インディアンブレッシング
和名:インディアンブレッシング |
英名:Indian Blessing |
2005年生 |
牝 |
黒鹿 |
父:インディアンチャーリー |
母:シェイムフル |
母父:フライングシェヴロン |
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BCジュヴェナイルフィリーズの勝ち馬としては珍しく3歳以降に短距離路線に転向して一流の活躍を示し2年連続でエクリプス賞のタイトルを受賞 |
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競走成績:2~4歳時に米首で走り通算成績15戦10勝2着4回 |
米国2歳女王決定戦であるBCジュヴェナイルフィリーズだが、近年のこのレースの勝ち馬はなかなか3歳以降に活躍できない。1988年の勝ち馬オープンマインド(3歳時にGⅠ競走を6勝)と1989年の勝ち馬ゴーフォーワンド(3歳時にGⅠ競走を6勝)はいずれも時代がやや古いから別とすると、1990年以降のBCジュヴェナイルフィリーズ勝ち馬のうち、3歳以降に最も多くのGⅠ競走を勝った馬は2012年の勝ち馬ビホルダーで8勝を挙げている(2016年も現役競走馬なのでまだ増える可能性がある)。そしてそれに続くのが3勝を挙げた1995年の勝ち馬マイフラッグ、そして2007年の勝ち馬である本馬の2頭である。
ここに挙げた馬達の中でも本馬が異質だと筆者が感じるのは、距離8.5ハロンのBCジュヴェナイルフィリーズ勝ち馬でありながら、3歳後半から短距離路線に転向して牡馬相手でも健闘した点である。米国短距離路線で牡馬相手に健闘した馬としてはエクストラヒートが思い浮かぶが、エクストラヒートはBCジュヴェナイルフィリーズで10着と惨敗している。そうすると、本馬は最近の米国競馬界でもなかなか見られないタイプの一流牝馬であると言えるだろう。日本でも牝馬限定競走になった以降における阪神三歳牝馬S(現阪神ジュヴェナイルフィリーズ)歴代勝ち馬の中で、後に短距離女王と呼べる成績を挙げたのはニシノフラワーしかいないわけであり、日本でも珍しいタイプのようである(米国と異なり日本には牝馬限定短距離GⅠ競走が無いという違いはあるが)。
誕生からデビュー前まで
米国ケンタッキー州において、ハル・J・アーンハートⅢ世氏と妻パティ夫人により生産・所有された。アーンハートⅢ世氏は日本車も含む自動車の販売業者だったが、馬好きの祖父の影響で馬産も行っており、本馬の父インディアンチャーリーや2000年のシガーマイルH勝ち馬エルコレドールなどもアーンハート夫妻の生産・所有馬だった。
本馬は、インディアンチャーリーやエルコレドールも手掛けたボブ・バファート調教師に預けられた。数え切れないほどの名馬を手掛けてきたバファート師だったが、本馬に対して最初の調教を施した際にその動きの良さに驚き、その場からアーンハート夫妻に電話を入れて「あなたは大変な馬を持ちました」と興奮しながら伝えたという。
競走生活(2歳時)
2歳7月にサラトガ競馬場で行われたダート5.5ハロンの未勝利戦でデビューした。バファート師の本拠地が米国西海岸のカリフォルニア州だったのに、米国東海岸のニューヨーク州でデビューしたのは、ちょうどこの時期にカリフォルニア州の競馬場全てがダートコースをオールウェザーコースに変更した事が影響していたようで、未知の部分が多いオールウェザーでデビューさせる事を避けたとも、本馬にはダートのほうが向いていると判断したとも言われる。
あのバファート師がとても惚れ込んでいる馬という事が既に知れ渡っていた本馬は単勝オッズ1.85倍の1番人気に支持された。ラファエル・ベハラーノ騎手が騎乗する本馬は、スタートから単勝オッズ4.15倍の2番人気馬コンスタンスと先頭争いを展開。そして四角に入るとコンスタンスをあっさりと突き放して直線を独走し、2着スロビンハートに5馬身1/4差をつけて圧勝した。
