サンインロー

和名:サンインロー

英名:Son-in-Law

1911年生

青鹿

父:ダークロナルド

母:マザーインロウ

母父:マッチメイカー

競走馬として無尽蔵のスタミナを誇り種牡馬としてもそのスタミナを子孫によく伝えた20世紀英国近代競馬におけるスタミナの源泉

競走成績:2~5歳時に英で走り通算成績18戦8勝2着1回3着1回

20世紀初頭屈指の名長距離馬であり、種牡馬としてもその無尽蔵のスタミナ能力をよく子孫に伝え、英国立競馬博物館は「おそらくは英国において今まで知られている最も優秀かつ著名な長距離馬でしょう」と評しているし、競馬作家エイブラム・S・ヒューイット氏は著書“Sire Lines(種牡馬の系統)”の中で「20世紀英国近代競馬におけるスタミナの源泉」と評している。

誕生からデビュー前まで

ダークロナルドの所有者だった南アフリカの大富豪エイブ・ベイリー卿により、彼が英国に所有する牧場において生産・所有された。父ダークロナルドにとっては初年度産駒であり、母マザーインロウにとっても初子だった。馬名は英語で「継子」の意味で、「継母」を意味する母の名前にちなんでいる。

前脚は長くて華奢だったし、首の付け根の鬐甲(きこう)部分も低かったが、肩は筋肉に覆われ、尻から後脚にかけてがっちりとした馬体を有していた。また、馬体には左後脚の一部を除いて白い箇所が無かった。

競走生活

英国レジナルド・デイ調教師に預けられ、2歳時にデビューした。初戦こそ頭差2着と好走したが、その後2戦はいずれも着外に敗れ、2歳時は3戦未勝利に終わった。

3歳時も2連敗スタートだったが、3戦目のミルデンホールS(T12F)では8馬身差の圧勝で初勝利を挙げ、長距離馬としての資質を垣間見せた。その後は英国クラシック競走を目標としたものの、前哨戦で敗れたため断念。その後はランデスバラプレート(T12F)を勝利。ニューベリーサマーC(T12F)は4歳馬フローリストの3着に敗れ、アスコットゴールドヴァーズも着外に終わったが、ダリンガムプレート(T12F)を快勝した。これらの結果を受けて、デイ師は本馬の持つ長距離馬としての資質を確信し、以降は長距離のカップ路線に方向を転じた。この決断が吉と出て、当時の長距離界の大競走グッドウッドC(T21F)を勝利。さらに年末のジョッキークラブC(T18F)ではフローリストを3着に破ってニューベリーサマーCの借りを返した。3歳時の成績は11戦5勝だった。

翌4歳時も長距離路線に出走を続け、英国伝統の長距離ハンデ競走シザレウィッチH(T18F)では事前の調整が不足していながらもレースレコードで勝利を収めた。さらに年末にはジョッキークラブC(T18F)を優勝して2連覇を果たした。しかし、前年に勝利したグッドウッドCだけでなく、アスコット金杯・ドンカスターCといった英国長距離路線の大競走には出走できなかった。その理由は、前年に勃発した第一次世界大戦の影響で英国内の競馬開催が縮小され、上記3競走のうちグッドウッドC・ドンカスターCの2競走がいずれも大戦終結まで中止されてしまったためであった。アスコット金杯は結果的にこの年は施行されたが、この年の英ダービーが本来のエプソム競馬場ではなくニューマーケット競馬場で行われるなど、英国の大競走の開催は非常に流動的だったため、本馬は結局出走しなかった。そんなわけで、本馬がそのスタミナ能力を発揮できる場は急激に少なくなっていた。4歳時の成績は3戦2勝だった。

5歳時も現役を続け、ウォーレンヒルH(T16F24Y)に出走して勝利した。しかし前年は何とか施行できたアスコット金杯はこの年は同競走史上初めて開催中止となってしまい、やはり本馬は出走できなかった(翌年にはニューマーケット競馬場で代替開催されている)。結局5歳時はウォーレンヒルHの1戦のみで引退した。

