦無敗のリッチリーブレンディドだった。本馬が単勝オッズ1.9倍の1番人気、コンガリーが単勝オッズ2.7倍の2番人気、リッチリーブレンディドが単勝オッズ4.75倍の3番人気で、他3頭は全て単勝オッズ20倍以上だった。スタートが切られるとリッチリーブレンディドが先頭に立ち、コンガリーが2番手につけた。一方の本馬は最後方の位置取りだった。向こう正面でコンガリーがリッチリーブレンディドに並びかけると、本馬も進出を開始。リッチリーブレンディドを引き離していくコンガリーを追撃したが、なかなか差が縮まらなかった。直線入り口では5馬身ほどの差をつけられてしまい、直線で差を詰めるも届かず、コンガリーの2馬身3/4差2着に敗れた(3着リッチリーブレンディドは本馬から7馬身後方)。しかしワード・ジュニア師は「前哨戦としては完璧な内容でした」と満足した。
ケンタッキーダービー
そして本馬はかつて2戦していずれも完敗した地であるケンタッキー州に向かい、ケンタッキーダービー(GⅠ・D10F)に参戦した。対戦相手は、ハリウッドフューチュリティ・サンタアニタダービー・サンフェリペS・ケンタッキーCジュヴェナイルSの勝ち馬でBCジュヴェナイル・シャンペンS2着のポイントギヴン、コンガリー、ケンタッキージョッキークラブS・リズンスターSの勝ち馬でブリーダーズフューチュリティ2着・ブルーグラスS3着のダラービル、レーンズエンドスパイラルS・アーカンソーダービーを連勝してきたバルトスター、ブルーグラスS・サンタカタリナSの勝ち馬でハリウッドフューチュリティ・ルイジアナダービー2着のミレニアムウインド、ドクターファーガーS・アファームドS・インリアリティS・UAEダービーと4連勝してきたエクスプレスツアー、シャンペンSの勝ち馬エーピーヴァレンタイン、アーカンソーダービー2着馬ジャマイカンラム、ルイジアナダービーの勝ち馬フィフティスターズ、レキシントンSを勝ってきたキーツ、ジェネラスSの勝ち馬でエルカミノリアルダービー2着のスタータック、一般競走で本馬の3着に敗れたもののフラミンゴSを勝って挑んできたサンダーブリッツ、フロリダダービー3着後にブルーグラスSで4着してきたインヴィジブルインク、フロリダダービー5着後にブルーグラスSで2着してきたソングアンドアプレイヤー、フロリダダービーで本馬の8着に敗れたがフラミンゴSで3着して臨んできたトークイズマネー、本馬がドリームランの3着に敗れた未勝利戦で本馬から半馬身差の4着だったレベルS2着馬アークティックボーイの計16頭だった。
この中で他を圧倒する評価を得ていたのはポイントギヴンであり、単勝オッズ2.8倍の1番人気に支持された。ダラービルが単勝オッズ7.6倍の2番人気、コンガリーが単勝オッズ8.2倍の3番人気、バルトスターが単勝オッズ9.3倍の4番人気、ミレニアムウインドが単勝オッズ10.9倍の5番人気で、本馬は単勝オッズ11.5倍の6番人気だった。
スタートが切られるとバルトスターが先頭を伺ったが、単勝オッズ36.9倍の11番人気馬ソングアンドアプレイヤーがそれに競り掛けて先頭に立った。さらにキーツ、ミレニアムウインド、コンガリーなども先行した。一方、人気を集めていたポイントギヴンはスタートで内側によれて他馬にぶつかって出遅れていた。そしてポイントギヴンにぶつけられた他馬というのは他の誰でもない本馬だったのである。ポイントギヴンに圧迫された本馬も内側のジャマイカンラムにぶつかり、本馬とジャマイカンラムの2頭も出遅れてしまった。出遅れながらもポイントギヴンは進出して6~7番手辺りの好位につけたが、本馬は17頭立ての13番手でレースを進める事になった。この年のケンタッキーダービーは最初の2ハロン通過が22秒25、半マイル通過は44秒86だった。これは同競走史上最速のラップであり、驚いた実況は道中で「半マイル通過はダービー史上最速です!」と絶叫した。スタミナが切れた先行馬勢は向こう正面で次々に脱落していき、上がってくる後方待機馬勢と交錯して大乱戦となった。先行馬勢のうち、前走で本馬を破ったコンガリーは何とか踏ん張り、それをポイントギヴンが追いかけていた。一方、本馬鞍上のシャヴェス騎手は向こう正面に入るまで我慢していたが、三角に入る手前で満を持して仕掛けた。