次走は10月にベルモントパーク競馬場で行われたフリゼットS(米GⅠ・D8F)となった。主戦となるギャレット・ゴメス騎手とコンビを組んだ本馬が、メイトロンSで2着してきたアーモンクなどを抑えて単勝オッズ1.65倍の1番人気に支持された。ここではディルオアノーディルという馬を先に行かせて2番手を進み、三角でディルオアノーディルが失速すると自動的に先頭に立った。既に四角では後続に7~8馬身差をつけており、この段階で勝負は決していた。直線は馬なりのまま走り、後方から追い込んで2着に入ったバックシートリズムに4馬身半差をつけて圧勝した。
その後はニュージャージー州モンマスパーク競馬場に向かい、前走から3週間後のBCジュヴェナイルフィリーズ(米GⅠ・D8.5F)に登場した。対戦相手は、オークリーフS2着・デルマーデビュータントS3着のイザラ、アンジーシーS・バーバラシンポックS・ゴットステインフューチュリティなど4戦無敗のスマーティデブ、メイトロンSを勝ってきたプラウドスペル、アルキビアデスS3着馬グレースアナトミー、スピナウェイS勝ち馬アイリッシュスモーク、アディロンダックS・スピナウェイS・アルキビアデスSと3戦連続2着中のエートゥザクロフト、ソレントS勝ち馬ターシャズミラクル、ナタルマS勝ち馬クリアリーフォクシー、バックシートリズムなどだった。本馬が単勝オッズ2.7倍の1番人気に支持され、イザラが単勝オッズ6.6倍の2番人気、スマーティデブが単勝オッズ9.4倍の3番人気となった。
レース当日まで降り続いた雨の影響によりダートコースは沼にしか見えないような極悪不良馬場となっており、それを各馬が克服できるか否かが鍵となっていた。スタートが切られると本馬はすぐにゲートを飛び出していき、エートゥザクロフトを抑えて先頭に立った。しばらくは本馬とエートゥザクロフトが先頭を争っていたが、三角手前でエートゥザクロフトが失速すると本馬の独り旅となり、後続に6~7馬身ほどの差をつけて直線に入ってきた。直線では道中3番手だったプラウドスペルと、最後方からまくって上がってきたバックシートリズムが横並びになって本馬を追撃してきたが、それを寄せ付けなかった本馬が2着プラウドスペルに3馬身半差をつけて完勝。
2歳時の成績は3戦全勝で、この年のエクリプス賞最優秀2歳牝馬に選出された。
競走生活(3歳時)
3歳時は1月にサンタアニタパーク競馬場で行われたサンタイネスS(米GⅡ・AW7F)から始動した。BCジュヴェナイルフィリーズで10着だったイザラ、ジェネラスポーションS・アノアキアS勝ち馬ゴールデンドックエーなど4頭が対戦相手となった。本馬が単勝オッズ1.1倍の1番人気に支持され、本馬より9ポンド斤量が軽いイザラが単勝オッズ7.7倍の2番人気となった。スタートが切られると本馬が即座に先頭に立ち、そのまま馬群を牽引した。最初の2ハロンが22秒27、次の2ハロンは21秒49という驚異的なハイペースで飛ばしまくった本馬に付いてきた馬は直線に入ると揃って失速。しかし道中で1頭だけ離れた最後方を走っていたゴールデンドックエーだけには余力があり、直線で追い上げてきた。さすがの本馬にとってもこのペースはきつかったようで、ゴール前では完全に脚が上がってしまい、みるみるうちにゴールデンドックエーとの差が縮まってきた。しかし何とか頭差凌いで勝利を収め、1分19秒89のコースレコードを計時した。
通常なら次走は翌月のラスヴァージネスSになるのだが、バファート師は本馬を同日にルイジアナ州フェアグラウンズ競馬場で行われるシルヴァービュレットデイS(米GⅢ・D8.5F)に向かわせた。ラスヴァージネスSとシルヴァービュレットデイSはダートとオールウェザーの差こそあれども同じ距離のレースであり、バファート師は、オールウェザーはやはり本馬に合わないと判断したようである(ちなみに本馬が不在のラスヴァージネスSはゴールデンドックエーが勝っている)。本馬が単勝オッズ1.7倍の1番人気、BCジュヴェナイルフィリーズ2着から直行してきたプラウドスペルが単勝オッズ3.3倍の2番人気、ティファニーラスSを勝ってきたジョリーザキャットが単勝オッズ5.9倍の3番人気となった。スタート時に本馬はよれてしまい、単勝オッズ94.3倍の最低人気馬ミスミサイルに先手を取られて2番手を進む苦しい展開となった。それでも向こう正面で先頭に立つと、そのまま後続の差を少しずつ広げていった。そして後続に4~5馬身ほどの差をつけて直線に入ると、最後は脚が上がりながらも、2着プラウドスペルの追撃を1馬身抑えて勝利した。
