ダンシリ

和名:ダンシリ

英名:Dansili

1996年生

鹿毛

父:デインヒル

母:ハシリ

母父:カヤージ

現役時代はマイル路線でGⅠ競走を勝ち切れなかったが種牡馬として10ハロン以上の距離を得意とする大物を次々輩出して仏首位種牡馬にも輝く

競走成績:2~4歳時に仏英米で走り通算成績14戦5勝2着4回3着3回

誕生からデビュー前まで

本馬の後にGⅠ競走の勝ち馬を5頭も産む超繁殖牝馬ハシリの初子として、サウジアラビアのハーリド・ビン・アブドゥッラー王子が所有する米国ケンタッキー州ジュドモントファームで誕生した。アブドゥッラー王子の所有馬として、仏国のアンドレ・ファーブル調教師に預けられた。

競走生活(2・3歳時)

2歳10月にロンシャン競馬場で行われたブレゾン賞(T1600m)で、主戦となるオリビエ・ペリエ騎手を鞍上にデビュー。スタートからゴールまで終始馬群を引っ張り続け、そのまま2着ベダウィンに半馬身差をつけて逃げ切った。

2歳時はこの1戦で終え、3歳時は仏2000ギニーを目標として、本番13日前にシャンティ競馬場で行われたラビリンス賞(T1600m)から始動した。ここでは2番手を追走し、残り300m地点で先頭に立って瞬く間に後続を引き離すという強い内容で、2着ティジールに4馬身差をつけて快勝した。

そして仏2000ギニー(仏GⅠ・T1600m)に駒を進めた。対戦相手は、仏グランクリテリウムの勝ち馬ウェイオブライト、グレフュール賞2着馬センダワール、デューハーストSの勝ち馬で英2000ギニー3着のムジャヒド、サラマンドル賞2着馬キングサルサ、ジュライS・ヨーロピアンフリーHの勝ち馬でミドルパークS2着のバートリーニ、シェーヌ賞の勝ち馬グラザレマ、愛フェニックスSの勝ち馬レイヴァリー、フォンテーヌブロー賞の勝ち馬インディアンデインヒル、フォンテーヌブロー賞2着馬ルロワシックなどだった。順調に来ている馬が全体的におらず、2戦2勝の成績と潜在能力が評価された本馬とウェイオブライトが並んで単勝オッズ4.4倍の1番人気に支持され、センダワールが単勝オッズ4.7倍の3番人気、ムジャヒドが単勝オッズ7.2倍の4番人気、キングサルサが単勝オッズ11.7倍の5番人気となった。

ペリエ騎手が同じファーブル厩舎所属のキングサルサ(馬主は異なる)に騎乗する事になったため、本馬にはティエリ・ジャルネ騎手が騎乗した。スタートが切られるとウェイオブライトが先頭に立ち、本馬やセンダワールは4~5番手の好位を追走した。そのままの態勢で直線に入ってくると、あまり伸びが無いウェイオブライトを残り300m地点でかわして先頭に立ったのは、本馬より一足先に仕掛けたセンダワールだった。その後方から本馬も追い上げてきたのだが、残り200m地点で脚色が同じになってしまい、勝ったセンダワールから1馬身半差の2着に敗れた。それでも3着キングサルサには3馬身差をつけており、今後の飛躍が期待された。

その後の選択肢としては仏ダービーも考えられたが、陣営は本馬をマイル路線に進める方針だったようで、仏ダービーと同日のジャンプラ賞(仏GⅠ・T1800m)に回った。仏ダービーと同日だけあってやや対戦相手は手薄であり、前走4着のウェイオブライト、同5着のインディアンデインヒル、同13着のルロワシック、ダンテS2着馬ゴールデンスネイク、同3着馬スリップストリームの計5頭が相手となった。本馬が単勝オッズ1.4倍の1番人気、ウェイオブライトが単勝オッズ5.3倍の2番人気、ゴールデンスネイクが単勝オッズ7倍の3番人気、インディアンデインヒルが単勝オッズ9.1倍の4番人気、スリップストリームが単勝オッズ9.3倍の5番人気であり、本馬が大本命となった。

