アナバー

和名:アナバー

英名:Anabaa

1992年生

鹿毛

父:ダンチヒ

母:バルオネラ

母父:ゲイメセン

カルティエ賞最優秀短距離馬だが種牡馬としては仏ダービー馬や21世紀のマイル女王など傾向が異なる活躍馬を出して成功する

競走成績:3・4歳時に仏英で走り通算成績13戦8勝2着2回3着1回

誕生からデビュー前まで

ドバイのシェイク・マクトゥーム殿下が米国ケンタッキー州に所有するゲインズボローファームにおいて生産・所有した馬で、仏国の女性調教師クリスティアーヌ・ヘッド師に預けられた。しかし2歳時にウォブラー症候群(「腰麻痺」とも言われる。椎骨の変形により脊髄が圧迫される病気で、運動障害、痙攣、左右対称性の後脚麻痺などの症状が出る。馬の場合、原因は脳脊髄に進入した寄生虫である事が多いという。重度であれば致命的であり、軽度でも競走能力に大きな影響を及ぼす)と診断されたため、デビューは大幅に遅れた。

競走生活

3歳7月のシャンティ競馬場で行われたブリシェブレイ賞(T1200m)で遅いデビューを果たして2着の後、マロット賞(T1600m)・ルートデポステス賞(T1200m)と2連勝した。しかしその後が続かず、リステッド競走パン賞(T1400m)では、ポプラーブラフの3馬身差4着に敗退。

格上の馬達に挑戦したフォア賞(仏GⅠ・T1400m)では、単勝オッズ16倍の9番人気という低評価であり、結果も直線の追い込み不発で、ポプラーブラフの4馬身1/4差6着止まりだった。次走のリステッド競走コンテッシーナ賞(T1200m)もシャーププロッドの短頭差3着に敗れて休養に入り、3歳時は6戦2勝の成績に終わった。

4歳になった本馬は、管理するヘッド師の父親で仏国ケスネー牧場の経営者アレック・ヘッド氏により購入された。馬主名義はヘッド氏の妻ジスライン・ヘッド夫人、主戦はヘッド氏の息子でヘッド師の兄である当時仏国最年長の専業騎手だったフレデリック・ヘッド騎手が務めるようになった。4歳3月に復帰した本馬は前年とは別馬のような快進撃を見せる。

復帰戦となったリステッド競走コールドシャッセ賞(T1200m)では、2着オールウェイズダンシングに5馬身差をつける圧勝劇を演じた。3週間後のリステッド競走セルヴァンヌ賞(T1200m)も2着セポイに4馬身差で勝利し、遅れてきた大物として評判になっていった。

この勢いは、グロシェーヌ賞勝ち馬ミリヤントなどを抑えて単勝オッズ1.4倍の断然人気に支持された次走サンジョルジュ賞(仏GⅢ・T1000m)でも止まらなかった。逃げ馬を見る形で2番手を先行した本馬は残り400mで抜け出すと瞬く間に後続を突き放し、最後は2着ブーシュビーに6馬身差をつける大楽勝となった。

続くグロシェーヌ賞(仏GⅡ・T1000m)でも、エクリプス賞・クリテリウムドメゾンラフィット勝ち馬ティタスリヴィアスや前年のアベイドロンシャン賞4着馬イージーオプション(フォレ賞やサセックスSを勝ったコートマスターピースの母)などを抑えて単勝オッズ1.3倍の断然人気に支持された。レースは重馬場となったが本馬には関係なく、やはり2番手追走から残り200mで先頭に立って、追い上げてきた2着イージーオプションに2馬身差で勝利した。

7月には英国遠征してジュライC(英GⅠ・T6F)に挑戦した。さすがに欧州短距離界のトップに位置するレースだけあり、前年にアベイドロンシャン賞などを制してカルティエ賞最優秀短距離馬に選ばれていたヒーヴァーゴルフローズ、キングズスタンドSを勝ってきた3歳馬ピヴォタルと、同2着馬でテンプルS2連覇のマインドゲームス、ジャージーSを勝ってきたルカヤンプリンス、それに愛フェニックスS・愛ナショナルS勝ち馬デインヒルダンサーといった実力馬達が集結していた。ピヴォタルが単勝オッズ3.25倍の1番人気に支持され、本馬が単勝オッズ3.75倍の2番人気となった。本馬は、今までの先行策よりもさらに積極的な戦法を採り、スタートから先頭に立った。そして残り2ハロン地点から二の脚を使って伸び、2番手から粘った2着ルカヤンプリンスに1馬身3/4差をつけて勝利した。

