オクタゴナル

和名:オクタゴナル

英名:Octagonal

1992年生

黒鹿

父:ザビール

母:エイトカラット

母父:ピースイズオブエイト

22年ぶり史上4頭目のシドニー3歳秋季三冠馬となったオセアニアの歴史的名馬「ビッグ・オー」は種牡馬としても成功する

競走成績:2~4歳時に豪で走り通算成績28戦14勝2着7回3着1回

誕生からデビュー前まで

“The Big O(ビッグ・オー)”や“Occy(オッキー)”という愛称で親しまれたオセアニアの歴史的名馬。新国においてパトリック・ホーガン氏とジャスティン・ホーガン氏の両名により生産され、豪州最大の養鶏業者インガム・エンタープライズ社の社長で馬産家・馬主としても著名だったジョン・“ジャック”・ホレース・インガム氏と弟のボブ・インガム氏の共同所有馬となり、豪州ジョン・ホークス調教師に預けられた。

競走生活(2・3歳時)

2歳12月にローズヒル競馬場で行われたフライヤーH(T1100m)でデビューして、2着フラクチャーに2馬身3/4差で快勝。翌年3月のトドマンスリッパートライアルS(GⅡ・T1200m)では、後にヴィクヘルスC・コーフィールドギニーとGⅠ競走2勝を挙げるアワメイズキーを頭差の2着に破った。次走のゴールデンスリッパーS(GⅠ・T1200m)では、後にオーストラリアンギニー・オールエイジドSを勝つフライングスパーの頭差2着だった。その9日後のサイアーズプロデュースS(GⅠ・T1400m)では、2着となった牝馬イソルダに鼻差で勝利した。次走の豪シャンペンS(GⅠ・T1600m)では、イソルダの鼻差2着に惜敗した。しかし94/95シーズンは5戦3勝2着2回の成績を残し、豪最優秀2歳馬に選出された。

翌95/96シーズンは、9月の復帰戦ローマンコンスルS(GⅢ・T1200m)でアワメイズキーの1馬身3/4差2着。次走のリステッド競走ヘリテージS(T1300m)では、2着ミモデストに2馬身半差で完勝し、イソルダも3着に破った。次走のスタンフォックスS(GⅢ・T1400m)では、GⅠ競走キャッスルメインQTCクラシックを勝ってきたラヴァルダが挑んできたが、本馬が2着アンコールズに3/4馬身差で勝利した。しかしコーフィールドギニー(GⅠ・T1600m)では、アワメイズキー、ラヴァルダの2頭に後れを取り、アワメイズキーの3馬身半差3着に終わった。

次走のコックスプレート(GⅠ・T2040m)では、コーフィールドギニー・ヴィクトリアダービー・オーストラリアンギニー・AJCダービー・キャッスルメインS・ライトニングSとGⅠ競走で6勝を挙げていたマホガニーなどの強豪古馬勢が対戦相手となった。馬群の中団後方からレースを進めた本馬は、残り800mから外側を通って先行馬に接近していき、直線入り口ではマホガニーに次ぐ2番手だった。そして内側で粘るマホガニーをゴール前で頭差かわして優勝。勝ちタイム2分06秒38はコースレコードで、コックスプレートを3歳馬が勝ったのは1984年のレッドアンカー以来11年ぶりだった。

その僅か1週間後に出走したヴィクトリアダービー(GⅠ・T2500m)では、スプリングチャンピオンSの勝ち馬ナッシンライカデーンの3/4馬身差2着だった。

その後は短期休養を経て、翌年2月に復帰。まずはホバートヴィルS(GⅡ・T1400m)に出走して、ナッシンライカデーン、後にクライスラーS・ドンカスターマイル・香港国際ボウルを勝つカタランオープニングと対戦。ここではナッシンライカデーンの頭差2着だった。

その後はカンタベリーギニー・ローズヒルギニー・AJCダービーのシドニー3歳秋季三冠競走に挑戦。まずはカンタベリーギニー(GⅠ・T1900m)に出走。不良馬場をものともせずに、後にAJCエプソムH・ヤルンバSとGⅠ競走2勝を挙げるフィランテを2着に破って勝利した。

2週間後のローズヒルギニー(GⅠ・T2000m)では、ナッシンライカデーンに加えて、前走オーストラリアンCでGⅠ競走初勝利を挙げてきた同世代馬セイントリーとの対戦となったが、セイントリーを頭差2着に退けて勝利した。

