ルッキンアットラッキー
和名:ルッキンアットラッキー |
英名:Lookin at Lucky |
2007年生 |
牡 |
鹿毛 |
父:スマートストライク |
母:プライヴェートフィーリング |
母父:ビロングトゥミー |
||
接戦における強さを武器に、スペクタキュラービッド以来31年ぶりにエクリプス賞最優秀2歳牡馬・最優秀3歳牡馬を連続受賞したプリークネスS優勝馬 |
||||
競走成績:2・3歳時に米で走り通算成績13戦9勝2着1回 |
誕生からデビュー前まで
米国ケンタッキー州ガルフコーストファームの生産馬で、1歳9月のキーンランドセールにおいて3万5千ドルという安値で競走馬育成業者に購入された。訓練を受けた本馬は2歳4月のキーンランドトレーニングセールに出品された。そしてマイケル・E・ペグラム氏、カール・ワトソン氏、ポール・ウェイトマン氏から成る馬主グループにより47万5千ドルで購入され、彼等に本馬の購入を薦めたボブ・バファート調教師に預けられた。
競走生活(2歳時)
2歳7月にハリウッドパーク競馬場で行われたオールウェザー6ハロンの未勝利戦で、主戦となるギャラント・ゴメス騎手を鞍上にデビューして、単勝オッズ1.7倍の1番人気に支持された。スタートが切られるとすぐに3~4番手につけてそのまま先行策を採り、直線に入ってすぐに逃げていたスターリングアウトルックをかわして先頭に立った。本馬にかわされたスターリングアウトルックも粘りを見せ、ゴール前まで2頭の一騎打ちが続いたが、本馬が3/4馬身差で勝利した。
次走は翌月にデルマー競馬場で行われたベストパルS(GⅡ・AW6.5F)となった。本馬が単勝オッズ2.4倍の1番人気、ロストインザフォグSを勝ってきたスマイリングタイガーが単勝オッズ3倍の2番人気となった。スタートが切られるとスマイリングタイガーが逃げを打ち、本馬は2馬身ほど離れた4番手の好位につけた。そして直線入り口でスマイリングタイガーに並びかけるとあっさりと競り落とした。そして後方から追い上げてきた2着メイクミュージックフォーミーに3/4馬身差をつけて勝利した。
翌月のデルマーフューチュリティ(GⅠ・AW7F)では、スターリングアウトルック、メイクミュージックフォーミー、スマイリングタイガーといった、既に本馬が破った馬達が主な対戦相手となった。本馬には他馬勢より2~6ポンド重い122ポンドが課せられたが、それでも単勝オッズ2倍の1番人気。スターリングアウトルックが単勝オッズ5.1倍の2番人気、メイクミュージックフォーミーが単勝オッズ7.7倍の3番人気と、過去2戦で本馬に肉薄した2頭が対抗馬となり、ベストパルSで本馬から2馬身差の3着だったスマイリングタイガーは単勝オッズ14.7倍の5番人気だった。
スタートが切られると今回もスマイリングタイガーが逃げを打ち、スタートで後手を踏んだ本馬はそのまま馬群の中団後方を追走。そして徐々に位置取りを上げて行って3番手で直線を向くと、前を行くスマイリングタイガーとスターリングアウトルックの2頭をあっさりとかわし、追い込んできたメイクミュージックフォーミーを1馬身差の2着に抑えて勝利した。ここで本馬から1馬身半差の3着に敗れたスマイリングタイガーはこの後に短距離路線を進んでGⅠ競走を3勝するなど活躍することになるが、本馬とは別路線となったため対戦する機会は2度と無かった。
翌月のノーフォークS(GⅠ・AW8.5F)では、未勝利戦を快勝してきたデイヴインディクシー、アイムスモーキンSを勝ってきたジョンスコット、ウィズアンティシペーションSで2着してきたジュングマンスコット、前走で本馬から2馬身半差の4着だったスターリングアウトルックといった辺りが主な対戦相手だった。本馬が単勝オッズ1.8倍の1番人気で、デイヴインディクシーが単勝オッズ5.1倍の2番人気、ジョンスコットが単勝オッズ7.2倍の3番人気となった。
スタートが切られるとすぐにスターリングアウトルックが先頭に立ち、本馬も速やかに4番手の好位につけた。そして四角で仕掛けて直線入り口で先頭に立った。あとは激しい2着争いを尻目にゴールまで駆け抜けるだけで、2着プルジョン(実は本馬のデビュー戦にも出走していたが、勝った本馬から10馬身差をつけられて6着に終わっていた)に1馬身3/4差をつけて勝利した。
