ヨハネスブルグ

和名:ヨハネスブルグ

英名:Johannesburg

1999年生

鹿毛

父:ヘネシー

母:ミス

母父:オジジアン

愛国・仏国・英国の3か国で2歳GⅠ競走を勝った上にBCジュヴェナイルも制してアラジ以来10年ぶりの欧米統一2歳王者となった本邦輸入種牡馬

競走成績:2・3歳時に愛英仏米で走り通算成績10戦7勝2着1回

誕生からデビュー前まで

米国ケンタッキー州において、ウェイン・G・リスターⅢ世氏とジェイエフ・ビー・ステーブルスにより生産された。1歳時のキーンランド9月セールにおいて、クールモアグループの代理人デミ・オバーン氏によって20万ドルで購入され、愛国エイダン・オブライエン調教師に預けられた。

競走生活(2歳時)

2歳5月に愛国フェアリーハウス競馬場で行われた未勝利戦で、主戦となるマイケル・キネーン騎手を鞍上にデビュー。他馬との仕上がりの違いは歴然としており、単勝オッズ1.33倍という圧倒的な1番人気に支持された。レースでは馬群の好位4番手を追走し、残り1ハロン半地点で楽々と先頭に立つと、先行して2着に粘った単勝オッズ6倍の2番人気馬ミナウンハイツに3馬身半差をつけて快勝した。

続いて英国に向かい、前走から3週間後のノーフォークS(英GⅢ・T5F)に出走した。ここでは未勝利ステークスを快勝してきたクラチという馬と人気を分け合い、本馬が単勝オッズ2.375倍の1番人気、クラチが単勝オッズ4倍の2番人気となった。レースでは普通にスタートを切って先行したクラチとは対照的に、本馬はスタートで後手を踏んで後方からの競馬となった。それでもすぐに位置取りを回復して馬群の好位につけると、残り2ハロン地点で右側に切れ込みながらも末脚を伸ばした。そして残り1ハロン地点で先頭に立つと、先行して2着に粘った単勝オッズ26倍の6番人気馬ウォーターサイドに1馬身1/4差で勝利した(クラチは4着だった)。

いったん愛国に戻った本馬は、7月中旬のアングルシーS(愛GⅢ・T6.5F)に出走した。本馬が単勝オッズ1.8倍の1番人気で、本馬と同じ2戦2勝馬のハイソサエティ(後にゴールデンジュビリーS・スプリントCの勝ち馬ソサエティロックの母となる)が単勝オッズ6.5倍の2番人気、未勝利戦を3馬身半差で勝ってきた同厩馬ラインライダーが単勝オッズ9倍の3番人気と、本馬の1強体制だった。レースでは先行するハイソサエティやラインライダーを見るように馬群の好位5番手辺りで様子を伺った。そして残り2ハロン地点で仕掛けて残り1ハロン地点で先頭に立つと、最後方から2着まで追い込んできた単勝オッズ17倍の6番人気馬ワイズマンズフェリー(本馬と同じヘネシー産駒。翌年にローンスターダービーを勝ち、ベルモントSにも参戦している)に4馬身差をつけて圧勝した。

次走は1か月後の愛フェニックスS(愛GⅠ・T6F)となった。本馬に対抗できそうな馬は他に出走しておらず、本馬が単勝オッズ1.4倍の1番人気、リステッド競走シルヴァーフラッシュSを勝ってきたアグネッタと前走ゴフスミリオン2着のミナシュキの2頭が並んで単勝オッズ11倍の2番人気、ワイズマンズフェリー、ハイソサエティ、トワイライトブルース、ハイダウンの4頭が並んで単勝オッズ13倍の4番人気と、本馬VSその他大勢の構図となっていた。

レースは相変わらず馬群の好位につけて様子を伺い、残り2ハロン地点で仕掛けて残り1ハロン地点で先頭に立つという横綱相撲で、最後方からの追い込みに賭けた単勝オッズ26倍の最低人気馬ミスビービーを5馬身差の2着に下して完勝した。過去3戦と異なり馬場は湿っており、本馬には弱点らしきものが存在しなくなった。