AJCダービーはローズヒルギニーの2週間後に行われるが、本馬はその間にメルセデスクラシック(GⅠ・T2400m)に出走。サウスオーストラリアンダービーの勝ち馬カウントチャイヴァスやセイントリーが対戦相手となったが、カウントチャイヴァスを半馬身差の2着、セイントリーをさらに1馬身3/4差3着に退けて勝利した。

そしてAJCダービー(GⅠ・T2400m)に向かった。セイントリーやフィランテなどが本馬のシドニー3歳秋季三冠達成を阻むべく参戦してきた。単勝オッズ1.9倍の1番人気に支持された本馬はスタートから馬群の中団後方を追走し、残り800mを過ぎた辺りからスパートすると、直線ではセイントリーと一緒に外側から伸びてきた。そして2着セイントリーに頭差で勝利を収め、1974年のイマージュル以来22年ぶり史上4頭目のシドニー3歳秋季三冠制覇を達成した。

これで95/96シーズンを締めくくった本馬は、シドニー3歳秋季三冠制覇に加えて豪州で最も重要な馬齢定量戦であるコックスプレート・メルセデスクラシック勝ちを含むシーズン11戦7勝の成績で、豪年度代表馬・豪最優秀3歳馬に選ばれた。

競走生活(4歳時)

翌96/97シーズンは8月のマニカトS(GⅠ・T1200m)から始動したが、ヴィクヘルスCの勝ち馬ポエティックキングや前年のマニカトS勝ち馬ユーリメンバーなどの快速馬勢に屈して、ポエティックキングの4馬身1/4差6着に完敗。次走のメムジーS(GⅡ・T1400m)でも、サーブームの3馬身1/4差7着に敗退(GⅠ競走ニッサンSを2連覇していたシーズケイが2着で、ポエティックキングが3着だった)。ジョンFフィーハンS(GⅡ・T1600m)でも、トイルの6馬身半差5着に終わった。

しかしこの3レースは全て短距離戦。距離が伸びたアンダーウッドS(GⅠ・T1800m)では、シーズケイ、サウスオーストラリアンダービー・シドニーCの勝ち馬カウントチャイヴァスとの接戦を制して、2着シーズケイに首差で勝利を収めた。

ところがその後は距離に問題がないはずにも関わらず不調が続く。コーフィールドS(GⅠ・T2000m)は、チッピングノートンS・ドゥーベンC・ジョージメインSを勝っていたジャグラーの5馬身1/4差4着に終わった。連覇を狙ったコックスプレート(GⅠ・T2040m)もセイントリーの3馬身半差5着と完敗し、初めてセイントリーに先着を許す結果となった。マッキノンS(GⅠ・T2000m)では、ストラドブロークH・ニューマーケットHの勝ち馬オールアワモブ、エプソムHを勝ってきたフィランテ、クラウンオークス・アンセットオーストラリアSの勝ち馬セイリアスなどに屈して、オールアワモブの8馬身差9着と生涯最悪の結果に終わり、再調整のために短期休養に入った。

翌年2月に復帰した本馬はすっかり元の輝きを取り戻していた。初戦のアポロS(GⅡ・T1400m)では前年の同競走勝ち馬ジャグラーの3/4馬身差2着だったが、AJCオークス馬サークルズオブゴールドなどに先着した。単勝オッズ7.5倍の2番人気で迎えたチッピングノートンS(GⅠ・T1600m)では、単勝オッズ1.9倍の1番人気に推されていたジャグラーを1馬身1/4差の2着に下して勝利。

次走のオーストラリアンC(GⅠ・T2000m)でも、ジャグラーが単勝オッズ3倍の1番人気で、本馬は単勝オッズ4.25倍の2番人気だった。他にも、ナッシンライカデーン、メルボルンC・コーフィールドC・クイーンエリザベスSの勝ち馬ドリーマス、新2000ギニー・ベイヤークラシック・カンタベリーギニー・ライオンブラウンスプリント・オーストラリアンC・ランヴェットS・クイーンエリザベスSとGⅠ競走7勝の古豪ヴェアンダークロス、新国のGⅠ競走ハラスSを9日前に勝ってきたマグネットベイ、後のオーストラリアンC勝ち馬イスティダードなどが出走していたが、本馬が2着ゴールドシティに鼻差で勝利した。

