ウォーエンブレム

和名:ウォーエンブレム

英名:War Emblem

1999年生

青鹿

父:アワーエンブレム

母:スウィーテストレディ

母父:ロードアトウォー

繁殖牝馬との交配を嫌がる性格で牧場関係者を悩ませるが質が高い産駒を送り出すので見切るに見切れないケンタッキーダービー・プリークネスS優勝馬

競走成績:2・3歳時に米で走り通算成績13戦7勝

誕生からデビュー前まで

米国ケンタッキー州ナッコルスファームにおいて、タイプキャストの生産者でもあるチャールズ・ナッコルス・ジュニア氏により生産され、ラッセル・L・レインマン氏の所有馬となり、フランク・R・シュプリンガー調教師に預けられた。

競走生活(3歳初期まで)

2歳10月にアーリントンパーク競馬場で行われたダート8ハロンの未勝利戦で、アルフレッド・ホワレ・ジュニア騎手を鞍上にデビュー。前評判は至って低く、単勝オッズ17.4倍で9頭立て7番人気だった。スタートも良くなかったが、すぐさま先頭を奪うと、四角で一気に後続を引き離し、直線でも逃げ切って、2着カストナーに1馬身3/4差で勝ち上がった。

16日後に出走したマニラS(T8F)は、生涯唯一の芝レースとなった。今回もホワレ・ジュニア騎手とコンビを組み、単勝オッズ9倍で12頭立て4番人気の評価だった。ここでは単勝オッズ5.4倍の2番人気馬デルプレイスと、スタートから抜きつ抜かれつの先頭争いを展開した。その結果は共倒れになってしまい、四角で失速して、勝ったリルストンから17馬身差の7着に敗退した。

その後はルイジアナ州フェアグラウンズ競馬場に向かい、ダート8ハロンの一般競走に出走した。ここではジェイミー・テリオット騎手とコンビを組み、単勝オッズ3倍の2番人気だった。スタートが良くなかったせいもあってか、後方2番手を追走した。しかし向こう正面で抑えきれないように上がっていって先頭を奪うと、そのまま2着ノートラブルに4馬身半差で勝利を収め、2歳時を3戦2勝で終えた。

3歳時は引き続きフェアグラウンズ競馬場に留まり、1月のルコントS(D8F)にテリオット騎手と共に出走。単勝オッズ13.4倍で、11頭立ての5番人気とあまり評価されていなかった。ここでも単勝オッズ3.3倍の2番人気馬スカイテラスとスタートから抜きつ抜かれつの先頭争いを演じた。直線入り口まで2頭の争いは続いたが、直線に入ると本馬が先に失速。ゴール直前でスカイテラスを鼻差かわして勝利した単勝オッズ3倍の1番人気馬イージーフロムザギットゴーから2馬身1/4差の5着に敗れた。

3週間後のリズンスターS(GⅢ・D8.5F)では、ケンタッキーカップジュヴェナイルS・ケンタッキージョッキークラブSの勝ち馬リペントが単勝オッズ1.7倍という断然の1番人気で、スカイテラスが単勝オッズ7.2倍の2番人気、一般競走を勝ってきたボブズイメージが単勝オッズ7.7倍の3番人気、ケンタッキーカップジュヴェナイルS2着馬フレンチアソールトが単勝オッズ8.4倍の4番人気で、イージーフロムザギットゴーが単勝オッズ8.9倍の5番人気、前走ルコントSで3着だったアーリントンワシントンフューチュリティ2着馬イッツオールインザチェイスが単勝オッズ14.6倍の6番人気になるほど層が厚かった。そしてテリオット騎手騎乗の本馬は単勝オッズ39.8倍で、9頭立て7番人気の低評価だった。スタートからスカイテラス、ボブズイメージ、フレンチアソールトなどが先頭争いを演じ、本馬もそれに絡んで、最初の2ハロン通過が23秒13、半マイル通過は46秒12というかなり速いペースでレースが進んだ。そして逃げた4頭の中で真っ先に遅れたのは本馬であり、ハイペースに乗じた後方待機策からボブズイメージ以下を差し切って勝ったリペントから9馬身3/4差をつけられた6着に敗れた。