すると本馬は、スタートでポイントギヴンにぶつけられたダメージなど無かったかのように外側を駆け上がっていった。脱落する他馬勢を次々にかわすと、6番手で直線に入り、まずはすぐ前にいるポイントギヴンに襲い掛かっていった。ポイントギヴンをここで抜き去ると、今度は先頭で粘るコンガリーに襲い掛かった。コンガリーはなお必死に粘っていたが、本馬の末脚の前に残り1ハロン地点で瞬く間に抜き去られた。直線では、道中で馬群の中団やや後方を走っていたインヴィジブルインクが追い上げてきたが、コンガリーを鼻差かわすのがやっとだった。最後は本馬が2着インヴィジブルインクに4馬身3/4差をつけて圧勝。3着コンガリーから4馬身差の4着にはやはり後方待機策を採ったサンダーブリッツが入り、ポイントギヴンはサンダーブリッツからさらに2馬身3/4差の5着(本馬からは11馬身半差)に敗れた。なお、ポイントギヴンのスタート直後の斜行で本馬だけでなくジャマイカンラム(ポイントギヴンから1馬身1/4差の6着)も被害を蒙ったが、着順に変更は無かった。
本馬の勝ちタイム1分59秒97は、1973年にセクレタリアトが計時した1分59秒4に次ぐ同競走史上2位の好タイム(勝ちタイムではなく走破タイムで見ると、1973年にセクレタリアトの2着だったシャムが1分59秒8を計時しており、本馬は史上3位である)であり、レース終了直後に実況は「セクレタリアトに次ぐ史上2番目の速さです!」と再び絶叫した。2015年現在でもケンタッキーダービーを2分未満のタイムで勝った馬は本馬とセクレタリアトの2頭のみとなっている。
競走生活(ケンタッキーダービー以降)
次走は勿論プリークネスS(GⅠ・D9.5F)となった。対戦相手は前走3着のコンガリー、同5着のポイントギヴン、同7着のエーピーヴァレンタイン、同15着のダラービル、ウッドメモリアルS3着後にケンタッキーダービーを回避して出走したウィザーズSを勝ってきたリッチリーブレンディド、ゴーサムS2着馬ミスタージョン、フェデリコテシオSを勝ってきたマルチアーノ、ラッシュアウェイS・ローンスターダービーを連勝してきたパーシーホープ、ラファイエットSの勝ち馬でレキシントンS2着のグリフィナイト、レキシントンS3着馬ベイイーグルの計10頭だった。前走の雪辱を期するポイントギヴンと本馬が並んで単勝オッズ3.3倍の1番人気、コンガリーが単勝オッズ3.8倍の3番人気、ダラービルが単勝オッズ9.3倍の4番人気、エーピーヴァレンタインが単勝オッズ11.2倍の5番人気で、上位人気3頭による争いと目されていた。
スタートが切られると単勝オッズ18.9倍の6番人気馬リッチリーブレンディドが先頭に立ち、スタートで躓いて出遅れたコンガリーが2番手につけた。やはりスタートで後手を踏んだポイントギヴンは徐々に加速して後方3番手につけ、普通にスタートを切った本馬は逆に徐々に位置取りを下げて、先頭から13馬身ほど離れた最後方に陣取った。しかし前走と異なり今回はそれほどペースが速くならず、最初の2ハロン通過が23秒84、半マイル通過は47秒32だった。このペースを見切ったのか、当初は後方にいたポイントギヴンは早い段階で上がっていった。一方の本馬は、自分にはこの戦法しかないと言わんばかりに最後方で我慢を続け、向こう正面の後半に差し掛かったところでようやく上がっていった。しかし今回は前が止まらず、直線入り口を8番手で向くことになった。そして直線でも差を詰められず、勝ったポイントギヴンから7馬身半差の6着に敗退。上位4頭はケンタッキーダービー出走馬が占め、本馬は前走で負かした馬を今回1頭も負かせなかった。
これで米国三冠馬になる資格を失ってしまった本馬だが、それでもベルモントS(GⅠ・D12F)には参戦した。対戦相手は、ポイントギヴン、前走2着のエーピーヴァレンタイン、同4着のダラービル、ケンタッキーダービー2着から直行してきたインヴィジブルインク、同4着から直行してきたサンダーブリッツ、同14着から直行してきたバルトスター、ローレルフューチュリティの勝ち馬バックルダウンベン、欧州から遠征してきたディーSの勝ち馬ドクターグリーンフィールドの計8頭だった。ポイントギヴンが単勝オッズ2.35倍の1番人気、本馬が単勝オッズ6倍の2番人気、エーピーヴァレンタインが単勝オッズ6.9倍の3番人気、ダラービルが単勝オッズ7.6倍の4番人気、インヴィジブルインクが単勝オッズ11.1倍の5番人気となった。
