ザビール

和名:ザビール

英名:Zabeel

1986年生

鹿毛

父:サートリストラム

母:レディージセル

母父:ヌレイエフ

GⅠ競走は1勝止まりだったが、父サートリストラムの後継種牡馬筆頭格として豪州・新国に長期間君臨し続けた大種牡馬

競走成績:2~4歳時に豪で走り通算成績19戦7勝2着1回

誕生からデビュー前まで

サートリストラムを欧州から新国に種牡馬として連れてきたパトリック・ホーガン卿により、サートリストラムが種牡馬生活を送っていたケンブリッジスタッドにおいて生産された。ホーガン卿は本馬を自身で所有して将来的にはケンブリッジスタッドで種牡馬入りさせるつもりだったが、ある日2人の人物が本馬を購入したいと申し出てきた。1人は豪州の世界的競走馬育成施設リンゼイパークの創設者コリン・ヘイズ元調教師。そしてもう1人はドバイのシェイク・ハムダン殿下だった。ホーガン卿は公平に入札により本馬の所有者を決定することとし、その結果、75万60ドルを提示したハムダン殿下が70万ドルを提示したヘイズ元調教師を上回り、本馬の所有権を獲得した。

しかしハムダン殿下は本馬の管理調教師としてヘイズ元調教師の息子デヴィッド・ヘイズ調教師(ジャパンCを勝ったベタールースンアップを手掛けたことで日本では知られる)を指名しただけでなく、競走馬引退後はケンブリッジスタッドで種牡馬入りさせる約束をするという配慮を見せてくれたため、ホーガン卿は安堵した。

競走生活(2・3歳時)

2歳時だった1988/89シーズンの4月に、ヴィクトリア競馬場で行われた芝1250mのハンデ競走でデビューした。しかし結果は12頭立ての12着最下位と惨敗。翌月にフレミントン競馬場で出た芝1400mのハンデ競走も6着に敗退。続いて出た同コースの一般競走で何とか勝ち上がったが、2歳時は3戦1勝の成績に終わった。

翌89/90シーズンはサンダウンパーク競馬場で行われたクオリティS(T1200m)から始動したが3着に敗退。次走の芝1400mのハンデ競走では勝利を挙げ、続いてムーニーバレーS(GⅡ・T1619m)に出走して勝利。そしてコーフィールドギニー(GⅠ・T1600m)に駒を進めたが、プロコルハルムの4着に敗れた。次走のコックスプレート(GⅠ・T2040m)では、アルマーラドの14着最下位と惨敗した。

年明け初戦のリステッド競走ザデボネア(T1200m)では勝利を挙げ、それから2週間後にオーストラリアンギニー(GⅠ・T1600m)に参戦。ここでは、本馬が最下位に沈んだ前年のコックスプレートで2着していたヴィクトリアダービー・スプリングチャンピオンS勝ち馬スタイリッシュセンチュリーとの対戦となったが、本馬がスタイリッシュセンチュリーを4着に破ってGⅠ競走初勝利を挙げた。

次走のコーフィールドオータムクラシック(GⅢ・T1800m)では、スタイリッシュセンチュリーの2着に敗退。しかしその2週間後のアリスタークラークS(GⅡ・T2040m)では、スタイリッシュセンチュリーを2着に破って勝利した。次走のローズヒルギニー(GⅠ・T2000m)でもスタイリッシュセンチュリーとの対戦となったが、ソーラーサークルという馬が勝利を収め、本馬は3着、スタイリッシュセンチュリーは10着に沈んだ。次走のAJCダービー(GⅠ・T2400m)でもスタイリッシュセンチュリーと顔を合わせたが、同じサートリストラム産駒のドクターグレイスがスタイリッシュセンチュリーを2着に破って優勝し、本馬は5着に敗れた。89/90シーズンの成績は11戦5勝だった。

競走生活(4歳時)

翌90/91シーズンは、マニカトS(GⅠ・T1200m)から始動した。ここでもスタイリッシュセンチュリーとの顔合わせとなったが、本馬は9着、スタイリッシュセンチュリーは12着と惨敗。勝ったのは最終の通算成績99戦15勝というタフネス馬ストリートラフィアンだった。次走のクレイグリーS(GⅡ・T1600m)では、これといった対戦相手がいなかった事もあり、勝利を収めた。続くアンダーウッドS(GⅠ・T2000m)ではスタイリッシュセンチュリーとの対戦となったが、メムジーSを勝って臨んできた後のマッキノンS勝ち馬ザファントムが勝利を収め、本馬は3着、スタイリッシュセンチュリーは10着に敗れた。