次走は愛フェニックスSから2週間後のモルニ賞(仏GⅠ・T1200m)となった。愛国心が強い仏国の競馬ファンでも本馬の実力は認めざるを得ず、ペースメーカー役のラインライダーとのカップリングではあったが単勝オッズ1.6倍の1番人気に支持され、2戦2勝の地元馬ウォーゾーンが単勝オッズ4.4倍の2番人気、ジュライSを勝ってきたメシャヒールが単勝オッズ7.3倍の3番人気、モールコームSを勝ってきたウィットバロウが単勝オッズ15.8倍の4番人気、カブール賞を勝ってきたファイアブレイクが単勝オッズ18.2倍の5番人気、ロベールパパン賞を勝ってきたジッピングが単勝オッズ19倍の6番人気と続いていた。

スタートが切られるとラインライダーが自分の役割を果たすべく先頭に立ったのだが、肝心の本馬は馬群の中団好位につけながらも道中で落鉄して走り辛そうにしていた。残り400m地点で外側から仕掛けて先に先頭に踊り出たのは、馬群の中団後方を走っていたジッピングだった。デビューから初めて危機的状況に立たされたように見えた本馬だったが、残り300m地点で仕掛けると、残り200m地点でジッピングをかわして先頭に立った。そのまま先頭を維持してゴールまで駆け抜け、2着ジッピングに1馬身半差をつけて勝利した。

次走は10月初めのミドルパークS(英GⅠ・T6F)となった。ジッピング、4年前のミドルパークS勝ち馬ハイルの半弟である1戦1勝馬ファークァドくらいしか他に有力馬がおらず、本馬が単勝オッズ1.3倍の1番人気に支持され、ジッピングとファークァドが並んで単勝オッズ7.5倍の2番人気となった。

今回もラインライダーが先頭を飛ばし、本馬は馬群の中団、ジッピングは本馬をマークするように後方につけた。残り2ハロン地点で本馬が仕掛けるとジッピングもほぼ同時に仕掛けたのだが、ジッピングよりも本馬の脚色のほうが明らかに上だった。徐々に差を広げると、最後は2着ジッピングに3馬身差をつけて楽勝した。

これで本馬は愛国・仏国・英国で2歳GⅠ競走を勝った事になり、この年の欧州2歳路線には完全に敵がいなくなってしまった。

BCジュヴェナイル

本馬の次走は米国ベルモントパーク競馬場で行われたBCジュヴェナイル(米GⅠ・D8.5F)となった。米国には本馬にとって強敵になりそうな馬がごろごろしており、シャンペンS・デルマーフューチュリティ・ベストパルSなど5戦全勝のオフィサー、ホープフルS・ハリウッドジュヴェナイルCSSなど3戦全勝のケイムホーム、6馬身差で圧勝したブリーダーズフューチュリティなど2戦2勝のサイフォニック、サラトガスペシャルSの勝ち馬でシャンペンS2着のジャンプスタート、ノーフォークSを勝ってきたエッセンスオブドバイ、ケンタッキーカップジュヴェナイルSを勝ってきたリペント、アーリントンワシントンフューチュリティを勝ってきたパブリケーション、ケンタッキーカップジュヴェナイルS2着馬フレンチアソールト、ノーフォークS2着馬イブンアルハイサム、アーリントンワシントンフューチュリティ2着馬イッツオールインザチェイス、シャンペンS4着馬サーランドの合計11頭が対戦相手となった。

無敗の3頭は強敵と思われていたが、その中でも群を抜いて評価が高かったのはオフィサーで、単勝オッズ1.75倍の1番人気に支持されていた。単勝オッズ6倍の2番人気がケイムホームで、本馬が単勝オッズ8.2倍の3番人気、サイフォニックが単勝オッズ10.3倍の4番人気、ジャンプスタートが単勝オッズ13.3倍の5番人気と続いていた。