その後はイリノイ州スポーツマンズパーク競馬場に向かい、3月にダート8ハロンの一般競走にホワレ・ジュニア騎手と共に出走。過去に本馬が走ってきたレースと比べると出走馬のレベルは明らかに低く、ここでは単勝オッズ1.8倍の1番人気に支持された。ここでは好スタートを切り、単勝オッズ4.7倍の2番人気馬カラフルツアーを引き連れて先頭を走り続けた。そして直線に入ったところでカラフルツアーを一気に引き離し、最後は2着カラフルツアーを11馬身ちぎり捨てて圧勝した。

3週間後のイリノイダービー(GⅡ・D9F)では、ルイジアナダービーを勝ってきたリペント、加国の2歳GⅠ競走グレイBCSの勝ち馬チェンジインザウェザー、ハリウッドプレビューS勝ち馬でハリウッドフューチュリティ2着のフォンズなどが対戦相手となった。リペントが単勝オッズ1.5倍という断然の1番人気に支持されており、フォンズが単勝オッズ4.6倍の2番人気、リペントより10ポンド斤量が軽い本馬が単勝オッズ7.3倍の3番人気となっていた。ラリー・スターリング・ジュニア騎手が騎乗した本馬は今回も単騎逃げに持ち込む事に成功し、四角で後続馬を引き離しにかかった。そこへ最後方待機策からリペントが上がってきたが、最初の半マイルを48秒30という比較的ゆったりしたペースで走ってきた本馬に追いつきそうな気配は無かった。そのまま直線で独走した本馬が、2着リペントに6馬身1/4差をつけて圧勝した。

もっとも10ポンドのハンデを貰っての勝利だった事もあり、この時点における本馬の馬主だったレインマン氏は、ケンタッキーダービー出走には消極的であった。しかしイリノイダービー直後に、サウジアラビアの王族アハメド・ビン・サルマン殿下が創設したザ・サラブレッド・コーポレーション社により本馬の権利の90%に当たる90万ドルがレインマン氏に支払われ、本馬はボブ・バファート厩舎に転厩した。同時にサルマン殿下は本馬をケンタッキーダービーに挑戦させる旨を表明した。

競走生活(米国三冠競走)

そして迎えたケンタッキーダービー(GⅠ・D10F)では、フロリダダービー・ブルーグラスSを連勝してきたハーランズホリデー、サンフェリペS勝ち馬でウッドメモリアルS2着のメダグリアドーロ、レムセンS勝ち馬でゴーサムS2着のサーランド、レーンズエンドSを勝ってきたパーフェクトドリフト、ホープフルS・サンヴィンセントS・サンラファエルS・サンタアニタダービーの勝ち馬ケイムホーム、ノーフォークS・UAE2000ギニー・UAEダービーの勝ち馬エッセンスオブドバイ、サンタアニタダービー3着馬ラスティレイティン、サウスウエストS・アーカンソーダービーなど3連勝中のプライヴェートエンブレム、レキシントンSを勝ってきたプラウドシチズン、フロリダダービー2着馬ブルーバーナー、ケンタッキージョッキークラブS2着馬リクエストフォーパロール、サンフラファエルS・サンタアニタダービーで連続2着してきたイージーグレーズ、ブルーグラスS3着馬オーシャンサウンド、アーカンソーダービー2着馬ワイルドホーセズ、シズンスターS5着後にルイジアナダービーで3着していたイッツオールインザチェイス、それに前年にBCジュヴェナイル・愛フェニックスS・モルニ賞・ミドルパークSなど7戦全勝の成績を挙げて欧米で最優秀2歳牡馬に選ばれたヨハネスブルグと、レーシングポストトロフィーとクリテリウムドサンクルーで共に2着だったベレスフォードS勝ち馬キャッスルガンドルフォという、愛国の名伯楽エイダン・パトリック・オブライエン調教師が送り込んできた2頭の合計17頭が対戦相手となった。

