エルプラド

和名:エルプラド

英名:El Prado

1989年生

芦毛

父:サドラーズウェルズ

母:レディキャプレット

母父:サーアイヴァー

競走馬としては愛国内でしか活躍できない早熟の短距離馬という評価だったが、サドラーズウェルズ直子種牡馬として史上初めて北米首位種牡馬に輝く

競走成績:2・3歳時に愛英仏で走り通算成績9戦4勝2着1回

誕生からデビュー前まで

愛国ライオンズタウンスタッドの生産馬で、1歳時のヨーロピアンセールに出品され、名馬主ロバート・サングスター氏によって3万3000ギニーで購入され、愛国ヴィンセント・オブライエン調教師に預けられた。

競走生活(2歳時)

2歳6月にカラー競馬場で行われた芝6ハロンの未勝利戦で、主戦となるレスター・ピゴット騎手を鞍上にデビュー。単勝オッズ3.25倍で11頭立ての2番人気に推されると、2着セイティミニに2馬身半差をつけて快勝した。

次走のレイルウェイS(愛GⅢ・T6F)では単勝オッズ1.9倍の1番人気に支持された。道中は5頭立ての4番手を追走して残り2ハロン地点でスパートを開始。残り1ハロン地点で先頭のセーフティタクティックに並びかけようとしたところで右側によれて少し行き脚が悪くなったが、ラスト50ヤードで逆転し、2着セーフティタクティックに1馬身差で勝利した。

次走のアングルシーS(愛GⅢ・T6F63Y)では、本馬が単勝オッズ1.73倍の1番人気に支持され、後に愛ダービー・キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDSを勝つ超大物セントジョヴァイトが単勝オッズ3.5倍の2番人気となった。しかしセントジョヴァイトとの接戦に首差屈して2着に敗れてしまった(3着パリジャンテディは8馬身後方だった)。

その後は愛ナショナルS(愛GⅠ・T7F)に向かった。本馬が単勝オッズ2.1倍の1番人気で、伊オークス馬パリスロイヤルの息子である1戦1勝馬ロイヤルシアターが単勝オッズ4.33倍の2番人気、レイルウェイSで本馬から8馬身差の4着だったメコンが単勝オッズ5倍の3番人気、レイルウェイS2着馬セーフティタクティックが単勝オッズ7倍の4番人気といった評価だった。レースは単勝オッズ21倍の最低人気馬ノルディックブリーフを半馬身抑えた本馬が勝ち、GⅠ競走勝ち馬となった。

その後は英国に移動してハイフライヤーS(T7F)に出走した。グループ競走どころかリステッド競走でもなく賞金も愛ナショナルSの半分以下という平凡な競走だったが、ヴィンテージSの勝ち馬で後に英ダービー・デューハーストS・愛チャンピオンSも勝つドクターデヴィアス、後に英国際S2回・エクリプスSを勝つエズード、後のクレイヴンS・ダンテSの勝ち馬アルナスルアルワシークなど29頭が対戦相手となり、相手の質量共に今まで出走してきたレースの中では最高クラスだった。ドクターデヴィアスが単勝オッズ3.5倍の1番人気、アルナスルアルワシークが単勝オッズ7倍の2番人気で、本馬は単勝オッズ9倍の3番人気だった。しかし本馬は馬群の中団のまま全く伸びず、ドクターデヴィアスを頭差抑えて勝った単勝オッズ15倍の8番人気馬ヤングセニョールから8馬身半差をつけられた12着と大敗した。

その後は本国に戻ってベレスフォードS(愛GⅡ・T8F)に出走した。これといった対戦相手はおらず、本馬が単勝オッズ3.5倍の1番人気に支持された。レースでは先行して3番手で直線に入ると、前を行く馬2頭の間に突っ込んで残り1ハロン地点で先頭に立ち、後方から差してきた2着コロリフィックに2馬身半差をつけて完勝した。

2歳時の成績は6戦4勝で、愛最優秀2歳牡馬に選出された。

競走生活(3歳時)