欧州で6連勝(うちGⅠ競走3勝を含むグループ競走5勝)して初のダート競走に挑んできた点においては、ちょうど10年前のBCジュヴェナイルで単勝オッズ3.1倍の1番人気に支持されたアラジと同様だったが、本馬の評価がアラジほど高くなかったのは、アラジは距離1600mの仏グランクリテリウムを勝っていたのに対して、本馬は最長で距離6.5ハロンまでしか走った事が無く、スタミナ面の不安がアラジより大きかった事も影響していたようである。

スタートが切られるとオフィサーとケイムホームの上位人気馬2頭が先頭に立ち、本馬、サイフォニック、エッセンスオブドバイなどが3~6番手の好位につけた。そのままの態勢で三角に入ると、逃げるオフィサーとケイムホームの2頭に本馬を含む後続馬が徐々に接近していった。直線に入るとオフィサーとケイムホームの2頭を内側からかわしたサイフォニックが抜け出しかけたが、そこへ4番手で直線に入ってきた本馬が外側からぐいぐいと伸びてサイフォニックをかわして先頭に立ち、中団から差して2着に入った単勝オッズ43.25倍の8番人気馬リペントに1馬身1/4差をつけて勝利。2歳時に4か国でGⅠ競走を制したのは史上初の快挙だった(本馬以降にも1頭もいない)。

2歳時の成績は7戦全勝で、カルティエ賞最優秀2歳牡馬はもちろんのこと、エクリプス賞最優秀2歳牡馬にも選出された。この両タイトルをダブル受賞したのは1991年のアラジ以来10年ぶり史上2頭目だった。ただし、アラジはカルティエ賞年度代表馬にも選ばれたが、本馬は選ばれなかった(ファンタスティックライトが受賞)。アラジと本馬は勝ったレースの内容ではほぼ同等だが、国際クラシフィケーションや英タイムフォーム社のレーティングでは差が付いた。アラジは前者が130ポンド(後に129ポンドに下方修正)で後者が135ポンドだったのに対して、本馬は前者が126ポンド、後者は127ポンドに留まった。BCジュヴェナイルの衝撃度の違いがこの評価の違いに影響している可能性が高そうである。

競走生活(3歳時)

3歳時は最初からケンタッキーダービーを目標として、4月のグラッドネスS(愛GⅢ・T7F)から始動した。このレースは古馬混合戦であり、本馬以外の出走馬6頭は全て古馬だった。その中には、前年のプリティポリーSを勝っていたリベラインの姿もあったが、斤量差が大きかった(本馬は125ポンド、リベラインは牝馬ながら136ポンドのトップハンデ)事もあり、本馬が単勝オッズ1.33倍の1番人気、リベラインが単勝オッズ9倍の2番人気となった。3歳になっても本馬のレースぶりは前年とあまり変わらず、道中は3番手の好位に付けると、抜け出して残り1ハロン地点で先頭に立った。ところがここで後方からリベラインが猛然と追い上げてきて、2頭が殆ど並んでゴールインした。写真判定の結果はリベラインが短頭差で勝利しており、2着に敗れた本馬は初黒星を喫した。

勝ったリベラインは翌月のタタソールズ金杯で英チャンピオンS・ドバイシーマクラシックの勝ち馬ネイエフなどの強豪牡馬勢を蹴散らして勝利しているから、弱い相手に負けたわけではないのだが、この敗戦のためケンタッキーダービーに向かうべきではないという意見が各方面から噴出した。さらに悪いことに主戦のキネーン騎手が騎乗停止処分を受けて、ケンタッキーダービーの週まで騎乗不可になってしまう事態も発生。