人気は非常に割れており、1番人気に押し出されたハーランズホリデーの単勝オッズは7倍だった。その後は単勝オッズ7.9倍のメダグリアドーロとサーランドの2頭、単勝オッズ8.9倍のパーフェクトドリフト、単勝オッズ9.1倍のヨハネスブルグ、単勝オッズ9.2倍のケイムホーム、単勝オッズ11倍のエッセンスオブドバイ、単勝オッズ15.5倍のキャッスルガンドルフォと続いていた。この混戦模様の中でも本馬の評価はそれほど高くなく、単勝オッズ21.5倍の9番人気だった。

このレースからコンビを組んだヴィクター・エスピノーザ騎手鞍上の本馬は、スタート後しばらくの横一線状態から押し出されるように先頭に立った。そしてプラウドシチズン以下を引きつけて逃げ続けた。最初の2ハロン通過は23秒25、半マイル通過は47秒04であり、先頭争いが激化しがちなケンタッキーダービーとしては、まだ先行馬にとって楽なペースだった(例えば前年のケンタッキーダービーは最初の2ハロン通過が22秒25、半マイル通過が44秒86であり、先行馬勢はほぼ壊滅している)。それでも決して遅いペースではなく、平凡な馬であれば潰れてしまうはずだったのだが、どうやらこの段階における本馬はそんな平凡な馬ではなくなっていたらしく、先頭を維持したまま直線に入ると後続との差を広げにかかった。そして2着に粘ったプラウドシチズンに4馬身差をつけて優勝した。

次走のプリークネスS(GⅠ・D9.5F)ではケンタッキーダービーで敗れた有力馬の多くが姿を消し、ケンタッキーダービーに引き続いて出走してきたのは本馬とプラウドシチズンの他には、前走4着のメダグリアドーロと前走7着のハーランズホリデーのみだった。他の出走馬は、ファウンテンオブユースS勝ち馬でブルーグラスS2着のブックレット、サンフェリペS2着馬ユーエスエスティノサ、レキシントンS2着馬クリムゾンヒーロー、シズンスターS3着後にルイジアナダービー2着・レキシントンS3着だったイージーフロムザギットゴー、タンパベイダービー勝ち馬イクオリティなどだった。前走とは打って変わって本馬が単勝オッズ3.8倍の1番人気に支持され、メダグリアドーロが単勝オッズ4倍の2番人気、ハーランズホリデーが単勝オッズ6.2倍の3番人気、プラウドシチズンが単勝オッズ8.4倍の4番人気、ブックレットが単勝オッズ10.9倍の5番人気と続いていた。

スタートが切られると、単勝オッズ52.2倍の最低人気馬メネーシングデニスが強引に先頭を奪い、主戦として固定される事になったエスピノーザ騎手騎乗の本馬は2番手を追走し、他馬も遅れずについてきた。最初の2ハロン通過は22秒87、半マイル通過は46秒10であり、ケンタッキーダービーより僅かに距離が短いことを考慮しても前走よりやや厳しいペースだった。それでも三角に入る手前で先頭に立った本馬は、そのまま直線に入ると必死に食らいつくプラウドシチズンを尻目に先頭をひた走り、追い込んでゴール前で2着に突っ込んだ単勝オッズ46.7倍の伏兵マジックワイズナーに3/4馬身差をつけて優勝した。

