フォートラーンド

和名:フォートラーンド

英名:Fort Larned

2008年生

鹿毛

父:イードバイ

母:アルルセア

母父:ブロードブラッシュ

歴史的名牝バヤコアの孫でありながら現役時代当初は全く評価されていなかったが、徐々に実績を積み重ねてBCクラシックの覇者となる

競走成績:2~5歳時に米で走り通算成績25戦10勝2着2回3着1回

誕生からデビュー前まで

米国ケンタッキー州において、ジャニス・ホワイタム夫人により生産・所有され、ケンタッキー州で開業していた豪州出身の調教師イアン・R・ウィルクス師に預けられた。

本馬の祖母バヤコアはホワイタム夫人とその夫だったフランク・ホワイタム氏(1993年に飛行機事故のため死去)の所有馬で、BCディスタフ2連覇など亜国と米国でGⅠ競走を13勝もした歴史的名牝だった。従姉妹にはGⅠ競走を4勝したアフルーエントもおり、その血統は決して悪いものではなかった。しかし父イードバイは競走馬としても種牡馬としてもGⅠ競走制覇に縁が無かったマイナー種牡馬であり、デビュー前の本馬が特に評判になるような事も無かった。

競走生活(2・3歳時)

2歳11月にチャーチルダウンズ競馬場で行われたダート7ハロンの未勝利戦で、マイケル・ベイズ騎手を鞍上にデビューした。このレースで単勝オッズ3.2倍の1番人気に支持されていたのは、後にサンタアニタ金杯(旧称ハリウッド金杯)を勝つマジェスティックハーバーという馬だった。一方の本馬は単勝オッズ70.9倍で12頭立ての11番人気と全く評価されていなかった。レースでは馬群の中団後方を進み、6番手で直線に入るとそれなりに末脚を伸ばし、勝った単勝オッズ26倍の8番人気馬シャックルフォードから6馬身3/4差の4着に入った。3着だったマジェスティックハーバーとの着差は2馬身3/4差であり、事前評価ほどの差はつかなかった。

2歳時はこの1戦のみで終え、3歳時は1月にガルフストリームパーク競馬場で行われたダート8ハロンの未勝利戦から始動した。ジャーメイン・ブリッグモハン騎手が騎乗する本馬は単勝オッズ10.3倍で12頭立ての6番人気だった。レースでは当初こそ馬群の中団好位に位置していたが、内埒沿いの経済コースを走った分だけ徐々に位置取りが上がり、向こう正面では先頭に並びかけていた。その後は本馬と一緒に先頭に立ったフェアビューハイツとゴールまで叩き合いを展開した。フェアビューハイツもいったん遅れながら再度差し返す粘りを見せたが、本馬が首差で勝利を収めた。

次走は翌月にガルフストリームパーク競馬場で行われたダート9ハロンの一般競走だった。ここでは本馬を破った前年の未勝利戦以来の実戦となるシャックルフォードとの顔合わせとなった。シャックルフォードも単勝オッズ5.6倍の3番人気止まりだったが、ブリッグモハン騎手騎乗の本馬は単勝オッズ17.7倍で6頭立ての最低人気だった。本馬の評価が低くなった理由は、3歳になって未勝利戦を勝ち上がってきた分だけ2歳戦で勝ち上がった他馬より斤量が4ポンド重く設定されたからでもあった。レースは2番手を進んだシャックルフォードが直線を押し切って勝利し、後方2番手を進んだ本馬は最後までその順位のまま、シャックルフォードから11馬身1/4差の5着に終わった。シャックルフォードはこの後にフロリダダービーで2着して米国三冠競走路線に向かい、ケンタッキーダービーでは4着だったがプリークネスSを優勝することになる。

一方の本馬は翌3月にガルフストリームパーク競馬場で行われた芝8.5ハロンのオプショナルクレーミング競走へ向かった(本馬は売却の対象外)。ジュリアン・ルパルー騎手が騎乗した本馬の評価は相変わらず低く、単勝オッズ25倍で12頭立ての8番人気だった。ここでは馬群の中団後方につけると、直線入り口7番手から追い上げてきた。前にいた馬達は全て差し切ったのだが、自分より後方から来た単勝オッズ18倍の7番人気馬サントレーサーに差されて、1馬身半差の2着に敗れた。

