フリートストリートダンサー

和名:フリートストリートダンサー

英名:Fleetstreet Dancer

1998年生

黒鹿

父:スマートストライク

母:ストリートバレット

母父:ニジンスキー

人気薄ながら本命馬アドマイヤドンとの大激戦を4cm差で制して海外馬として史上唯一のジャパンCダート勝ち馬となる

競走成績:3~6歳時に米日首で走り通算成績25戦5勝2着7回3着3回

誕生からデビュー前まで

米国ケンタッキー州ホワイトフォックスファームの生産馬で、1歳9月のキーンランドセールにおいて2万2千ドルで取引されてベティ・アーヴィン女史とロバート・アーヴィン氏の所有馬となり、米国カリフォルニア州のレイ・トーマス・ベル調教師に預けられた。

競走生活(3歳時)

3歳1月にサンタアニタパーク競馬場で行われたダート5.5ハロンの未勝利戦で、当面の主戦を務めるブライス・ブランク騎手を鞍上にデビューした。しかし単勝オッズ93.2倍で12頭立ての最低人気。それでも馬群の中団後方から直線で追い上げ、勝った単勝オッズ18.9倍の7番人気馬ヴィクトリーロアから1馬身差の4着と健闘した。

翌2月に出走したサンタアニタパーク競馬場ダート8ハロンの未勝利戦では、単勝オッズ5.3倍で6頭立ての3番人気となった。ここでは3番手の好位を追走すると、直線で1つだけ順位を上げて、勝った単勝オッズ3.1倍の2番人気馬モモンの1馬身半差2着に入った。

翌3月に出走したサンタアニタパーク競馬場ダート7ハロンの未勝利戦では、単勝オッズ3.6倍で8頭立ての2番人気となった。ここでは馬群の中団4番手を追走すると、四角で位置取りを上げて、先頭にいた単勝オッズ2.9倍の1番人気馬アイリッシュミンストレルに直線入り口で並びかけた。そしてゴールまで続いた叩き合いを頭差で制して初勝利を挙げた。

次走は5月にハリウッドパーク競馬場で行われた芝8ハロンの一般競走となった。芝路線に向かった理由はよく分からないが、本馬が本拠地としていた米国西海岸は米国東海岸よりも比較的芝の競走が充実していたし、はっきり言って米国ではダートよりも芝のほうがレベルは低かった事も影響しているかもしれない。初芝となったこのレースは単勝オッズ3倍で6頭立ての1番人気に支持された。レースでは2番手を追走したが、逃げた単勝オッズ3.3倍の2番人気馬マッケイブを最後まで捕まえられずに、1馬身半差の2着に敗れた。

次走は同月末にハリウッドパーク競馬場で行われた芝7ハロンの一般競走となった。ここでは単勝オッズ3.4倍で10頭立ての2番人気での出走となった。レースでは2~3番手を先行して、三角で先頭に立つとそのまま押し切り、2着となった単勝オッズ20.3倍の7番人気馬ダンシングマスターに3/4馬身差で勝利した。

ここまで5戦2勝2着2回の好成績を収めた本馬だが、ここで1年間の長期休養に入ってしまった。

競走生活(4歳時)

復帰戦は4歳5月にハリウッドパーク競馬場で行われた芝5.5ハロンのオプショナルクレーミング競走だった(本馬は売却の対象外)。過去5戦全てで騎乗したブランク騎手からチャンス・ローリンズ騎手に乗り代わっていた本馬は、ここでは単勝オッズ13.7倍で8頭立ての6番人気という評価だった。そしてレースでもスタートからあまり行き脚がつかずに後方からの競馬となり、直線でも殆ど順位を上げられずに、勝った単勝オッズ17.8倍の7番人気馬ロードパカルから1馬身3/4差の6着に敗れた。

次走は6月にハリウッドパーク競馬場で行われたダート6.5ハロンのオプショナルクレーミング競走となった(ここでも本馬は売却の対象外)。ここではクリス・マッキャロン騎手とコンビを組んだ本馬は、単勝オッズ9.8倍で12頭立ての5番人気だった。レースでは馬群の中団を追走したが、直線でもあまり伸びが無く、単勝オッズ2.5倍の1番人気に応えて逃げ切ったヘヴンリーサーチから5馬身3/4差の5着に敗れた。

次走は、8月のハリウッドパーク競馬場芝8.5ハロンの一般競走だった。ここではマイク・スミス騎手とコンビを組んだが、単勝オッズ23.6倍で8頭立ての7番人気という低評価だった。そしてレースでも馬群の中団を進んだだけで、単勝オッズ2.4倍の1番人気に応えて勝ったダンスドリーマーから2馬身3/4差の6着に敗れた。