そして1978年のアファームド以来24年ぶり史上12頭目の米国三冠を懸けてベルモントS(GⅠ・D12F)に出走した。この23年間に6頭の馬がケンタッキーダービーとプリークネスSを制してベルモントSに出走したが全て敗れており、三冠馬誕生に飢えていた米国の競馬ファンがベルモントパーク競馬場に集結し、10万3222人という、1999年にカリズマティックが米国三冠に挑んだベルモントS当日における8万5818人を上回る同競馬場史上最高の大観衆となった。投じられた賭け金も、カリズマティックの時における7413万3188ドルを上回る同競走史上最高の9542万3752ドルに達した。あまりに観衆が多かったため、ニューヨーク市やナッソー郡の警察官が大勢動員された。

本馬の三冠を阻止するべく、プリークネスSをスキップしてきたケンタッキーダービー3着馬パーフェクトドリフト、マジックワイズナー、前走3着のプラウドシチズン、前走8着のメダグリアドーロ、ピーターパンSを勝ってきた日本産のフォーティナイナー産駒サンデーブレイク(ファレノプシスやキズナの兄弟)、ケンタッキーダービー9着から直行してきたエッセンスオブドバイ、ローンスターダービー勝ち馬ワイズマンズフェリー(新世紀米国マイル王ワイズダンの父)、アリダーSなど3連勝中のライクアヒーローなどが参戦してきた。本馬は単勝オッズ2.25倍の1番人気に支持され、パーフェクトドリフトが単勝オッズ6.6倍の2番人気、プラウドシチズンが単勝オッズ8倍の3番人気、マジックワイズナーが単勝オッズ8.3倍の4番人気、サンデーブレイクが単勝オッズ9.1倍の5番人気と続いた。

本馬はスタート直後に躓いて膝が地面に着きそうになり、その結果として出遅れ気味のスタートとなったが、それでも最初のコーナーには3番手で入った。向こう正面ではいったん4番手に下がったが、三角手前で内側から先頭に並びかけた。しかし四角手前で既に手応えが怪しくなり、直線では全く伸びずに19馬身差の8着に惨敗。メダグリアドーロとの一騎打ちを制して勝ったのは単勝オッズ71.25倍の10番人気馬サラヴァだった。バファート師は、本馬が他馬の後ろにいると苛立つ性格だったことを敗因として挙げている。

競走生活(3歳後半)

ベルモントSの後は8月4日のハスケル招待H(GⅠ・D9F)を目指して調整されていたが、馬主のサルマン殿下が7月22日に心臓発作で急死したために一時は回避が濃厚となった。しかし結局は同競走に出走した。ベルモントS4着後にオハイオダービーを勝ってきたマジックワイズナー、ベルモントS7着後にスワップスSで2着してきたライクアヒーロー程度しか目立つ対戦相手はいなかった。そのため124ポンドのトップハンデだった本馬が単勝オッズ1.3倍という圧倒的な1番人気に支持され、118ポンドのマジックワイズナーが単勝オッズ6.5倍の2番人気、117ポンドのライクアヒーローが単勝オッズ7.1倍の3番人気となった。レースでは好スタートからマジックワイズナー以下を引き連れて先頭をひた走った。最初の2ハロン通過は23秒83、半マイル通過は47秒23であり、距離の違いを考慮するとケンタッキーダービーと同程度のペースだった。本馬は四角で仕掛けて後続馬を引き離すと、そのまま直線でも先頭を走り続け、2着マジックワイズナーに3馬身半差をつけて勝利。亡きサルマン殿下に捧げる勝利となった。