翌月にはキーンランド競馬場ダート9ハロンの一般競走に出走。今回もルパルー騎手とコンビを組んだ本馬は、単勝オッズ8.4倍で9頭立ての4番人気となった。今回は馬群の中団につけたが、馬群がごちゃついていたために進路を確保することが出来なかった。そして直線でも馬群に包まれたままで、勝ったグッドベターベストとの着差は僅か2馬身3/4差ながらも7着に終わった。

次走は翌5月のアーリントンクラシックS(T8.5F)となった。このレースは一時期GⅠ競走として施行されていた事もあるアーリントンパーク競馬場の名物競走の1つで、かつてはここに書き出すのが面倒くさくなるほど数々の名馬が勝ち馬に名を連ねていたが、いつの間にか価値が低下し、この時期にはノングレード競走まで落ちていた。ブリーダーズフューチュリティとBCジュベナイルターフでいずれも3着していたウィルコックスインが単勝オッズ2.5倍の1番人気に支持され、前々走で本馬を破ったサントレーサーは単勝オッズ5.1倍の4番人気、E・ベアード騎手が騎乗する本馬は単勝オッズ13.2倍の5番人気だった。レースでは馬群の好位4番手前後を進んだが、直線に入ると失速。勝ったウィルコックスインから9馬身差の8着に敗れた。

その後は3か月間ほどレースに出ず、9月にケンタッキーダウンズ競馬場で行われた芝8ハロンの一般競走で復帰した。ここではロビー・アルバラード騎手を鞍上に、単勝オッズ3.3倍の1番人気に支持された。レースでは3番手を追走して直線に入ってから悠々と抜け出すという優等生的な走りを見せて、2着ガンマンに1馬身1/4差で勝利した。

ところが翌月にキーンランド競馬場で出走した芝8.5ハロンの一般競走では、やはりアルバラード騎手とコンビを組みながらも、単勝オッズ30.8倍の10番人気まで評価を落としていた。このレースで単勝オッズ3.8倍の1番人気に支持されていたのはGⅠ競走ブリーダーズフューチュリティの勝ち馬ジェイビーズサンダー、単勝オッズ5.7倍の2番人気に推されていたのはGⅡ競走レッドスミスHの2着馬レスキュースクワッドであり、要は前走とは対戦相手のレベルが違ったという事だった。レースでは馬群の中団を進み、直線に入るといったんは4番手まで上がったが、ゴール前で失速して、勝ったニッキズサンドキャッスルから4馬身差の9着に敗れた。

翌10月にチャーチルダウンズ競馬場で出走した芝9ハロンの一般競走では、カルヴィン・ボレル騎手とコンビを組んだが、単勝オッズ38.7倍の9番人気と全く評価されていなかった。しかもスタートで出遅れて最後方からの競馬となってしまい、そのまま一度も順位を上げられないまま、勝ったアルゼンチンタリスマンから21馬身1/4差をつけられた10着最下位と惨敗した。

同月末にはチャーチルダウンズ競馬場でダート8.5ハロンの一般競走に出走。5戦ぶりのダート競走だったが、ダートでもたいした実績を残していなかった本馬に変わり身を期待するほうが無理であり、単勝オッズ24.1倍で8頭立ての最低人気だった。ところが26歳になって間もなかったブライアン・ヘルナンデス・ジュニア騎手が手綱を取った本馬は、スタートから2~3番手の好位につけると、四角で先頭に立って直線独走。2着ツインスパイアドに6馬身3/4差をつけて圧勝してしまった。

このヘルナンデス・ジュニア騎手と本馬のコンビは後に大仕事をやってのける事になるのだが、彼が本馬の主戦として固定されるのはもうしばらく先の話になる。また、今まで本馬は芝とダートを行き来していたが、このレースをきっかけにダート競走一本に絞ることになった。