次走は同月にデルマー競馬場で行われた芝8.5ハロンのオプショナルクレーミング競走となった(ここでも本馬は売却の対象外)。ローリンズ騎手が騎乗した本馬は単勝オッズ9.1倍で9頭立ての6番人気だった。今回はスタートから掛かり気味に先行して、道中は2番手を走っていたが、直線で大きく失速して、勝った単勝オッズ11倍の7番人気馬ザナプールから5馬身半差の9着最下位に沈んだ。

もう本馬を手放しても惜しくないと判断されたらしく、次走は8月にデルマー競馬場で行われたダート8.5ハロンのクレーミング競走となった(譲渡要求価格5万ドル)。ここでは単勝オッズ5.7倍で6頭立ての4番人気だった。アレックス・ソリス騎手が騎乗した本馬はスタートから3番手につけると、直線入り口では2番手に上がった。しかしすぐに失速して、勝った単勝オッズ6.8倍の5番人気馬ティンバーバロンから8馬身半差の5着に敗れた。なお、本馬に買い手は付かなかった。

次走は10月にサンタアニタパーク競馬場で行われたダート8ハロンのクレーミング競走だった(譲渡要求価格4万ドル)。初騎乗となるタイラー・ベイズ騎手騎乗の本馬は、単勝オッズ6.7倍で8頭立ての4番人気だった。ここでは馬群の中団を追走し、四角でまくって先頭に並びかけた。そして単勝オッズ6倍の2番人気馬テジャンとの叩き合いを首差で制して勝利した。

ここで本馬には買い手が付き、リー・レザーマン氏とタイ・レザーマン夫人の所有馬となり、管理調教師もダグラス・F・オニール師に変更になった。馬主と調教師は代わったが、ここで騎乗したベイズ騎手はそのまま本馬の主戦となった。

次走は11月のハリウッドパーク競馬場ダート8.5ハロンのオプショナルクレーミング競走だった(本馬は売却の対象外)。このレースには、サンタカタリナSの勝ち馬ラバンタベーブ、マーヴィンルロイHの勝ち馬アウトオブマインド、ストラブS3着馬ジミーズィーといった、グレード競走で既に実績を挙げていた馬達が出走していた。斤量差も特に無かったため、本馬は単勝オッズ8.7倍で6頭立ての5番人気という低評価だった。ラバンタベーブが単勝オッズ2倍の1番人気、ジミーズィーが単勝オッズ4.3倍の2番人気、アウトオブマインドが単勝オッズ5.4倍の3番人気となっていた。スタートが切られると、単勝オッズ30倍の最低人気馬プロシードウィズケアが先頭に立ち、本馬は4番手の好位を追走した。そして四角でまくって直線入り口で先頭に立ち、逃げていたプロシードウィズケアとの叩き合いを半馬身差で制して勝利した。

ここでグレード競走級の馬達を撃破した事から、本馬もグレード競走に頻繁に顔を出すことになった。というわけで、次走は12月にハリウッドパーク競馬場で行われたネイティヴダイヴァーH(米GⅢ・D9F)となった。対戦相手のレベルは前走より1ランク上がっており、ベルエアH・オールアメリカンH・コーンハスカーBCHの勝ち馬で前年の同競走・サンパスカルH・サンアントニオH・サンディエゴHで2着していたユーカー、チリのGⅠ競走タンテオデポトリリョス賞で2着した実績があったピエンサソナンド、ハリウッドプレビューS・ゴドルフィンマイル・サンディエゴHの勝ち馬グレイメモなどが出走してきた。ちょうど2年前のジャパンCダートにも参戦(2番人気でウイングアローの8着)していたユーカーが118ポンドのトップハンデでも単勝オッズ2.8倍の1番人気、117ポンドのピエンサソナンドが単勝オッズ3.5倍の2番人気、117ポンドのグレイメモが単勝オッズ3.7倍の3番人気で、この3頭に人気が集中。一方の本馬はグレード競走初出走という事もあり、112ポンドの最軽量でも単勝オッズ20.4倍で8頭立ての6番人気だった。レースでは馬群のちょうど中間を追走し、四角でまくって直線入り口で先頭に立つという得意の競馬を見せた。最後は追い込んできたピエンサソナンドに頭差かわされて2着に敗れたが、斤量次第ではグレード競走でも勝ち負けに絡める事を証明した(ちなみにユーカーは7着、グレイメモは8着最下位だった)。4歳時の成績は8戦2勝だった。

競走生活(5歳時)