3週間後には米国西海岸に移動して、パシフィッククラシックS(GⅠ・D10F)に出走。初の古馬相手のレースとなったが、サンタアニタH・カリフォルニアンSの勝ち馬ミルウォーキーブルー、ハリウッド金杯で2着してきたモーメンタム、ケンタッキーダービー6着後にアファームドH・スワップスSを連勝していたケイムホーム、サンバーナーディノH勝ち馬ボスクレドンド、マーヴィンルロイH・ハリウッド金杯を連勝してきたスカイジャック、ゴドルフィンマイル・サンディエゴHの勝ち馬グレイメモ、この時点では全く無名だった後のBCクラシック・ドバイワールドC勝ち馬プレザントリーパーフェクトなどを抑えて、単勝オッズ2.2倍の1番人気に支持された。しかしスカイジャックやボスクレドンドにハナを叩かれ、3番手を走る羽目となった。ようやく四角で前の2頭をかわして先頭に立とうとした頃には、既にケイムホームを初めとする後続馬勢が直後まで迫っていた。そして直線で次々と差され、ケイムホームの5馬身1/4差の6着に敗れた。しかもいったんは抜いたはずのボスクレドンド(5着)にも差し返されるという、冴えない結果だった。

この後の9月に、サルマン殿下の遺産管財人による殿下の所有馬の整理が行われた。本馬もケンタッキー州でセリにかけられ、日本の社台ファームが1700万ドル(当時の為替レートで約21億円)で落札した。そのため本馬は次走のBCクラシックを最後に現役引退して日本で種牡馬入りすることとなった。

本馬のデビューの地アーリントンパーク競馬場で行われたBCクラシック(米GⅠ・D10F)では、ベルモントS2着後にジムダンディS・トラヴァーズSを連勝して上昇気流に乗るメダグリアドーロに1番人気(単勝オッズ3.7倍)を奪われて、単勝オッズ5倍の2番人気となった。古馬勢ではサラトガBCH・ジョッキークラブ金杯を連勝してきたイヴニングアタイア、パシフィッククラシックSで3着だったミルウォーキーブルー程度しか目立つ馬はおらず、本馬、メダグリアドーロ、ケイムホーム、プリークネスS4着後にペンシルヴァニアダービーを勝ちジョッキークラブ金杯で3着していたハーランズホリデーや、オブライエン師が送り込んできたエクリプスS・愛ナショナルSの勝ち馬で英2000ギニー・英ダービー・愛チャンピオンS・クイーンエリザベスⅡ世SとGⅠ競走2着4回のホークウイングといった3歳馬同士の争いと目された。

スタートが切られると単勝オッズ29.3倍の10番人気だったドワイヤーS・サバーバンH勝ち馬イードバイが先手を奪い、本馬は2番手を追走、メダグリアドーロなどがそれに続いた。三角から四角にかけて本馬がイードバイに並びかけていったん先頭に立ったが、外側からメダグリアドーロ、内側から単勝オッズ44.5倍の最低人気馬ヴォルポニにかわされて3番手で直線に入った。そして直線で失速して、2着メダグリアドーロに6馬身半差をつけて勝ったヴォルポニから17馬身も離された8着に大敗してしまった。このレースを最後に予定どおり現役を引退した。

3歳時の成績は10戦5勝で、この年のエクリプス賞最優秀3歳牡馬に選出されている。

本馬は非常に気性が激しい馬で、プリークネスSの終了後には誘導馬のポニーに噛み付いている。また、プリークネスSの2日後には、大嫌いだった干し草の俵を見て機嫌を損ね、たまたま自分の前を歩いていたバファート師に襲い掛かって彼を地面に引き倒したという。近くに警備員はいたが、突然の事態に呆然として何も出来なかったという。何とか助かったバファート師は、馬がこのような行動を取った事は過去に見た事がないと語った。

血統

Our Emblem Mr. Prospector Raise a Native Native Dancer Polynesian
Geisha
Raise You Case Ace
Lady Glory
Gold Digger Nashua Nasrullah
Segula
Sequence Count Fleet
Miss Dogwood
Personal Ensign Private Account Damascus Sword Dancer
Kerala
Numbered Account Buckpasser
Intriguing
Grecian Banner Hoist the Flag Tom Rolfe
Wavy Navy
Dorine Aristophanes
Doria
Sweetest Lady Lord at War General Brigadier Gerard Queen's Hussar
La Paiva
Mercuriale Pan
Sirrima
Luna de Miel Con Brio Ribot
Petronella
Good Will Atlas
Gamlingay
Sweetest Roman The Pruner Herbager Vandale
Flagette
Punctilious Better Self
Puccoon
I Also Sky High Star Kingdom
Flight's Daughter
Roman Song Roman
Quiz Song

