レヴモス
和名:レヴモス |
英名:Levmoss |
1965年生 |
牡 |
鹿毛 |
父:ルルヴァンステル |
母:フィーモス |
母父:バリモス |
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アスコット金杯やカドラン賞を制した名長距離馬だったが突如参戦した凱旋門賞で低評価を覆して優勝する |
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競走成績:2~4歳時に愛英仏で走り通算成績15戦8勝3着2回 |
誕生からデビュー前まで
愛国の馬産組織マグラス・トラスト・カンパニーにより生産され、当組織の代表者シーマス・マグラス氏により所有された。マグラス氏は自身で調教も行っており、本馬もマグラス氏自身が調教師として育成した。
競走生活(2・3歳時)
2歳時に愛国フェニックスパーク競馬場で行われたレースでデビューしたが、着外に敗れた。その後、愛国ゴーランパーク競馬場で行われたレースを勝利して、2歳時の成績は2戦1勝となった。
3歳時はフェニックスパーク競馬場で行われたレースを勝利。その後は英国に移動して5月のリングフィールドダービートライアルS(T12F)に出走したが、ローリエット、トーピッド、ハリーハリーの3頭に後れを取り、勝ったローリエットから7馬身3/4差の4着に敗退。英ダービーには出ず、6月のクイーンズヴァーズ(T16F)に出走したが、ゾルバ、同じく英ダービーには出なかった前走3着のハリーハリーなどに後れを取り、ゾルバの3馬身半差4着に敗れた。地元に戻って出走したブランドフォードS(T12F)では、プリークネスSの勝ち馬トムロルフの半妹ウィノア、後の愛セントレジャー馬ジオラミーア、後の愛セントレジャー2着馬サラガンなどに後れを取り、ウィノアの着外に敗れた。
8月には再度英国に移動して、オックスフォードシャーS(T13F)に出走。当然人気は無く、単勝オッズ16.67倍の評価だったが、カンタベリー、ジョッキークラブCの勝ち馬で前年の愛セントレジャー2着馬ダンシングモスとのゴール前の大接戦を制して、2着カンタベリーに首差、3着ダンシングモスにはさらに頭差で勝利した。カンタベリーは翌月に英セントレジャーに出走してリベロの短頭差2着することになるが、本馬は英セントレジャーに出走せず、渡仏してロワイヤルオーク賞(T3100m)に参戦した。しかし勝ったパリ大賞の勝ち馬ダウデヴィから7馬身差、2着に入ったトーピッドからも3馬身差をつけられた3着に敗れた。その後は地元に戻り、11月にレパーズタウン競馬場で行われたノーベンバーH(T16F)に130ポンドを背負って出走して4馬身差で圧勝し、3歳時を7戦3勝の成績で終えた。
競走生活(4歳時)
4歳時は地元でグラッドネスS(T8F)に出走したが、ロックド、レイルウェイSの勝ち馬で愛ナショナルS2着のサヒブという2頭の3歳馬に屈して、ロックドの3着に敗れた。その後は仏国に遠征してジャンプラ賞(T3100m)に出走したが、コンセイユミュニシパル賞の勝ち馬ザマザーン、ロワイヤルオーク賞・ロシェット賞・グラディアトゥール賞の勝ち馬で前年のアスコット金杯2着のサモとの接戦で少し後れをとり、勝ったザマザーンから1馬身半差の3着に敗れた。
次走のカドラン賞(T4000m)でも、ザマザーン、サモとの接戦となったが、今回は本馬が2着ザマザーンに首差、3着サモにはさらに頭差で勝利を収め、長距離馬としての素質を開花させた。
次走のアスコット金杯(T20F)では、ジョッキークラブSを勝ってきたトーピッド、ジョンポーターSの勝ち馬フォルテシモなどを抑えて単勝オッズ2.875倍の1番人気に支持された。そして2着トーピッドに4馬身差をつけて圧勝した。
夏場はレースに出ず、秋は9月に地元愛国で行われたレンスターHに出走。150ポンドという酷量を背負わされたが3馬身差で勝利した。