3歳時はこれが最後のレースで、この年の成績は9戦3勝だった。

競走生活(4歳時)

4歳時は2月にタンパベイダウンズ競馬場で行われたダート8.5ハロンのハンデ競走から始動した。対戦相手の中にはGⅢ競走マイアミマイルHを勝っていたサクセスフルミッションがいた程度だったが、本馬自身も1回圧勝したくらいで高い評価を受けるというわけにもいかず、単勝オッズ7.9倍の5番人気止まりだった。久々にルパルー騎手とコンビを組んだ本馬は3番手を追走し、直線に入ると逃げていた単勝オッズ4.2倍の2番人気馬サクセスフルミッションを追いかけようとした。しかしその差を縮められないうちに後方から来た単勝オッズ2.8倍の1番人気馬ウィキと単勝オッズ4.6倍の3番人気馬スウィフトウォリアーに差されて、勝ったウィキから4馬身差の4着に敗れた。

次走は翌月に前走と同コースで行われたチャレンジャーS(D8.5F)となった。ここではウィキが単勝オッズ1.7倍の1番人気に支持されており、タンパベイダービー勝ち馬でケンタッキーダービーにも駒を進めていたウォッチミーゴーが単勝オッズ3.4倍の2番人気、GⅠ競走シャンペンS3着の実績があったアイムステッピンイットアップが単勝オッズ6.4倍の3番人気で、ロナルド・アレン・ジュニア騎手が騎乗する本馬は単勝オッズ7.4倍の4番人気だった。スタートが切られるとアイムステッピンイットアップが単騎逃げに持ち込み、本馬は少し離れた2番手を追走した。そして三角手前で先頭を奪うとそのまま直線へと突入して押し切る構えを見せた。後方から追ってきたのはウィキのみだったが、ウィキもまた本馬の影を踏むことは出来なかった。本馬が2着ウィキに1馬身1/4差をつけて勝ち、デビュー12戦目でステークス競走初勝利を挙げた。

その後は同月末にガルフストリームパーク競馬場で行われたスキップアウェイS(GⅢ・D9.5F)に向かった。フィリップHアイズリンSの勝ち馬ウェアーズスターリング、ベネズエラのGⅠ競走を3勝した後に米国に移籍していたディクシーエンペラー、ブルックリンH3着馬アルマドーロなどが出走しており、ルパルー騎手騎乗の本馬は単勝オッズ13.1倍の5番人気に留まっていた。しかし逃げ馬を見る形で2番手を追走すると、三角で先頭に立ってそのまま直線を完璧に押し切り、2着アルマドーロに2馬身半差、3着セルフコントロールにはさらに12馬身半もの大差をつけて快勝した。レース後にウィルクス師は、本馬は自由気儘に走らせたほうが良い結果を残す旨をコメントしている。

次走は5月にチャーチルダウンズ競馬場で行われたアリシーバS(GⅡ・D8.5F)となった。ここでは、リズンスターS・ガルフストリームパークHの勝ち馬で前年のケンタッキーダービー3着のムーチョマッチョマン、マインシャフトH・ニューオーリンズHなど4連勝中のネイツマインシャフト、フェイエットS・ノーザンダンサーSの勝ち馬でクラークH3着のサクセスフルダンという3頭のGⅡ競走勝ち馬が姿を見せていた。ムーチョマッチョマンが単勝オッズ2.7倍の1番人気、ネイツマインシャフトが単勝オッズ3.4倍の2番人気、サクセスフルダンが単勝オッズ5.1倍の3番人気で、ハヴィエル・カステリャーノ騎手が騎乗する本馬は単勝オッズ6.6倍の4番人気だった。本馬はやはり先行策を採ると、向こう正面では早々に先頭に並びかけた。そして先頭を維持したまま直線に入り、後方から追いかけてきたサクセスフルダンとの叩き合いとなった。しかしここでは1馬身後れを取って2着に敗れた。