5歳時は、まず2月のサンアントニオH(米GⅡ・D9F)に出走した。ネイティヴダイヴァーHから対戦馬のレベルがさらに2ランク以上は上昇しており、ピエンサソナンドの他に、スワップスS・シガーマイルH・ウッドメモリアルS・デルマーBCH・サンパスカルHの勝ち馬でケンタッキーダービー・プリークネスS3着のコンガリー、前年10月のグッドウッドBCHをコースレコードで圧勝して一躍名を馳せていたプレザントリーパーフェクト、前年のサンタアニタHを筆頭にオハイオダービー・カリフォルニアンSを勝ちハスケル招待H・ハリウッド金杯・パシフィッククラシックS・BCクラシックで各3着の実績があったミルウォーキーブルーと、明らかに米国ダート路線のトップクラスと言える馬が複数参戦してきた。さすがにこのメンバー構成では本馬の名前は小さく、112ポンドの最軽量でも単勝オッズ26.9倍で6頭立ての5番人気であり、117ポンドのピエンサソナンドも単勝オッズ18.8倍の4番人気に過ぎなかった。123ポンドのコンガリーが単勝オッズ1.5倍の1番人気、117ポンドのプレザントリーパーフェクトが単勝オッズ4.1倍の2番人気、120ポンドのミルウォーキーブルーが単勝オッズ5.9倍の3番人気と、この3頭に人気が集中した。レースでは人気を集めていた3頭がやはり上位を独占し、2番手を先行したコンガリーが、追い込んだ他2頭を完封して勝利。スタートから一か八かで先頭に立って逃げた本馬は、三角で手応えが無くなり、コンガリーから11馬身差をつけられた6着最下位に終わった。トップハンデのコンガリーからは11ポンドのハンデを貰っていたにも関わらずこの結果であるから、この段階では本馬の実力はその程度という事だった。

次走は3月のサンカルロスH(D8F)となった。対戦相手のレベルは前年11月に勝ったオプショナルクレーミング競走以下であり、ノングレードのステークス競走を4勝していたヘイローキャットが単勝オッズ2倍の1番人気で、このレースだけベイズ騎手に代わって久々にローリンズ騎手が騎乗した本馬は単勝オッズ6倍の2番人気となった。ここでは中団待機策から四角でまくる得意の競馬に戻したが、先行して押し切ったヘイローキャットに1馬身1/4差届かずに2着に敗れた。

次走は4月のサンバーナーディノH(米GⅢ・D9F)となった。対戦相手のレベルはサンアントニオHよりは下だがネイティヴダイヴァーHよりは上であり、ストラブS・サンパスカルHの勝ち馬でサンタアニタH2着のウドゥンフォーン、デルマーBCH2着馬ケラ、オハイオダービー・コールダーダービー・サンフェルナンドSの勝ち馬で前年のサンタアニタH2着馬ウエスタンプライド、サンアントニオH4着後にサンタアニタHで5着していたピエンサソナンド、チリのGⅠ競走タンテオデポトリジョスの勝ち馬でUAEダービー2着のトータルインパクトなどが出走してきた。1年3か月もの長期休養明け初戦だった上に119ポンドのトップハンデだったウドゥンフォーンがそれでも単勝オッズ3倍の1番人気に支持され、116ポンドのケラが単勝オッズ4.7倍の2番人気、116ポンドのウエスタンプライドが単勝オッズ5倍の3番人気、116ポンドのピエンサソナンドが単勝オッズ5.4倍の4番人気と続き、今回も最軽量の112ポンドの本馬は単勝オッズ10.3倍で8頭立ての5番人気だった。ベイズ騎手が鞍上に戻ってきた本馬は例によって馬群の中団を追走し、四角で位置取りを上げて、直線で追い上げてきた。しかし2番手抜け出しから勝ったウエスタンプライド、好位追走から追い上げたトータルインパクトの2頭に及ばず、勝ったウエスタンプライドから1馬身1/4差の3着に敗れた。

次走は5月のマーヴィンルロイH(米GⅡ・D8.5F)となった。対戦相手は、トータルインパクト、前年のピーターパンSの勝ち馬でベルモントS・ウッドメモリアルS3着の日本産馬サンデーブレイク(ファレノプシスの半弟でキズナの半兄)、オールアメリカンHの勝ち馬パルメイロ、前走4着のピエンサソナンド、同8着最下位のウドゥンフォーンなどだった。かなりの混戦模様であり、最軽量の114ポンドのトータルインパクトが単勝オッズ3.3倍の1番人気、117ポンドのサンデーブレイクが単勝オッズ4倍の2番人気、115ポンドのパルメイロが単勝オッズ5倍の3番人気と続き、トータルインパクトと同じ114ポンドの本馬は単勝オッズ9.4倍で8頭立ての6番人気だった。本馬のレースぶりはここ最近徹底しており、中団待機策から四角で仕掛けた。そして3番手から先に抜け出していたトータルインパクトに2馬身届かず2着という結果だった。