勝ち鞍は全て12ハロン以上のレースという生粋の長距離馬だった。第一次世界大戦さえ起こらなければ、英国伝統の長距離戦は総なめに出来たのではないかと思われる。

血統

Dark Ronald Bay Ronald Hampton Lord Clifden Newminster
The Slave
Lady Langden Kettledrum
Haricot
Black Duchess Galliard Galopin
Mavis
Black Corrie Sterling
Wild Dayrell Mare
Darkie Thurio Cremorne Parmesan
Rigolboche
Verona Orlando
Iodine
Insignia Blair Athol Stockwell
Blink Bonny
Decoration Knight of the Garter
Toison d'Or
Mother in Law Matchmaker Donovan Galopin Vedette
Flying Duchess
Mowerina Scottish Chief
Stockings
Match Girl Plebeian Joskin
Queen Elizabeth
Fusee Marsyas
Vesuvienne
Be Cannie Jock of Oran Blair Athol Stockwell
Blink Bonny
Tunstall Maid Touchstone
Tomboy Mare
Reticence Vespasian Newminster
Vesta
Seclusion Tadmor
Miss Sellon

ダークロナルドは当馬の項を参照。

母マザーインロウは現役成績17戦5勝。パークヒル未勝利プレート・ショーハムプレート・ノッティンガムシャーブリーダーズフォールプレート・ヘドンナーサリーH・マンチェスターオータムブリーダーズフォールプレートを勝っている。息子と異なり、勝ち鞍の全てを2歳時に挙げた早熟の短距離馬だった。近親にはこれといった活躍馬はおらず、牝系子孫から出た著名馬は、本馬の全妹オウンシスターから10代目に当たる北海道営競馬の名馬コスモバルク【シンガポール航空国際C(星GⅠ)】くらいである。→牝系:F5号族②

母父マッチメイカーはドノヴァン産駒で、現役成績9戦5勝、主な勝ち鞍はアスコットダービーS・プリンスオブウェールズS。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は英国ニューマーケットのテレースハウスファームで種牡馬となった。種牡馬としては自身と同じく長距離得意の産駒を多く出し、1924・1930年と2度の英愛首位種牡馬に輝くという成功を収めた。自身が勝てなかったアスコット金杯・ドンカスターC・グッドウッドCの英国長距離三冠競走も種牡馬としては全て制覇している。1941年5月にテレースハウスファームにおいて他界、享年30歳の長命だった。

本馬の産駒が現役競走馬だった時期は、欧州で長距離競走が高い評価を受けていた時期と重なり、時代のニーズに合っていた本馬の産駒は持てはやされた。後継種牡馬も数多く出て、欧州だけでなく南米や豪州でも本馬の系統に属する種牡馬が活躍するなど、一時期本馬の系統は栄華を誇ったが、時代が進むと欧州のみならず世界の競馬界は全体的に距離短縮に向かうようになり、本馬の系統は徐々に敬遠され、衰退していった。現在では本馬の直系は殆ど残っていない。日本では直系のエルバジェを介して本馬の系統が流行した時期があったが、現在ではやはり直系は衰退している。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

1918

Bucks

グッドウッドC

1919

Bucks Hussar

ジョッキークラブC

1919

Lady Juror

ジョッキークラブS

1919

Scamp

ニューS・ジムクラックS

1920

Adelmo

ローマ賞

1921

Knight of the Garter

コヴェントリーS

1921

Straitlace

英オークス・コロネーションS・ナッソーS

1922

Foxlaw

アスコット金杯・ジョッキークラブS

1925

Law Suit

愛セントレジャー

1925

Tourist

プリンセスオブウェールズS・米グランドナショナル2回

1926

Belle Mere

モールコームS

1926

Bosworth

アスコット金杯

1926

Posterity

ハードウィックS

1926

Trimdon

アスコット金杯2回・ゴールドヴァーズ・ヨークシャーC

1927

Parenthesis

コロネーションC・プリンスオブウェールズS

1927

Rustom Pasha

エクリプスS・英チャンピオンS

1927

Wedding Favour

ジョンポーターS

1928

Birthday Book

ジョンポーターS

1928

Corn Belt

ジョンポーターS

1929

Concordia

チェヴァリーパークS

1929

Within-the-Law

ヨークシャーC

1930

Young Lover

ジムクラックS

1931

Fet

シザレウィッチH

1931

Maureen

クイーンメアリーS

1931

Valerius

チェスターヴァーズ・ヨークシャーC

1932

Assignation

プリンスオブウェールズS

1932

Coppelia

ナッソーS・チャイルドS

1932

Hilla

ジュライS

1933

Epigram

グッドウッドC・ドンカスターC

1933

Suzerain

ヨークシャーC

1933

Valerian

プリンスオブウェールズS

1933

Weathervane

エボアH

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