スタートが切られるとバルトスターが先頭に立ち、ポイントギヴン、エーピーヴァレンタイン、バックルダウンベンなども先行。本馬は6~7番手につけたが、前からはあまり離されていなかった。三角手前でポイントギヴンが仕掛けて先頭に立ち、エーピーヴァレンタインがそれを追って加速すると、本馬もそれらを追って進出を開始。三角で一気に位置取りを上げて、直線入り口でエーピーヴァレンタインを射程圏内に捉えると、一緒になってポイントギヴンを追撃。しかし2頭が必死にポイントギヴンを追っているのに、その差は縮まるどころか広がる一方だった。直線半ばでは既に勝負は決しており、焦点は2着争いだけとなったが、本馬はエーピーヴァレンタインをかわせそうでかわせず、結局3/4馬身差の3着に敗れた。2着エーピーヴァレンタインに12馬身1/4差という記録的大差をつけて勝ったポイントギヴンからは13馬身差だった。
その後はトラヴァーズSを目標にしていたが、右前脚の膝に亀裂骨折を発症したことが判明して長期休養に入り、この年の出走はベルモントSが最後となった。3歳時の成績は7戦4勝だった。本馬が不在のトラヴァーズSを勝ったのはポイントギヴンだったが、その直後に左前脚屈腱炎を発症して引退していった。
翌4歳時はドンHを目指して、ガルフストリームパーク競馬場で行われたダート8.5ハロンのオプショナルクレーミング競走(本馬も含めて売却対象馬は無し)で復帰した。長期休養明けではあったがケンタッキーダービー馬の復帰戦ということで本馬が単勝オッズ1.5倍の1番人気に支持され、一般競走を2連勝してきたマングースが単勝オッズ3.6倍の2番人気となった。レースでは単勝オッズ20.8倍の4番人気馬リーガルシェイヴァーズが逃げを打ち、マングースが2番手、スタートで出遅れた本馬は5頭立ての4番手を追走した。向こう正面でシャヴェス騎手が仕掛けたが本馬の反応は非常に悪く、いったんは最後方まで下がってしまった。直線では2頭を抜いたが、勝ったマングースから8馬身3/4差をつけられた3着と完敗を喫した。
この直後の調教中に、奇しくもポイントギヴンと同じ左前脚屈腱炎を発症している事が判明したために、そのまま競走馬引退が決定した。なお、本馬が目標としていたドンHは、マングースが勢いそのままに勝利している。
血統
Maria's Mon | Wavering Monarch | Majestic Light | Majestic Prince | Raise a Native |
Gay Hostess | ||||
Irradiate | Ribot | |||
High Voltage | ||||
Uncommitted | Buckpasser | Tom Fool | ||
Busanda | ||||
Lady Be Good | Better Self | |||
Past Eight | ||||
Carlotta Maria | Caro | フォルティノ | Grey Sovereign | |
Ranavalo | ||||
Chambord | Chamossaire | |||
Life Hill | ||||
Water Malone | Naskra | Nasram | ||
Iskra | ||||
Gray Matter | Stratmat | |||
Songcraft | ||||
Regal Band | Dixieland Band | Northern Dancer | Nearctic | Nearco |
Lady Angela | ||||
Natalma | Native Dancer | |||
Almahmoud | ||||
Mississippi Mud | Delta Judge | Traffic Judge | ||
Beautillion | ||||
Sand Buggy | Warfare | |||