次走は6月のカリフォルニアS(米GⅡ・D9F)となった。対戦相手は、サンバーナーディノH勝利後にピムリコスペシャルHで2着してきたウエスタンプライド、オークローンHの勝ち馬でこの年のサンタアニタH3着のクドス、前走3着のピエンサソナンド、同5着のウドゥンフォーン、シービスケットHを勝ってきたリーバズゴールド(前年のジャパンCダートにも参戦して、11番人気でイーグルカフェの9着だった)などだった。このレースはハンデ競走では無かったため、本馬は斤量の恩恵を受けることが出来ず、単勝オッズ11.5倍で7頭立ての5番人気だった。ウエスタンプライドが単勝オッズ2.2倍の1番人気、クドスが単勝オッズ2.9倍の2番人気となっていた。レースでは後方2番手を追走したが、本馬の後ろにいたクドスが四角でまくって先頭に突撃していくと、それに付いていくことが出来ず、勝ったクドスから6馬身差をつけられた5着と完敗した。

次走は7月にデルマー競馬場で行われたダート8.5ハロンのオプショナルクレーミング競走となった(本馬は売却の対象外)。ただのオプショナルクレーミング競走ではあったが、サンラファエルSの勝ち馬でサンタアニタダービー・エインシャントタイトルBCH・サンカルロスH2着・メトロポリタンH・BCスプリント・シガーマイルH3着のクラフティーシーティー、前年のベルモントS優勝以来の実戦となるサラヴァ、スキップアウェイS2着馬コンシステンシー、前年11月のオプショナルクレーミング競走で本馬の4着に敗れた後にフォーティナイナーHを勝っていたジミーズィーなどが参戦していた。下手なグレード競走よりもレベルが高く、ハンデ競走でない分だけハンデグレード競走より本馬には厳しいレースだった。クラフティーシーティーが単勝オッズ3.2倍の1番人気、サラヴァが単勝オッズ5.1倍の2番人気、コンシステンシーが単勝オッズ5.7倍の3番人気で、本馬は単勝オッズ7.8倍で9頭立ての4番人気だった。しかし4番手の好位追走から直線で猛然と追い上げ、逃げ切って勝った単勝オッズ8.3倍の5番人気馬ノーズザトレード(本馬と同斤量)には頭差及ばなかったものの2着に入り、3着クラフティーシーティー(これも本馬と同斤量)に2馬身先着してみせた。

続くレースはGⅠ競走初出走となる8月のパシフィッククラシックS(米GⅠ・D10F)となった。対戦相手の頭数は本馬が出走してきたレースの中で最少の3頭だけだったが、その3頭は、亜国のGⅠ競走サンイシドロ大賞・ホアキンSデアンチョレナ大賞を勝った後に米国に移籍してアメリカンHを勝っていた5戦無敗のキャンディライド、トラヴァーズS・ホイットニーH・サンフェリペS・ジムダンディS・ストラブS・オークローンHの勝ち馬でベルモントS・BCクラシック・ウッドメモリアルS2着のメダグリアドーロ、サンアントニオH2着後にサンタアニタHの2連覇を達成してきたミルウォーキーブルーであり、レベル的には本馬が出走してきたレースの中でサンアントニオHと並んで最高と言えるものだった。サンアントニオHと違って定量戦だったため、軽量に乗じる余地も無く、本馬は単勝オッズ25.9倍の最低人気だった。メダグリアドーロが単勝オッズ1.6倍の1番人気、キャンディライドが単勝オッズ3.2倍の2番人気、ミルウォーキーブルーが単勝オッズ4.1倍の3番人気であり、完全に本馬は泡沫候補扱いだった。

結果は2番手から抜け出したキャンディライドが勝ち(その後は疝痛や脚部不安など体調面に問題が生じたため、6戦無敗のまま翌年に引退)、3馬身1/4差の2着に逃げたメダグリアドーロ(次走のBCクラシックで2年連続の2着)、メダグリアドーロから7馬身差の3着に3番手から伸びなかった本馬、本馬から2馬身差の最下位にレース中に脚を負傷したミルウォーキーブルー(負傷が癒えずにこのまま現役引退)というものだった。表向きはGⅠ競走入着馬とはなったが、本馬の実力はまだ米国競馬の一線級からは程遠いものである事が改めて立証された形となってしまった。