そのままフェアグラウンズ競馬場に留まり、翌月のフェアグラウンズオークス(米GⅡ・D8.5F)に向かった。対戦相手はプラウドスペルなど3頭だけであり、事実上は本馬とプラウドスペルの一騎打ちで、本馬が単勝オッズ1.3倍の1番人気、プラウドスペルが単勝オッズ2.9倍の2番人気となった。スタートが切られると、本馬が先頭に立ち、プラウドスペルが1馬身ほど後方の2番手を追いかけてくる展開となり、他の出走馬2頭はレース序盤で既に蚊帳の外だった。逃げる本馬と追うプラウドスペルという構図は直線半ばまで続いたが、ここでスタミナが切れた本馬をプラウドスペルが一気にかわして勝利。2馬身1/4差の2着に敗れた本馬は初黒星を喫した。
さらに距離が伸びるケンタッキーオークスには向かわせられないと判断したバファート師は本馬に3か月間の休養を与えた。
そして6月のエイコーンS(米GⅠ・D8F)で復帰した。ナッソーカウンティSを5馬身1/4差で圧勝してきたザフティグ、オールドハットS・ラトロワンヌSを勝ってきたゲームフェイス、ラスヴァージネスS勝利後にサンタアニタオークスとボーモントSで2着、ケンタッキーオークスでプラウドスペルの4着してきたゴールデンドックエーの3頭だけが対戦相手となった。本馬が単勝オッズ1.7倍の1番人気、ザフティグが単勝オッズ3.75倍の2番人気だった。スタートが切られると本馬が先頭に立ち、ザフティグが2番手を追いかけてくるという展開となった。そのままの体勢で直線に入ってきたが、ここでザフティグが本馬をあっさりとかわして先頭に立った。本馬には既に抵抗する余力は無く、ザフティグに4馬身半差をつけられて2着に敗退。
3着ゲームフェイスには17馬身1/4差、最下位のゴールデンドックエーにはさらに13馬身3/4差をつけてはいたが、マイル戦でも本馬にとってはベストでは無いと判断したバファート師は、本馬を短距離路線に進ませることにした。
そしてちょうど4週間後に同じベルモントパーク競馬場で行われたプライオレスS(米GⅠ・D6F)に出走。対戦相手4頭の中にグレード競走勝ち馬は1頭もおらず、ゴメス騎手に代わってジョン・ヴェラスケス騎手が騎乗する本馬が単勝オッズ1.65倍の1番人気で、レディフィンガーS・ニューヨークブリーダーズフューチュリティ・デルタプリンセスS・パールシティSなど5戦全勝のバイザライトが単勝オッズ4.75倍の2番人気となった。スタートが切られると、バイザライトとシークレットジプシー(後にディスタフH・オナラブルミスHなどグレード競走3勝)の2頭が先頭に立ち、最初のコーナーで外側に膨らんだ本馬は先手を取れずに3~4番手につけた。しかし四角で先頭に並びかけると直線に入って独走。2着バイザライトに5馬身1/4差をつけて圧勝した。
次走は翌月のテストS(米GⅠ・D7F)となった。ヴェラスケス騎手騎乗の本馬が単勝オッズ1.4倍の1番人気で、ビューティフルデイSを勝ってきたスウィートホープが単勝オッズ6.4倍の2番人気、ミスプリークネスS(プリークネスSではない)を勝ってきたパランカシティが単勝オッズ7.7倍の3番人気となった。スタートが切られるとパランカシティが先頭に立ち、本馬は馬群の外側3番手を先行した。そして四角で先頭に立つと直線に入って後続を引き離した。最後は完全に馬なりのまま走り、2着スウィートホープに7馬身差をつけて圧勝した。
次走はさらに翌月のギャラントブルームH(米GⅡ・D6.5F)となった。今回はコーリー・ナカタニ騎手が騎乗する本馬が単勝オッズ1.35倍の1番人気、前走の一般競走を11馬身3/4差で勝ってきたイロープが単勝オッズ3.85倍の2番人気、オナラブルミスH2着馬ザダベルが単勝オッズ8.9倍の3番人気となった。スタートが切られると、ザダベルが先頭に経ち、本馬も内側からそれに並びかけていった。2頭は三角まで先頭争いを演じたが、四角で本馬がザダベルを振り切って単独先頭に立つと、後は例によって直線独走。2着イロープに6馬身1/4差をつけて圧勝した。