次走は翌月のスティーヴンフォスターH(GⅠ・D9F)となった。このレースには、クラークH・ファイアークラッカーH・ファイエットSなどを勝っていたワイズダン、グレード競走勝ちこそ無かったが前年のケンタッキーダービーで2着という実績を持っていたネーロ、ピーターパンS・レイザーバックH・オークローンH・ピムリコスペシャルSの勝ち馬アルターネイション、前々走のサンタアニタHを勝っていたロンザグリーク、ルイジアナダービー・ニューオーリンズHの勝ち馬でスティーヴンフォスターH・クラークH・ドンHと3度のGⅠ競走2着があったミッションインパジブル、前走6着のネイツマインシャフトなどが出走していた。この当時は芝・ダート・オールウェザーを行き来していた後の米国最強芝馬ワイズダンが単勝オッズ1.9倍の1番人気に支持され、ネーロが単勝オッズ7倍の2番人気、ルパルー騎手が騎乗する本馬が単勝オッズ8.4倍の3番人気となった。レースはネイツマインシャフトが逃げを打ち、本馬は2~3番手を追走した。しかし三角辺りから急に手応えが悪くなり、直線で最後尾まで転落。勝ったロンザグリークから12馬身差の8着最下位と惨敗を喫してしまい、GⅠ競走初出走は苦い結果に終わった。

それから2週間後にはアイオワ州プレーリーメドウズ競馬場に姿を現し、コーンハスカーH(GⅢ・D9F)に出走した。アリシーバSから直行してきたサクセスフルダンが122ポンドのトップハンデでも単勝オッズ1.5倍の1番人気で、サクセスフルダンより5ポンド軽い117ポンドの本馬が単勝オッズ4.7倍の2番人気、前年のコーンハスカーH・ホーソーン金杯Hを勝っていた117ポンドのヘッドエイクが単勝オッズ8.1倍の3番人気、ハリウッド金杯・サンフェルナンドS・ホーソーン金杯Hなどを勝っていた118ポンドのオーサムジェムが単勝オッズ8.8倍の4番人気となった。

本馬に騎乗したのは、前年最終戦以来となるヘルナンデス・ジュニア騎手だった。そしてヘルナンデス・ジュニア騎手は好スタートを切った本馬をそのまま先頭に立たせた。そして後続馬に2~3馬身ほどの差をつけて逃げ続けた。スタートから逃げた経験など無かった本馬だったが、最初の2ハロン通過が24秒57、半マイル通過は48秒43であり、自分のペースでレースを支配することに成功した。そのままの態勢で直線に入った後も後続との差を維持し続け、2着サクセスフルダンに3馬身差をつけて快勝した。そしてヘルナンデス・ジュニア騎手はこのレースから本馬の主戦として、本馬が競走馬を引退するまでその鞍上を守り続けることになる。

次走のホイットニー招待H(米GⅠ・D9F)では、スティーヴンフォスターHから直行してきたロンザグリーク、ドンH勝ち馬でシガーマイルH2着のヒムンブック、前年のジョッキークラブ金杯・サバーバンH勝ち馬でホイットニー招待H・ウッドワードS2着のフラットアウト、サバーバンHで3着してきたトリックマイスター、モンマスカップSなどを勝ってきたルール、エクリプスS・ドミニオンデイSと加国のGⅢ競走を連勝してきたハンターズベイ、チャールズタウンクラシックS・トゥルーノースHなどを勝ってきたカイザエレトロニカ、サンランドダービー・テキサスマイルSの勝ち馬エンドースメントの8頭が対戦相手となった。ロンザグリークが単勝オッズ3.7倍の1番人気、ヒムンブックが単勝オッズ4.7倍の2番人気、フラットアウトが単勝オッズ5倍の3番人気、トリックマイスターが単勝オッズ7.1倍の4番人気で、本馬は単勝オッズ8.2倍の5番人気だった。