その後は今までの超長距離路線から12ハロン路線に方針転換し、凱旋門賞(T2400m)に挑戦。対戦相手は、愛ダービー・リュパン賞・グレフュール賞の勝ち馬で英ダービー3着のプリンスリージェント、キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスS・コロネーションC・リブルスデールS・ハードウィックS・フォワ賞を勝っていた5歳牝馬パークトップ(実は前年に本馬が勝利したオックスフォードシャーSにも出走していたが着外に敗れており、その後に本格化している)、この年の仏ダービー・ノアイユ賞・プランスドランジュ賞の勝ち馬でサンクルー大賞2着のグッドリー、この年の英ダービー馬ブレイクニー、クリテリウムドサンクルー・サンタラリ賞・ヴェルメイユ賞・ペネロープ賞の勝ち馬で仏オークス2着のサラカ、この年の仏オークス馬でヴェルメイユ賞2着のクレペラナ、仏オークス・ヴェルメイユ賞・ポモーヌ賞・ペネロープ賞の勝ち馬ロゼリエル、パリ大賞の勝ち馬シャパラル、イスパーン賞・ギシュ賞・ドラール賞・アルクール賞・ゴントービロン賞の勝ち馬でガネー賞2着のグランディール、ガネー賞・ダリュー賞・プランスドランジュ賞・アルクール賞・エクスビュリ賞の勝ち馬で前年の凱旋門賞でヴェイグリーノーブルの3着に入っていたカーマーゼン、デューハーストS・英シャンペンSの勝ち馬で愛ダービー・英セントレジャー2着のリボフィリオ、伊2000ギニー・伊ダービー・イタリア大賞の勝ち馬ボンコンテディモンテフェルトロ、ドーヴィル大賞の勝ち馬でパリ大賞2着・仏ダービー3着のジャカオ、シャンティ賞(現ニエル賞)を勝ってきた仏グランクリテリム2着馬ベルバリー、ロイヤルロッジS・チェスターヴァーズS・ウェストベリーS・カンバーランドロッジSを勝っていたリマンド、仏グランクリテリウムの勝ち馬イエラパ、オカール賞・トーマブリョン賞の勝ち馬で仏ダービー2着のボージェンシー、バリモスS・ロイヤルホイップSの勝ち馬で英チャンピオンS3着のキャンディケイン、モーリスドニュイユ賞の勝ち馬コップセイル、ロイヤルS・アンリデラマール賞の勝ち馬で英ダービー2着のシューメーカー、それに日本から参戦してきた天皇賞春・アメリカジョッキークラブC・目黒記念春2回・日本経済賞・アルゼンチンジョッキークラブC・ダイヤモンドSの勝ち馬スピードシンボリなど23頭だった。この年の欧州競馬における有力馬の大半は出走してきているオールスター競走であり、典型的な長距離馬であってこの距離では短いと目されていた本馬の存在は小さく、単勝オッズ53倍の14番人気という低評価だった。
本馬の鞍上は、豪州で活躍した後に英国と愛国に拠点を移していた豪州出身の名手ウィリアム・ジェームズ・ウィリアムソン騎手で、この年の本馬の主戦を務めていた。ウィリアムソン騎手は本馬の有するスタミナを最大限に活かすために、スタートから積極的な先行策を採った。逃げ馬を見るように2~3番手を追走した本馬は直線で早めに抜け出して、ロングスパートで粘り込みを図った。切れ味こそないが失速しない本馬の走りに殆どの他馬は迫ることが出来なかったが、唯一パークトップだけが大外から豪快に伸びてきた。残り200m地点から見る見るうちに本馬とパークトップの差が縮まったが、本馬が粘り切り、2着パークトップに3/4馬身差、3着グランディールにはさらに3馬身差をつけて優勝。日本調教馬として初めて凱旋門賞に挑んだ野平祐二騎手騎乗のスピードシンボリは、直線で追い込んだものの着外だった(日本中央競馬会のウェブサイトを始めとして10着とする資料が多いが、筆者が同競走の映像を見た限りでは11着か12着のいずれかである)。本馬はこのレースを最後に、4歳時5戦3勝の成績で引退した。
血統
Le Levanstell | Le Lavandou | Djebel | Tourbillon | Ksar |
Durban | ||||
Loika | Gay Crusader | |||
Coeur a Coeur | ||||
Lavande | Rustom Pasha | Son-in-Law | ||
Cos | ||||
Livadia | Epinard | |||
Lady Kroon | ||||
Stella's Sister | Ballyogan | Fair Trial | Fairway | |
Lady Juror | ||||
Serial | Solario | |||
Booktalk | ||||