しかしそれでも陣営は意志を曲げずに、ベレスフォードSの勝ち馬でレーシングポストトロフィー・クリテリウムドサンクルー2着のキャッスルガンドルフォを本馬と一緒にケンタッキーダービー(米GⅠ・D10F)に向かわせた。BCジュヴェナイルでは7着だったがサンヴィンセントS・サンラファエルS・サンタアニタダービーと3連勝中して臨んできたケイムホーム、BCジュヴェナイルでは8着だったがレムセンSを勝ちゴーサムSで2着していたサーランド、BCジュヴェナイルでは12着最下位だったがUAE2000ギニー・UAEダービーを勝ってきたエッセンスオブドバイの既対戦組の他に、フロリダダービー・ブルーグラスSを連勝してきたファウンテンオブユースS2着馬ハーランズホリデー、サンフェリペSを勝ちウッドメモリアルSで2着したメダグリアドーロ、レーンズエンドSを勝ってきたパーフェクトドリフト、イリノイダービーを勝ってきたウォーエンブレム、アーカンソーダービーを勝ってきたプライヴェートエンブレム、レキシントンSを勝ってきたプラウドシチズン、フロリダダービー2着・ファウンテンオブユースS3着のブルーバーナーといった馬達が対戦相手となった。

キネーン騎手に代わる鞍上はゲイリー・スティーヴンス騎手だった。もっとも、スティーヴンス騎手は当初ウッドメモリアルS3着馬サンデーブレイクに騎乗する予定だったのが、サンデーブレイクが除外されて手が空いたために本馬に乗る事になったものであり、急造コンビの印象は拭えなかった。しかも前走の敗戦や、10年前にやはり欧州で1戦してケンタッキーダービーに挑んできたアラジが惨敗した事などもあり、本馬は単勝オッズ9.1倍の5番人気に留まった。ハーランズホリデーが単勝オッズ7倍の1番人気、サーランドとメダグリアドーロが並んで単勝オッズ7.9倍の2番人気、パーフェクトドリフトが単勝オッズ8.9倍の4番人気となっていた。

スタートが切られると単勝オッズ21.5倍の9番人気馬ウォーエンブレムが先頭に立ち、プラウドシチズンやケイムホームなどがそれを追撃。一方の本馬は馬群の中団後方につけた。BCジュヴェナイルも含めて今までは好位につけて抜け出す競馬ばかりだった本馬が後方につけた意図はよく分からないが、筆者が推測するに、スティーヴンス騎手の脳裏には1番人気のポイントギヴンに騎乗しながらもハイペースを追いかけて完敗した前年の苦い記憶があったのではないだろうか。しかし、ウォーエンブレムが刻んだペースは最初の2ハロン通過が23秒25、半マイル通過は47秒04であり、同競走史上最速ラップだった前年の22秒25、44秒86に比べると明らかに遅かった。そのために先行した馬が有利で、後方から行った馬が不利な展開となってしまった。三角から四角にかけても先行馬勢は失速せずにむしろ加速していった。そのために直線に入るまでに位置取りを殆ど上げられなかった本馬は、9番手で直線を向くことになった。そして直線でも伸びずに、勝ったウォーエンブレムから13馬身差の8着と惨敗してしまった。

レース翌日に米国を後にして欧州に戻ってきた本馬は、ケンタッキーダービーから7週間後のゴールデンジュビリーS(英GⅠ・T6F)に出走した。モートリー賞の勝ち馬でモーリスドギース賞2着のスリーポインツ、ジョエルSの勝ち馬デインハースト、キングズスタンドSで2着してきたコンティネント(この年にジュライC・アベイドロンシャン賞に勝利してカルティエ賞最優秀短距離馬に選出)、デュークオブヨークSの勝ち馬で後のスプリントCの勝ち馬インヴィンシブルスピリットといった古馬勢が主な対戦相手となった。キネーン騎手が鞍上に復帰した本馬が単勝オッズ4倍の1番人気、スリーポインツが単勝オッズ5倍の2番人気、デインハーストが単勝オッズ7.5倍の3番人気、コンティネントが単勝オッズ9倍の4番人気、インヴィンシブルスピリットが単勝オッズ11倍の5番人気となった。今回の本馬はスタートから好位につける以前の走法に戻った。しかし残り2ハロン地点で右側によれて失速。勝ったのは条件ステークスを勝ってきたばかりの単勝オッズ17倍の9番人気馬マルハブであり、本馬は10馬身差の9着と惨敗してしまった。