スタートが切られるとエンドースメントが先頭に立ち、トリックマイスターが2番手で、本馬は3番手につけた。道中は外側を走らされていたが、本馬は楽な手応えでエンドースメントを追いかけていた。そして三角に入ってから外側を通って仕掛けると、四角途中で一気に先頭に立った。直線では少しよれる場面があったが、ヘルナンデス・ジュニア騎手は右鞭と左鞭を使い分けて体勢を立て直した。そして最後方待機策から2着に追い込んできたロンザグリークに1馬身1/4差をつけて勝利。本馬だけでなく鞍上のヘルナンデス・ジュニア騎手にとっても嬉しいGⅠ競走初勝利となった。

次走は翌9月のジョッキークラブ金杯(米GⅠ・D10F)となった。ロンザグリーク、ホイットニー招待Hで3着だったフラットアウト、同4着だったヒムンブック、トラヴァーズS・ジムダンディS勝ち馬でベルモントS2着のステイサースティ、フィリップHアイズリンSを勝ってきたサンパブロ、前年のベルモントS勝ち馬ルーラーオンアイスなどが対戦相手となった。本馬が単勝オッズ3.85倍の1番人気に支持され、ロンザグリークが単勝オッズ4倍の2番人気、フラットアウトが単勝オッズ4.65倍の3番人気、ヒムンブックが単勝オッズ6.1倍の4番人気と、ホイットニー招待Hの着順そのままの人気順となった。

スタートが切られると単勝オッズ12.6倍の5番人気馬ステイサースティが逃げを打ち、不振のため単勝オッズ36倍の9番人気だったルーラーオンアイスが2番手、単勝オッズ15.2倍の6番人気馬サンパブロが3番手で、本馬は4番手を進んだ。三角に入ったところでルーラーオンアイスが失速すると、入れ代わるように上がってきた本馬がサンパブロをかわして2番手となり、逃げるステイサースティを追いかけながら直線へと入ってきた。しかし直線ではステイサースティに差を広げられ、さらに後方から来たフラットアウトにも一気にかわされた。レースはフラットアウトがステイサースティを頭差捕らえて勝ち、本馬は5馬身半差の3着に終わった。

BCクラシック(4歳時)

その後はカリフォルニア州に飛び、サンタアニタパーク競馬場で行われたBCクラシック(米GⅠ・D10F)に参戦した。フラットアウト、前走6着のロンザグリーク、アリシーバS3着後にサバーバンHを勝ちウッドワードSで2着してきたムーチョマッチョマンといった既対戦馬の他に、サンタアニタH・グッドウッドS・ハリウッド金杯・オーサムアゲインS・サンアントニオS・カリフォルニアンSの勝ち馬ゲームオンデュード、パシフィッククラシックS2回・グッドウッドS・サンアントニオHの勝ち馬リチャーズキッド、シガーマイルH・ウッドワードS・ナシュアS・レムセンS・ペンシルヴァニアダービーなどの勝ち馬トゥオナーアンドサーヴ、アファームドH勝ち馬でハスケル招待S・オーサムアゲインS2着のノニオス、トラヴァーズS・ジムダンディS勝ち馬でシャンペンS・ウッドメモリアルS2着のアルファ、ペンシルヴァニアダービー勝ち馬ハンサムマイク、スティーヴンフォスターH・ホーソーン金杯の勝ち馬プールプレイ、ブルーグラスS勝ち馬でベルモントS3着のブリリアントスピードの計11頭が対戦相手となった。

地元の星ゲームオンデュードが単勝オッズ2.3倍の1番人気、フラットアウトが単勝オッズ7.2倍の2番人気、ムーチョマッチョマンが単勝オッズ7.3倍の3番人気、ロンザグリークが単勝オッズ9.8倍の4番人気で、本馬は単勝オッズ10.4倍の5番人気だった。