次走は10月のグッドウッドBCH(米GⅡ・D9F)となった。ここではサンアントニオH3着後に出走したサンタアニタHで4着していたプレザントリーパーフェクト、トリプルベンドBC招待H・デルマーBCHを勝ってきたジョーイフランコ、シャンペンS・ハリウッドフューチュリティ・レムセンS・ローレルフューチュリティの勝ち馬トセット、カリフォルニアンS3着後にサンディエゴH3着・デルマーBCH2着と好走を続けていたリーバズゴールド、ネイティヴダイヴァーH惨敗後にゴドルフィンマイル2着・デルマーBCH3着と活躍していたグレイメモなどが対戦相手となった。116ポンドのプレザントリーパーフェクトが単勝オッズ2.4倍の1番人気、117ポンドのジョーイフランコが単勝オッズ5.5倍の2番人気、113ポンドのトセットが単勝オッズ5.9倍の3番人気で、113ポンドの本馬は単勝オッズ7.8倍で8頭立ての4番人気だった。

ここでは馬群の中団後方を進むプレザントリーパーフェクトをマークするように後方2番手を追走し、プレザントリーパーフェクトが三角で仕掛けるのを見計らってから追撃を開始した。そして直線ではプレザントリーパーフェクトに必死に追いすがったのだが、半馬身届かず2着に敗れた。斤量ではプレザントリーパーフェクトのほうが本馬より3ポンド重かったのだが、プレザントリーパーフェクトが次走のBCクラシックを優勝して米国競馬界の頂点を極める事を考えると、これは価値がある2着だったと言える。

次走は10月末のノングレード競走シービスケットH(D8.5F)となった。このレースには、ブラジルのGⅠ競走ブラジル共和国大統領大賞を勝った後に米国に移籍してエディリードH・シューメーカーマイルS・サンフランシスコBCマイルH・サンアントニオH・フランクEキルローマイルHを勝っていたリダットーレという実力馬が参戦していた。しかしリダットーレの主戦場は芝競走であり、ここでは123ポンドのトップハンデを課されていた事もあって、単勝オッズ7倍の3番人気止まりだった。そして単勝オッズ3.5倍の1番人気に支持されたのは116ポンドの本馬だった。本馬が人気を集めた理由の1つには、このシービスケットHと同日に同じサンタアニタパーク競馬場で2レース前に行われたBCクラシックをプレザントリーパーフェクトが勝利した事も影響したかも知れない。しかし本馬はその期待に応えられず、馬群の中団後方のまま、勝った単勝オッズ8.9倍の5番人気馬パインバーガー(ローンスターパークHの勝ち馬)から5馬身3/4差をつけられた6着に敗れてしまった。

敗因についてオニール師は、前走グッドウッドBCHから3週間後というレース間隔の短さを挙げており、招待されていた5週間後のジャパンCダートまで疲労回復に努めた。

ジャパンCダート

そして本馬は来日し、ジャパンCダート(日GⅠ・D2100m)に参戦した。対戦相手は、一昨年の朝日杯フューチュリティSを勝つも芝で行き詰ったためにダート路線に転向してJBCクラシック2回・マイルCS南部杯・エルムSを勝ち前年のジャパンCダートで3着していたアドマイヤドン、シンザン記念を勝つもやはり芝で行き詰ったためにダート路線に転向して武蔵野Sを快勝してきたサイレントディール、全日本2歳優駿・ユニコーンS・ダービーグランプリの勝ち馬でジャパンダートダービー2着のユートピア、ジャパンダートダービー・名古屋優駿・兵庫チャンピオンシップの勝ち馬でダービーグランプリ2着のビッグウルフ、日本テレビ盃の勝ち馬でダービーグランプリ・JBCクラシック2着・マイルCS南部杯3着のスターキングマン、帝王賞・大井記念・東京記念・TCK女王盃・京成盃グランドマイラーズ・ファーストレディー賞などを勝って現役地方最強馬の称号を得ていた女傑ネームヴァリュー、東海S2回・アンタレスSの勝ち馬で川崎記念2着・JBCクラシック3着のハギノハイグレイド、一昨年のNHKマイルCでクロフネの2着して名を馳せた後に芝とダートを併用していたグラスエイコウオー、帝王賞・川崎記念・ダイオライト記念・オグリキャップ記念の勝ち馬でJBCクラシック3着のカネツフルーヴ、1600万下条件戦でこの年に3勝を挙げて重賞に初出走してきたシロキタゴッドラン、マーキュリーCの勝ち馬ディーエスサンダー、川崎記念・ダイオライト記念の勝ち馬で帝王賞・東京大賞典・ジャパンCダート・川崎記念2着のリージェントブラフ、アンタレスS2回・平安S2回・マーチSの勝ち馬スマートボーイ、一昨年のフェブラリーSを筆頭に根岸S・とちぎマロニエC・兵庫ゴールドトロフィー・さきたま杯を勝っていたノボトゥルーの日本調教馬14頭と、デルタジャックポットSを勝ちハリウッドジュヴェナイルCSS2着・ケンタッキーダービー7着だった米国調教の3歳馬オウタヒアの合計15頭だった。