さらに翌月にはノーフォークSと同じサンタアニタパーク競馬場で行われたBCジュヴェナイル(GⅠ・AW8.5F)に参戦した。ブリーダーズフューチュリティを勝ってきたノーブルズプロミス、ホープフルS3着・ブリーダーズフューチュリティ2着のエイケナイト、サラトガスペシャルS・ベルモントフューチュリティSを連勝してきたディーファニーボーン、ピルグリムSを7馬身1/4差で圧勝してきたエスケンデレイヤ、プルジョン、ホープフルS2着・シャンペンS3着のアスパイアといった米国調教馬が主な対戦相手だったが、オールウェザー2年目のブリーダーズカップだったためか、ミドルパークS2着・ナンソープS3着の実績があったノーフォークS勝ち馬レディオヘッド、デューハーストSを勝ってきたベートーヴェン、愛フェニックスS・レイルウェイS勝ち馬アルフレッドノーベル、ドバイのゴドルフィンが送り込んできた伊グランクリテリウム2着馬ヴェイルオブヨークといった米国外からの参戦馬も目立っていた。本馬が単勝オッズ3.2倍の1番人気、ノーブルズプロミスが単勝オッズ7倍の2番人気、エイケナイトが単勝オッズ7.1倍の3番人気、ディーファニーボーンが単勝オッズ7.7倍の4番人気と、やはり上位人気は地元米国調教馬が占めていた。
スタートが切られるとアーリントンワシントンフューチュリティ3着馬ピスチテッリが単騎で先頭に立ち、2~3馬身ほど後方に2番手がディーファニーボーン、ノーブルズプロミスやエイケナイトが3~4番手で、本馬は馬群の中団後方からレースを進めた。しかし本馬は大外枠発走だったために大外を走らされており、コースロスが大きい分だけ、道中でなかなか順位を上げる事が出来なかった。そのために四角を回って直線に入ってきてもまだ7番手。ここから猛然と追い上げてきたが、直線入り口で内埒沿いの3番手から馬場の真ん中に持ち出すとゴール直前で一気に伸びた単勝オッズ31.6倍の伏兵ヴェイルオブヨークに頭差届かずに2着に敗れた。
BCジュヴェナイルを勝っていたら2歳戦はそこで終了だったかもしれないが、翌月のキャッシュコールフューチュリティ(GⅠ・AW8.5F)にも出走した。このレースは本馬と、BCジュヴェナイルで本馬から半馬身差の3着だったノーブルズプロミスによる完全なる一騎打ちムードであり、本馬が単勝オッズ1.3倍の1番人気、ノーブルズプロミスが単勝オッズ3.3倍の2番人気で、メイクミュージックフォーミーを含む他の出走馬5頭は全て単勝オッズ24.5倍以上の低評価だった。
スタートが切られると3番人気のザプログラムが先頭に立ち、本馬とノーブルズプロミスは互いをマークするかのように3~4番手につけた。三角手前で本馬がワンテンポ早く仕掛けると、ノーブルズプロミスもそれを追って進出を開始。本馬がノーブルズプロミスに1~2馬身ほどの差をつけた状態で直線に入ってきた。ここからノーブルズプロミスは徐々に本馬との差を縮め、逃げたザプログラムもよく粘り、後方からはメイクミュージックフォーミーも追い込んできたが、それら全てを退けた本馬が2着ノーブルズプロミスに3/4馬身差をつけて勝利した。
2歳時は6戦5勝(うちGⅠ競走3勝)の成績を残し、BCジュヴェナイルを勝たなかった馬としては、2004年のデクランズムーン(不出走)以来5年ぶりにエクリプス賞最優秀2歳牡馬に選出された。
競走生活(3歳時)
3歳時は、3月に米国中南部のアーカンソー州オークローンパーク競馬場で行われたレベルS(GⅡ・D8.5F)から始動した。同じくこの年初戦のノーブルズプロミスの姿もあったが、ここにはもう1頭、ダブリンという強敵の姿もあった。前年のホープフルSを勝ったダブリンはその後に一時期スランプに陥っていたが、前走サウスウエストSで僅差2着して復活の兆しを見せていた。本馬が単勝オッズ2.1倍の1番人気、ダブリンが単勝オッズ2.4倍の2番人気、ノーブルズプロミスが単勝オッズ6.2倍の3番人気となった。