仏国に戻って出走したモーリスドギース賞(仏GⅠ・T1300m)では、チェヴァリーパークS・クイーンメアリーS・プリンセスマーガレットSなど5戦無敗の前年のカルティエ賞最優秀2歳牝馬ブルーダスター、前走リゾランジ賞を勝ってきたミエスクズサン、前年は敵わなかったポプラーブラフ、デインヒルダンサーなどを抑えて、単勝オッズ1.5倍の断然人気となった。今回は前走とは一転して馬群の好位5番手を追走した。そして残り200m地点で楽々と先頭に立つと、2着ミエスクズサンに1馬身半差をつけて勝利した。

続いて最強短距離馬としての地位を確立するべくアベイドロンシャン賞(仏GⅠ・T1000m)に向かった。対戦相手はイージーオプション、ジュライCで本馬の3着した後に5戦を消化していたヒーヴァーゴルフローズ、ナンソープS2着のイヴニングパフォーマンス、モートリー賞・セーネワーズ賞を連勝してきた同厩の牝馬キステナなどだった。しかし当然のように本馬が単勝オッズ1.3倍の断然人気に支持された。今回はスタートから先頭を伺ったが、イヴニングパフォーマンスに徹底してマークされる展開となった。残り200m地点でイヴニングパフォーマンスを振り切って先頭に立ったものの、後方から追い込んできたキステナにゴール寸前で差されて首差2着に惜敗してしまった。

残念ながら連勝は6で止まり、引退レースを勝利で飾ることは出来なかったが、3歳時7戦6勝の好成績で、この年のカルティエ賞最優秀短距離馬に選出された。

血統

Danzig Northern Dancer Nearctic Nearco Pharos
Nogara
Lady Angela Hyperion
Sister Sarah
Natalma Native Dancer Polynesian
Geisha
Almahmoud Mahmoud
Arbitrator
Pas de Nom Admiral's Voyage Crafty Admiral Fighting Fox
Admiral's Lady
Olympia Lou Olympia
Louisiana Lou
Petitioner Petition Fair Trial
Art Paper
Steady Aim Felstead
Quick Arrow
Balbonella ゲイメセン Vaguely Noble ヴィエナ Aureole
Turkish Blood
Noble Lassie Nearco
Belle Sauvage
Gay Missile Sir Gaylord Turn-to
Somethingroyal
Missy Baba My Babu
Uvira
Bamieres Riverman Never Bend Nasrullah
Lalun
River Lady Prince John
Nile Lily
Bergamasque Kashmir Tudor Melody
Queen of Speed
Bergame Hautain
Brescia

ダンチヒは当馬の項を参照。

母バルオネラは仏国で2歳時にデビューした後に3歳時に米国に移籍して通算成績20戦9勝、ロベールパパン賞(仏GⅠ)・ポルトマイヨ賞(仏GⅢ)・ダリアH(米GⅢ)などを制した一流競走馬。繁殖牝馬としても一流で、本馬の半兄で名馬アラムシャーの父となったキーオブラック(父チーフズクラウン)【アランベール賞(仏GⅢ)・ドバイデューティーフリー】、半妹オールウェイズロイヤル(父ジルザル)【仏1000ギニー(仏GⅠ)・グロット賞(仏GⅢ)】なども産んでいる。また、オールウェイズロイヤルの娘オールウェイズウィリングは日本に繁殖牝馬として輸入され、2014年の阪神ジュベナイルフィリーズ(GⅠ)を勝ったショウナンアデラの母となった。また、本馬の半妹カントリーベル(父シアトルスルー)の子にはカントリーリール【ジムクラックS(英GⅡ)】がいる。近親と言うには少し遠いが、日本で走ったワンカラット【フィリーズレビュー(GⅡ)・函館スプリントS(GⅢ)・キーンランドC(GⅢ)・オーシャンS(GⅢ)】とジュエラー【桜花賞(GⅠ)】の姉妹も同じ牝系。→牝系:F1号族⑤

母父ゲイメセンはヴェイグリーノーブルの直子で、現役成績12戦5勝、サンクルー大賞(仏GⅠ)・ユジェーヌアダム賞(仏GⅡ)・ニエル賞(仏GⅢ)・ギシュ賞(仏GⅢ)を勝ち、キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS(英GⅠ)で名馬トロイの2着して1980年の仏最優秀古馬牡馬に選出された。引退後は仏国で種牡馬入りし、9歳時に日本に輸入された。仏国では3頭のGⅠ競走勝ち馬を出したが、日本ではあまり成功できなかった。メジロパーマーの母父でもある。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬はケスネー牧場で種牡馬入りした。初年度から豪州にもシャトルされ、2007年には米国ケンタッキー州キャッスルライオンズスタッドでも供用された。初年度産駒から仏ダービー馬アナバーブルーなどを輩出。その後もBCマイル3連覇などGⅠ競走を14勝もしたマイルの女王ゴルディコヴァを送り出し、2007年・2008年と2年連続して仏首位種牡馬となった。2009年、疝痛の手術後に発症した急性腹膜炎のため17歳で他界した。この年における本馬の種付け料は3万ユーロ(当時の為替レートで約400万円)だった。自身は短距離馬だったが産駒の距離適性は幅広く、特にマイル~10ハロンを得意とする傾向が強い。