その後は5か月間ほど休養に充て、翌年3月のカンタベリーS(GⅠ・T1200m)で復帰した。しかし結果はショウカントリーの3着に敗退。次走のジョージライダーS(GⅠ・T1500m)では、ビューロクラシーの7着に敗退(スタイリッシュセンチュリーが3着)。このレースを最後に4歳時5戦1勝の成績で競走馬引退となった。

結局GⅠ競走勝ちはオーストラリアンギニーの1勝のみであり、超一流と呼ぶには足りない競走成績だった。

血統

Sir Tristram Sir Ivor Sir Gaylord Turn-to Royal Charger
Source Sucree
Somethingroyal Princequillo
Imperatrice
Attica Mr. Trouble Mahmoud
Motto
Athenia Pharamond
Salaminia
Isolt Round Table Princequillo Prince Rose
Cosquilla
Knight's Daughter Sir Cosmo
Feola
All My Eye My Babu Djebel
Perfume
All Moonshine Bobsleigh
Selene
Lady Giselle Nureyev Northern Dancer Nearctic Nearco
Lady Angela
Natalma Native Dancer
Almahmoud
Special Forli Aristophanes
Trevisa
Thong Nantallah
Rough Shod
Valderna Val de Loir Vieux Manoir Brantome
Vieille Maison
Vali Sunny Boy
Her Slipper
Derna Sunny Boy Jock
Fille de Soleil
Miss Barberie Norseman
Vaneuse

サートリストラムは当馬の項を参照。

母レディージセルは不出走馬。本馬の半弟にはバリシニコフ(父ケンマール)【オーストラリアンギニー(豪GⅠ)】がいる他、本馬の全妹チャーミングライフの子にキングフィッシャーミル【キングエドワードⅦ世S(英GⅡ)・カンバーランドロッジS(英GⅢ)】とウェルビーイング【セントサイモンS(英GⅢ)・ゴントービロン賞(仏GⅢ)】が、本馬の半妹シグニフィカントモーメント(父ブレッチングリー)の孫にハロウドクラウン【ゴールデンローズS(豪GⅠ)・ランドウィックギニー(豪GⅠ)】がいる。レディージセルの半姉フォーティーン(父ベリファ)の子にはリヴァーニンフ【ノネット賞(仏GⅢ)】がいる。レディージセルの叔母には凱旋門賞を勝った名牝デトロワや、チェヴァリーパークS勝ち馬ダータルがおり、デトロワの息子である凱旋門賞馬カーネギーや、ダータルの息子であるアスコット金杯2連覇のギルドランはレディージセルの従兄弟に当たる。→牝系:F16号族①

母父ヌレイエフは当馬の項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は、生まれ故郷のケンブリッジスタッドで種牡馬入りした。初年度産駒から豪年度代表馬に選ばれたシドニー3歳秋季三冠馬オクタゴナルやメルボルンC勝ち馬ジェザビールなどの活躍馬が出現。2年目産駒からも、GⅠ競走7勝を挙げて2年連続で豪年度代表馬に選ばれたマイトアンドパワーや、オクタゴナルの全弟であるGⅠ競走3勝馬ムーアワドなどを出し、名種牡馬としての地位を確固たるものとした。当時の豪州競馬界は愛国と豪州を股に掛けてシャトルサイヤーとして活躍していた世界的大種牡馬デインヒルの天下が始まっていたが、本馬は1997年に他界した父サートリストラムの代わりにデインヒルの対抗馬筆頭格となった。1997/98・98/99シーズンの豪首位種牡馬、1998/99~2001/02シーズンと4季連続の新首位種牡馬を獲得。産駒のステークスウイナーは115頭以上、グループ競走勝ち馬は106頭以上、GⅠ競走勝ち馬は44頭、GⅠ競走勝利数は84勝以上となっている。

どちらかと言えば短距離戦を得意とするデインヒル産駒と異なり、長めの距離で活躍する産駒が多い。基本的にオセアニア限定の活躍馬が大半だが、ヴェンジェンスオブレインやグレイズインのように、オセアニア外部で活躍する子もいる。本馬の功績を讃えて、エラズリー競馬場は同地で実施していたGⅠ競走オークススタッドクラシックを2003年からザビールクラシックと改名した。

晩年にはサラブレッドにとって致命的な病気である蹄葉炎を患ったが、奇跡的に回復して27歳時の2013年まで現役種牡馬として活躍した。この2013年に受精率低下を理由に種牡馬を引退した後は、ケンブリッジスタッドにある父サートリストラムの墓碑の近くにある放牧場で余生を過ごしていたが、2015年9月の夜間の睡眠中に29歳で他界し、遺体はサートリストラムの隣に埋葬された。