スタートが切られると最低人気馬ロイヤルエクスプレスが先頭に立ち、ノーブルズプロミスは馬群の中間4番手、本馬が少し離れた5番手で、ダブリンがさらに少し離れた6番手につけた。有力馬3頭の中で真っ先に仕掛けたのは一番後ろにいたダブリンで、向こう正面で本馬をかわしていった。ダブリンが上がってきたのを確認したノーブルズプロミスも加速を開始。向こう正面で躓いて仕掛けがワンテンポ遅れた本馬も加速して、ノーブルズプロミス、ダブリン、本馬の順番で直線に入ってきた。この中からまずダブリンが脱落し、本馬とノーブルズプロミスの好敵手2頭による争いとなった。そして本馬が頭差で勝利を収めた。
そのまま7週間後のケンタッキーダービーを目指してケンタッキー州に向かうかと思われたが、いったん地元に戻ってサンタアニタダービー(GⅠ・AW9F)に出走した。サンヴィンセントS・サンフェリペSを連勝してきたシドニーズキャンディ、シャムSを勝ってきたアルフィーズベット、ロバートBルイスS勝ち馬カラコータド、シャムSで2着してきたセツコなどが主な対戦相手だった。本馬が単勝オッズ1.8倍の1番人気に支持され、シドニーズキャンディが単勝オッズ4.8倍の2番人気、アルフィーズベットが単勝オッズ8.1倍の3番人気となった。
スタートが切られるとシドニーズキャンディが先頭に立ち、本馬は3~4番手の好位につけた。四角でシドニーズキャンディが加速して一気に後続を引き離したが、本馬は馬群の中に包まれており、それを追撃していく事が出来なかった。直線に入っても本馬は内埒に接触するなど窮屈な競馬を強いられ、シドニーズキャンディを捕らえるどころか、最後方から追い込んできたセツコにかわされてしまい、勝ったシドニーズキャンディから6馬身差の3着に敗れてしまった。
前哨戦で完敗を喫した本馬だが、そのまま東上してケンタッキーダービー(GⅠ・D10F)に参戦した。レース直前まで大本命とされていたのは、BCジュヴェナイルこそ9着だったが3歳になって急成長し、ファウンテンオブユースSを8馬身半差で、ウッドメモリアルSを9馬身3/4差で連続圧勝していたエスケンデレイヤだったが、直前になって左前脚を負傷したため回避(そのまま引退)してしまい、一転して混戦模様となった。本馬以外の出走馬は、シドニーズキャンディ、レベルS3着後にアーカンソーダービーでも3着してきたダブリン、レベルS2着後のアーカンソーダービーで5着に終わっていたノーブルズプロミス、キャッシュコールフューチュリティで3着に終わっていたメイクミュージックフォーミーといった既対戦組に加えて、ケンタッキージョッキークラブS勝ち馬でアーカンソーダービー2着のスーパーセイヴァー、フリゼットS・ボニーミスSを勝って挑んできた牝馬デヴィルメイケア、ゴーサムS勝ち馬でウッドメモリアルS3着のオーサムアクト、フロリダダービーを勝ってきたアイスボックス、パームビーチS勝ち馬でブルーグラスS2着のパディオプラード、ルイジアナダービーを勝ってきたミッションインパジブル、アーカンソーダービーを勝ってきたラインオブデーヴィッド、ブルーグラスSを勝ってきたステイトリーヴィクター、ホーリーブルS・ファウンテンオブユースS・ウッドメモリアルSで連続3着のジャクソンベンド、バッシュフォードマナーS・サンフォードS勝ち馬バックトーク、イリノイダービーを勝ってきたアメリカンライオン、レーンズエンドSを勝ってきたディーンズキトゥン、サンラファエルS・サウスウエストS勝ち馬コンヴェイアンス、シャンペンS勝ち馬ホームボーイクリス、リズンスターS勝ち馬でベルモントフューチュリティS・シャンペンS2着のディスクリートリーマインといった面々だった。本馬が単勝オッズ7.3倍の1番人気に支持され、スーパーセイヴァーが単勝オッズ9倍の2番人気、シドニーズキャンディが単勝オッズ10.5倍の3番人気、デヴィルメイケアが単勝オッズ11.9倍の4番人気と続いており、単勝一桁台は2頭だけという状況だった。