スタートが切られると、ヘルナンデス・ジュニア騎手はすぐに本馬を加速させた。そしてムーチョマッチョマン、ゲームオンデュード、トゥオナーアンドサーヴ、ハンサムマイク、アルファなどを抑えて先頭に立った。ムーチョマッチョマンを始めとする後続馬からの圧力を受けながらも、内埒沿いに先頭を死守する本馬。向こう正面では2番手のムーチョマッチョマンとの差を2馬身程度まで広げて三角に入ってきた。四角を回ってきた頃にはムーチョマッチョマン以外の後続馬勢はかなり後方に去っており、レースはそのまま内側を逃げる本馬と外側から追い詰めるムーチョマッチョマンの一騎打ちとなった。ムーチョマッチョマン鞍上のマイク・スミス騎手は、スキップアウェイゼニヤッタ、そして前年のドロッセルマイヤーで3度もBCクラシックを勝っていたが、本馬鞍上のヘルナンデス・ジュニア騎手は勝つ以前の問題でBCクラシック参加自体が初めてだった。経験ではスミス騎手が断然上位のはずだったのだが、この日が27歳の誕生日だったヘルナンデス・ジュニア騎手は全力を振り絞って本馬を追った。そしてその気迫に応えた本馬が2着ムーチョマッチョマンに半馬身差、3着フラットアウトにはさらに6馬身半差をつけて優勝。デビュー戦で単勝オッズ70.9倍だった低評価馬が米国ダート路線の頂点を極めた瞬間だった。

ヘルナンデス・ジュニア騎手は「今までで最高の誕生日でした。レース前にイアン(ウィルクス師)と話し合ったときに、彼は自由気儘に走らせたほうが強いから、そのようにさせるように指示を受けていました」と語った。所有者のホワイタム夫人は、22年前に本馬の祖母バヤコアでBCディスタフを勝った時は、同競走中に名牝ゴーフォーワンドが故障して命を落とすという大事故があったために涙ながらに表彰台に上ったが、この時は何の気兼ねもなく喜びを顕わにすることができ、インタビューにも笑顔で応じていた。

4歳時の成績は9戦5勝(うちGⅠ競走2勝)だったが、エクリプス賞年度代表馬と最優秀古馬の座は、BCマイルを勝った6戦5勝(うちGⅠ競走3勝)のワイズダンに譲る事となった。

競走生活(5歳時)

5歳時も現役を続行し、まずは3月のガルフストリームパークH(GⅡ・D8F)に出走した。前年の同じ時期とは周囲からの評価が天と地ほど違っており、他馬より4~12ポンド重い124ポンドのトップハンデでも単勝オッズ1.8倍の1番人気に支持された。ところがスタートした瞬間に本馬は躓いて体勢を崩し、その拍子に鞍上のヘルナンデス・ジュニア騎手が落馬。そのまま競走中止となってしまった(レースは115ポンドの軽量が評価されて単勝オッズ2.9倍の2番人気に推されていたディスクリートダンサーが勝利した)。

幸先の悪い出足となったが、実力で負けたわけではなかったため、次走のオークローンH(GⅡ・D9F)でも他馬より6~10ポンド重い123ポンドのトップハンデながら単勝オッズ1.5倍の1番人気に支持された。しかしレースでは3番手を追走したものの、勝負どころにおける反応が悪く、勝った単勝オッズ7.5倍の2番人気馬サイバーシークレットから10馬身半差の5着と大敗した。

その後は一息入れて、2か月後のスティーヴンフォスターH(GⅠ・D9F)に向かった。対戦相手は、前年のフロリダダービー勝ち馬で前走アリシーバSを勝ってきたテイクチャージインディ、前年のコーンハスカーH2着以降長期休養入りしていたが復帰初戦の前走ベンアリSを勝ってきたサクセスフルダン、前年のBCクラシックで4着だったロンザグリーク、同8着だったプールプレイ、前年のトラヴァーズS勝ち馬ゴールデンチケットの5頭だった。119ポンドのテイクチャージインディが単勝オッズ2.9倍の1番人気、121ポンドのサクセスフルダンが単勝オッズ3.7倍の2番人気、120ポンドのロンザグリークが単勝オッズ4.1倍の3番人気で、121ポンドの本馬は前走の敗戦に加えて前年は最下位に敗れた験が悪いレースだった事もあってか単勝オッズ4.3倍の4番人気だった。

