キングズベスト
和名:キングズベスト |
英名:King's Best |
1997年生 |
牡 |
鹿毛 |
父:キングマンボ |
母:アレグレッタ |
母父:ロンバルト |
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英2000ギニーでジャイアンツコーズウェイを一蹴して優勝を果たした超良血馬は種牡馬としても活躍中 |
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競走成績:2・3歳時に英愛で走り通算成績6戦3勝2着1回 |
誕生からデビュー前まで
馬産団体のM3エレヴァージュにより生産された米国産馬である。誕生時点では父キングマンボの初年度産駒はデビュー直前でありその種牡馬としての資質は未知数であったが、本馬自身は凱旋門賞馬アーバンシーの半弟という良血馬であり、やはり期待は大きかったと思われる。1歳8月に仏国ドーヴィルで行われたセリに出品され、ドバイの王族サイード・スハイル殿下の代理人チャーリー・ゴードン・ワトソン氏により230万フランという高額で購入され、英国サー・マイケル・スタウト調教師に預けられた。
競走生活(2歳時)
2歳8月にニューマーケット競馬場で行われた芝7ハロンの未勝利ステークスでデビュー。ゲイリー・スティーヴンス騎手を鞍上に、単勝オッズ2.5倍の1番人気に支持された。レースでは先行して残り1ハロン地点で抜け出し、2着ジャラドに2馬身差をつけて楽勝した。
それから11日後に出走したエイコムS(英GⅢ・T6F)では、単勝オッズ1.57倍の1番人気に支持された。ここでもスティーヴンス騎手を鞍上に、先行して残り2ハロン地点から加速すると、そのまま2着シャムロックシティに2馬身差をつけて楽勝した。なお、このレースには同世代の有力馬ジャイアンツコーズウェイも出走予定だったが回避しており、2頭の直接対決が見られるのはもう少し先の話になる。2歳時における比較では、このエイコムSで本馬から2馬身1/4差の3着だったレースリーダーが、ちょうど1か月後のサラマンドル賞でジャイアンツコーズウェイの2馬身差2着になっている。
3戦目は10月のデューハーストS(英GⅠ・T7F)となった。英シャンペンSを勝ってきたディスタントミュージック、愛フューチュリティSでジャイアンツコーズウェイの2馬身半差2着、ミドルパークSで3着だったブラームス(後のハリウッドダービー勝ち馬)など4頭が対戦相手となった。ディスタントミュージックが単勝オッズ1.67倍の1番人気で、キーレン・ファロン騎手を鞍上に出走した本馬は単勝オッズ3.75倍の2番人気だった。しかしレース序盤でファロン騎手が抑え過ぎて折り合いを欠いた本馬は、ゴール前で左側によれて失速してしまい、勝ったディスタントミュージックから5馬身3/4差の5着最下位に敗退。2歳時の成績は3戦2勝となった。
競走生活(3歳時)
3歳時は英2000ギニーを目指して4月のクレイヴンS(英GⅢ・T8F)から始動した。ロベールパパン賞・アングルシーSの勝ち馬で英シャンペンS2着のロッシーニ、ヴィンテージSの勝ち馬でレーシングポストトロフィー3着のエクラール(翌年の香港ヴァーズでステイゴールドの2着になった事で日本でも知られる)、ホーリスヒルSの勝ち馬ユミスティム、後にウインターヒルSを2連覇するアディラバドなど、英2000ギニーを目指す有力馬が複数参戦してきた。ロッシーニが単勝オッズ2.75倍の1番人気、本馬が単勝オッズ4.5倍の2番人気、エクラールが単勝オッズ5倍の3番人気、ユミスティムが単勝オッズ9倍の4番人気となった。今回も本馬の鞍上はファロン騎手だったが、またしても折り合いを欠いてしまい、早い段階から前方に進出。残り2ハロン地点で仕掛けて先頭に立ったが、ゴール前で左側によれたところを、後方から来たユミスティムに差されて1馬身差の2着に敗れた。