後継種牡馬としてはオクタゴナルが名馬ロンロを出すなど活躍して、現在も本馬の直系を繁栄させている。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

1992

Cronus

SAJCアデレードC(豪GⅠ)

1992

Jezabeel

メルボルンC(豪GⅠ)・オークランドC(新GⅠ)

1992

Octagonal

コックスプレート(豪GⅠ)・サイアーズプロデュースS(豪GⅠ)・カンタベリーギニー(豪GⅠ)・STCローズヒルギニー(豪GⅠ)・メルセデスクラシック(豪GⅠ)2回・AJCダービー(豪GⅠ)・アンダーウッドS(豪GⅠ)・チッピングノートンS(豪GⅠ)・オーストラリアンC(豪GⅠ)・トドマンスリッパートライアル(豪GⅡ)・スタンフォックスS(豪GⅢ)

1993

Bezeal Bay

VRCエミレーツS(豪GⅠ)

1993

Might and Power

メルボルンC(豪GⅠ)・コックスプレート(豪GⅠ)・コーフィールドC(豪GⅠ)・メルセデスクラシック(豪GⅠ)・AJCクイーンエリザベスS(豪GⅠ)・ドゥーンベンC(豪GⅠ)・VATCヤルンバS(豪GⅠ)・ADホリンデイルS(豪GⅡ)・チェルムスフォードS(豪GⅡ)・VRCクイーンエリザベスS(豪GⅡ)・フランクパッカープレート(豪GⅢ)

1993

Mouawad

オーストラリアンギニー(豪GⅠ)・MRC豪フューチュリティS(豪GⅠ)・STCジョージライダーS(豪GⅠ)

1994

Champagne

アンセットオーストラリアS(豪GⅠ)・VRCマッキノンS(豪GⅠ)

1994

Greene Street

アヴォンデール金杯(新GⅠ)・新国際S(新GⅠ)

1994

Our Unicorn

オークランドC(新GⅠ)

1994

Zacheline

サウスオーストラリアンオークス(豪GⅠ)・QTCクイーンズランドオークス(豪GⅠ)

1994

Zonda

新ダービー(新GⅠ)・オークススタッドクラシック(新GⅠ)

1995

Able Master

オークランドC(新GⅠ)

1995

Dignity Dancer

AJCスプリングチャンピオンS(豪GⅠ)・オーストラリアンギニー(豪GⅠ)

1995

Inaflury

MRC1000ギニー(豪GⅠ)

1995

Sky Heights

STCローズヒルギニー(豪GⅠ)・AJCダービー(豪GⅠ)・コーフィールドC(豪GⅠ)・VATCヤルンバS(豪GⅠ)・クレイグリーS(豪GⅡ)・AJCセントレジャー(豪GⅡ)・サンダウンクラシック(豪GⅡ)・レイバーデイC(豪GⅢ)

1996

Dress Circle

AJCザメトロポリタン(豪GⅠ)

1996

Grand Echezeaux

オーストラレイシアンオークス(豪GⅠ)

1996

Hades

新ダービー(新GⅠ)

1996

Hill of Grace

アンセットオーストラリアS(豪GⅠ)

1998

Don Eduardo

AJCダービー(豪GⅠ)

1998

Respect

パースC(豪GⅡ)

1999

Bazelle

オークランドC(新GⅠ)・ザビールクラシック(新GⅠ)

1999

Gallic

AJCシドニーC(豪GⅠ)・SAJCアデレードC(豪GⅡ)・キャセイパシフィック航空C(豪GⅡ)

1999

Legible

サンダウンクラシック(豪GⅡ)

1999

Philosophe

チェアマンズH(豪GⅡ)

1999

Rizon

ウイニングエッジプレゼンテーションズS(豪GⅡ)

1999

Shower of Roses

アローフィールドスタッドS(豪GⅠ)

1999

St. Reims

新ダービー(新GⅠ)・ザビールクラシック(新GⅠ)

1999

Zagalia

クイーンズランドオークス(豪GⅠ)

2000

Coalesce

ADホリンデイルS(豪GⅡ)・プレミアズC(豪GⅢ)・ビルリッチーH(豪GⅢ)

2000

Fatal Attraction

ウエストオーストラリアンオークス(豪GⅡ)

2000

Greys Inn

ダーバンジュライ(南GⅠ)・ドバイシティオブゴールド(首GⅢ)

2000

Lad of the Manor

マッキノンS(豪GⅠ)・豪クリスタルマイル(豪GⅡ)・JJリストンS(豪GⅡ)・ジョンFフィーハンS(豪GⅡ)・ダトタンチンナムS(豪GⅡ)