ペリエ騎手が同じファーブル厩舎所属のインディアンデインヒル(馬主は異なる)に騎乗する事になったため、前走に続いて本馬にはジャルネ騎手が騎乗した。スタートが切られるとスリップストリームが先頭に立ち、本馬は今回それをゴールデンスネイクと一緒に積極的に追いかけた。そのままの態勢で直線に入ってきたのだが。スリップストリームやゴールデンスネイクよりも先に残り200m地点で失速。中団から差してきたインディアンデインヒルにもかわされてしまい、勝ったゴールデンスネイクから3馬身差の4着に敗退した。

次走は7月のメシドール賞(仏GⅢ・T1600m)となった。ギョームドルナノ賞・ダフニ賞の勝ち馬カブール、ギシュ賞2着馬マハブーブ、アスタルテ賞の勝ち馬ミスベルベールなどが対戦相手となった。ペリエ騎手が鞍上に戻ってきた本馬が単勝オッズ2.6倍の1番人気、カブールが単勝オッズ2.7倍の2番人気、マハブーブが単勝オッズ7.7倍の3番人気、ミスベルベールが単勝オッズ12倍の4番人気となり、馬券的には本馬とカブールの2頭の評価が高かった。

スタートが切られると単勝オッズ28倍の最低人気馬グリーンカードが先頭に立ち、本馬は4番手の好位、カブールはその少し後方の中団につけた。残り500m地点で早くも本馬が仕掛けて先頭に立ち、それを見計らっていたカブールもすぐに加速して、残り400m地点で本馬に並びかけようとしてきた。しかしここから本馬がさらに加速してカブールを突き放した。最後は2着カブールに4馬身差をつけて完勝した。

次走はメシドール賞と全く同じコースで行われる8月のジャックルマロワ賞(仏GⅠ・T1600m)となった。対戦相手は、英ダービーで1番人気に応えられず惨敗したため距離を縮めてユジェーヌアダム賞を勝ってきたドバイミレニアム、パリ大賞・ノアイユ賞・ロシェット賞の勝ち馬スリックリー、ジャンプラ賞5着から直行してきたウェイオブライト、グロット賞の勝ち馬ヴェニゼの4頭で、本馬を含めて全馬が3歳馬だった。本馬とドバイミレニアムが並んで単勝オッズ2.4倍の1番人気、スリックリーが単勝オッズ3.5倍の3番人気、ウェイオブライトが単勝オッズ7.9倍の4番人気となった。

スタートが切られるとドバイミレニアムが先頭に立ち、本馬が2番手を追走した。そして残り400m地点で仕掛けてドバイミレニアムに並びかけようとしたが、残り200m地点でドバイミレニアムが二の脚を使うと引き離されてしまった。3番手を進んでいたスリックリーにも抜かれてしまい、勝ったドバイミレニアムから3馬身半差の3着に敗れた。

その後はムーランドロンシャン賞(仏GⅠ・T1600m)に向かった。クイーンエリザベスⅡ世Sに向かったドバイミレニアムは不在であり、対戦相手は、スリックリー、前走4着のウェイオブライト、仏2000ギニー勝利後にセントジェームズパレスSも勝っていたセンダワール、サラマンドル賞・サセックスS・ヴィンテージSの勝ち馬でセントジェームズパレスS2着の前年のカルティエ賞最優秀2歳牡馬アルジャブル、ロッキンジS・ロンポワン賞・メシドール賞の勝ち馬でドバイデューティーフリー3着のフライトゥザスターズ、ミュゲ賞・トーマブリョン賞・ギシュ賞・エドモンブラン賞の勝ち馬でジャンプラ賞・ムーランドロンシャン賞・モーリスドギース賞2着・イスパーン賞3着のゴールドアウェイ、ロートシルト賞・シュマンドフェルデュノール賞の勝ち馬フィールドオブホープなどだった。センダワールが単勝オッズ1.8倍の1番人気、アルジャブルとフライトゥザスターズのカップリングが単勝オッズ2.6倍の2番人気、ゴールドアウェイがペースメーカー役サブリンスキーとのカップリングで単勝オッズ9.8倍の3番人気で、本馬は単勝オッズ10倍の4番人気まで評価を落とした。