しかし3歳になると怪我のため順調さを欠き、シーズン初戦は7月に英国エアー競馬場で行われたスコティッシュクラシック(英GⅢ・T10F)となった。後にクイーンアンS・愛国際Sなどを勝つアルフローラ、アルフローラが勝つクイーンアンSで2着するインナーシティなどを抑えて単勝オッズ3.25倍の1番人気に支持された。しかし直線手前の勝負どころで進路を失ってしまい、残り2ハロン地点で何とかスパートするも伸びを欠き、シャーピターの6馬身差5着に敗れた。

その後は仏国に遠征してジャックルマロワ賞(仏GⅠ・T1600m)に参戦。しかし対戦相手の層の厚さは本馬が過去に出走してきたレースだけでなく、このジャックルマロワ賞の歴史上でも屈指と言えるものであり、アスタルテ賞を勝ってきたハイドロカリド、ホーリスヒルS・グリーナムSの勝ち馬ライオンキャヴァーン、コヴェントリーS・リッチモンドS・ポルトマイヨ賞の勝ち馬ディラム、伊2000ギニーなどの勝ち馬ミシル、クイーンアンSの勝ち馬ラヒブ、クリテリウムドメゾンラフィットの勝ち馬カルドゥン、伊グランクリテリウム・伊2000ギニー・ヴィットリオディカプア賞2回・伊共和国大統領賞2回・ローマ賞・クイーンアンS・愛国際Sなどの勝ち馬サイクストン、エドモンブラン賞・ミュゲ賞の勝ち馬イグジットトゥノーウェア、この年の英1000ギニー勝ち馬で後に英チャンピオンSなどGⅠ競走3勝を上乗せするハトゥーフ、後にマンハッタンH・アーリントンミリオンS・マンノウォーSとGⅠ競走を3勝するスターオブコジーンなど有力馬が目白押しだった。ピゴット騎手が都合によりこのレースに参加できなかったためC・ロシェ騎手に乗り代わっていた本馬はますます評価を下げ、単勝オッズ27倍で14頭立ての13番人気だった。レースでは馬群の中団から残り400m地点で仕掛けるも目立った脚を見せる事は出来ず、勝ったイグジットトゥノーウェアから6馬身半差の7着に敗れた。

そのまま仏国に留まり、ムーランドロンシャン賞(仏GⅠ・T1600m)に参戦。セントジェームズパレスS・ガリニュールSの勝ち馬ブリーフトゥルース、英オークス・ナッソーS・英国際Sと3戦連続2着中のムシドラS勝ち馬オールアットシー、仏2000ギニー馬シャンハイ、ジャンプラ賞の勝ち馬キットウッド、ジョンシェール賞・メシドール賞の勝ち馬テイクリスクス、前走3着のカルドゥン、同5着のハトゥーフ、同8着のミシルなどが対戦相手となり、鞍上にピゴット騎手が戻ってきた本馬は単勝オッズ21倍で10頭立て8番人気の評価だった。スタートが切られるとブリーフトゥルース陣営が用意したペースメーカー役のシャープレビューが先頭に立ち、本馬も思い切って先行して2番手を追走した。そのままの位置取りで直線に入ってきたが、3番手を追走してきたオールアットシーにすぐにかわされると一気に失速し、勝ったオールアットシーから14馬身差の10着最下位と惨敗。結局3歳時は3戦未勝利で現役を引退した。

血統

Sadler's Wells Northern Dancer Nearctic Nearco Pharos
Nogara
Lady Angela Hyperion
Sister Sarah
Natalma Native Dancer Polynesian
Geisha
Almahmoud Mahmoud
Arbitrator
Fairy Bridge Bold Reason Hail to Reason Turn-to
Nothirdchance
Lalun Djeddah
Be Faithful
Special Forli Aristophanes
Trevisa
Thong Nantallah
Rough Shod
Lady Capulet Sir Ivor Sir Gaylord Turn-to Royal Charger
Source Sucree
Somethingroyal Princequillo
Imperatrice
Attica Mr. Trouble Mahmoud
Motto
Athenia Pharamond
Salaminia
Cap and Bells Tom Fool Menow Pharamond
Alcibiades
Gaga Bull Dog
Alpoise
Ghazni Mahmoud Blenheim
Mah Mahal
Sun Miss Sun Briar
Missinaibi