父アワーエンブレムは現役成績27戦5勝。カーターH(米GⅠ)・トムフールS(米GⅡ)・フォアゴーH(米GⅡ)で2着、メトロポリタンH(米GⅠ)・ヴォスバーグS(米GⅠ)・コモンウェルスBCS(米GⅡ)・ウエストチェスターH(米GⅢ)・ガルフストリームパークBCスプリントCSH(米GⅢ)で3着しているが、ステークス競走勝ちは無い。しかし血統的には、父が大種牡馬ミスタープロスペクター、母は13戦無敗の名牝パーソナルエンスンという超の字が3つも4つもつく良血馬。当初は米国で種牡馬入りしていたが、本馬以外に活躍馬を出せなかったため、2006年にブラジルに輸出され、南米の活躍馬を複数出している。

母スウィーテストレディは米国で走り16戦5勝の成績を残した。本馬の活躍を待たずに2001年に11歳で他界している。本馬以外に特筆できる産駒はいない。スウィーテストレディの祖母アイオルソーの半兄にプラウデストローマン【ホープフルS】、半弟に日本で種牡馬として成功したブレイヴェストローマン【サラナクS】がいる。→牝系:F20号族②

母父ロードアトウォーは現役成績17戦10勝。ホアキンSデアンチョレナ国際大賞(亜GⅠ)を勝つなど亜国のマイル路線で活躍した後に米国に移籍して、サンアントニオH(米GⅠ)・サンタアニタH(米GⅠ)・サイテーションH(米GⅢ)・ネイティヴダイヴァーH(米GⅢ)・グッドウッドH(米GⅢ)を制した。種牡馬としては、ソードダンサー招待H・ターフクラシック招待SとGⅠ競走2勝を挙げたジョンズコールなどの活躍馬を出し、英国競馬史上最高の名馬と言われるブリガディアジェラードの血脈を現在に伝える功労馬となっている。ロードアトウォーの父ジェネラルはブリガディアジェラード直子で、現役成績18戦3勝、トーマブリョン賞(仏GⅢ)の勝ち馬。競走馬引退後は亜国で種牡馬入りしている。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は来日して社台スタリオンステーションで種牡馬入りした。社台ファームが本馬を購入したのは、大種牡馬サンデーサイレンスが2002年8月に他界したため、同じケンタッキーダービー・プリークネスS優勝馬であり、しかも種牡馬入り当初のサンデーサイレンスと同様に日本における主流とはかけ離れた血統構成を有する(主流血統を有する繁殖牝馬との交配が容易となる)本馬に、ポストサンデーサイレンスの期待をかけたことが大きいと言われている。

こうしてノーザンテーストやサンデーサイレンスといった社台ファームの誇る大種牡馬の後継として鳴り物入りで種牡馬入りした本馬だったが、殆どの繁殖牝馬との交配を拒否するという種牡馬としては致命的とも言える性質を有することが判明した。その理由は牝馬の選り好みが激しいためとも、牝馬を怖がっているためとも言われるが、正確な理由は定かではない。

サラブレッドは人工授精が禁止されているため、交配作業は非常に難航した。種牡馬生活1年目の2003年には何とか7頭の牝馬と交配したものの、翌2004年に誕生した初年度産駒は僅か4頭だった。種牡馬シンジケートは初年度で解散し、保険会社から社台ファームに多額の保険金が支払われ、一時は種牡馬失格の烙印を押されかけた。