続くメルセデスクラシック(GⅠ・T2400m)では、ナッシンライカデーン、イスティダード、マグネットベイ、ランヴェットSを勝ってきたアルカディ、前年のクイーンズランドオークス・コーフィールドCの勝ち馬アークティックセント、後にAJCダービー・マッキノンSを勝つエボニーグローブ、サークルズオブゴールドなどを抑えて、単勝オッズ1.9倍の1番人気に支持されると、2着アルカディに鼻差で勝利を収め、連覇を達成した。

次走のクイーンエリザベスS(GⅠ・T2000m)では、オールエイジドSを勝ってきたオールアワモブ、シャンペンS・カンタベリーギニーの勝ち馬で、最終的にGⅠ競走8勝を挙げるインターゲイズとの3強対決となった。本馬は単勝オッズ2.375倍の1番人気に支持されたが、単勝オッズ4.5倍の2番人気馬インターゲイズの1馬身1/4差2着に敗退(3着オールアワモブは本馬から2馬身半後方)。これが現役最後のレースとなり、96/97シーズンの成績は12戦4勝となった。

引退後は地元シドニーだけでなく豪州各地で引退式が行われた。獲得賞金総額589万2231豪ドルは当時オセアニア史上最高額だった。

血統

Zabeel Sir Tristram Sir Ivor Sir Gaylord Turn-to
Somethingroyal
Attica Mr. Trouble
Athenia
Isolt Round Table Princequillo
Knight's Daughter
All My Eye My Babu
All Moonshine
Lady Giselle Nureyev Northern Dancer Nearctic
Natalma
Special Forli
Thong
Valderna Val de Loir Vieux Manoir
Vali
Derna Sunny Boy
Miss Barberie
Eight Carat Pieces of Eight Relic War Relic Man o'War
Friar's Carse
Bridal Colors Black Toney
Vaila
Baby Doll Dante Nearco
Rosy Legend
Bebe Grande Niccolo Dell'Arca
Grande Corniche
Klairessa Klairon Clarion Djebel
Columba
Kalmia Kantar
Sweet Lavender
Courtessa Supreme Court Precipitation
Forecourt
Tessa Gillian Nearco
Sun Princess

ザビールは当馬の項を参照。

母エイトカラットは英国産馬で、現役時代こそ5戦未勝利と振るわなかったが、繁殖入りしてからは大成功。初子の牝駒コートヒールハウス(父マイスワニー)は不出走馬だったが、その子にはデーンウィン【スプリングチャンピオンS(豪GⅠ)・ローズヒルギニー(豪GⅠ)・ドゥーンベンC(豪GⅠ)・コーフィールドS(豪GⅠ)・マッキノンS(豪GⅠ)】が、孫にはエメラルドドリーム【新国際S(新GⅠ)】が、玄孫にはシューティングトゥウィン【コーフィールドギニー(豪GⅠ)】が出ている。2番子の牝駒ダイアモンドラヴァー(父スティックスアンドストーンズ)は、レイルウェイH(新GⅠ)など8勝を挙げる活躍を示しただけでなく、やはり繁殖牝馬としても成功。その子にはトリスタラヴ【AJCサイアーズプロデュースS(豪GⅠ)・オーストラレイシアンオークス(豪GⅠ)】、ドンエデュアルド【AJCダービー(豪GⅠ)】が、孫には名短距離馬ロケットマンの父であるヴォイカウント【AJCサイアーズプロデュースS(豪GⅠ)・豪シャンペンS(豪GⅠ)・ジョージメインS(豪GⅠ)】、バイキングルーラー【AJCスプリングチャンピオンS(豪GⅠ)】が、曾孫にはデビアス【ローズヒルギニー(豪GⅠ)】がいる。3番子の牡駒カープスタッド(父サートリストラム)は、VRCサイアーズプロデュースS(豪GⅠ)・アスコットヴェイルS(豪GⅡ)など7勝を挙げ、種牡馬としても多くの活躍馬を出して成功した。4番子の牝駒マルキース(父ゴールドアンドアイヴォリー)もキャプテンクックS(新GⅠ)など9勝をマークし、母としてシャワーオブロージズ【アローフィールドスタッドS(豪GⅠ)】を産んだ。5番子が本馬で、6番子で本馬の1歳下の全弟ムーアワッドは、豪フューチュリティS(豪GⅠ)・ジョージライダーS(豪GⅠ)・オーストラリアンギニー(豪GⅠ)など7勝を挙げた。本馬とムーアワッドの活躍により、エイトカラットは1995/96シーズンから3シーズン連続で新最優秀繁殖牝馬に選出されている。ムーアワッドの後はしばらく不受胎が続き、1997年に産んだ本馬の全弟コロンビア(1歳時のセリにおいて160万新ドルという同国史上最高額で落札されたが、競走馬としては不出走)が最後の産駒となった。エイトカラットは2000年に心臓麻痺のため25歳で他界、遺体は大種牡馬サートリストラムの側に埋葬されている。