スタートが切られるとフライトゥザスターズが先頭に立ち、スタートで出遅れたサブリンスキーがそれでもペースメーカーとしての役割を果たすべく加速してそれに並びかけていった。他馬勢はその2頭の後方に密集しており、本馬はその馬群の中でも前目につけていた。そして3番手で直線に入ると、逃げた2頭が失速するのと入れ代わって残り400m地点で先頭に立った。しかし本馬の少し後方で直線に入ってきたセンダワールに残り200m地点でかわされると、追い込んできたゴールドアウェイにゴール直前でかわされ、勝ったセンダワールから1馬身半差の3着に敗退した。3歳時はこれが最後のレースで、この年の成績は6戦2勝だった。

競走生活(4歳時)

4歳時は4月にサンクルー競馬場で行われたエドモンブラン賞(仏GⅢ・T1600m)から始動した。はっきりと書いてしまうと対戦相手のレベルは非常に低く、本馬が他の出走全馬より2kg重い斤量でも単勝オッズ1.6倍の1番人気に支持され、前走のリステッド競走アルティパン賞を勝ってきたバーテックスが単勝オッズ4.4倍の2番人気、そのアルティパン賞で2着だったディオネロが単勝オッズ9倍の3番人気となった。レースでは2番手を追走し、残り400m地点で仕掛けて残り200m地点で先頭に立ち、最後方から2着まで追い込んできた単勝オッズ52倍の最低人気馬イリダノスに2馬身差をつけて勝利した。

次走は翌5月に同じサンクルー競馬場で行われたミュゲ賞(仏GⅡ・T1600m)となった。対戦相手のレベルは前走と大きな差は無く、あえて書くなら、前年の仏2000ギニーで本馬から3馬身差の3着だった同厩馬キングサルサがやや手ごわい相手だった。本馬が単勝オッズ1.6倍の1番人気、キングサルサが単勝オッズ3倍の2番人気、前走から随分と評価を上げたイリダノスが単勝オッズ5.6倍の3番人気となった。ここでもペリエ騎手はキングサルサに騎乗したため、本馬にはクリストフ・スミヨン騎手が騎乗した。このレースには逃げ馬がいなかったため、スタートから本馬が押し出されて先頭に立った。しかしスミヨン騎手は的確なペースで本馬を逃げさせると、直線で追いすがってきたキングサルサを容易に退け、2着キングサルサに2馬身差をつけて勝利した。

4歳最初の2戦は対戦相手が弱かったと言わざるを得ないが、それでもグループ競走を2連勝したために陣営は本馬の能力に一定の自信を抱いたようで、英国遠征を敢行した。

まずは6月のクイーンアンS(英GⅡ・T8F)に出走。対戦相手は、前年のムーランドロンシャン賞4着後に長期休養に入るも復帰戦のロッキンジSを快勝してきたアルジャブル、グループ競走不出走ながらも4戦3勝2着1回と底を見せていなかった素質馬カラニシ、サンダウンマイル・アールオブセフトンSの勝ち馬でロッキンジS3着のインディアンロッジ、パークSの勝ち馬シュガーフット、ミルリーフS・ラーブカルヒャーバウストフCの勝ち馬で愛1000ギニー・コロネーションS2着のゴールデンシルカ、ヴィットリオディカプア賞・セレブレーションマイル・エミリオトゥラティ賞・ハンガーフォードSの勝ち馬で仏2000ギニー2着のムータティールなどだった。アルジャブルが単勝オッズ3.25倍の1番人気、本馬が単勝オッズ4.33倍の2番人気、カラニシが単勝オッズ6.5倍の3番人気で、この段階ではグループ競走の入着歴が無かったスワローフライトが単勝オッズ12倍の4番人気となった。