本番の英2000ギニー(英GⅠ・T8F)では、27頭立てという多頭数となった(過去に本馬が経験したのはデビュー戦の8頭立てが最高)。数だけでなく質も充実しており、愛フューチュリティS・サラマンドル賞・グラッドネスSなど4戦無敗のジャイアンツコーズウェイ、グリーナムSで2着してきたディスタントミュージック、そのグリーナムSの勝ち馬で、仏グランクリテリウムでは1位入線2着降着だったバラシアゲスト、ヨーロピアンフリーHを勝ってきたケープタウン、ミルリーフS・ミドルパークSなど5連勝中のプリモヴァレンティノ、ミドルパークS2着馬フェイス、サースククラシックトライアルSの2着馬で8戦5勝2着2回のエピックエクスプレス、レイルウェイSの勝ち馬バーンスタイン、後のクイーンエリザベスⅡ世S勝ち馬サモナー、サースククラシックトライアルSを勝ってきたレースリーダー、前走で本馬を破ったユミスティムと、有力馬がずらりと並んだ。ジャイアンツコーズウェイが単勝オッズ4.5倍の1番人気に支持され、ディスタントミュージックが単勝オッズ6.5倍の2番人気、ファロン騎手が騎乗する本馬が単勝オッズ7.5倍の3番人気、バラシアゲストとケープタウンが並んで単勝オッズ13倍の4番人気と続いた。
スタートが切られるとプリモヴァレンティノが先手を取り、ジャイアンツコーズウェイ、ユミスティム、ケープタウン、エピックエクスプレス、バーンスタインなどがそれを追って先行。一方の本馬は馬群の中団につけた。今回はファロン騎手と呼吸がぴったり合っており、気持ちよさそうに走っていた。やがてジャイアンツコーズウェイが仕掛けてそのまま押し切ろうとしたが、残り2ハロン地点で馬群を捌いて抜け出した本馬がジャイアンツコーズウェイを並ぶ間もなく差し切った。そして2着ジャイアンツコーズウェイに3馬身半差、3着バラシアゲストにはさらに1馬身半差をつけて完勝した。この3馬身半差という着差は英2000ギニーでは滅多に見られない大きな差であり、遡ると1993年のザフォニックが同じ3馬身半差で勝っているのが目立つ程度で、これより大きい差は1947年のテューダーミンストレル(8馬身差)まで遡らないと見当たらない(本馬以降にこれより大きい差で勝った馬には、2011年に6馬身差で勝ったフランケルと、2013年に5馬身差で勝ったドーンアプローチの2頭がいる)。
この後は英ダービーに出走予定で、前売りオッズでは1番人気に推されていたが、レース前日に後脚にひどい筋肉痛を起こしたために回避となってしまった。
その代わりに愛ダービー(愛GⅠ・T12F)に向かった。英2000ギニーに比べると出走頭数は少なく、本馬を含めて11頭だったが、質では見劣りせず、愛ナショナルS・デリンズタウンスタッドダービートライアルSの勝ち馬で本馬不在の英ダービーも勝ってきたシンダー、仏ダービーなど3連勝中のホールディングコート、ガリニュールSを快勝してきたグラインドボーン、仏グランクリテリウム(2位入線だったがバラシアゲストの降着により繰り上がり)・リュパン賞の勝ち馬シーロ、後のメルボルンC勝ち馬メディアパズルなどが対戦相手となった。シンダーが単勝オッズ2.1倍の1番人気、ホールディングコートが単勝オッズ3.25倍の2番人気、本馬が単勝オッズ4.5倍の3番人気、グラインドボーンが単勝オッズ17倍の4番人気だった。しかし本馬はスタートから後方のままであり、そしてレース半ばで右前脚の管骨を骨折して競走中止(レースはシンダーが2着グラインドボーンに9馬身差で圧勝)。不幸中の幸いで生命には別状無かったが、そのまま3歳時3戦1勝の成績で競走馬を引退することになった。
結局本馬は能力の底を見せることなく引退となったが、英2000ギニーで圧倒したジャイアンツコーズウェイがこの後に大活躍してカルティエ賞年度代表馬に選ばれたことで、本馬の評価も上がっている。本馬を管理したスタウト師は「彼は私が手掛けた中で最も優れたマイラーでした」と評している。
血統
Kingmambo | Mr. Prospector | Raise a Native | Native Dancer | Polynesian |
Geisha | ||||