2000

Reset

オーストラリアンギニー(豪GⅠ)・豪フューチュリティS(豪GⅠ)

2000

Unearthly

フライトS(豪GⅠ)・チェルムスフォードS(豪GⅡ)

2000

Vengeance of Rain

クイーンエリザベスⅡ世C(香GⅠ)・香港C(香GⅠ)・ドバイシーマクラシック(首GⅠ)・香港ダービー・香港チャンピオンズ&チャターC・香港金杯

2000

Vouvray

クイーンズランドオークス(豪GⅠ)

2000

Winning Belle

クイーンズランドギニー(豪GⅡ)・カンタベリーC(豪GⅢ)

2001

Dizelle

AJCオークス(豪GⅠ)・ウッドストックマイル(豪GⅡ)・ランドウィックシティS(豪GⅢ)

2001

Railings

AJCザメトロポリタン(豪GⅠ)・コーフィールドC(豪GⅠ)

2001

Renewable

コーフィールドオータムクラシック(豪GⅡ)

2001

Savabeel

コックスプレート(豪GⅠ)・AJCスプリングチャンピオンS(豪GⅠ)

2002

Maldivian

コックスプレート(豪GⅠ)・ヤルンバS(豪GⅠ)・CFオーアS(豪GⅠ)

2002

Packing Winner

香港チャンピオンズ&チャターC

2002

Zavite

オークランドC(新GⅠ)・ランヴェットS(豪GⅠ)・SAJCアデレードC(豪GⅡ)・VRCクイーンエリザベスS(豪GⅢ)

2003

Efficient

メルボルンC(豪GⅠ)・ヴィクトリアダービー(豪GⅠ)・ターンブルS(豪GⅠ)・AAMIヴァーズ(豪GⅡ)

2003

Fiumicino

AJCダービー(豪GⅠ)・ザBMW(豪GⅠ)・ヒルS(豪GⅡ)

2003

Hume

タッツC(豪GⅢ)・チェアマンズH(豪GⅢ)

2004

Rainbow Styling

ナチュラリズムS(豪GⅢ)

2004

Six O'Clock News

ウェリントンC(新GⅡ)・トレンサムS(新GⅢ)

2005

Ironstein

タタソールズC(豪GⅢ)・VRCクイーンエリザベスS(豪GⅢ)

2005

Jessicabeel

AJCシドニーC(豪GⅠ)・チェアマンズH(豪GⅡ)

2005

Precedence

キャセイパシフィック航空C(豪GⅡ)・ドレイクインターナショナルC(豪GⅡ)・日本中央競馬会C(豪GⅢ)・プレミアズC(豪GⅢ)・VRCクイーンエリザベスS(豪GⅢ)

2005

So Pristine

クイーンオブザサウスS(豪GⅡ)

2005

Zapurple

SAフィリーズクラシック(豪GⅢ)

2006

Maluckyday

レクサスS(豪GⅢ)

2006

Zabrasive

ローズヒルギニー(豪GⅠ)

2006

Zarzuela

ARCチャンピオンシップS(新GⅡ)・ワイカトギニー(新GⅢ)

2007

Lights of Heaven

SAJCシュウェップスオークス(豪GⅠ)・ムーニーバレーフィリーズクラシック(豪GⅡ)・イーグルファームC(豪GⅡ)・ブリスベンC(豪GⅡ)・ADホリンデイルS(豪GⅡ)・ネヴィルセルウッドS(豪GⅢ)

2007

Zabisco

豪エクリプスS(豪GⅢ)

2008

Tavarnelle

フランシストレサディS(豪GⅢ)

2008

Tremec

チェアマンズクオリティH(豪GⅡ)2回

2008

Zabeelionaire

サウスオーストラリアンダービー(豪GⅠ)

2008

Zephyron

プレミアズC(豪GⅢ)

2008

Zonza

スノウタイムメンテナンスクラシック(豪GⅢ)

2008

Zurella

サートリストラムS(新GⅡ)・レッツイロープS(豪GⅡ)・ユーロジーS(新GⅢ)

2009

Gondokoro

クイーンズランドオークス(豪GⅠ)

2009

Leebaz

ADホリンデイルS(豪GⅡ)・ホークスベリー金杯(豪GⅢ)

2009

Zydeco

ウェイクフルS(豪GⅡ)

2010

Hazzabeel

RJピータースS(豪GⅢ)

2010

Rezoned

SAフィリーズクラシック(豪GⅢ)

2011

Adrift

ライトフィンガーズS(豪GⅡ)

2011

Preferment

ヴィクトリアダービー(豪GⅠ)・ターンブルS(豪GⅠ)・ヒルS(豪GⅡ)

TOP