シカンブル
| 和名:シカンブル | 英名:Sicambre | 1948年生 | 牡 | 黒鹿 | 
| 父:プリンスビオ | 母:シフ | 母父:リアルト | ||
| プリンスローズ直系のスタミナ重視型の仏ダービー馬は激しい気性ながら種牡馬として成功し直系子孫が日本で一世を風靡する | ||||
| 競走成績:2・3歳時に仏で走り通算成績9戦8勝2着1回 | ||||
誕生からデビュー前まで
仏国カルヴァドス県サンペールデュモン牧場において、同牧場の所有者ジャン・ステルン氏により生産・所有された。ステルン氏は仏国のフェンシング選手であり、1908年のロンドン五輪では団体金メダルを獲得している。管理調教師はマックス・ボナベンチャー師、主戦はポール・ブラン騎手が務めた。
競走生活
2歳6月にルトランブレー競馬場で行われたローナ賞(T1000m)でデビューして勝利。翌月にメゾンラフィット競馬場で出たサルタム賞(T1200m)も勝利した。しかし3戦目となった8月のモルニ賞(T1200m)では、後方一気の末脚が届かず、牝馬サンギーヌの半馬身差2着に敗れた。10月の仏グランクリテリウム(T1600m)では、ロベールパパン賞の勝ち馬ファルサル、ジムクラックSの勝ち馬コーチルなどが対戦相手となった。レースでは、次走のフォレ賞を勝利するファルサルを首差競り落として勝利を収め、2歳時の成績を4戦3勝とした。
3歳時は仏2000ギニーには目もくれず、ひたすら長距離路線を進んだ。まずは4月にロンシャン競馬場で行われたギシュ賞(T2000m)に出走して、クリテリウムドメゾンラフィット・ジャンプラ賞の勝ち馬ルティロルを6馬身差の2着に下して圧勝。次走のグレフュール賞(T2100m)も、ギシュ賞で3着だったトーマブリョン賞の勝ち馬マッドコケーニュ(後のリュパン賞・ユジェーヌアダム賞・ジャンプラ賞・ガネー賞・プランタン大賞・カドラン賞などの勝ち馬)を2馬身差の2着に破って勝利した。さらにオカール賞(T2400m)も3馬身差で制圧。
そして迎えた仏ダービー(T2400m)では、仏2000ギニーを勝ってきた甥に当たる僚馬フリーマンとの対戦となった。レースでは逃げるフリーマンの直後に付け、直線入り口で先頭に立つと、そのまま2着フリーマンに1馬身差、3着となったシェーヌ賞の勝ち馬ラヴァレードにはさらに2馬身半差をつけて優勝した。
次走のパリ大賞(T3000m)では、長距離を意識して道中は馬群の中でひたすら待機。最終コーナーで仕掛けると悠々と抜け出し、ゴール前で強襲してきたラヴァレードを首差封じて優勝した(クリテリウムドサンクルーの勝ち馬で、後にアスコット金杯・ドンカスターCを勝つアキーノが3着だった)。
夏場は休養し、秋の凱旋門賞を目指したが、調教中に球節を痛めたために、そのまま3歳時5戦全勝の成績で引退した。本馬は気性が激しい面があったが、先行して抜け出す安定した実力の持ち主で、英国に遠征していても十分に勝負になったのではと言われている。
血統
| Prince Bio | Prince Rose | Rose Prince | Prince Palatine | Persimmon | 
| Lady Lightfoot | ||||
| Eglantine | Perth | |||
| Rose de Mai | ||||
| Indolence | Gay Crusader | Bayardo | ||
| Gay Laura | ||||
| Barrier | Grey Leg | |||
| Bar the Way | ||||
| Biologie | Bacteriophage | Tetratema | The Tetrarch | |
| Scotch Gift | ||||
| Pharmacie | Charles O'Malley | |||
| Prescription | ||||
| Eponge | Cadum | Sans Souci | ||
| Spring Cleaning | ||||
| Sea Moss | William the Third | |||
| Seadune | ||||
| Sif | Rialto | Rabelais | St. Simon | Galopin | 
| St. Angela | ||||
| Satirical | Satiety | |||
| Chaff | ||||
| La Grelee | Helicon | Cyllene | ||
| Vain Duchess | ||||
| Grignouse | Kilglas | |||
| Simper | ||||
| Suavita | Alcantara | Perth | War Dance | |
| Primrose Dame | ||||
| Toison d'or | Le Sancy | |||
| Harfleur | ||||
| Shocking | Rabelais | St. Simon | ||
| Satirical | ||||
| Saperlipopette | Cheri | |||
| Satanella | 
父プリンスビオはプリンスローズ産駒で、現役成績は11戦6勝。仏2000ギニー・フォンテーヌブロー賞・ノアイユ賞などを勝っている。種牡馬としても一流であり、仏国を中心に多くの活躍馬を出した。