サドラーズウェルズは当馬の項を参照。

母レディキャプレットはデビュー戦にいきなり愛1000ギニー(愛GⅠ)を選択して勝利するという離れ業を演じた名牝で、その後は2戦してコロネーションS(英GⅡ)2着・プリティポリーS(愛GⅡ)3着と余力を残したまま引退して繁殖入りしている。本馬の半兄には1987年の愛最優秀3歳牡馬エンタイトルド(父ミルリーフ)【デズモンドS(愛GⅢ)・2着愛2000ギニー(愛GⅠ)・2着愛チャンピオンS(愛GⅠ)・3着愛ダービー(愛GⅠ)】がいる。本馬はサドラーズウェルズ産駒としては珍しい芦毛馬だったが、この毛色は母レディキャプレット譲りである。レディキャプレットの半兄にはダンシングブレーヴの母父として知られる種牡馬ドローン(父サーゲイロード)が、全兄にはサーウィンボーン【ロイヤルロッジS(英GⅡ)・愛ナショナルS(愛GⅡ)】がいる。本馬の従姉妹にはターキッシュトレジャー【チェリーヒントンS(英GⅢ)】や、ドバイワールドC勝ち馬ウェルアームドの母父でもあるノートブック【ケンタッキージョッキークラブS(米GⅢ)・ベストターンS(米GⅢ)】がおり、アシシエンプレ【スピンスターS(米GⅠ)】やアウトストリップ【BCジュヴェナイルターフ(米GⅠ)】も近親。→牝系:F1号族⑤

母父サーアイヴァーは当馬の項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は当初愛国クールモアスタッドで種牡馬入りする予定だったが、加国の名馬産家フランク・ストロナック氏は本馬に興味を抱き、クールモアグループと交渉して本馬を購入。本馬はまずは米国ケンタッキー州エアドリースタッドで種牡馬入りして、後の1998年にはストロナック氏が所有していたアデナスプリングスファームのケンタッキー支部に移動した。

本馬はサドラーズウェルズの後継種牡馬として、初めて北米に輸入された馬となった。サドラーズウェルズは欧州競馬史上有数の大種牡馬であるが、欧州はパワーを要する重い芝のレース主体であるため、ダートや軽い芝レース主体の米国には合わないのではないかという意見が大勢を占めていた。アデナスプリングスファームのケンタッキー支部を任されていたダーモット・カーティー氏は「サドラーズウェルズの息子を欲しがる者は米国では誰もいませんでした。エルプラドも単なる芝馬としか見られていませんでしたし、サドラーズウェルズ産駒を買うのは賭けだったのです」と本馬の死後に述懐している。

そんな本馬に対してストロナック氏が関心を持ったのは、スピード色が強い母系の出身である本馬は米国でも通用するのではないかと考えたからだそうである。そして本馬はストロナック氏の予想どおり、いやそれ以上に米国で種牡馬として大きな成功を収めた。芝もダートも問わずに71頭以上のステークスウイナーを送り出し、2002年にはメダグリアドーロなどの活躍により北米首位種牡馬を獲得。サドラーズウェルズの優秀さを米国のホースマンに対して実証してみせた。種牡馬入り当初は7500ドルだった種付け料は年々上昇し、最盛期の2006年には12万5千ドルに達していた。本馬は2009年9月に心臓麻痺のため20歳で他界したが、後継種牡馬としてメダグリアドーロや2013年の北米首位種牡馬キトゥンズジョイが活躍しており、サドラーズウェルズの血筋は米国でも広がり始めている。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

1994

Chindi

カウントフリートスプリントH(米GⅢ)・アクアクH(米GⅢ)

1994

El Cielo

サンシメオンH(米GⅢ)・モーヴィックH(米GⅢ)2回・ハリウッドターフエクスプレスH(米GⅢ)

1995

Nite Dreamer

コーンハスカーBCH(米GⅢ)

1995

Shires Ende

アッシュランドマイルS(米GⅢ)・ローカストグローヴH(米GⅢ)