その後の社台ファームの努力(本馬が好むタイプだと思われていた大きな流星などがない無地の小顔で華奢な牝馬を集めるなど)により、2年目の2004年には53頭の牝馬と交配し、2年目産駒は34頭まで増えた。しかしそれは一時的なもので、本馬が交配相手の牝馬に噛み付こうとしたり、蹴ろうとしたり、叩こうとしたりして交配の拒否を繰り返した(職員にも対しても同じように振舞った)ために、3年目である2005年の交配数は9頭、3年目産駒は5頭に激減。4年目の交配数は1頭(産駒は0頭)、5年目の交配数は0頭となってしまった。

社台ファームは本馬の治療のために世界各国の専門家に意見を聞いた。2008年には種牡馬の性癖を研究している米国ペンシルヴァニア大学スー・マクダネル博士のチームにより、他の種牡馬を恐れている本馬のために、牝馬のみがいる本馬専用の牧場に移動させる方法が提案され、本馬はノーザンファーム内の小さな小屋に移動した。この方法は一定の成果を収め、この2008年には48頭の牝馬と交配して翌年に誕生した6年目産駒数は17頭となった。さらに2009年には69頭の牝馬と交配させる事に成功し、7年目産駒数は過去最高の44頭に達した。しかしそれも一過性のものだったようで、2010年には300頭の牝馬と交配を試みられたが、殆どが上手くいかず、実際に交配できたのは5頭で、誕生した8年目産駒数は僅か4頭だった。2011年の交配数は19頭で、9年目産駒は13頭だった。そして種牡馬生活10年目に当たる2012年に2頭と交配(産駒は0頭)したのを最後に、1頭も交配できていない。

この時点までにおける本馬の産駒数は合計121頭に過ぎず、これで産駒成績が不振であればとっくの昔に種牡馬引退となっていたところだが、本馬の産駒は質が高く勝ち上がり率が非常に良いため、大枚をはたいて導入した社台ファームもなかなか本馬に見切りをつける事は出来ないようである。全く交配が成功していない状態が続いている2015年現在も正式な種牡馬引退とはなっておらず、まだ試行錯誤を繰り返しているようである。本馬の厩務員はサンデーサイレンスと同じ佐古田直樹氏が担当しているが、彼は「サンデーサイレンスから多くの事を教えてもらいましたが、まだ学ぶべき事はたくさんあるようです」と語っている。

2006年にデビューした初年度産駒4頭全てが中央競馬で勝ち上がると、2年目産駒からは秋華賞馬ブラックエンブレムなど複数の重賞勝ち馬が出現した。その後もローブティサージュやシビルウォーなどの活躍馬を出している。全日本種牡馬ランキングでは2013年の39位が最高だが、同年のアーニングインデックスは2.20(最高は2008年の4.02)という高水準となっている。種牡馬としての潜在能力の高さは間違いないため、このまま終わってしまうのは確かに惜しい存在である。また、牝駒の多くは繁殖入りしており、母父としての活躍にも期待がかかる。

通常、日本国内における競馬の話題は海外ではあまり取り上げられないのだが、本馬の種牡馬生活に関しては海外でも注目度が高いようで、多くの記事を見つける事が出来る。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

2004

クランエンブレム

阪神ジャンプS(JGⅢ)

2005

ウォータクティクス

アンタレスS(GⅢ)

2005

エアパスカル

チューリップ賞(GⅢ)

2005

キングスエンブレム

シリウスS(GⅢ)

2005

シビルウォー

ブリーダーズゴールドC(GⅡ)2回・名古屋グランプリ(GⅡ)・白山大賞典(GⅢ)・マーキュリーC(GⅢ)

2005

ショウナンアルバ

共同通信杯(GⅢ)

2005

ブラックエンブレム

秋華賞(GⅠ)・フラワーC(GⅢ)

2005

マイエンブレム

六甲盃(園田)

2010

ローブティサージュ

阪神ジュベナイルフィリーズ(GⅠ)・キーンランドC(GⅢ)

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