スタートが切られるとムータティールが先頭に立ち、アルジャブルや本馬はそれを追って先行した。残り2ハロン地点でムータティールが失速するとアルジャブルが先頭に立ち、それに本馬が並びかけていった。そして本馬がアルジャブルを競り落としたところに、後方からカラニシとスワローフライトの2頭が差してきた。本馬はスワローフライトを辛うじて短頭差で抑え込んだが、カラニシには抜かれてしまい、半馬身差の2着に敗退した。

それでも悪い内容では無く、そのまま英国に留まってサセックスS(英GⅠ・T8F)に出走した。対戦相手は、前走4着のアルジャブル、同8着のゴールデンシルカ、サラマンドル賞・セントジェームズパレスS・エクリプスS・愛フューチュリティS・グラッドネスSの勝ち馬で英2000ギニー・愛2000ギニー2着のジャイアンツコーズウェイ、セントジェームズパレスSでジャイアンツコーズウェイに頭差の2着まで迫ったヴァレンティノ、そのセントジェームズパレスSで3着だったメディシアン、ミルリーフS・クリテリオンSの勝ち馬でスプリントC3着のアルカディアンヒーロー、ジムクラックS・ポルトマイヨ賞の勝ち馬ヨスルアルガルード、サンダウンマイル・パークSの勝ち馬でサセックスS・クイーンエリザベスⅡ世S2着のアルムシュタラクなどだった。本馬とジャイアンツコーズウェイが並んで単勝オッズ4倍の1番人気、ヴァレンティノが単勝オッズ5.5倍の3番人気、アルジャブルが単勝オッズ6.5倍の4番人気、アルカディアンヒーローが単勝オッズ9倍の5番人気となった。

スタートが切られるとアルジャブルが先頭に立ち、ジャイアンツコーズウェイやヴァレンティノなどはそれを追って先行したが、本馬は前走から一転して後方待機策を選択していた。そして残り3ハロン地点で仕掛けると次々に他馬達を追い抜き、残り1ハロン地点ではちょうどこの段階で先頭に立っていたジャイアンツコーズウェイに追いついた。そしていったんは本馬が前に出たのだが、競り合いになると絶対的な強さを発揮するジャイアンツコーズウェイの本領がここで発揮され、差し返された本馬は3/4馬身差の2着に敗退した。

英国では健闘するも勝ちには至らなかった本馬は仏国に戻り、ムーランドロンシャン賞(仏GⅠ・T1600m)に出走した。対戦相手は、ミュゲ賞2着後にシュマンドフェルデュノール賞を勝ちジャックルマロワ賞でムータティールとセンダワールの2頭に続く3着していたキングサルサ、サセックスS4着後にデズモンドSを勝っていたゴールデンシルカ、クイーンアンSで5着だったシュガーフット、同7着だったインディアンロッジ、前年の同競走で8着に終わっていたフライトゥザスターズ、モーリスドギース賞・スプリントC・ジャージーS・クリテリオンSの勝ち馬で前走安田記念2着のディクタット、3連勝で臨んできたグループ競走初出走のイグマンだった。本馬が単勝オッズ2.5倍の1番人気、ディクタットとフライトゥザスターズのカップリングとキングサルサが並んで単勝オッズ2.9倍の2番人気、イグマンが単勝オッズ6.6倍の4番人気、インディアンロッジが単勝オッズ12.3倍の5番人気となった。

ペリエ騎手はやはりキングサルサに騎乗したため、本馬にはスミヨン騎手が騎乗した。スタートが切られるとディクタットのペースメーカー役としての出走でもあったフライトゥザスターズが先頭に立ち、かなり離された2番手をインディアンロッジが進み、本馬は馬群の中団を追走した。そのままの態勢で直線に入ってきたが、フライトゥザスターズの手応えが予想外に良く、かなりの粘りを見せた。それを残り400m地点でかわしたインディアンロッジがそのままゴールへと突き進んでいった。一方の本馬は4番手で直線に入るも伸びを欠き、勝ったインディアンロッジから5馬身差の6着と、着差も着順もデビュー以来最悪の結果に終わってしまった。