Raise You | Case Ace | |||
Lady Glory | ||||
Gold Digger | Nashua | Nasrullah | ||
Segula | ||||
Sequence | Count Fleet | |||
Miss Dogwood | ||||
Miesque | Nureyev | Northern Dancer | Nearctic | |
Natalma | ||||
Special | Forli | |||
Thong | ||||
Pasadoble | Prove Out | Graustark | ||
Equal Venture | ||||
Santa Quilla | Sanctus | |||
Neriad | ||||
Allegretta | Lombard | Agio | Tantieme | Deux-Pour-Cent |
Terka | ||||
Aralia | Alchimist | |||
Aster | ||||
Promised Lady | Prince Chevalier | Prince Rose | ||
Chevalerie | ||||
Belle Sauvage | Big Game | |||
Tropical Sun | ||||
Anatevka | Espresso | Acropolis | Donatello | |
Aurora | ||||
Babylon | Bahram | |||
Clairvoyante | ||||
Almyra | Birkhahn | Alchimist | ||
Bramouse | ||||
Alameda | Magnat | |||
Asterblute |
父キングマンボは当馬の項を参照。
母アレグレッタは9戦2勝の競走成績ながら繁殖としては大変優秀で、本馬の半姉アーバンシー(父ミスワキ)【凱旋門賞(仏GⅠ)・アルクール賞(仏GⅡ)・エクスビュリ賞(仏GⅢ)・ゴントービロン賞(仏GⅢ)】、半姉アレレトロワ(父リヴァーマン)【フロール賞(仏GⅢ)】なども産んだ。母系からは、アーバンシーの子であるアーバンオーシャン【ガリニュールS(愛GⅢ)】、種牡馬として猛威を振るっているガリレオ【英ダービー(英GⅠ)・愛ダービー(愛GⅠ)・キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS(英GⅠ)・デリンズタウンスタッドダービートライアルS(愛GⅢ)】、ブラックサムベラミー【伊ジョッキークラブ大賞(伊GⅠ)・タタソールズ金杯(愛GⅠ)】、オールトゥビューティフル【ミドルトンS(英GⅢ)】、マイタイフーン【ダイアナS(米GⅠ)・ミセスリヴィアS(米GⅡ)・ボールストンスパH(米GⅡ)・ジャストアゲームH(米GⅡ)・ミントジュレップH(米GⅢ)・ジェニーワイリーS(米GⅢ)】、2009年のカルティエ賞年度代表馬シーザスターズ【英2000ギニー(英GⅠ)・英ダービー(英GⅠ)・エクリプスS(英GⅠ)・英国際S(英GⅠ)・愛チャンピオンS (愛GⅠ)・凱旋門賞(仏GⅠ)・ベレスフォードS(愛GⅡ)】を始め、アレレトロワの子であるアナバーブルー【仏ダービー(仏GⅠ)】、本馬の半姉アンジル(父プラグドニックル)の子であるアンジレロ【ドイツ賞(独GⅠ)】など数々の活躍馬が出ており、現代欧州競馬におけるトップクラスの名牝系である。→牝系:F9号族①
母父ロンバルトはアーバンシーの項を参照。
競走馬引退後
競走馬を引退した本馬は、ダーレーグループ傘下の愛国キルダンガンスタッドにおいて種付け料2万5千ポンドで種牡馬入りした。初年度から豪州でもシャトル供用され、2007年には亜国でも供用された。初年度産駒から2頭のGⅠ競走勝ち馬を出す順調なスタートを切ったが、その後の産駒成績が期待ほどには伸びなかったため、2009年に愛国から仏国ロジ牧場に移動した。しかし2010年にはワークフォースが英ダービーと凱旋門賞を、日本ではエイシンフラッシュが東京優駿を優勝して種牡馬としての名声を高めた。この2010年には仏首位種牡馬に輝いている。