そしてレース翌日に陣営は本馬の競走馬引退を表明。3歳時の成績は3戦未勝利で、7戦全勝だった2歳時とは雲泥の差だった。

馬名に関して

本馬の馬名は南アフリカ最大の都市に由来するが、発音については「ヨハネスブルグ」「ジョハネスバーグ」など複数の候補があり、どれが正しいのか議論されているのを見たことがある。前者は独語読み、後者は英語読みであり、英語圏の国で出たレースの実況は後者で発音していたが、モルニ賞の実況は前者で発音していた。日本では該当する南アフリカの都市を「ヨハネスブルグ」と表記することが多いが、「ジョハネスバーグ」という表記も散見される。要するにどちらも間違っているとは言えないわけで、いずれが正しいのかを議論すること自体が不毛である。

血統

ヘネシー Storm Cat Storm Bird Northern Dancer Nearctic
Natalma
South Ocean New Providence
Shining Sun
Terlingua Secretariat Bold Ruler
Somethingroyal
Crimson Saint Crimson Satan
Bolero Rose
Island Kitty Hawaii Utrillo Toulouse Lautrec
Urbinella
Ethane Mehrali
Ethyl
T. C. Kitten Tom Cat Tom Fool
Jazz Baby
Needlebug Needles
Flynet
Myth オジジアン Damascus Sword Dancer Sunglow
Highland Fling
Kerala My Babu
Blade of Time
Gonfalon Francis S. Royal Charger
Blue Eyed Momo 
Grand Splendor Correlation
Cequillo
Yarn Mr. Prospector Raise a Native Native Dancer
Raise You
Gold Digger Nashua
Sequence
Narrate Honest Pleasure What a Pleasure
Tularia
State Nijinsky
Monarchy

ヘネシーは当馬の項を参照。

母ミスは現役時代米国で走り16戦1勝。ミスの半弟にはテールオブザキャット(父ストームキャット)【キングズビショップS(米GⅡ)】、ミナルディ(父バウンダリー)【愛フェニックスS(愛GⅠ)・ミドルパークS(英GⅠ)】がいる。また、ミスの半妹スパンアウトアコントロール(父ワイルドアゲイン)の子にはフェドビズ【サンフェルナンドS(米GⅡ)・パットオブライエンS(米GⅡ)・サンディエゴH(米GⅡ)】がいる。ミスの母ヤーンの全妹にはプリーチ【フリゼットS(米GⅠ)】、プリーチの子にはプルピット【ファウンテンオブユースS(米GⅡ)・ブルーグラスS(米GⅡ)】がいる。ヤーンの曾祖母モナーキーはアーリントンラッシーSの勝ち馬で、モナーキーの3歳年上の全兄には米国の歴史的名馬ラウンドテーブルがいる。→牝系:F2号族②

母父オジジアンは当馬の項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は米国ケンタッキー州アッシュフォードスタッドで種牡馬入りした。初年度の種付け料は3万ドルに設定された。また、クールモア種牡馬の例によって豪州にもシャトルされた。早熟の短距離馬という評価だった本馬だが、それでも芝とダートの両方でGⅠ競走を勝ったというのは大きなセールスポイントになったらしく、初年度は米国だけで200頭近い繁殖牝馬を集めた。クールモアグループが欧州で活躍した馬を頻繁に米国ダートの大競走に向かわせるのは、種牡馬としての価値を上げる目的が大きく、本馬はそれが上手くいった例である(ただし成功したのは本馬とジャイアンツコーズウェイくらいで、それ以外の挑戦は裏目に出ている場合が多い)。

本馬の初年度産駒は2006年にデビューし、スキャットダディがシャンペンSを制して産駒のGⅠ競走初勝利を挙げるなど、この年の米国では新種牡馬最多となる33勝をマークした。この結果を受けて翌2007年の種付け料は6万5千ドルまで上昇した。この2007年に父ヘネシーが他界したため、本馬には後継種牡馬としての期待が大きくなった。しかし本馬の産駒はやはり早熟傾向が強く、勝ち上がり率は高いが、大物感に欠けている印象は拭えず、種付け料は2009年には3万5千ドルに下がった。