このままで終わるわけにはいかない本馬は、ジャンプラ賞を除けばデビュー以来一貫して進んできたマイル路線から距離を縮めて、フォレ賞(仏GⅠ・T1400m)に出走した。対戦相手は、ムーランドロンシャン賞勝利後に出走したクイーンエリザベスⅡ世Sでは7着と惨敗していたインディアンロッジ、サンドランガン賞の勝ち馬ザルキヤ、ロンポワン賞・ダイオメドSの勝ち馬でこの年のロッキンジS2着・前年のフォレ賞3着のトランスアイランド、クリテリウムドメゾンラフィットの勝ち馬タッチオブザブルース、ムーランドロンシャン賞5着後にロンポワン賞3着を挟んできたシュガーフット、パース賞の勝ち馬ダンジグアウェーなどだった。ペリエ騎手が鞍上に戻ってきた本馬が単勝オッズ2.6倍の1番人気、インディアンロッジが単勝オッズ4.6倍の2番人気、ザルキヤが単勝オッズ4.9倍の3番人気、トランスアイランドが単勝オッズ7.4倍の4番人気、タッチオブザブルースが単勝オッズ10.7倍の5番人気となった。

スタートが切られると、インディアンロッジ、トランスアイランドなどが先頭争いを展開する一方で、本馬は抑えて馬群の後方から競馬を進めた。そして11頭立ての9番手で直線に入ると、ここからの末脚に全てを賭けた。次々に他馬を追い抜き、残り200m地点では2番手に上がったが、この段階で先頭に立っていたインディアンロッジにはもはや届きそうになかった。インディアンロッジが押し切ってGⅠ競走2勝目を挙げ、本馬は2馬身差の2着に敗退。欧州でGⅠ競走タイトルを手にすることは出来なかった。

何としてもGⅠ競走の勝利が欲しい陣営は本馬を渡米させて、チャーチルダウンズ競馬場で行われたBCマイル(英GⅠ・T8F)に参戦させた。対戦相手は、インディアンロッジ、デューハーストS・英シャンペンS・パークSの勝ち馬で前走英チャンピオンS3着のディスタントミュージック、サセックスS6着後にハンガーフォードSを勝っていたアルカディアンヒーロー、クイーンアンS6着後にジャックルマロワ賞を勝っていたムータティールといった遠征組と、サンラファエルS・オークツリーBCマイルSの勝ち馬でサンタアニタダービー2着のウォーチャント、アーリントンクラシックS・ジャマイカH・アメリカンターフSの勝ち馬でセクレタリアトS2着のキングクガート、エディリードH・デルマーダービー・オークツリーダービー・サンフランシスコBCマイルH・ラホヤHの勝ち馬でエディリードH・シューメーカーBCマイルS2着のレディーズディン、デルマーダービー・ベイメドウズBCダービーを連勝してきたウォークスライクアダック、ヴォスバーグS・シガーマイルH・フォアゴーH・ジェネラルジョージH・ポーカーHの勝ち馬でカーターH・シガーマイルS2着のアファームドサクセス、キーンランドターフマイルS・ドバイデューティーフリーの勝ち馬アルティブル、バーナードバルークH・フォースターデイヴHの勝ち馬ハップ、ベルモントBCH・ケルソHを連勝してきたフォビドゥンアップル、メドウランズCH・ケントBCS・オーシャンポートH・クリフハンガーHの勝ち馬ノースイーストバウンドといった地元米国馬達だった。ウォーチャント、9戦6勝2着3回のキングクガートの2頭が並んで単勝オッズ4.5倍の1番人気、レディーズディンが単勝オッズ7.9倍の3番人気、インディアンロッジが単勝オッズ12.8倍の4番人気と続き、ジョン・ヴェラスケス騎手が騎乗する本馬は単勝オッズ13.4倍で、ウォークスライクアダックと並ぶ5番人気だった。