1995

Sweet and Ready

プリンセスS(米GⅡ)

1996

Air Rocket

アメリカンターフS(米GⅢ)

1996

Swingin on Ice

ボーモントS(米GⅡ)

1997

El Prado Essence

ジョンCヘンドリーH(加GⅢ)2回

1997

Mr. Livingston

パームビーチS(米GⅢ)

1999

El Soprano

サマーS(加GⅡ)

1999

Medaglia d'Oro

トラヴァーズS(米GⅠ)・ホイットニーH(米GⅠ)・ドンH(米GⅠ)・サンフェリペS(米GⅡ)・ジムダンディS(米GⅡ)・ストラブS(米GⅡ)・オークローンH(米GⅡ)

2000

Senor Swinger

ベルモントBCH(米GⅡ)・アメリカンターフS(米GⅢ)・ジェファーソンCS(米GⅢ)・アーリントンH(米GⅢ)

2000

Shaconage

チャーチルディスタフターフマイルS(米GⅢ)・ローカストグローヴH(米GⅢ)

2000

Spanish Sun

リブルスデールS(英GⅡ)

2000

Surbiton

スーパーレイティヴS(英GⅢ)

2001

Artie Schiller

BCマイル(米GⅠ)・米国競馬名誉の殿堂博物館S(米GⅡ)・ジャマイカH(米GⅡ)・メイカーズマークマイルS(米GⅡ)・バーナードバルークH(米GⅡ)・ヒルプリンスS(米GⅢ)

2001

Borrego

パシフィッククラシックS(米GⅠ)・ジョッキークラブ金杯(米GⅠ)

2001

Fort Prado

フェアグラウンズBCH(米GⅢ)・ジョンBコナリーBCターフH(米GⅢ)

2001

Kitten's Joy

セクレタリアトS(米GⅠ)・ジョーハーシュターフクラシック招待S(米GⅠ)・ファイアクラッカーBCH(米GⅡ)・トロピカルパークダービー(米GⅢ)・パームビーチS(米GⅢ)・アメリカンターフS(米GⅢ)・ヴァージニアダービー(米GⅢ)

2001

Lord Admiral

ジェベルハッタ(首GⅡ)・バリーコーラスS(愛GⅢ)・アルラシディヤ(首GⅢ)

2001

Timo

トランシルバニアS(米GⅢ)・ケントBCS(米GⅢ)

2002

Asi Siempre

スピンスターS(米GⅠ)・バレービューS(米GⅢ)・ダブルドッグデアS(米GⅢ)

2004

Buffalo Man

アップルトンH(米GⅢ)・レッドバンクS(米GⅢ)

2004

Spanish Moon

サンクルー大賞(仏GⅠ)・フォワ賞(仏GⅡ)

2005

Dreaming Of Liz

アーリントンワシントンラッシーS(米GⅢ)

2005

Wesley

米国競馬名誉の殿堂博物館S(米GⅡ)・マイアミマイルH(米GⅢ)

2006

Article Rare

レゼルヴォワ賞(仏GⅢ)

2006

Golden Century

ダフニ賞(仏GⅢ)

2006

Grassy

レッドスミスH(米GⅡ)・ボーリンググリーンH(米GⅡ)

2006

グラスレジェンド

福山王冠(福山)

2007

Don Cavallo

ドミニオンデイS(加GⅢ)

2007

James Street

オータムS(加GⅡ)・シーグラムCS(加GⅢ)・ダーラムCS(加GⅢ)

2007

Paddy O'Prado

セクレタリアトS(米GⅠ)・コロニアルターフCS(米GⅡ)・ヴァージニアダービー(米GⅡ)・ディキシーS(米GⅡ)・パームビーチS(米GⅢ)

2008

Winter Memories

ガーデンシティS(米GⅠ)・ダイアナS(米GⅠ)・サンズポイントS(米GⅡ)・ミスグリオS(米GⅢ)・アパラチアンS(米GⅢ)・ボーゲイS(米GⅢ)

2009

O'Prado Again

レムセンS(米GⅡ)

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