田圃のような泥だらけの不良馬場の中でスタートが切られるとコンヴェイアンスが先頭に立ち、シドニーズキャンディが2番手、スーパーセイヴァーが6番手の好位につけ、最内枠発走の本馬はゲートを出た直後に外側によれて他馬と接触したためか行き脚が付かず、20頭中の後方3番手の位置取りとなった。コンヴェイアンスが刻んだペースは最初の2ハロンが22秒63、半マイル通過が46秒16と不良馬場のレースとしてはかなり速く、三角に入る辺りで前に行った馬達は次第に失速してきた。その代わりに内側を通って進出したのが好位を追走していたスーパーセイヴァーで、直線入り口では既に先頭に立っていた。一方の本馬に目をやると、馬群の中団までは位置取りを上げては来ていたが、まだスーパーセイヴァーまではかなりの差があった。直線では馬群の間を縫うように末脚を伸ばしたが、特に目立つ伸びではなく、そのまま6着でゴールイン。レースは直線入り口で本馬より後方の位置取りから追い上げて3着パディオプラードを首差かわしたアイスボックスに2馬身半差をつけたスーパーセイヴァーが勝利を収めた。スーパーセイヴァーから7馬身差をつけられた本馬は、メイクミュージックフォーミー(4着)やノーブルズプロミス(5着)といった過去に1度も負けた事がない相手にも先着されてしまった。
そしてこのレース後、本馬陣営は「ゴメス騎手の騎乗内容に不満があるわけではありません」としながらも「運に恵まれていないので、鞍上を変えてツキを変えてみることにします」と語り、本馬の主戦をマルティン・ガルシア騎手に交代させる事を表明した。向こう正面で躓いたレベルS、馬群に包まれたサンタアニタダービー、そしてケンタッキーダービーと3戦連続でトラブルに見舞われていたため、陣営が鞍上の交代を決断したのは止むを得なかったかもしれない。
次走のプリークネスS(GⅠ・D9.5F)では、スーパーセイヴァー、パディオプラード、前走7着のダブリン、同12着のジャクソンベンドの他に、ウッドメモリアルS4着馬スクールヤードドリームズ、ゴーサムS・イリノイダービーで2着してきたヤワンナツイスト、サンタアニタダービー4着から直行してきたカラコータド、フロリダダービー2着馬プレザントプリンス、ブルーグラスS3着馬ファーストデュード、ダービートライアルSで2着してきたBCジュヴェナイル5着馬エイケナイト、レーンズエンドS2着馬ノーザンジャイアントが対戦相手となった。スーパーセイヴァーが単勝オッズ2.9倍の1番人気に支持され、本馬が単勝オッズ3.4倍の2番人気、パディオプラードが単勝オッズ8.5倍の3番人気となった。
スタートが切られると単勝オッズ24.8倍の伏兵ファーストデュードが先頭に立ち、スーパーセイヴァーが2番手、本馬は馬群の中団好位6番手につけた。そのままの態勢で三角に差し掛かると、スーパーセイヴァーが先頭のファーストデュードに並びかけようとしたが明らかに手応えが悪く、本馬を含む後続馬勢が代わりにファーストデュードへと迫っていった。その中で最も脚色が良かったのは外側を駆け上がってきた本馬で、直線入り口で先頭に立った。ここからファーストデュードが予想外の粘りを発揮したため2頭の馬体が併さって叩き合いとなり、さらには後方からジャクソンベンドやヤワンナツイストも追い上げてきたが、本馬が凌ぎきって2着ファーストデュードに3/4馬身差で優勝。スーパーセイヴァーは8着に沈んだ。
ベルモントSには出走せずにしばらく休養を取り、プリークネスSから2か月半後のハスケル招待S(GⅠ・D9F)に向かった。対戦相手は、ベルモントSで3着してきたファーストデュード、プリークネスSから直行してきたスーパーセイヴァー、ケンタッキーダービー2着後に出走したベルモントSで8着に終わっていたアイスボックス、ロングブランチSなど4連勝中の上がり馬トラッペショットなど6頭だった。本馬が単勝オッズ2.2倍の1番人気、勢いが買われたトラッペショットが単勝オッズ3.8倍の2番人気、ファーストデュードが単勝オッズ6.2倍の3番人気で、スーパーセイヴァーは単勝オッズ7.3倍の4番人気止まりだった。
スタートが切られると今回もファーストデュードが先頭に立ち、スーパーセイヴァーが2~3番手を先行。本馬はスーパーセイヴァーから少し離れた4番手につけた。そして三角に入ったところで外側から仕掛けてスーパーセイヴァーに並びかけ、四角途中で先頭に立った。そのまま直線に入ると後続を突き放し、2着に追い上げてきたトラッペショットに4馬身差をつけて圧勝した。