スタートが切られると単勝オッズ43.3倍の最低人気馬ノースイーストバウンドが先頭に立った。アファームドサクセスやムータティールなどを筆頭に8頭ほどがその直後に団子状態となり、本馬はそのさらに後方の10番手、ウォーチャントやキングクガートはさらに後方を追走した。ペースがあまり速くなかったためにノースイーストバウンドも含めて先行馬勢には余力が十分にあり、三角から四角にかけて上がってきた後続馬勢も含めて直線入り口では出走全14頭が団子状態となるという大混戦となった。直線ではノースイーストバウンドとアファームドサクセスの2頭が先頭で叩き合いながらゴールを目指したが、そこへ直線入り口でも馬群の後方だったウォーチャントと本馬の2頭が追い込んできた。そしてゴール前では内側から順に本馬、ノースイーストバウンド、アファームドサクセス、ウォーチャントの4頭が横一線となったが、最も脚色が良かったウォーチャントが真っ先にゴールを駆け抜け、ノースイーストバウンドが首差の2着、本馬がさらに鼻差の3着、アファームドサクセスがさらに鼻差の4着という結果となった。ゴール前で本馬が見せた豪脚も見事だったが、結局勝ち切るには至らず、このレースを最後に4歳時7戦2勝の成績で競走馬を引退。GⅠ競走制覇には遂に手が届かなかった。

血統

デインヒル Danzig Northern Dancer Nearctic Nearco
Lady Angela
Natalma Native Dancer
Almahmoud
Pas de Nom Admiral's Voyage Crafty Admiral
Olympia Lou
Petitioner Petition
Steady Aim
Razyana His Majesty Ribot Tenerani
Romanella
Flower Bowl Alibhai
Flower Bed
Spring Adieu Buckpasser Tom Fool
Busanda
Natalma Native Dancer
Almahmoud
Hasili Kahyasi イルドブルボン Nijinsky Northern Dancer
Flaming Page
Roseliere Misti
Peace Rose
Kadissya Blushing Groom Red God
Runaway Bride
Kalkeen Sheshoon
Gioia
Kerali High Line ハイハット Hyperion
Madonna
Time Call Chanteur
Aleria
Sookera Roberto Hail to Reason
Bramalea
Irule Young Emperor
Iaround

デインヒルは当馬の項を参照。

母ハシリは本馬と同じくジュドモントファームの生産馬だが、生国は愛国である。本馬と同じくアブドゥッラー王子の所有馬として仏国で走り、リステッド競走サブロネット賞を勝つなど17戦4勝2着3回3着1回の成績を残した。繁殖牝馬としての成績は凄まじく、本馬の全妹バンクスヒル【BCフィリー&メアターフ(米GⅠ)・ジャックルマロワ賞(仏GⅠ)・コロネーションS(英GⅠ)・サンドランガン賞(仏GⅡ)】、半妹ヒートヘイズ(父グリーンデザート)【メイトリアークS(米GⅠ)・ビヴァリーDS(米GⅠ)・ラスシエネガスH(米GⅢ)・チャーチルディスタフターフマイルS(米GⅢ)】、全妹インターコンチネンタル【BCフィリー&メアターフ(米GⅠ)・メイトリアークS(米GⅠ)・ジャストアゲームBCH(米GⅡ)・パロマーBCH(米GⅡ)・ギャラクシーS(米GⅡ)・ジェニーワイリーS(米GⅢ)2回・キャッシュコールマイル招待S(米GⅢ)】、全弟カシーク【マンノウォーS(米GⅠ)・マンハッタンH(米GⅠ)・ダニエルウィルデンシュタイン賞(仏GⅡ)・ダフニ賞(仏GⅢ)・シュマンドフェルデュノール賞(仏GⅢ)】、全弟シャンゼリゼ【加国際S(加GⅠ)・ハリウッドターフCS(米GⅠ)・ノーザンダンサーターフS(加GⅠ)・サンマルコスS(米GⅡ)・エドヴィル賞(仏GⅢ)】、半妹デラックス(父ストームキャット)【カーディナルH(米GⅢ)】と活躍馬を嵐のように輩出し、2006年のケンタッキー州最優秀繁殖牝馬にも選ばれた。ハシリの詳しい繁殖成績や近親の活躍馬に関してはバンクスヒルの項に記載したので、そちらを参照してほしい。→牝系:F11号族②