後継種牡馬としてはアナバーブルーが、初年度産駒がデビューした2006年に仏2歳首位種牡馬となっているが、その後の成績は父の後継としては物足りないものとなっている。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

1998

Amonita

マルセルブサック賞(仏GⅠ)・スワニーリヴァーH(米GⅢ)

1998

Anabaa Blue

仏ダービー(仏GⅠ)・ノアイユ賞(仏GⅡ)・シャンティ大賞(仏GⅡ)

1998

Precision

香港C(香GⅠ)・香港チャンピオンズ&チャターC

1999

Ana Marie

アルクール賞(仏GⅡ)・ヴァントー賞(仏GⅢ)

1999

Miss Anabaa

バリーオーガンS(愛GⅢ)

1999

Rouvres

ジャンプラ賞(仏GⅠ)・ギシュ賞(仏GⅢ)

1999

Yell

CFオーアS(豪GⅠ)・豪フューチュリティS(豪GⅠ)・オーストラリアS(豪GⅠ)・ノーマンカーリオンS(豪GⅡ)・カンタベリーS(豪GⅡ)・CSヘイズS(豪GⅢ)

2000

Danabaa

SAJCヤランビークラシック(豪GⅡ)

2000

French Bid

SAJCスウェッテナムスタッドS(豪GⅡ)

2000

Marshall

ギシュ賞(仏GⅢ)

2000

Martillo

独2000ギニー(独GⅡ)・ポルシェ大賞(独GⅡ)・ミュゲ賞(仏GⅡ)2回・ベルリンブランデンブルクトロフィー(独GⅡ)・エッティンゲンレネン(独GⅡ)

2001

Dalna

ミエスク賞(仏GⅢ)

2001

Villadolide

アランベール賞(仏GⅢ)

2002

Headturner

AJCダービー(豪GⅠ)

2002

Stella Blue

ミエスク賞(仏GⅢ)

2002

Virage de Fortune

QTCサイアーズプロデュースS(豪GⅠ)・オーストラリアS(豪GⅠ)・シュウェップスS(豪GⅡ)・シャンペンクラシック(豪GⅢ)

2003

Daltaya

グロット賞(仏GⅢ)

2003

Imananabaa

ARCレイルウェイS(新GⅠ)

2003

Passager

パース賞(仏GⅢ)

2003

Teranaba

AJCスプリングチャンピオンS(豪GⅠ)

2004

Hapsburg

ヴィシー大賞(仏GⅢ)

2004

Loup Breton

アルクール賞(仏GⅡ)・サンマルコスS(米GⅡ)・ダフニ賞(仏GⅢ)

2005

Celtic Slipper

ドルメロ賞(伊GⅢ)

2005

Court

シャンペンクラシック(豪GⅡ)・サファイアS(豪GⅡ)・BTCカップ(豪GⅢ)

2005

Dances on Waves

ヴィラーズS(豪GⅡ)

2005

Goldikova

BCマイル(米GⅠ)3回・ロートシルト賞(仏GⅠ)4回・ムーランドロンシャン賞(仏GⅠ)・ファルマスS(英GⅠ)・ジャックルマロワ賞(仏GⅠ)・イスパーン賞(仏GⅠ)2回・クイーンアンS(英GⅠ)・フォレ賞(仏GⅠ)・クロエ賞(仏GⅢ)

2005

Le Drakkar

ケープギニー(南GⅠ)

2005

Stokehouse

コーフィールドオータムクラシック(豪GⅡ)

2006

Arazan

愛フューチュリティS(愛GⅡ)

2006

Avenue

RNアーウィンS(豪GⅢ)

2006

Board Meeting

プシシェ賞(仏GⅢ)

2006

Dalghar

パレロワイヤル賞(仏GⅢ)

2006

Kutchinsky

QTCグランプリS(豪GⅢ)

2006

Plumania

サンクルー大賞(仏GⅠ)・コリーダ賞(仏GⅡ)

2006

Right One

ジャイプールS(米GⅢ)

2007

Anacheeva

コーフィールドギニー(豪GⅠ)・コーフィールドギニープレリュード(豪GⅢ)

2008

Anabandana

オークランドダイアモンドS(新GⅠ)・マナワツサイアーズプロデュースS(新GⅠ)・マタマタブリーダーズS(新GⅡ)・エクリプスS(新GⅢ)・ゴールドトレイルS(新GⅢ)

2010

Anodin

ポールドゥムサック賞(仏GⅢ)

2010

Style Vendome

仏2000ギニー(仏GⅠ)・ジェベル賞(仏GⅢ)

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