しかしレース直後に熱発を起こしたために1か月ほど調教を休む事になった。回復後は、この年はチャーチルダウンズ競馬場で行われるBCクラシックを目指して、米国中西部のインディアナ州(ケンタッキー州の北側にある)にあるフージャーパーク競馬場で10月に行われるインディアナダービー(GⅡ・D8.5F)に出走。あまり目立つ対戦相手はいなかったため、本馬が単勝オッズ1.4倍の1番人気に支持され、イロコイS勝ち馬ジスキーハズノーリミットが単勝オッズ7倍の2番人気となった。特にスタートで出遅れたわけではなかった本馬だが、不良馬場のため行き脚がつかなかったのか、道中は9頭立ての最後方を追走した。しかし向こう正面途中から加速をはじめると、三角から四角にかけて一気に位置取りを上げてきた。そして先に抜け出していたジスキーハズノーリミットを直線で悠々と差し切り、1馬身1/4差をつけて勝利した。
そして迎えた本番のBCクラシック(GⅠ・D10F)。しかしこのレースにおける主役は本馬ではなく、前年の覇者にしてデビューから19戦無敗(うちGⅠ競走13勝)を誇っていた稀代の名牝ゼニヤッタだった。他の対戦相手は、スティーヴンフォスターH・ホイットニーH・ファイエットS・クラークHなどの勝ち馬ブレイム、フロリダダービー・ドンH・メトロポリタンH・ウッドワードSとGⅠ競走4勝のクオリティロード、ジョッキークラブ金杯・サバーバンHなどの勝ち馬ヘインズフィールド、ドワイヤーS勝ち馬でベルモントS・トラヴァーズS2着のフライダウン、前年のケンタッキーダービーとプリークネスSで共に3着だったイリノイダービー勝ち馬マスケットマン、プリークネスS6着後にいったん芝路線に転向してコロニアルターフC・ヴァージニアダービー・セクレタリアトSを勝っていたパディオプラード、ハスケル招待S3着後にトラヴァーズS3着・ペンシルヴァニアダービー2着と堅実に走っていたファーストデュード、かしわ記念2回・マイルCS南部杯・ジャパンCダート・フェブラリーSを勝って日本から遠征してきたエスポワールシチーなどだった。ゼニヤッタが単勝オッズ2倍の1番人気に支持され、本馬が単勝オッズ5.9倍の2番人気、かつての相棒ゴメス騎手騎乗のブレイムが単勝オッズ6.2倍の3番人気となった。
スタートが切られると、ファーストデュードを筆頭に、クオリティロード、エスポワールシチー、ヘインズフィールドの4頭が激しく先頭争いを演じ始め、本馬とブレイムはそれから大きく離れた6~7番手の好位、ゼニヤッタは馬群から大きく離された最後方につけた。先頭集団の4頭は三角に入ると揃って脚色が衰え始め、本馬とブレイムの2頭が代わりに上がっていった。そして直線入り口でブレイムと共に先頭に立ったのだが、ここから今ひとつ伸びを欠き、ブレイムに少しずつ離されていった。そして外側から猛然と追い上げてきたゼニヤッタにも残り100ヤード地点で瞬く間にかわされた。レースはブレイムがゼニヤッタの追撃を頭差で凌ぎきってゼニヤッタに最初で最後の黒星をつけ、ゴール直前でフライダウンに首差かわされた本馬は、ブレイムから3馬身3/4差の4着に敗れた。
実は本馬はレース1週間前に感染症を患って咳が出ていたらしく、調教も不十分だったし、薬物検査に引っかかる危険があったため抗生物質の投与にも制限がかかっていた。そんな状態(一応レース当日には健康体に戻っていたとされてはいたが)での出走だった事を考慮すると、よく走った部類だろう。これが現役最後のレースとなった。
この年7戦4勝(うちGⅠ競走2勝)の成績だった本馬だが、同世代の牡馬に目立つ活躍をした馬がいなかったため、230票中224票という圧倒的な得票数でエクリプス賞最優秀3歳牡馬に選出された。
前年のエクリプス賞最優秀2歳牡馬がエクリプス賞最優秀3歳牡馬も受賞したのは、1979年のスペクタキュラービッド以来31年ぶり史上5頭目だった(本馬以降にはアメリカンファラオのみ)。ちなみに他の3頭はセクレタリアト、シアトルスルー、アファームドであり、スペクタキュラービッドとアメリカンファラオも含めて超大物ばかりであるから、これは自慢できる事である。
また、本馬は後続に大きな差をつけて勝つ事が少ない馬で、合計9勝で2着馬につけた着差合計は僅か11馬身、1戦平均1馬身1/4差弱だった。4馬身差で勝ったハスケル招待Sを除けば1戦平均1馬身差を割り込む(3/4馬身差強)計算になる。
血統