ニューヨーク州の短距離戦を3連勝した本馬は本拠地のカリフォルニア州に帰還。目的はBCフィリー&メアスプリント(AW7F)に出走するためだった(同競走は前年に創設されたためにまだ国際グレード格付けが無かった)。前年はモンマスパーク競馬場で施行されたブリーダーズカップだが、この年はサンタアニタパーク競馬場で施行され、同競走はダートではなくオールウェザーとなっていた。バファート師は本馬をあまりオールウェザーで走らせたくなかったはずだが、さすがにブリーダーズカップとなると話は別だった。
対戦相手は、ジャストアゲームS勝ち馬でキャッシュコールマイル招待S・ウッドバインマイルSと連続2着のヴェンチュラ、本馬を破ったエイコーンSから直行してきたザフティグ、サンタモニカH・ヒューマナディスタフS・バレリーナSとこの年GⅠ競走を3勝していたインタンガルー、前年のラブレアS勝ち馬でアグリームH・ランチョベルナルドHを連勝してきたディアレストトリックスキー、ラスフローレスH勝ち馬ティズエレメンタルなどだった。ヴェラスケス騎手騎乗の本馬が単勝オッズ2.8倍の1番人気で、ヴェンチュラが単勝オッズ3.8倍の2番人気、ザフティグが単勝オッズ6倍の3番人気、インタンガルーが単勝オッズ7.4倍の4番人気となった。
スタートが切られるとディアレストトリックスキーが先頭に立ち、本馬が直後の2番手を先行した。そのまま2頭が先頭を争いながら三角と四角を回って直線に入ってきたのだが、後方待機策を採っていたヴェンチュラがこの時点で既に本馬の背後まで迫ってきていた。直線ではいったん本馬が先頭に立ったが、すぐにヴェンチュラにかわされて突き放され、4馬身差の2着に敗退した(本馬から2馬身差の3着がザフティグ)。皮肉にもヴェンチュラの鞍上にいたのは本馬のかつての相棒ゴメス騎手だった。
この年のブリーダーズカップでは、BCクラシックで2連覇を目指したカーリンが初のオールウェザーで4着に敗退する一方で、BCスプリントで2連覇を目指したミッドナイトリュートはオールウェザーを何度か走っていた経験が活きて目標を達成、BCレディーズクラシックでは殆どオールウェザーばかり走っていたゼニヤッタが勝っていた。ヴェンチュラもBCクラシックを勝ったレイヴンズパスも芝のGⅠ競走勝ち馬でありダート競走は走った経験さえ無かった馬であり、ダートとオールウェザーではやはり求められる適性が異なるという事が白日の下に晒されていた。
しかしバファート師は本馬を2か月後のラブレアS(米GⅠ・AW7F)に向かわせ、改めてオールウェザーに挑戦させた。ヴェラスケス騎手騎乗の本馬が単勝オッズ1.6倍の1番人気、フォワードギャルS・ダヴォナデイルS勝ち馬でアッシュランドS2着のビーシャープソナタが単勝オッズ4.2倍の2番人気、アザレアS・サラブレッドクラブオブアメリカS勝ち馬インディアンヌが単勝オッズ5.1倍の3番人気となった。スタートが切られると、インディアンヌが先手を取り、本馬が2番手、ビーシャープソナタが3番手を進んだ。最初の2ハロン通過が22秒52、次の2ハロンは22秒54という速いペースでレースは進んだ。四角でインディアンヌは故障を発生して競走を中止。入れ代わりに本馬が先頭に立つと、後方から追い上げてきた2着ジンジャーポップに1馬身半差をつけて勝利した。
しかしバファート師は競り合ったインディアンヌが故障した事もあり、「ほろ苦い勝利でした」と悲しそうに語っている(インディアンヌは種子骨を骨折しており、17日後に安楽死となった)。
3歳時の成績は9戦6勝で、この年のエクリプス賞では最優秀3歳牝馬のタイトルは逃した(受賞したのはケンタッキーオークスとアラバマSを制したプラウドスペル)が、その代わりに最優秀短距離牝馬に選出された。
競走生活(4歳時)