My Aid | Knight of the Garter | Son-in-Law | ||
Castelline | ||||
Flying Aid | Flying Orb | |||
Aideen | ||||
Feemoss | Ballymoss | Mossborough | Nearco | Pharos |
Nogara | ||||
All Moonshine | Bobsleigh | |||
Selene | ||||
Indian Call | Singapore | Gainsborough | ||
Tetrabbazia | ||||
Flittemere | Buchan | |||
Keysoe | ||||
Feevagh | Solar Slipper | Windsor Slipper | Windsor Lad | |
Carpet Slipper | ||||
Solar Flower | Solario | |||
Serena | ||||
Astrid Wood | Bois Roussel | Vatout | ||
Plucky Liege | ||||
Astrid | Fair Trial | |||
Ethereal |
父ルルヴァンステルは本馬と同じくマグラス氏の所有馬。本馬とは明らかに距離適性が異なり、レイルウェイS・サセックスS・クイーンエリザベスⅡ世Sに勝利するなど26戦6勝の成績を残したマイラーだった。ルルヴァンステルの父ルラヴァンドウはジェベル産駒で、現役成績は30戦6勝。仏国でデビューしてアランベール賞・ヤコウレフ賞を勝ち、後に英国に移動してポートランドHを勝っている。
母フィーモスは英国で走り18戦3勝、ブランドフォードSの勝ち馬。その産駒には本馬の全妹スイートミモサ【仏オークス】、全弟ルモス【アスコット金杯(英GⅠ)2回・グッドウッドC(英GⅡ)2回・クイーンズヴァーズ(英GⅢ)・ドンカスターC(英GⅢ)2回】などがいる。ルモスは2年連続で英国長距離カップ三冠を制覇した名長距離馬で、本馬のスタミナは父方ではなく母方に由来するようである。スイートミモサの子にはフルールロワイヤル【プリティポリーS(愛GⅡ)】、曾孫にはディルシャーン【レーシングポストトロフィー(英GⅠ)】、玄孫にはサラリンクス【加国際S(加GⅠ)】が、本馬の半妹ディセンバーブロッサム(父コンドルセ)の子にはロモンドブロッサム【シルケングライダーS(愛GⅢ)】、孫にはザガリア【クイーンズランドオークス(豪GⅠ)】がいる。フィーモスの母フィーヴァフはヨークシャーオークス馬で、その孫には本馬の従兄弟である愛2000ギニー馬ニコリなどがいる。牝系を遡ると英ダービー馬にして名種牡馬であるベンドアの母ローグローズに行きつく。→牝系:F1号族⑥
母父バリモスは当馬の項を参照。
競走馬引退後
競走馬を引退した本馬はマグラス・トラスト・カンパニーで種牡馬供用された。やはり産駒は長距離色が強く、2頭のGⅠ競走勝ち馬はいずれも長距離GⅠ競走の勝ち馬である。1977年に仏国に移動したが、この年に12歳で他界した。繁殖牝馬の父としては、自身の全弟ルモスと共に欧州長距離路線を席巻したアルドロスを出している。エレクトロキューショニストの曾祖母の父でもある。本馬の直系は繁栄しなかったが、直子モストゥルーパーが新国の名牝ホーリックスの母父となっている。
主な産駒一覧
生年 |
産駒名 |
勝ち鞍 |
1972 |
Moonlight Night |
ムシドラS(英GⅢ) |
1972 |
Moss Trooper |
ケルゴルレイ賞(仏GⅡ) |
1972 |
Nuthatch |
ニジンスキーS(愛GⅡ) |
1972 |
Ravel |
ディーS(英GⅢ) |
1972 |
Shantallah |
チェスターヴァーズ(英GⅢ)・シザレウィッチH |
1973 |
Duchamp |
エマヌエーレフィリベルト賞(伊GⅡ) |
1973 |
Shafaraz |
カドラン賞(仏GⅠ)・ケルゴルレイ賞(仏GⅡ)・バルブヴィル賞(仏GⅢ) |
1975 |
M-Lolshan |
愛セントレジャー(愛GⅠ)・バーデン大賞(独GⅠ) |