Smart Strike | Mr. Prospector | Raise a Native | Native Dancer | Polynesian |
Geisha | ||||
Raise You | Case Ace | |||
Lady Glory | ||||
Gold Digger | Nashua | Nasrullah | ||
Segula | ||||
Sequence | Count Fleet | |||
Miss Dogwood | ||||
Classy 'n Smart | Smarten | Cyane | Turn-to | |
Your Game | ||||
Smartaire | Quibu | |||
Art Teacher | ||||
No Class | Nodouble | Noholme | ||
Abla-Jay | ||||
Classy Quillo | Outing Class | |||
Quillopoly | ||||
Private Feeling | Belong to Me | Danzig | Northern Dancer | Nearctic |
Natalma | ||||
Pas de Nom | Admiral's Voyage | |||
Petitioner | ||||
Belonging | Exclusive Native | Raise a Native | ||
Exclusive | ||||
Straight Deal | Hail to Reason | |||
No Fiddling | ||||
Regal Feeling | Clever Trick | Icecapade | Nearctic | |
Shenanigans | ||||
Kankakee Miss | Better Bee | |||
Golden Beach | ||||
Sharp Belle | Native Charger | Native Dancer | ||
Greek Blond | ||||
Sleek Dancer | Northern Dancer | |||
Victorine |
父スマートストライクは当馬の項を参照。
母プライヴェートフィーリングは現役成績7戦2勝。本馬の半兄ケンセイ(父ミスターグリーリー)【ドワイヤーS(米GⅡ)・ジムダンディS(米GⅡ)・サルヴェイターマイルS(米GⅢ)】も産んでいる。プライヴェートフィーリングの半姉グランドチャーマー(父ロードエイヴィー)はパッカーアップS(米GⅢ)の勝ち馬で、グランドチャーマーの孫には2006年のエクリプス賞最優秀3歳牝馬ウェイトアホワイル【アメリカンオークス(米GⅠ)・イエローリボンS(米GⅠ)2回・ダヴォナデイルS(米GⅡ)・レイクプラシッドS(米GⅡ)・ボールストンスパH(米GⅡ)2回・サンゴルゴーニオH(米GⅡ)】がいる。プライヴェートフィーリングの祖母シャープベルはモンマスオークス(米GⅠ)の勝ち馬。シャープベルの甥にはサーハリールイス【愛ダービー(愛GⅠ)】、シャープベルの姪の子には日本で走ったチョウカイキャロル【優駿牝馬(GⅠ)】がいる。→牝系:F9号族②
母父ビロングトゥミーはダンチヒ産駒で、現役成績は16戦7勝。ベストターンS(米GⅢ)・ブージャムH(米GⅢ)を勝った程度の競走馬だったが、種牡馬としては多くのGⅠ競走勝ち馬を出して成功した。牡馬よりも牝馬の活躍馬が目立っているのが特徴である。
競走馬引退後
競走馬を引退した本馬はクールモアグループに購入され、ケンタッキー州アッシュフォードスタッドで種牡馬入りした。種付け料は3万5千ドルと比較的安価な設定だった事もあり、初年度から100頭を優に超える繁殖牝馬を集めた。クールモア繋養種牡馬であるから、当然豪州にもシャトルされている。
主な産駒一覧
生年 |
産駒名 |
勝ち鞍 |
2012 |
Lucky Player |
イロコイS(米GⅢ) |
2012 |
Breaking Lucky |
加プリンスオブウェールズS |
2012 |
Madefromlucky |
ピーターパンS(米GⅡ)・ウエストヴァージニアダービー(米GⅡ) |