母父カヤージは当馬の項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は、英国にあるジュドモントファーム傘下のバンステッドマナースタッドで種牡馬入りした。競走馬としてはGⅠ競走制覇に手が届かなかった本馬だが、種牡馬としては2015年時点で18頭ものGⅠ競走の勝ち馬を送り出すという大成功を収めた。2006年には仏首位種牡馬に輝いた。

産駒の傾向を見ると確かにマイラーも少なくないが、凱旋門賞馬レイルリンクや、キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスSを史上最大の11馬身差で圧勝したハービンジャーなど、10ハロン以上の距離を得意とする産駒が目立つ。父のデインヒルも競走馬時代は短距離路線を走りながら種牡馬としては距離万能だったから、本馬も父と同じく距離万能種牡馬になったのか、それとも実は本馬はマイラーではなかったのか(本馬の妹弟達には5頭のGⅠ競走の勝ち馬がいるが、マイルよりも10ハロン前後を得意とした馬が多い)は定かではない。2015年時点の種付け料は10万ポンドとなっている。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

2002

Early March

ロシェット賞(仏GⅢ)

2002

General Jumbo

ケンタッキーCターフS(米GⅢ)

2002

Trick of Light

クイーンオブザサウスS(豪GⅡ)

2003

Grecian Dancer

リッジウッドパールS(愛GⅢ)

2003

Illustrious Blue

グッドウッドC(英GⅡ)・グロリアスS(英GⅢ)・サガロS(英GⅢ)

2003

Price Tag

メイトリアークS(米GⅠ)・パン賞(仏GⅢ)

2003

Rail Link

凱旋門賞(仏GⅠ)・パリ大賞(仏GⅠ)・ニエル賞(仏GⅡ)・リス賞(仏GⅢ)

2003

Silver Touch

クリテリオンS(英GⅢ)

2004

Diamond Diva

ロイヤルヒロインマイル(米GⅡ)・ウィルシャーH(米GⅢ)

2004

Passage of Time

クリテリウムドサンクルー(仏GⅠ)・ムシドラS(英GⅢ)

2004

Strategic Prince

ジュライS(英GⅡ)・ヴィンテージS(英GⅡ)

2004

Thousand Words

タタソールS(英GⅢ)

2004

Zambezi Sun

パリ大賞(仏GⅠ)・フォワ賞(仏GⅡ)

2005

Famous Name

ロイヤルホイップS(愛GⅡ)・レパーズタウン2000ギニートライアルS(愛GⅢ)・愛国際S(愛GⅢ)3回・デズモンドS(愛GⅢ)・アメジストS(愛GⅢ)3回・メルドS(愛GⅢ)3回・ソロナウェイS(愛GⅢ)

2005

Glowing

ブラウンズタウンS(愛GⅢ)

2005

Proviso

フランクEキルローマイルH(米GⅠ)・ジャストアゲームS(米GⅠ)・ダイアナS(米GⅠ)・ファーストレディS(米GⅠ)・カルヴァドス賞(仏GⅢ)・パン賞(仏GⅢ)

2005

Sense of Joy

プレステージS(英GⅢ)

2006

Delegator

デュークオブヨークS(英GⅡ)・クレイヴンS(英GⅢ)

2006

Father Time

キングエドワードⅦ世S(英GⅡ)

2006

Harbinger

キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスS(英GⅠ)・ハードウィックS(英GⅡ)・ゴードンS(英GⅢ)・ジョンポーターS(英GⅢ)・オーモンドS(英GⅢ)

2006

Shaweel

ジムクラックS(英GⅡ)

2006

Strawberrydaiquiri

ウィンザーフォレストS(英GⅡ)・ダリアS(英GⅢ)

2006

Zacinto

セレブレーションマイル(英GⅡ)

2007

Aviate

チャーチルディスタフターフマイルS(米GⅡ)・ムシドラS(英GⅢ)

2007

Bated Breath

テンプルS(英GⅡ)

2007

Bewitched

ルネサンスS(愛GⅢ)2回・ベンゴーフS(英GⅢ)・バリーコーラスS(愛GⅢ)