Egyptian | ||||
リーガルロベルタ | Roberto | Hail to Reason | Turn-to | |
Nothirdchance | ||||
Bramalea | Nashua | |||
Rarelea | ||||
Regal Road | Graustark | Ribot | ||
Flower Bowl | ||||
On the Trail | Olympia | |||
Golden Trail |
父マライアズモンは当馬の項を参照。本馬は父の初年度産駒。
母リーガルバンドは米国で走り18戦3勝。リーガルバンドの母リーガルロベルタも米国で走ったが10戦未勝利。米国で繁殖入りしたリーガルロベルタは後に仏国に移動し、さらに後には日本に輸入されているが、その子孫から本馬以外に活躍馬は登場していない。リーガルロベルタの全妹メイデンレーンの孫にはニューリアルディール【クリアドレス大賞(亜GⅠ)・イグナシオコレアス大賞(亜GⅠ)】がいる。リーガルロベルタの母リーガルロードはマイフェアレディHというマイナーステークス競走を勝つなど36戦6勝の成績だった。リーガルロードの母オンザトレイルは不出走馬であり、ここまで見てくるとあまり優秀な牝系ではないという印象を受けるかもしれない。
しかしオンザトレイルは優れた牝系を構築している。リーガルロードの半弟にはダービークリークロード【サラトガスペシャルS(米GⅡ)・ソードダンサーS】、半妹にはアンドーヴァーウェイ【トップフライトH(米GⅠ)】がおり、アンドーヴァーウェイの子には種牡馬としてケンタッキーダービー馬バーバロを出すなど活躍したダイナフォーマー【ジャージーダービー(米GⅡ)・ディスカヴァリーH(米GⅡ)】、孫にはオフリーワイルド【サバーバンH(米GⅠ)】がいる。リーガルロードの半姉タバコトレイルの曾孫には日本で走ったエアデジャヴー【クイーンS(GⅢ)】、エアシャカール【皐月賞(GⅠ)・菊花賞(GⅠ)】、玄孫世代以降にはケラ【ビングクロスビーBCH(米GⅠ)】、日本で走ったエアシェイディ【アメリカジョッキークラブC(GⅡ)】、エアメサイア【秋華賞(GⅠ)・ローズS(GⅡ)】、エアソミュール【毎日王冠(GⅡ)・鳴尾記念(GⅢ)】、エアスピネル【デイリー杯2歳S(GⅡ)】などがいる。オンザトレイルの半妹アウトワードサンシャインはサンシャインフォーエヴァーの母、同じく半妹ケリーズディーはブライアンズタイムの母であり、遠縁には比較的活躍馬が多い。→牝系:F4号族⑤
母父ディキシーランドバンドは当馬の項を参照。
競走馬引退後
競走馬を引退した本馬は、その年のうちに米国ケンタッキー州クレイボーンファームで種牡馬入りした。初年度の種付け料は2万5千ドルに設定された。故障引退してすぐの種牡馬入りだったため、すぐには種牡馬活動を開始できなかったが、それでも59頭の初年度産駒を出した。そのうち勝ち上がったのは約半分の30頭だった。堅実に賞金を稼ぐ産駒が多いが大物がなかなか出なかった。2008年にケンタッキー州ナッコルスファームに移動した。翌2009年にはインフォームドディシジョンがエクリプス賞最優秀短距離牝馬に輝き、ようやく大物競走馬が出た。2011年7月に疝痛を発症したが手術が無事に成功して一命を取り留めた。その後も何度か疝痛を発症しているが、その都度乗り越えて、現在も種付け料4~6千ドルで種牡馬生活を続けている。
主な産駒一覧
生年 |
産駒名 |
勝ち鞍 |
2005 |
Informed Decision |
BCフィリー&メアスプリント(米GⅠ)・ヴァイネリーマディソンS(米GⅠ)・ヒューマナディスタフS(米GⅠ)・レイヴンランS(米GⅡ)・サラブレッドクラブオブアメリカS(米GⅡ)・シカゴH(米GⅢ)2回・プレスクアイルダウンズマスターズS(米GⅢ)2回 |
2006 |
Win Willy |
レベルS(米GⅡ)・オークローンH(米GⅡ) |
2010 |
Estrela Monarchos |
ホベルト&ネウソングリマウジセアブラ大賞(伯GⅠ)・アダイールエイラスデアラウージョ大賞(伯GⅡ)・オズワルドアラーニャ大賞(伯GⅡ) |