前年3着の雪辱を期するアドマイヤドンが単勝オッズ1.5倍の1番人気に支持され、ドバイワールドC2着馬トゥザヴィクトリーの全妹サイレントディールが単勝オッズ4.1倍の2番人気となった。3番人気以降は、単勝オッズ10.4倍のユートピア、単勝オッズ26.6倍のビッグウルフ、単勝オッズ27.8倍のスターキングマン、単勝オッズ30.3倍のネームヴァリュー、単勝オッズ30.6倍のハギノハイグレイド、単勝オッズ37.7倍のグラスエイコウオー、単勝オッズ38.7倍のカネツフルーヴ、単勝オッズ49.1倍のシロキタゴッドランと続いていた。ジャパンCダートに過去出走した11頭のうち最上位が第1回におけるロードスターリングの3着(勝ち馬ウイングアローからは6馬身半差)で、米国屈指の実力馬だったリドパレスも第2回において8着に沈むなど不振だった海外馬の評価は低く、本馬は単勝オッズ49.3倍の11番人気だった。

本馬の鞍上はベイズ騎手から、初騎乗となるジョン・コート騎手に代わっていた。コート騎手はフロリダ州生まれで、この1週間前に43歳の誕生日を迎えていた米国の中堅騎手だった。名手ウィリアム・シューメーカー騎手に憧れて騎手の道を選び、主に米国のマイナー競馬場を主戦場としていた。前年にはケンタッキー州の首位騎手に輝くなど、既に2000勝を挙げていた(後に3000勝を達成)のだが、大舞台には殆ど縁が無く、国際グレード競走に勝利した経験といえば前年にパーフェクトドリフトで制したGⅢ競走インディアナダービーくらいだった。

さて、このジャパンCダート当日は雨で馬場状態は非常に悪く、それを見たオニール師は、グルーシューズ(滑り止めのゴムラバーが付いた蹄鉄)を本馬に履かせてレースに臨ませた。スタートが切られるとまずはカネツフルーヴが単独で先頭に立ち、スマートボーイが2番手、本馬が3番手、ネームヴァリューが4番手で、断然人気のアドマイヤドンは5番手につけた。今まで馬群の中団後方辺りにつけるレースが多かった本馬は最初のコーナーを回るところで頭を上げて掛かる仕草が見られたが、その後は折り合って普通に走っていた。向こう正面でネームヴァリューと共にスマートボーイをかわして2番手に上がり、三角でネームヴァリューを置き去りにしてカネツフルーヴに並びかけていった。そこへ後方からアドマイヤドンも追い上げてきた。そして直線に入ると本馬がカネツフルーヴをかわして先頭に立ち、そのまま抜け出した。しかし坂の上でアドマイヤドンが外から並びかけてきて、2頭の壮絶な叩き合いになった。ゴール前100mでアドマイヤドンが僅かに前に出たため、実況をしていたテレビ東京の矢野吉彦アナウンサーは「アドマイヤドンがねじ伏せようとしている」と叫んだ。ゴールの瞬間にもアドマイヤドンが完全に体勢有利に見えたため、矢野アナは「(アドマイヤドンが)ねじ伏せた、ねじ伏せた、強い、強い、1着で今ゴールイン!」「内フリートストリートダンサーが粘っていましたがこれをねじ伏せたゴール前。世界への道が広がりました」とまで言ってしまった(確かにリアルタイムで見ていた筆者にもアドマイヤドンが勝ったように見えた)。

写真判定を待つ間、当然勝ったと思ったアドマイヤドン鞍上の安藤勝己騎手は愛馬を脱鞍所の1着のところに導いた。ところが写真判定の結果は、ゴール寸前で驚異的な粘りを見せた本馬が僅か4cmの差で差し返しており、栄冠を掴んだ。勝ちタイム2分09秒2はコースレコード。本馬にとっても記念すべきグレード競走初勝利だったが、2001年のユナイテッドネーションズHでウィズアンティシペーションに騎乗して1位入線しながら向こう正面における進路妨害を取られて2着降着となりGⅠ競走制覇を逃していたコート騎手にとっても嬉しいGⅠ競走初勝利となった(この後には米国でGⅠ競走を複数勝っている)。管理するオニール師にとっては、2002年にスカイジャックで勝利したハリウッド金杯に次ぐGⅠ競走2勝目だった。