2007

Dandino

ジョッキークラブS(英GⅡ)・セプテンバーS(英GⅢ)・クイーンズC(豪GⅢ)

2007

Emulous

愛メイトロンS(愛GⅠ)・コンコルドS(愛GⅢ)・エキストリアンS(愛GⅢ)2回・ブラウンズタウンS(愛GⅢ)

2007

Foreteller

ランヴェットS(豪GⅠ)・マカイビーディーヴァS(豪GⅠ)・MRCアンダーウッドS(豪GⅠ)・ピーターヤングS(豪GⅡ)・デビッドジョーンズC(豪GⅢ)

2007

Ice Blue

グレフュール賞(仏GⅡ)

2007

Permit

チェアマンズクオリティH(豪GⅡ)・NEマニオンC(豪GⅢ)

2008

Dream Peace

ノネットシャドウェル賞(仏GⅡ)

2008

Epic Love

ヴァントー賞(仏GⅢ)

2008

Giofra

ファルマスS(英GⅠ)・アルクール賞(仏GⅡ)

2008

Laughing

ダイアナS(米GⅠ)・フラワーボウル招待S(米GⅠ)・ボールストンスパS(米GⅡ)・マッチメイカーS(米GⅢ)・イートンタウンH(米GⅢ)

2008

Surfrider

ジェベル賞(仏GⅢ)

2008

Testosterone

マルレ賞(仏GⅡ)・ロワイヨモン賞(仏GⅢ)

2008

Zoffany

愛フェニックスS(愛GⅠ)・タイロスS(愛GⅢ)

2009

Dank

BCフィリー&メアターフ(米GⅠ)・ビヴァリーDS(米GⅠ)・アタランタS(英GⅢ)・ダリアS(英GⅢ)・キルボイエステイトS(愛GⅢ)

2009

Entifaadha

エイコムS(英GⅢ)

2009

Fallen for You

コロネーションS(英GⅠ)

2009

Fire Lily

アングルシーS(愛GⅢ)・バリーオーガンS(愛GⅢ)・フェニックススプリントS(愛GⅢ)

2009

L'Amour De Ma Vie

バランシーンS(首GⅡ)

2009

Requinto

フライングチルダースS(英GⅡ)・モールコームS(英GⅢ)

2009

The Fugue

ナッソーS(英GⅠ)・ヨークシャーオークス(英GⅠ)・愛チャンピオンS(愛GⅠ)・プリンスオブウェールズS(英GⅠ)・ムシドラS(英GⅢ)

2009

Thomas Chippendale

キングエドワードⅦ世S(英GⅡ)・ハードウィックS(英GⅡ)

2010

Big Break

キラヴーランS(愛GⅢ)・コンコルドS(愛GⅢ)

2010

Disclaimer

ニューカッスル金杯(豪GⅢ)

2010

Espumanti

イピトンベチャレンジ(南GⅡ)・ベッティングワールド1900(南GⅡ)

2010

Flintshire

パリ大賞(仏GⅠ)・香港ヴァーズ(香GⅠ)・ソードダンサーS(米GⅠ)・リス賞(仏GⅢ)

2010

Grand Marshal

AJCシドニーC(豪GⅠ)

2010

Riposte

リブルスデールS(英GⅡ)・シープスヘッドベイS(米GⅡ)・ニューヨークS(米GⅡ)・ターセンテナリーS(英GⅢ)

2010

So Beloved

スプリームS(英GⅢ)

2010

Vancouverite

ギョームドルナノ賞(仏GⅡ)

2010

Winsili

ナッソーS(英GⅠ)

2010

Zibelina

リューレイ賞(仏GⅢ)

2011

Carla Bianca

ダンスデザインS(愛GⅢ)・メルドS(愛GⅢ)

2011

Miss France

英1000ギニー(英GⅠ)・オーソーシャープS(英GⅢ)

2011

We Are

オペラ賞(仏GⅠ)

2012

Brisanto

ヴィンターファヴォリテン賞(独GⅢ)

2012

Words

ムンスターオークス(愛GⅢ)

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