4歳時も現役を続行した本馬は招待を受けてドバイに渡り、ドバイゴールデンシャヒーン(首GⅠ・D1200m)でシーズン初戦を迎えた。モーリスドギース賞3連覇・ジュライC・アベイドロンシャン賞とGⅠ競走で5勝を挙げていた前年のカルティエ賞最優秀短距離馬マルシャンドール、地元ドバイのGⅢ競走アルシンダガスプリント勝ち馬ビッグシティマン、アルフレッドGヴァンダービルトHなどの勝ち馬ディアボリカル、日本から参戦してきた前年のJBCスプリント勝ち馬バンブーエールなどが対戦相手となった。英国ブックメーカーのオッズでは、エドガー・プラード騎手騎乗の本馬が単勝オッズ2.375倍の1番人気、マルシャンドールとビッグシティマンが並んで単勝オッズ6.5倍の2番人気、ディアボリカルが単勝オッズ7倍の4番人気となっていた。
スタートが切られるとフォースフリーズが先頭に立ち、スタートで躓いた本馬やビッグシティマンが先行、バンブーエールは中団からレースを進めた。本馬は残り2ハロン地点でスパートしたが、残り1ハロン地点で離れた位置を走っていたビッグシティマンの抜け出しを許し、1馬身1/4差の2着に敗れた(本馬から5馬身差の3着がディアボリカルで、バンブーエールがそれから半馬身差の4着、マルシャンドールは12着最下位だった)。
地元に戻ってきた本馬は、5月にチャーチルダウンズ競馬場で行われるダート7ハロンのGⅠ競走ヒューマナディスタフSに向かう予定だったが、調教の動きが悪かったために回避。
改めて6月に地元ハリウッドパーク競馬場で行われたデザートストーマーH(AW6F)に出走した。これといった対戦相手はいなかったため、他馬より5~11ポンド重い124ポンドの斤量でも本馬が単勝オッズ1.5倍の1番人気に支持された。スタートが切られるとココベルという馬が逃げを打ち、ビクター・エスピノーザ騎手が手綱を取った本馬は2番手を先行してそのままの位置取りで直線に入ってきた。ところが直線に入っても伸びが無く、逃げたココベルを捕らえるどころか後続馬に差されて、勝ったココベルから5馬身半差の4着に敗れた。
遠征疲れもあっただろうが、やはりオールウェザーだったのが敗因の1つと推察されたため、その後は東上してダート競走に専念。まずは7月にフロリダ州コールダー競馬場で行われるダート6ハロンのGⅠ競走プリンセスルーニーHに出走する予定だったが、直前に体調を崩して投薬治療が行われたため回避した。
その後はニューヨーク州に向かい、8月のバレリーナS(米GⅠ・D7F)に出走した。前年のマザーグースS・CCAオークス・ガゼルS勝ち馬で、プラウドスペルとはレースでもエクリプス賞のタイトルでも争ったミュージックノート、レイヴンランS・マディソンS・ヒューマナディスタフS・シカゴBCHなど5連勝中のインフォームドディシジョンの2頭が強敵だった。ヴェラスケス騎手騎乗の本馬とインフォームドディシジョンが並んで単勝オッズ2.35倍の1番人気、ミュージックノートが単勝オッズ6.8倍の3番人気となった。
かつてBCジュヴェナイルフィリーズを勝った時と同じく不良馬場の中でスタートが切られると、本馬が先頭に立ち、インフォームドディシジョンが2番手、ミュージックノートは4番手の好位でレースを進めた。向こう正面でミュージックノートが仕掛けて本馬に並びかけ、2頭が先頭を争いながら三角と四角を回ってきたが、直線に入るとミュージックノートが突き抜けていった。本馬は3着インフォームドディシジョンを1馬身抑えるのがやっとで、ミュージックノートに5馬身1/4差をつけられて2着に敗れた。
次走は前年に勝利したギャラントブルームH(米GⅡ・D6.5F)となった。ポカホンタスS・ヴィクトリーライドSを勝ってきたサラルイーズ、5連勝中のサンダーズダヴの2頭が強敵だった。117ポンドのサラルイーズが単勝オッズ2.35倍の1番人気、ヴェラスケス騎手騎乗の本馬は123ポンドの斤量と前走の敗戦が影響して単勝オッズ2.4倍の2番人気、グレード競走初出走のサンダーズダヴ(116ポンド)が単勝オッズ4.85倍の3番人気となった。
スタートが切られるとサンダーズダヴが先手を取り、本馬とサラルイーズが3~4番手を追走。向こう正面で本馬とサラルイーズが同時に仕掛けて先頭に上がり、そのまま2頭が直線に入って叩き合いを展開した。叩き合いになると斤量が重いほうが不利なのだが、今回は本馬がゴール前で僅かに前に出て頭差で勝利した。