ちなみに誤認実況をした矢野アナはその後も普通に競馬実況を続けている。1988年の優駿牝馬で勝ち馬コスモドリームをサンキョウセッツと大誤認したフジテレビの堺正幸アナはしばらく競馬実況から外された。確かに誤認内容は大きく異なるし、確定まで馬券を捨てないのは競馬ファンとして当たり前の行為(確定前に捨てる方が悪い)だが、問題にならなかったのだろうか。

競走生活(6歳時)

5歳時を10戦1勝の成績で終えた本馬は、遠征が得意と判断され、翌年のドバイワールドCを目指すことになった。なお、本馬の主戦にはコート騎手が固定されることになった。

まずは1月のサンアントニオH(米GⅡ・D9F)に出走した。対戦相手は、プレザントリーパーフェクト、本馬とは前年のサンアントニオH以来の顔合わせとなるコンガリー(この1年間にカーターH・ハリウッド金杯・シガーマイルHの勝利を上乗せしていた)、サンパスカルHを勝ってきたスタークロスの3頭だった。124ポンドのコンガリーが単勝オッズ1.4倍の1番人気、121ポンドのプレザントリーパーフェクトが単勝オッズ2.9倍の2番人気、114ポンドのスタークロスが単勝オッズ11.8倍の3番人気、116ポンドの本馬が単勝オッズ12.9倍の最低人気だった。コート騎手は本馬の粘りを活かすために脚質転換を図ったらしく、好スタートを切るとすぐさま先頭に立って逃げた。向こう正面でスタークロスとコンガリーが上がってきて並びかけてきたが、三角で先頭を奪い返してそのまま直線に入ってきた。しかしすぐ後方まで上がってきていたプレザントリーパーフェクトに瞬く間に付き抜かれてしまい、ゴール直前でスタークロスにも首差かわされて、プレザントリーパーフェクトから4馬身1/4差の3着に敗れた(コンガリーは本馬から4馬身差の最下位)。

それでもドバイワールドC(首GⅠ・D2000m)にコート騎手と共に臨んだ。対戦相手は、プレザントリーパーフェクト、ドンHを勝ってきたメダグリアドーロ、マクトゥームチャレンジR2・マクトゥームチャレンジR3を連勝してきたUAEダービー馬ヴィクトリームーン、ペンシルヴァニアダービーの勝ち馬グランドアンブレ、ストラブSを勝ってきたサンタカタリナSの勝ち馬ドメスティックディスピュート、そして、フェブラリーSを勝ってきたアドマイヤドン、ジャパンCダートでは7着だったフェブラリーS2着馬サイレントディール、ジャパンCダート8着後に名古屋グランプリを勝っていたリージェントブラフの日本調教馬3頭だった。英国ブックメーカーのオッズでは、メダグリアドーロが単勝オッズ3倍の1番人気、プレザントリーパーフェクトが単勝オッズ3.5倍の2番人気、ヴィクトリームーンが単勝オッズ5倍の3番人気と、この3頭に人気が集中。アドマイヤドンが単勝オッズ12倍の4番人気で、本馬は単勝オッズ17倍の6番人気だった。

スタートが切られると本馬が先頭に立ったが、メダグリアドーロが本馬に絡んできて単騎で逃げることは出来なかった。それでも直線入り口までは先頭を死守していたが、ここでメダグリアドーロに並びかけられて2番手に落ちると、残り400m地点では3番手から追い上げてきたプレザントリーパーフェクトにもかわされ、その後に力尽きて失速。2着メダグリアドーロを3/4馬身抑えて勝ったプレザントリーパーフェクトから22馬身差をつけられた7着に敗れた。なお、アドマイヤドンは本馬から2馬身1/4差の8着、リージェントブラフは9着、サイレントディールは12着最下位であり、この当時の日本のダート界のレベルが世界に暴露される結果となってしまった。

その後は疲労回復のため放牧に出されていたが、そのまま復帰することなく、6歳時2戦未勝利の成績で競走馬を引退した。競走馬引退後の消息は筆者が調べた範囲では確認できない。