母シフは現役成績9戦3勝、フィンランド賞・ボワブルドン賞を勝っている。シフの産駒には、本馬の半弟ソレイユレヴァント(父サニーボーイ)【プランタン大賞・モーリスドニュイユ賞・ボイアール賞】、全妹セノーヌ【ペネロープ賞】がいる。本馬の半姉ファンティン(父ファンタスティック)の子には、本馬と同い年で仏ダービーでは直接対戦したフリーマン【仏2000ギニー・ダフニ賞・ドラール賞】、フォーシュルヴァン【ジャンプラ賞・リス賞】がいる。また、セノーヌの子には、1969年の仏首位種牡馬となった本邦輸入種牡馬スノッブ(メジロティターンの母父)【フォレ賞・リューテス賞】、シジュベール【ダフニ賞・シャンティ賞・フォワ賞・アルクール賞・ゴントービロン賞】が、玄孫にはチェルシーローズ【モイグレアスタッドS(愛GⅠ)】がいる。
シフの祖母ショッキングの全姉フールアッシュは、日本の名牝系「華麗なる一族」の始祖マイリーの曾祖母であり、マイリーの子孫であるヤマピット【優駿牝馬】、イットー【高松宮杯】、ニッポーキング【安田記念】、ハギノトップレディ【桜花賞・エリザベス女王杯・高松宮杯】、ハギノカムイオー【宝塚記念・高松宮杯】、ダイイチルビー【安田記念(GⅠ)・スプリンターズS(GⅠ)】、マイネルセレクト【JBCスプリント(GⅠ)】などは同じ牝系である。また、ショッキングの半妹セラフィタの牝系子孫には、サンドピット【リネアヂパウラマシャド大賞(伯GⅠ)・クルゼイロドスル大賞(伯GⅠ)・フランシスコエドゥアルドデパウロマチャド大賞(伯GⅠ)・ANPC杯クラシカ(伯GⅠ)・オークトゥリー招待H(米GⅠ)・サンルイレイS(米GⅠ)・シーザーズ国際H(米GⅠ)2回・ハリウッドパークターフH(米GⅠ)】がいる。→牝系:F7号族②
母父リアルトはラブレー産駒で、現役成績は37戦17勝。古馬になってから頭角を現し、イスパーン賞・ドラール賞・フォルス賞などを勝ち、凱旋門賞でもカンタールの2着に入った実力馬。種牡馬としても一定の成功を収めている。
競走馬引退後
競走馬を引退した本馬は生まれ故郷のサンペールデュモン牧場で種牡馬入りした。本馬は種牡馬としても成功し、1966年に仏首位種牡馬に輝いた。1975年4月に27歳で他界し、遺体はサンペールデュモン牧場に埋葬された。
本馬の直子は地元仏国のみならず、英国・米国・豪州・南米などにも種牡馬として輸出され、プリンスローズの直系を後代に伝える原動力となった。日本にも本馬の直子であるムーティエ、ファラモンド、ダイアトムなどが輸入され一世を風靡した。直系の主な活躍馬には、二冠馬タニノムーティエ(父ムーティエ)、二冠馬カブラヤオー(父ファラモンド)、天皇賞馬クシロキング(父ダイアトム)などがいる。しかし日本において本馬の直系は滅亡し、現在は南米や露国に残る程度となっている。母父としてはシーバードを送り出している。
主な産駒一覧
| 生年 | 産駒名 | 勝ち鞍 | 
| 1953 | Fiere | ロベールパパン賞 | 
| 1953 | Incitatus | ジャンプラ賞 | 
| 1953 | Sicarelle | 英オークス | 
| 1954 | Avilon | ヴァントー賞 | 
| 1954 | Careless Love | アスタルテ賞 | 
| 1954 | Mulberry Harbour | チェシャーオークス | 
| 1954 | Sweet Home | パース賞・ジョンシェール賞 | 
| 1954 | Yvré | プランタン大賞 | 
| 1955 | La Malivoye | トーマブリョン賞・クロエ賞 | 
| 1955 | Pepin le Bref | ラクープ | 
| 1956 | Ornifle | フィユドレール賞 | 
| 1957 | Celtic Ash | ベルモントS | 
| 1957 | Pharamond | モルニ賞・ダリュー賞 | 
| 1958 | Ambergris | 愛オークス・英シャンペンS・ムシドラS | 
| 1958 | Hermieres | 仏オークス・ペネロープ賞 | 
| 1958 | Moutiers | ダリュー賞・オカール賞 | 
| 1958 | Scatter | ホワイトローズS | 
| 1959 | Salinas | ノネット賞 | 
| 1961 | Belle Sicambre | 仏オークス・サンタラリ賞・エクリプス賞 | 
| 1962 | Cambremont | 仏2000ギニー | 
| 1962 | ワシントンDC国際S・ガネー賞・ノアイユ賞・プランスドランジュ賞・ボイアール賞 | |
| 1962 | Jacambre | コンデ賞・ダリュー賞 | 
| 1963 | Barbare | レゼルヴォワ賞・フォンテーヌブロー賞・フォレ賞 | 
| 1963 | Hauban | クリテリウムドメゾンラフィット・オカール賞・グレフュール賞 | 
| 1963 | Si Sage | マルレ賞 | 
| 1964 | Great Host | チェスターヴァーズ・グレートヴォルティジュールS | 
| 1964 | Phaeton | パリ大賞・コンデ賞 | 
| 1964 | Roi Dagobert | リュパン賞・ノアイユ賞・グレフュール賞 | 
| 1966 | Fast Ride | ヴァントー賞 | 
| 1968 | Cigaline | ペネロープ賞(仏GⅢ) | 
| 1968 | Dixie | マルレ賞(仏GⅢ) | 
| 1969 | Novius | ドーヴィル大賞(仏GⅡ) | 
| 1973 | Iron Duke | コートノルマンディ賞(仏GⅢ)・ラクープドメゾンラフィット(仏GⅢ)・ゴントービロン賞(仏GⅢ) |