エイシンフラッシュが後に天皇賞秋も制した事やダイヤモンドS勝ち馬コスモメドウの活躍により日本における注目度は一層高まり、2013年からは日本のダーレージャパンスタリオンコンプレックスで供用されている。種付け料が150万円と実績にしては安価に設定されている影響もあってか、日本供用初年度は174頭、2年目は128頭の繁殖牝馬を集めており、かなりの人気種牡馬となっている。
主な産駒一覧
生年 |
産駒名 |
勝ち鞍 |
2002 |
Dubai Surprise |
リディアテシオ賞(伊GⅠ)・プレステージS(英GⅢ) |
2002 |
Notability |
エッティンゲンレネン(独GⅡ) |
2002 |
Oiseau Rare |
ロワイヤリュー賞(仏GⅡ)・ミネルヴ賞(仏GⅢ) |
2002 |
Proclamation |
サセックスS(英GⅠ)・ジャージーS(英GⅢ) |
2003 |
Best Alibi |
ヨークS(英GⅡ) |
2003 |
Best Name |
プランスドランジュ賞(仏GⅢ) |
2003 |
Queen's Best |
ウインターヒルS(英GⅢ) |
2004 |
Creachadoir |
ロッキンジS(英GⅠ)・レパーズタウン2000ギニートライアルS(愛GⅢ)・テトラークS(愛GⅢ)・ジョエルS(英GⅢ) |
2004 |
King's Apostle |
モーリスドギース賞(仏GⅠ)・ダイアデムS(英GⅡ) |
2004 |
Not Just Swing |
エドヴィル賞(仏GⅢ) |
2004 |
Spice Route |
エルクホーンS(米GⅡ)・トロピカルターフH(米GⅢ)・シングスピールS(加GⅢ) |
2005 |
Albabilia |
スウィートソレラS(英GⅢ) |
2005 |
Ancien Regime |
スプリントS(英GⅢ) |
2005 |
Calming Influence |
ゴドルフィンマイル(首GⅡ) |
2005 |
Dirar |
エボアH |
2006 |
Allybar |
マクトゥームチャレンジR2(首GⅢ) |
2006 |
Royal Diamond |
愛セントレジャー(愛GⅠ)・愛セントレジャートライアルS(愛GⅢ)・英チャンピオンズ長距離C(英GⅢ) |
2007 |
Best Dating |
パン賞(仏GⅢ) |
2007 |
Modun |
セプテンバーS(英GⅢ) |
2007 |
Sajjhaa |
ジェベルハッタ(首GⅠ)・ドバイデューティーフリー(首GⅠ)・ケープヴェルディS(首GⅡ)・バランシーンS(首GⅡ)・セルジオクマニ賞(伊GⅢ) |
2007 |
Simon de Montfort |
フォルス賞(仏GⅢ) |
2007 |
英ダービー(英GⅠ)・凱旋門賞(仏GⅠ)・ブリガディアジェラードS(英GⅢ) |
|
2007 |
エイシンフラッシュ |
東京優駿(GⅠ)・天皇賞秋(GⅠ)・毎日王冠(GⅡ)・京成杯(GⅢ) |
2007 |
コスモメドウ |
ダイヤモンドS(GⅢ) |
2008 |
Dalarua |
プシシェ賞(仏GⅢ) |
2008 |
Mighty Mouse |
アウフギャロップ大賞(独GⅢ) |
2008 |
Regarde Moi |
キウスーラ賞(伊GⅢ) |
2009 |
Kesampour |
グレフュール賞(仏GⅡ) |
2009 |
Meleagros |
エドヴィル賞(仏GⅢ) |
2010 |
Gengis |
フォンテーヌブロー賞(仏GⅢ) |
2011 |
Clara Baby |
ルイズフェルナンドシルネリマ大賞(伯GⅢ) |
2011 |
Itacare |
ペドロチャパル賞(亜GⅢ) |
2012 |
Ming Dynasty |
コンセイユドパリ賞(仏GⅡ) |