しかし蓋を開けてみれば本馬の独壇場となった。スタートしてすぐにヘルナンデス・ジュニア騎手は本馬を加速させて先頭に立たせ、そのまま単騎逃げに持ち込んだ。そして四角で後続馬を一気に引き離し、直線独走で2着ゴールデンチケットに6馬身1/4差をつけて圧勝した。勝ちタイム1分47秒45は、1999年にヴィクトリーギャロップが計時した1分47秒28に次いで同競走史上2番目に速いものだった。

その後はホイットニー招待H(GⅠ・D9F)に向かった。前走3着だったロンザグリーク、同4着だったサクセスフルダンに加えて、ムーチョマッチョマン、前年のBCクラシックで12着最下位だったアルファ、メトロポリタンHで2着してきたクロストラフィックなどが参戦してきた。前走とは異なり前年にGⅠ競走初勝利を飾った験が良いレースだった事もあって、122ポンドの本馬が単勝オッズ2.35倍の1番人気に支持された。117ポンドのクロストラフィックが勢いを買われて単勝オッズ4.55倍の2番人気、118ポンドのサクセスフルダンが単勝オッズ7.1倍の3番人気、118ポンドのロンザグリークが単勝オッズ7.9倍の4番人気となった。シーズン初戦のサンシャインミリオンズクラシックで大差の最下位(記録上は競走中止)だった119ポンドのムーチョマッチョマンは単勝オッズ9.5倍で、117ポンドで単勝オッズ8.8倍のアルファより低い6番人気だった。

スタートが切られるとクロストラフィックが先頭に立ち、ムーチョマッチョマンが2番手、本馬が3番手につけた。向こう正面で本馬がムーチョマッチョマンをかわして2番手に上がったが、その後の反応が今ひとつであり、直線に入るとムーチョマッチョマンに差し返された上に、サクセスフルダンやロンザグリークにも抜かれた。結局逃げ切って勝ったクロストラフィックから4馬身1/4差の5着という結果に終わった。

その後は地元チャーチルダウンズ競馬場で9月末に行われたホームカミングクラシックS(D9F)というノングレード競走に向かった。別定重量戦ではあったがハンデ競走では無かったため、実績断然の本馬が単勝オッズ1.3倍の1番人気に支持された。スタートでゲートにぶつかる場面があったが、お構いなしにすぐに先頭を奪い、そのまま単騎逃げを打った。直線入り口では既に勝負はほぼ決しており、流して走ったために後続との差は縮まったが、2着ウインドスウェプトに1馬身半差で楽勝した。

そして再びサンタアニタパーク競馬場に向かい、2連覇を目指してBCクラシック(GⅠ・D10F)に参戦した。対戦相手は、前年のBCクラシックで7着に終わるもその後はネイティヴダイヴァーS・サンアントニオS・サンタアニタH・チャールズタウンクラシックS・ハリウッド金杯・パシフィッククラシックSと6連勝中だったゲームオンデュード、ホイットニー招待H3着後に出走したオーサムアゲインSでようやくGⅠ競走初勝利を飾っていたムーチョマッチョマン、愛国のエイダン・オブライエン調教師が送り込んできたクイーンアンS・英国際Sの勝ち馬デクレレーションオブウォー、この年のベルモントS・ジムダンディS勝ち馬でブルーグラスS・ジョッキークラブ金杯2着のパレスマリス、トラヴァーズS・レベルS・ペンシルヴァニアダービーを勝っていたウィルテイクチャージ、この年はサバーバンH・ウエストチェスターSを勝ちウッドワードSで2着していた前年のBCクラシック3着馬フラットアウト、前年のハスケル招待S勝ち馬でベルモントS・オーサムアゲインS2着のペインター、ドワイヤーS勝ち馬でトラヴァーズS2着のモレノ、一昨年のガネー賞勝ち馬プラントゥール、エクセルシオールS・ピムリコスペシャルS・フィリップHアイズリンSの勝ち馬ラストガンファイターの10頭だった。前年の雪辱を期するゲームオンデュードが単勝オッズ2.7倍の1番人気、ムーチョマッチョマンが単勝オッズ5倍の2番人気、デクレレーションオブウォーが単勝オッズ7.7倍の3番人気、パレスマリスが単勝オッズ9.5倍の4番人気、ウィルテイクチャージが単勝オッズ9.6倍の5番人気で、本馬は単勝オッズ10.8倍の6番人気に留まった。