次走はこの年にGⅠ競走として格付けされたBCフィリー&メアスプリントになるのが本来だったのだが、生憎とこの年のブリーダーズカップも前年に引き続きサンタアニタパーク競馬場における開催であり、当然BCフィリー&メアスプリントはオールウェザーだった。バファート師は本馬をもはやオールウェザーで走らせる意思は無かったようで、ギャラントブルームHを最後に、現役引退を決定。4歳時の成績は4戦1勝となった。
ちなみに本馬不在のBCフィリー&メアスプリントはバレリーナSで3着だったインフォームドディシジョンが前年の覇者ヴェンチュラを2着に破って勝ち、エクリプス賞最優秀短距離牝馬の座を獲得している。
血統
Indian Charlie | In Excess | Siberian Express | Caro | フォルティノ |
Chambord | ||||
Indian Call | Warfare | |||
La Morlaye | ||||
Kantado | Saulingo | Sing Sing | ||
Saulisa | ||||
Vi | Vilmorin | |||
Dotterel | ||||
Soviet Sojourn | Leo Castelli | Sovereign Dancer | Northern Dancer | |
Bold Princess | ||||
Suspicious Native | Raise a Native | |||
Be Suspicious | ||||
Political Parfait | Diplomat Way | Nashua | ||
Jandy | ||||
Peach Butter | Creme dela Creme | |||
Slipping Round | ||||
Shameful | Flying Chevron | Carson City | Mr. Prospector | Raise a Native |
Gold Digger | ||||
Blushing Promise | Blushing Groom | |||
Summertime Promise | ||||
Fly Me First | Herbager | Vandale | ||
Flagette | ||||
Flying Fable | Dark Ruler | |||
Jeannie C. | ||||
Lady's Legacy | Matchlite | Clever Trick | Icecapade | |
Kankakee Miss | ||||
Light Up My Life | Sir Ivor | |||
Tusi Bella | ||||
Wavering Lady | Wavering Monarch | Majestic Light | ||
Uncommitted | ||||
Pia's Lady | Pia Star | |||
Plucky Roman |
父インディアンチャーリーはフリートインディアンの項を参照。
母シェイムフルは現役成績12戦4勝、パインツリーレーンSを勝ち、ラトロワンヌS(米GⅢ)・サンタパウラS・サンシャインミリオンズスプリントSで2着、ミスプリークネスS(米GⅢ)で3着している。本馬の半弟にはローマンスレット(父ローマンルーラー)【ロサンゼルスH(米GⅢ)】がいる。シェイムフルの母レディーズレガシーの従姉妹ローミンレイチェル【バレリーナH(米GⅠ)】は、2004年の中央競馬年度代表馬ゼンノロブロイ【天皇賞秋(GⅠ)・ジャパンC(GⅠ)・有馬記念(GⅠ)】の母である。→牝系:F2号族④
母父フライングシェヴロンは現役成績12戦5勝、NYRAマイルH(米GⅠ)・ペガサスH(米GⅡ)の勝ち馬。フライングシェヴロンの父カーソンシティはバーバロの項を参照。
競走馬引退後
競走馬を引退した本馬は現在ケンタッキー州で繁殖生活を送っている。初子は既に競走年齢に達しているが、活躍の噂は聞こえてこない。まだこれからの繁殖牝馬である。