ジャパンCダートは、本馬が勝った翌年2004年にトータルインパクト(マーヴィンルロイHで本馬を2着に破って勝った馬で、後にハリウッド金杯を勝利していた)がタイムパラドックスの4着したが、そのまた翌年2005年に参戦した米国西海岸の強豪馬ラヴァマンがカネヒキリの11着に沈むと、その後は海外馬が好走する事例は皆無となり、海外馬が1頭もいない年も珍しくなくなってしまった。そして2014年にはジャパンCダートからチャンピオンズカップに名称変更され、招待競走ではなくなってしまった。これにより、ジャパンCダートを勝った海外馬は本馬のみという事になった。ジャパンCに参戦する海外馬もこの数年間はかなり低レベル化しているし、どんどん井の中の蛙と化している日本中央競馬会はこれからいったいどこへ向かうのだろうか。

血統

Smart Strike Mr. Prospector Raise a Native Native Dancer Polynesian
Geisha
Raise You Case Ace
Lady Glory
Gold Digger Nashua Nasrullah
Segula
Sequence Count Fleet
Miss Dogwood
Classy 'n Smart Smarten Cyane Turn-to
Your Game
Smartaire Quibu
Art Teacher
No Class Nodouble Noholme
Abla-Jay
Classy Quillo Outing Class
Quillopoly
Street Ballet Nijinsky Northern Dancer Nearctic Nearco
Lady Angela
Natalma Native Dancer
Almahmoud
Flaming Page Bull Page Bull Lea
Our Page
Flaring Top Menow
Flaming Top
Street Dancer Native Dancer Polynesian Unbreakable
Black Polly
Geisha Discovery
Miyako
Beaver Street My Babu Djebel
Perfume
Wood Fire Bois Roussel
Blue Smoke

スマートストライクは当馬の項を参照。

母ストリートバレエは米で走り18戦6勝。その産駒には本馬の半兄ストリートレベル(父ロベリノ)【グリーンランズS(愛GⅢ)】がいる他、本馬の半姉アルベラ(父コンキスタドールシエロ)の子にアペリア【ジェニュインリスクH(米GⅡ)2回・ガーデンステートパークBCH(米GⅢ)】が、半姉カムダンシング(父トゥーパンチ)の孫にブラッシュドバイアスター【モリーピッチャーS(米GⅡ)・チルッキS(米GⅡ)】が、半姉ストリートタピン(父ハウスバスター)の子にボサノヴァ【フォールハイウェイトH(米GⅢ)】がいる。ストリートバレエの全姉ニジンスカストリートの子には、リヴァースペシャル【ノーフォークS(米GⅠ)・ハリウッドフューチュリティ(米GⅠ)・デルマーフューチュリティ(米GⅡ)】がいる。

ストリートバレエの母ストリートダンサーは、ラモナH2回・サンタアナH・ミレイディH・ハネムーンHの勝ち馬。ストリートダンサーの全姉ネイティヴストリートはケンタッキーオークス馬であるだけでなく一大牝系を構築しており、その子にロイヤルアンドリーガル【フロリダダービー(米GⅠ)】、孫にドージング【スプリントC(英GⅠ)】、ファイアザグルーム【ビヴァリーDS(米GⅠ)】、曾孫にストラヴィンスキー【ジュライC(英GⅠ)・ナンソープS(英GⅠ)】、パールオブラヴ【伊グランクリテリウム(伊GⅠ)】、日本で走ったトーヨーリファール【ニュージーランドトロフィー四歳S(GⅡ)・平安S(GⅢ)・マーチS(GⅢ)】、玄孫世代以降にハーフウェイトゥヘヴン【愛1000ギニー(愛GⅠ)・ナッソーS(英GⅠ)・サンチャリオットS(英GⅠ)】、フォトコール【ロデオドライブS(米GⅠ)】、日本で走ったゴッドセンド【星雲賞・高知県知事賞・赤レンガ記念】、ラインフォーク【高知優駿】、スパイナルコード【黒潮皐月賞・高知優駿・トレノ賞・建依別賞・珊瑚冠賞】、ハードデイズナイト【留守杯日高賞・優駿スプリント・アフター5スター賞】、シグラップロード【岩手日報杯スプリングC】、ヌーヴォレコルト【優駿牝馬(GⅠ)・ローズS(GⅡ)・中山記念(GⅡ)】、オヤコダカ【リーダーズゴールドジュニアC・王冠賞・北斗盃】などがいる。ストリートダンサーの半姉ズーパトロールの孫にはジャックナイフ【ホープフルS(米GⅠ)】が、半妹マジェスティックストリートの孫にはサキーズシークレット【ジュライC(英GⅠ)】、曾孫にはアーマイン【アップルブロッサムH(米GⅠ)】がいるなど、優秀な牝系である。→牝系:F3号族②

母父ニジンスキーは当馬の項を参照。

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