この2009年に亜国でシャトル供用された後、同年10月に日本軽種馬協会によって購入された。翌2010年1月に来日して、現在まで日本軽種馬協会静内種馬場で供用されている。日本における初年度は117頭の繁殖牝馬を集めたが、翌2011年は37頭、2012年は23頭、2013年は24頭と低迷した。しかしこの2013年にデビューした日本における初年度産駒が活躍し、2014年には153頭もの繁殖牝馬が集まった(実際には700件を超える申し込みがあり、これでもかなり抑えた数字である)。しかし2014・15年の産駒成績を見る限りでは、再び交配数は減少傾向に転じそうである。

な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

2004

Baroness Thatcher

サンタイザベルS(米GⅢ)

2004

Diamond Tycoon

フェアグラウンズH(米GⅢ)

2004

Evens and Odds

スチュワーズC

2004

Hamoody

リッチモンドS(英GⅡ)

2004

La Traviata

ヴィクトリーライドS(米GⅢ)

2004

Looky Yonder

ヴェイグランシーH(米GⅡ)

2004

Marcavelly

トランシルバニアS(米GⅢ)・ヒルプリンスS(米GⅢ)

2004

Rabatash

ラウンドタワーS(愛GⅢ)

2004

Sageburg

イスパーン賞(仏GⅠ)

2004

Scat Daddy

シャンペンS(米GⅠ)・フロリダダービー(米GⅠ)・サンフォードS(米GⅡ)・ファウンテンオブユースS(米GⅡ)

2004

Teuflesberg

ウッディスティーヴンスBCS(米GⅡ)

2004

Turffontein

サールパートクラークS(豪GⅠ)・ウィリアムレイドS(豪GⅠ)・クイーンズランドギニー(豪GⅡ)

2005

Cassandara Shadow

WAオークス(豪GⅢ)

2005

Eaton's Gift

スウェイルS(米GⅡ)・スマイルスプリントH(米GⅡ)

2005

Jupiter Pluvius

キラヴーランS(愛GⅢ)

2005

Ten Meropa

ボールドウィンS(米GⅢ)

2006

African Skies

プリンセスマーガレットS(英GⅢ)

2006

Once Were Wild

AJCオークス(豪GⅠ)・チェアマンズH(豪GⅡ)

2006

Phola

チャーチルディスタフターフマイルS(米GⅡ)・ヒルズボローS(米GⅢ)

2006

Prince of Johanne

ケンブリッジシャーH・ロイヤルハントC

2006

Stefer

ミエスク賞(仏GⅢ)

2007

Hudson Steele

ディキシーS(米GⅡ)

2007

Isibaeva

ボーミストレストロフィー(豪GⅢ)

2007

Radiohead

ノーフォークS(英GⅡ)

2007

Red Jazz

チャレンジS(英GⅡ)

2007

Strapping Groom

フォアゴーS(米GⅠ)・トムフールH(米GⅢ)

2009

Bamba Jane

サトゥルニーノJウンスエ大賞(亜GⅠ)

2009

Pone la Firma

マヌエルJグィラデス賞(亜GⅢ)

2010

Juhayna

ポトランカス大賞(亜GⅠ)・エストレージャス大賞ジュヴェナイルフィリーズ(亜GⅠ)・ミルギネアス大賞(亜GⅠ)・エンリケアセバル大賞(亜GⅠ)

2010

River Seven

グレイS(加GⅢ)・コモンウェルスターフS(米GⅢ)

2011

ニシノマリーナ

金の鞍賞(高知)・土佐春花賞(高知)・黒潮菊花賞(高知)・土佐秋月賞(高知)

2011

フクノドリーム

エーデルワイス賞(GⅢ)

2011

ホウライアキコ

デイリー杯2歳S(GⅡ)・小倉2歳S(GⅢ)

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