スタートが切られると前年はハナを奪えなかったゲームオンデュードが先頭に立ち、本馬はモレノと一緒に2~3番手を追走した。向こう正面でゲームオンデュードをかわして先頭を奪うと、好位からゲームオンデュードの外側まで上がってきていたムーチョマッチョマンとほぼ同時に直線に入ってきた。そして前年と同じように、内側で粘る本馬と外側から追い詰めるムーチョマッチョマンの争いになりかけたが、本馬は前年のような粘りを発揮できずに残り1ハロン地点で失速。レースはムーチョマッチョマンがウィルテイクチャージとデクレレーションオブウォーの追撃を辛うじて凌いで前年2着の雪辱を果たし、本馬はムーチョマッチョマンから3馬身半差の4着に敗退。このレースを最後に5歳時6戦2勝の成績で引退となった。

血統

E Dubai Mr. Prospector Raise a Native Native Dancer Polynesian
Geisha
Raise You Case Ace
Lady Glory
Gold Digger Nashua Nasrullah
Segula
Sequence Count Fleet
Miss Dogwood
Words of War Lord at War General Brigadier Gerard
Mercuriale
Luna de Miel Con Brio
Good Will
Right Word Verbatim Speak John
Well Kept
Oratorio Fleet Nasrullah
Classicist
Arlucea Broad Brush Ack Ack Battle Joined Armageddon
Ethel Walker
Fast Turn Turn-to
Cherokee Rose
Hay Patcher Hoist the Flag Tom Rolfe
Wavy Navy
Turn to Talent Turn-to
Hidden Talent
Bayakoa Consultant's Bid Bold Bidder Bold Ruler
High Bid
Fleet Judy Fleet Nasrullah
Solid Miss
Arlucea Good Manners Nashua
Fun House
Izarra Right of Way
Azpeitia

父イードバイはミスタープロスペクター産駒で、競走馬としては米で走り通算成績11戦5勝。ドワイヤーS(米GⅡ)・サバーバンH(米GⅡ)を勝ち、トラヴァーズS(米GⅠ)・スーパーダービー(米GⅠ)で2着しているが、米国三冠競走には不出走で、現役最後のレースとなったBCクラシック(米GⅠ)ではヴォルポニの11着に惨敗している。ダーレーグループの所有馬であり、競走馬引退後は米国ジョナベルファームと豪州ダーレー・オーストラリアを行き来するシャトルサイアーとなった。しかしあまり活躍馬を出せなかったため、本馬が3歳時の2011年にペンシルヴァニア州ゴーストリッジファームに移動した。本馬の活躍で注目されたが、本馬以外の活躍馬が出なかったため、2014年にメリーランド州ノーズビュースタリオンステーションに、2015年にはルイジアナ州エリート・サラブレッド・フォルサムと、各地を転々としている。

母アルルセアは現役成績7戦1勝だが、アルルセアの母バヤコアは亜国のGⅠ競走パレルモ大賞を勝った後に本馬の生産者ホワイタム夫人と夫のフランク・ホワイタム氏により購入されて米国に移籍し、BCディスタフ2連覇などGⅠ競走を12勝して米国顕彰馬にも選ばれた歴史的名牝(詳細は当馬の項を参照)。アルルセアの半姉トリニティプレイス(父ストロベリーロード)の娘にはアフルーエント【クイーンエリザベスⅡ世CCS(米GⅠ)・ラブレアS(米GⅠ)・ラモナH(米GⅠ)・サンタモニカH(米GⅠ)・ハリウッドオークス(米GⅡ)・エルエンシノS(米GⅡ)】がいる。→牝系:F9号族①

母父ブロードブラッシュは当馬の項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は米国の馬産団体アデナスプリングスの代表者フランク・ストロナック氏に購入され、ケンタッキー州アデナスプリングスファームで種牡馬入りした。初年度の種付け料は2万ドルに設定されている。

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