エイトカラットの母クレアッサも優れた繁殖牝馬で、その産駒にはエイトカラットの半妹である稀代の快速牝馬ハビブティ(父ハビタット)【ジュライC(英GⅠ)・アベイドロンシャン賞(仏GⅠ)・キングズスタンドS(英GⅠ)・ロウザーS(英GⅡ)・モイグレアスタッドS(愛GⅡ)・スプリントCS(英GⅡ)・スプリントC(英GⅠ)】、半弟クネシット(父ジェネラルアセンブリー)【バリーオーガンS(愛GⅢ)】がいる。エイトカラットの半妹グレートクレア(父グレートネフュー)の孫には、テレスト【チッピングノートンS(豪GⅠ)・ジョージライダーS(豪GⅠ)】、フラタニティ【AJCスプリングチャンピオンS(豪GⅠ)】、ボナノヴァ【エミレーツS(豪GⅠ)】の3兄妹がいる。クレアッサの曾祖母サンプリンセスは大種牡馬ナスルーラの半姉であり、つまり母系は名門中の名門ムムタズマハル系である。→牝系:F9号族③

母父ピースイズオブエイトはレリック直子で、現役成績は12戦3勝だが、うち2勝はエクリプスS・英チャンピオンSである。種牡馬としては不成功に終わった。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は豪州ニューサウスウェールズ州クータマンドラ牧場で種牡馬入りした。初年度の種付け料は5万ドルに設定されたが、さすがに高すぎたようでその後は少し下げられているようである。1998年には仏国ケネー牧場でもシャトル供用された。本国ではロンロという超大物を輩出し、仏国でもGⅠ競走2勝のレイヴロックを出すなど、豪州血統の底力を発揮している。産駒の勝ち上がり率は60%ほどとかなり高く、種牡馬としては成功していると言えるだろう。2012年には豪州競馬の殿堂入りを果たしている。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

1998

Heptonstall

ウインターS(豪GⅢ)

1998

Hosannah

STCクイーンオブザターフS(豪GⅡ)

1998

Lonhro

コーフィールドギニー(豪GⅠ)・ヤルンバS(豪GⅠ)2回・マッキノンS(豪GⅠ)・チッピングノートンS(豪GⅠ)・ジョージライダーS(豪GⅠ)2回・AJCクイーンエリザベスS(豪GⅠ)・ジョージメインS(豪GⅠ)・CFオーアS(豪GⅠ)・オーストラリアンC(豪GⅠ)・ウォーウィックS(豪GⅡ)2回・スタンフォックスS(豪GⅡ)・ロイヤルソブリンS(豪GⅡ)・ホバートヴィルS(豪GⅡ)・チェルムスフォードS(豪GⅡ)2回・エクスプレスウェイS(豪GⅡ)・アポロS(豪GⅡ)・セントジョージS(豪GⅡ)・ブルーダイヤモンドプレリュード(豪GⅢ)・ミンダイナスティクオリティH(豪GⅢ)・ミサイルS(豪GⅢ)

2000

Niello

AJCスプリングチャンピオンS(豪GⅠ)・カンタベリーギニー(豪GⅠ)・ローズヒルギニー(豪GⅠ)

2002

Laverock

イスパーン賞(仏GⅠ)・伊ジョッキークラブ大賞(伊GⅠ)・フォンテーヌブロー賞(仏GⅢ)・アンドレバボワン賞(仏GⅢ)

2002

Spinney

アリスタークラークS(豪GⅡ)・コーフィールドオータムクラシック(豪GⅡ)

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